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Disease Atlas · 運動器 · 外傷

腱板断裂

Rotator cuff tear

別名
回旋筋腱板断裂
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
外傷学 15:肩甲帯の軟部組織・骨・関節損傷解剖学 5.2:上肢:肩と腋窩
鑑別疾患
肩鎖関節症肩峰下疼痛症候群石灰沈着性腱炎凍結肩
合併症
腱板断裂性関節症変形性関節症
治療薬
トリアムシノロン
症状
肩痛夜間痛筋力低下

🧠 全体像:はを前後上下から包む4筋(・・・)の腱で、浅いにを引きつけて支点を作る「動的な安定装置」である。この解剖から3つのことが導ける——①上を通るがと骨頭に挟まれ、かつを抱えるため最もしやすい、②腱板が破れると骨頭を引きつける力が失われて骨頭が上方へ移動し、外転の起こし始めができなくなる、③この上方移動が長く続けば下と関節の変性()に至る。臨床の要点は、変性によるとのを区別することと、無症候のが高頻度に存在するため画像所見だけで症状の原因を決めないことである。

解剖 — SITSと「支点を作る」働き

筋 停止 作用 神経
(Supraspinatus) 上面 外転の開始
(Infraspinatus) 中面
(Teres minor) 下面
(Subscapularis) 上・

はが浅く可動域を最大化した関節で、静的安定化(・・)だけでは支えきれない。腱板はをへ引きつけ続けることで、が腕を持ち上げるための支点を作っている。

💡 なぜが最も多いのか。 ①位置——4筋のうちだけが・とのあいだを通り、挙上のたびに機械的に挟まれる。②血流——付着部の手前に血流の乏しい領域があり、加齢による腱の変性が起こりやすい。③力学——が上向きに引く力に対抗して骨頭を下へ引きつける役目が、まずにかかる。

💡 腱板断裂の症状は「引きつける力が失われた」ことで説明できる。 腱板が骨頭をに押さえていられなくなると、の収縮で骨頭が上方へ滑り、外転の起こし始めができず、挙上した腕を保持できない。単純X線でが狭まるのも同じ現象である。

変性性と外傷性を分ける

日本の山村住民683人・1,366肩を超音波で調べた検診では、が20.7%に存在し、年齢とともに増加した。症状のある者の36%にがある一方で、無症状の者にも16.9%にがあった。危険因子は外傷歴、側、年齢であった1。

⚠️ 画像でが見つかっても、それが症状の原因とは限らない。 無症候性のがこれだけ高頻度にある以上、の所見だけでを決めない。症状・機能障害・受傷歴と突き合わせる。

変性性(非)
典型 中高年、緩徐発症、明らかな外傷歴なし 若〜中年、明確な(転倒で腕をつく、、重量物の引き上げ)
経過 数か月〜年単位のと挙上困難 受傷直後からの脱力・挙上不能
部位 の付着部から進展 のやの損傷を伴うことがある
方針 鎮痛と運動療法を基本とし、反応しない症候性ので修復を検討 急性のでは早期の修復を積極的に検討する

⚠️ 骨折・に隠れた急性を見落とさない。 やの治療中、骨の問題が片づいたあとも挙上できないときは腱板断裂を疑う。高齢者のでは腱板断裂との合併が問題になる。

診断

病歴と身体所見

  • 、とくに患側を下にして眠れないが特徴的である。
  • 外転・の筋力低下、、挙上不能。
  • 筋ごとの評価:()、・(力とlag徴候)、(lift-off試験・belly-press試験)。
  • ・・の萎縮、の感覚も確認する。

⚠️ Neer試験・Hawkins試験が見ているのは「インピンジメント」であって断裂ではない

検査
72% 60%
79% 59%
53% 76%

上の数値はいずれもに対する精度である2。⚠️ 感度も特異度も中等度にとどまり、単独の検査で腱板断裂を確定も除外もできない。複数の所見と画像を合わせて判断する。

画像

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shoulder pain'>肩痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='night pain (nocturnal pain)'>夜間痛</span>・外転<span class='jp-term jp-term-diagram' title='external rotator'>外旋筋</span>力低下"] --> B["単純X線<br>(骨折・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dislocation'>脱臼</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcinosis'>石灰沈着</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthropathy'>関節症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acromiohumeral distance'>肩峰骨頭間距離</span>)"]
    B --> C["外傷歴が明確/急性の脱力"]
    C --> D["急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic tear'>外傷性断裂</span>を疑い早期に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]
    B --> E["緩徐発症・変性性を疑う"]
    E --> F["まず鎮痛と運動療法"]
    F --> G["十分な運動療法でも症状・機能障害が残る"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>の大きさ・退縮・脂肪変性を評価"]
    D --> H
    H --> I["修復可能:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rotator cuff repair'>腱板修復術</span>"]
    H --> J["修復不能な広範囲<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>:<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tendon transfer'>腱移行術</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior capsular reconstruction'>上方関節包再建</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reverse shoulder arthroplasty'>リバース型人工肩関節</span>"]
  • 単純X線はのために重要である3。骨折、、、を除外し、の狭小化から慢性の広範囲を推定する。
  • MRIはの性状(大きさ、退縮の程度、筋の脂肪変性)を評価するために術前に強く推奨される。超音波の役割については議論が残る3。
  • ⭐ 脂肪変性とは修復後の腱の治癒と機能回復に効く因子であり、での有無だけでなくこれらを読む。

治療

保存治療

鎮痛とが基本である。腱板の残存部・・周囲筋を鍛えて、骨頭を引きつける力とのリズムを再建する。ステロイド(など)のは短期的な鎮痛に用いることがあるが、⚠️ 反復注射は・感染・の懸念があり、漫然と繰り返さない。

に対するを一律に行わない。

手術

症候性の大きな、外傷後の急性、十分な保存治療でも機能障害が続く例でを検討する。

⚠️ 「高齢だから」「喫煙しているから」「肩が硬いから」を単独で手術の禁忌にしない。 イタリア整形外科学会(SIAGASCOT)肩委員会の専門医41名によるの合意では、年齢・・喫煙・といった患者因子はの禁忌とはされていない。また(では挙上できるがができない状態)もの禁忌にはならない3。

修復不能な広範囲では、主たる機能障害に応じて術式を選ぶ3。

主たる障害 選択肢
挙上の障害が主体
の障害が主体
上方の不安定性 (と組み合わせた場合にのみ役割をもつ)
を伴う高齢者

合併症・経過

  • :慢性の広範囲で骨頭が上方化した状態が続くと、下との軟骨がし、性変化に至る。ここまで進むとでは対応できず、が選択肢になる。
  • の拡大、筋の脂肪変性と萎縮(不可逆になりうる)。
  • 修復後の、。

まとめ

  • 腱板は・・・(SITS)の腱で、をへ引きつけての支点を作る。
  • が最もしやすい。下を通って機械的に挟まれること、付着部手前にがあること、への対抗が最初にかかることが理由である。
  • 一般人口のは20.7%で年齢とともに増え、無症状者の16.9%にも存在する。画像所見だけで症状の原因と決めない。
  • ・Hawkins試験はの検査であり、感度・特異度とも中等度での確定・除外はできない。の性状評価はで行う。
  • 変性性のは鎮痛と運動療法が基本、急性のは早期修復を検討する。年齢・喫煙・・は単独ではの禁忌にならない。
  • 慢性の広範囲は骨頭上方化からに至り、の適応となる。

出典

  1. 1.Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population(Journal of Shoulder and Elbow Surgery・2010)日本の山村住民683人・1,366肩の超音波検診で全層腱板断裂の頻度が20.7%であり年齢とともに増加したこと、症状のある者の36%に断裂があった一方で無症状の者にも16.9%に断裂があったこと、ロジスティック回帰で断裂の危険因子が外傷歴・利き手側・年齢であったこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  2. 2.Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests(British Journal of Sports Medicine・2012)肩の徒手検査のシステマティックレビュー・メタ解析で、肩峰下インピンジメントに対するNeer試験の統合感度72%・特異度60%、Hawkins-Kennedy試験の感度79%・特異度59%、有痛弧の感度53%・特異度76%であったこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  3. 3.High degree of consensus on diagnosis and management of rotator cuff tears: a Delphi approach(Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy・2023)イタリア関節鏡・膝・上肢・スポーツ・軟骨・整形外科技術学会(SIAGASCOT)肩委員会の肩専門医41名による4ラウンドのDelphi法(合意は2/3以上の一致と定義、56項目中51項目で合意成立)で、断裂の性状を評価するため術前MRIが強く推奨される一方で超音波の役割には議論が残ること、単純X線は鑑別診断のために重要であること、年齢・併存疾患・喫煙・拘縮といった患者因子は修復術の禁忌にならないこと、偽性麻痺も鏡視下腱板修復術の禁忌にはならないこと、上方関節包再建は機能的修復と組み合わせた場合にのみ役割をもつこと、腱移行術は主たる機能障害に応じて選択し広背筋移行は挙上障害、下部僧帽筋移行は外旋障害が主体のときに役割をもつこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02