Drug Atlas · B9 Lipid-lowering drugs / 脂質異常症治療薬
アシピモクス
acipimox
- 分類
- Lipid-lowering drugs / 脂質異常症治療薬
- 商品名(EU)
- Olbetam
- 科目
- Pharmacology
- トピック
- B9: Drugs affecting lipid metabolism. Drugs controlling body weight
- 承認適応
- 脂質異常症
- 禁忌疾患
- 消化性潰瘍
- 副作用
- 顔面紅潮頭痛
🧠 全体像:アシピモクスはニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)の合成誘導体であり、GPR109AGPR109A(niacin receptor GPR109A)活性化による脂肪分解 lipolysis 脂肪分解(lipolysis) lipolysis(脂肪分解) 抑制という同じ機序でトリグリセリドを下げる薬である。この薬を理解する軸はただ1つ——「ニコチン酸nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) そのものはEUEU(European Union)で脂質異常症 dyslipidemia 脂質異常症(dyslipidemia) dyslipidemia(脂質異常症) の単剤として姿を消したのに、その誘導体であるアシピモクスは規制 Regulation 規制(Regulation) Regulation(規制) の網をくぐり抜けて残っている」という規制 Regulation 規制(Regulation) Regulation(規制) 上のねじれである。2013〜2014年のEU審査でも、対象はニコチン酸 nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸)・アシピモクス・キサンチノールニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) 塩の3物質から始まったが、最終的にEU域内で流通していたのはアシピモクスだけという形で決着した。
薬効群の中での位置づけ
| 薬剤 | 由来・関係 | EUでの現状 |
|---|---|---|
| ニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) | GPR109A作動の原型薬 | ハンガリー・スペインの登録簿を確認した範囲では脂質異常症 dyslipidemia 脂質異常症(dyslipidemia) dyslipidemia(脂質異常症) を適応とする単剤製剤は見当たらない |
| アシピモクス | ニコチン酸nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) の合成誘導体(同じGPR109A経路) | ハンガリーなど一部の加盟国でOlbetamとして今も収載されている |
| ニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)/ラロピプラントlaropiprant ラロピプラント(laropiprant)laropiprant(ラロピプラント) 配合剤(Tredaptive等) | ニコチン酸nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) +顔面紅潮 facial flushing 顔面紅潮(facial flushing) facial flushing(顔面紅潮) を抑える配合剤 | HPS2-THRIVEの結果を受け2013年にEUで販売承認取り下げ |
⭐ 「ニコチン酸nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) 誘導体」という同じカテゴリーの中でも、規制Regulation 規制(Regulation)Regulation(規制) 上の運命が枝分かれした好例として覚える。 配合剤Tredaptive 配合剤(Tredaptive)Tredaptive(配合剤) は完全に承認取り下げ、単剤のニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) はEUの単剤製剤としては確認できず、誘導体のアシピモクスだけが適応を絞られた形で生き残っている。
機序
flowchart TD
A["アシピモクスを内服(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinic acid'>ニコチン酸</span>の合成誘導体)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='niacin receptor GPR109A'>GPR109A</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinic acid'>ニコチン酸</span>受容体)を活性化"]
B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hormone-sensitive lipase (HSL)'>ホルモン感受性リパーゼ</span>の活性を抑制"]
C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fatty acids'>遊離脂肪酸</span>放出↓"]
D --> E["肝臓への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fatty acids'>遊離脂肪酸</span>供給↓"]
E --> F["肝での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='very-low-density lipoprotein'>VLDL</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>合成↓"]
F --> G["血中トリグリセリド↓・コレステロール↓"]
G --> H["HDL↑"]
💡 機序はニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)とまったく同じGPR109A経路である。 ニコチン酸nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) の項で説明した「効いている証拠としての顔面紅潮 facial flushing顔面紅潮(facial flushing) facial flushing(顔面紅潮)」という関係も、同じ受容体を介するアシピモクスにそのまま当てはまる1。
適応
EUの製品概要 Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC 製品概要(Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC) Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC(製品概要) (Olbetam、2021年4月改訂)が定める適応は、他の治療で十分な反応が得られなかった患者への代替または追加治療という枠に限定される——スタチンまたはフィブラート系 fibrates フィブラート系(fibrates) fibrates(フィブラート系) 薬剤による治療で不十分だった高トリグリセリド血症hypertriglyceridemia高トリグリセリド血症(hypertriglyceridemia)hypertriglyceridemia(高トリグリセリド血症)、および高コレステロール血症 Hypercholesterolemia 高コレステロール血症(Hypercholesterolemia) Hypercholesterolemia(高コレステロール血症) 合併高トリグリセリド血症 hypertriglyceridemia 高トリグリセリド血症(hypertriglyceridemia) hypertriglyceridemia(高トリグリセリド血症) のトリグリセリド値を下げる目的である1。
⚠️ この「限定」は2013〜2014年のEU審査の結果そのものである。 審査Article 31 referral 審査(Article 31 referral)Article 31 referral(審査) は当初ニコチン酸 nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸)・アシピモクス・キサンチノールニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) 塩の3物質を対象に2013年3月7日開始されたが、他の2物質はEU域内で脂質異常症 dyslipidemia 脂質異常症(dyslipidemia) dyslipidemia(脂質異常症) の適応として販売されていなかったため、2013年7月までに対象はアシピモクスのみへ絞られた2。PRAC(医薬品安全性監視・リスク評価委員会)はアシピモクスのベネフィット benefitsベネフィット(benefits) benefits(ベネフィット)・リスクは良好と結論 conclusion 結論(conclusion) conclusion(結論) しつつ、適応をIIb型・IV型高リポタンパク血症 Hyperlipoproteinemia 高リポタンパク血症(Hyperlipoproteinemia) Hyperlipoproteinemia(高リポタンパク血症) における他の治療が無効な場合の追加または代替治療に限定するよう勧告し、2014年2月20日付の欧州委員会決定でこれが確定した2。
⭐ ニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)の項で見た「規制Regulation 規制(Regulation)Regulation(規制) 上の帰結」と対で理解する。 ニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)/ラロピプラントlaropiprant ラロピプラント(laropiprant)laropiprant(ラロピプラント) 配合剤は2013年に販売承認そのものが取り下げられたのに対し、アシピモクスは適応を絞られた形で承認が維持された——同じニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) 関連物質 Associated substances 関連物質(Associated substances) Associated substances(関連物質) でも結末が違う。
用法・用量
1回250 mgカプセルを1日2〜3回、食事とともにまたは食後に服用する。1日投与量は血漿トリグリセリド値・コレステロール値をみながら個別に調整し、1日1200 mgまでの使用実績がある1。
⚠️ 腎機能障害renal impairment 腎機能障害(renal impairment)renal impairment(腎機能障害) では減量する。 中等度〜重度の腎機能障害 renal impairment 腎機能障害(renal impairment) renal impairment(腎機能障害) がある患者では1日1〜2カプセルへ減量する1。実際の用量調整 dose adjustment 用量調整(dose adjustment) dose adjustment(用量調整) は施設のプロトコル・添付文書で確認する。
禁忌・注意
- 禁忌:本剤成分への過敏症、活動性消化性潰瘍、重度腎機能障害 renal impairment 腎機能障害(renal impairment) renal impairment(腎機能障害) (クレアチニンクリアランスcreatinine clearance (CrCl) クレアチニンクリアランス(creatinine clearance (CrCl))creatinine clearance (CrCl)(クレアチニンクリアランス) 30 mL/分未満)1
- ⚠️ スタチンとの併用で筋毒性のリスクが増加する。 製品概要Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC 製品概要(Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC)Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC(製品概要) は「ニコチン酸nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸) をスタチンと併用すると筋毒性のリスクが増加する」と明記しており、アシピモクスがニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) と構造的に関連することから同じ注意が適用される1。これはニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)の項で述べた横紋筋融解症 rhabdomyolysis 横紋筋融解症(rhabdomyolysis) rhabdomyolysis(横紋筋融解症) の注意と同じ構図である
- ⚠️ 加盟国ごとに承認状況が異なりうる。 2014年の欧州委員会決定の時点で販売が継続していたのはオーストリア・ベルギー・デンマーク・ハンガリー・イタリア・ルクセンブルク・オランダ・英国であり2、「EUで承認されている」とEU全域を一括りにしない
副作用
| 頻度 | 内容 |
|---|---|
| 高頻度 | 頭痛、顔面紅潮facial flushing顔面紅潮(facial flushing)facial flushing(顔面紅潮)、消化不良dyspepsia (indigestion) 消化不良(dyspepsia (indigestion))dyspepsia (indigestion)(消化不良) (通常は投与開始1日目のうちに急速に消失する) |
| 頻度不明 | 腹痛、じん麻疹、脱力感 |
(頻度区分はEU製品概要 Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC 製品概要(Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC) Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC(製品概要) の副作用一覧による1)
まとめ
- アシピモクスはニコチン酸nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid)nicotinic acid(ニコチン酸)の合成誘導体で、同じGPR109A活性化による脂肪分解 lipolysis 脂肪分解(lipolysis) lipolysis(脂肪分解) 抑制という機序でトリグリセリドを下げる。
- ⭐ 2013〜2014年のEU審査は当初ニコチン酸 nicotinic acidニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸)・アシピモクス・キサンチノールニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) 塩の3物質を対象としたが、EU域内で流通していたのはアシピモクスだけだった。
- 現在のEUでの適応はスタチン・フィブラート系fibrates フィブラート系(fibrates)fibrates(フィブラート系) 薬剤による治療で不十分だった患者への追加・代替治療に限定される(IIb型・IV型高リポタンパク血症 Hyperlipoproteinemia高リポタンパク血症(Hyperlipoproteinemia) Hyperlipoproteinemia(高リポタンパク血症))。
- 用法・用量は250 mgカプセルを1日2〜3回、食事とともに。1日1200 mgまでの使用実績があり、腎機能障害renal impairment 腎機能障害(renal impairment)renal impairment(腎機能障害) では減量する。
- 禁忌は成分への過敏症・活動性消化性潰瘍・重度腎機能障害 renal impairment腎機能障害(renal impairment) renal impairment(腎機能障害)。スタチンとの併用で筋毒性のリスクが増加する——ニコチン酸 nicotinic acid ニコチン酸(nicotinic acid) nicotinic acid(ニコチン酸) と同じ注意である。
- 加盟国ごとに承認状況が異なり、2014年の決定時点で販売継続国は8か国(オーストリア・ベルギー・デンマーク・ハンガリー・イタリア・ルクセンブルク・オランダ・英国)に限られる。「EUで使える」を全域一括りにしない。
- 主な副作用は頭痛・顔面紅潮facial flushing顔面紅潮(facial flushing)facial flushing(顔面紅潮)・消化不良dyspepsia (indigestion) 消化不良(dyspepsia (indigestion))dyspepsia (indigestion)(消化不良) で、いずれも投与開始初日のうちに急速に消失することが多い。
出典
- 1.Olbetam Capsules 250 — Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium (emc)・2021)2021年4月改訂の製品概要(SmPC)で、4.1の適応が「他の治療(スタチンまたはフィブラート系薬剤による高トリグリセリド血症・高コレステロール血症合併高トリグリセリド血症の治療)で十分な反応が得られなかった患者における、トリグリセリド値を下げるための代替または追加治療」であること、4.2の用法・用量が250 mgカプセルを1日2〜3回食事とともにまたは食後に服用し、血漿トリグリセリド値・コレステロール値に応じて個別に調整すること、1日1200 mgまでの使用実績があること、中等度〜重度の腎機能障害では1日1〜2カプセルへ減量すること、4.3の禁忌が本剤成分への過敏症・消化性潰瘍・重度腎機能障害(クレアチニンクリアランス30 mL/分未満)であること、4.4でニコチン酸と構造的に関連しておりスタチンとの併用で筋毒性のリスクが増加することが注意されていること、5.1の機序が脂肪組織からの脂肪酸遊離を阻害しVLDL・LDLを低下させトリグリセリド・コレステロールを下げHDLを上昇させることであること、4.8の副作用が高頻度で頭痛・顔面紅潮・消化不良、頻度不明で腹痛・じん麻疹・脱力感であり通常は投与開始1日目のうちに急速に消失することを確認した。閲覧 2026-09-16
- 2.Substances related to nicotinic acid (acipimox) — Article 31 referral(European Medicines Agency・2014)2013年3月7日に開始された審査で、当初はニコチン酸・アシピモクス・キサンチノールニコチン酸塩の3物質が対象だったが2013年7月までに他の2物質はEU域内で脂質異常症を適応として販売されていないためアシピモクスのみに範囲が絞られたこと、PRAC(医薬品安全性監視・リスク評価委員会)がアシピモクスの有効性・安全性のベネフィット・リスクは良好と結論した一方で適応をIIb型・IV型高リポタンパク血症における他の治療が無効な場合の追加または代替治療に限定するよう勧告したこと、スタチンとの併用時の筋毒性リスクについて注意喚起を追加するようCMDhが支持したこと、2014年2月20日付で欧州委員会の決定が下り製品情報の変更という形でアシピモクスは制限付きの承認を維持したこと、この決定の時点でオーストリア・ベルギー・デンマーク・ハンガリー・イタリア・ルクセンブルク・オランダ・英国で販売が継続されていたことを確認した。閲覧 2026-09-16