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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

凍結肩

Frozen shoulder

別名
癒着性関節包炎五十肩
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
外傷学 15:肩甲帯の軟部組織・骨・関節損傷解剖学 5.2:上肢:肩と腋窩
鑑別疾患
肩鎖関節症肩峰下疼痛症候群石灰沈着性腱炎腱板断裂頸椎・腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症
関連疾患
糖尿病
症状
肩痛夜間痛拘縮
元疾患
上腕骨近位部骨折

🧠 全体像:は「腱やではなくそのものが炎症を経て線維化・収縮する」疾患である。ここから臨床像がすべて導ける——①包が縮むので自動だけでなくも落ちる(との最大の分かれ目)、②縮み始めるのは前上方の・なのでから失われる、③痛みを取っても包の長さは戻らないのでを入れても可動域は改善しない。⚠️ 押さえるべき論点は2つで、糖尿病との強い関連と、「放っておけば必ず治る」とは言い切れないことである。

定義と分類

のが炎症と線維化により肥厚・収縮し、疼痛と・自動ともの可動域制限を来す病態を指す。誘因の明らかでない一次性(特発性)と、外傷・手術(とくに肩・胸壁の手術)・に続発する二次性に分ける1。

一般人口のおよそ2〜5%に生じ、平均発症年齢は55歳前後、女性が約1.4対1と多く、非側に多い1。

病態:炎症が先、線維化が後

初期の炎症反応が疼痛と可動域制限を生み、続いてに線維化が起こる。を中心にが肥厚しが収縮して、容積そのものが減る。組織学的には・血管新生・の線維化を認める1。

💡 「癒着」という名前に引きずられない。 主体は関節面どうしがくっつくことではなく、包が厚く短くなることである。だから的に伸ばす・切る(・)という治療が成立する。

⚠️ 糖尿病との関連

系統的レビュー・では、糖尿病(1型・2型)のある人は無い人に比べて発症が3.69倍(95%信頼区間2.99〜4.56)であった。各研究では不良・肥満・・高血圧・甲状腺の問題・40〜65歳・女性・喫煙・飲酒も危険因子として挙がっている2。

⚠️ この著者ら自身が「観察された関連は測定されていないの影響を受けている可能性がある」とに書いている2。関連の強さと因果は別で、機序は未確定である。臨床的に確かなのは、糖尿病・甲状腺機能異常の併存例では経過が長く重く、予後も不良で、糖尿病のが長いほど治療成績が悪いことである1。

病期

病期 主症状 目安の期間
びまん性で日常生活を妨げる疼痛。夜間に増悪し、こわばりが加わってくる 2〜9か月
疼痛は軽くなり、こわばりが主問題になる。全方向の可動域が制限される 4〜12か月
疼痛が徐々に軽減し、可動域が回復してくる 記載なし

出典はこの3相を挙げつつ、経過はが大きく、数か月で全可動域を取り戻す者もいれば3年に及ぶ者もいると明記している1。

⚠️ 病期の区切りは臨床的な目安であって検査で決まる境界ではない。 同じ出典でも、要旨は3相を「疼痛期・・」と書き、本文のStaging節は「・・」と書いていて呼称が一致していない。ここでは本文の記載を採った。病期を当てにいくより、疼痛が主か可動域制限が主かで治療を選ぶほうが実務的である。

診断

診断は臨床的に行う。もも低下し、 → 外転 → → 屈曲の順に失われるのが典型で、関節周囲にびまん性の圧痛を認める一方、末梢のは保たれる1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shoulder pain'>肩痛</span>と可動域制限"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='passive range of motion'>他動可動域</span>は保たれるか"}
    B -->|"保たれる(自動のみ低下)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rotator cuff disease'>腱板疾患</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acromion'>肩峰</span>下病変を考える"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='passive (movement)'>他動</span>も低下(とくに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral rotation'>外旋</span>)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subacromial space'>肩峰下腔</span>へ1%<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lidocaine'>リドカイン</span>を注入"]
    D -->|"疼痛が減り可動域が改善"| C
    D -->|"可動域制限が残る"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frozen shoulder'>凍結肩</span>を考える"]
    E --> F["単純X線で骨折・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthropathy'>関節症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcinosis'>石灰沈着</span>を除外"]
    F --> G["糖尿病・甲状腺機能を確認"]

⭐ への(1%)注入は鑑別のになる。 やでは注入後に疼痛が減って可動域が広がるが、では注入後も可動域制限が残る1。

鑑別 手掛かり
腱板断裂・ は落ちるがは保たれる。で改善する
肩の最上部に限局した痛みで、体幹前で腕を交叉させる動作()で悪化する
・による とに沿う・。と
急性の激痛と可動域制限。単純X線で石灰化が見える
悪性腫瘍 進行性の疼痛・・体重減少

(上記の鑑別項目はいずれも出典の鑑別表に挙げられている1。)

⚠️ 自然経過は「必ず治る」ではない

教科書はしばしばの疾患と書き、実際、出典も適切な治療を受ければ約80%が正常またはほぼ正常な機能を取り戻すとする。ただし同じ出典が10〜20%にはこわばりや不快感が残るとも書いている1。

一次性223例269肩を発症から平均4.4年(範囲2〜20年)追跡した研究では、59%が正常またはほぼ正常な肩であった一方、41%が何らかの症状の残存を報告した。ただし残存症状の94%は軽度で最も多い訴えは疼痛であり、疼痛と機能障害を伴う高度の症状は6%にとどまった。発症時に最も症状が重かった者の長期予後が最も不良であった(P < .001)。同じ研究で20%が両側性であったが、再発例は無かった3。

💡 この2つの数字は矛盾しない。 「大多数は困らない程度まで回復する」と「4割に何かしら残る」は同じ現象の別の切り取りである。⚠️ 患者に「放っておけば必ず元どおりになる」と言い切らず、残存しうること・重症発症例ほど残りやすいことを最初に伝えるのが誠実な説明になる。

治療

疼痛の制御と可動域の維持が軸で、が中心、とを併用する。保存治療に反応しない例でやが検討される1。

⚠️ 手術がに対して明確に優れるとは示されていない。 英国35施設の無作為化試験(UK FROST)は、が50%以上制限された一次性の成人503例を・・早期構造化の3群(2対2対1、いずれもステロイド注射を併用)に割り付けた。12か月時の(0〜48)の平均推定値は38.3、40.3、37.2で、群間差は対2.01点(95%信頼区間0.10〜3.91)、対3.06点(0.71〜5.41)、対1.05点(−1.28〜3.39)であった。試験が事前に設定した目標差(と手術のあいだで5点、とのあいだで4点)にはいずれも届いていない4。

まとめ

  • の炎症と線維化によりもも低下し、から順に失われる。との最大の分かれ目がここにある。
  • ⭐ への注入後も可動域制限が残れば、改善すれば下・腱板の病変を考える。
  • ⚠️ 糖尿病があると3.69倍だが、の著者自身がの可能性を明記している。併存例は経過が長く重い。
  • 病期は(2〜9か月)・(4〜12か月)・の3相だが、区切りは目安でが大きく、3年に及ぶこともある。
  • ⚠️ とされるが、平均4.4年の追跡で41%に症状が残った(うち94%は軽度、6%が高度)。発症時に重いほど長期予後が悪い。
  • UK FROSTでは・・早期構造化の12か月成績の差が事前設定の目標差に届かず、手術の優越は示されていない。

出典

  1. 1.Adhesive Capsulitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)癒着性関節包炎が一般人口のおよそ2〜5%に生じ、平均発症年齢が55歳前後で女性が約1.4対1と優位、非利き手側に多いこと(Epidemiology節)。誘因の明らかでない一次性と、外傷・手術・長期固定に続発する二次性に分けられること(Etiology節)。病態が炎症に続く線維化で、回旋筋間隙を中心に烏口上腕靱帯の肥厚と関節包の収縮が起こり、組織学的には滑膜過形成・血管新生・関節包の線維化を認めること(Pathophysiology・Histopathology節)。経過が凍結期(2〜9か月)・拘縮期(4〜12か月)・解凍期の3相で記載され、数か月から2〜3年に及びうること(Staging節)。可動域低下が外旋から始まり外転・内旋・屈曲と続き、他動・自動ともに低下する一方で末梢の神経学的所見は保たれること(History and Physical節)。肩峰下腔への1%リドカイン注入後も可動域制限が残る点が肩峰下滑液包炎・腱板腱症との鑑別に使えること、鑑別表に頸椎症性神経根症・肩鎖関節症・上腕二頭筋腱症・変形性肩甲上腕関節症・骨折・石灰沈着性腱炎・悪性腫瘍が挙がること(Evaluation・Differential Diagnosis節)。予後として約80%が正常またはほぼ正常な機能を取り戻す一方で10〜20%にこわばりと不快感の残存があり、糖尿病・甲状腺機能異常の併存例は経過が長く重く予後が不良なこと、糖尿病の罹病期間が長いほど治療成績が不良なこと(Prognosis・Epidemiology節)を確認した。2025年3月28日更新版を閲覧した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.The diabetic shoulder: association between diabetes mellitus and adhesive capsulitis — a systematic review and meta-analysis(International Orthopaedics・2026)糖尿病(1型・2型)のある人は無い人に比べて癒着性関節包炎を発症するオッズが3.69倍(95%信頼区間2.99〜4.56)であったこと、血糖コントロール不良・肥満・脂質異常症・高血圧・甲状腺の問題・40〜65歳・女性・喫煙・飲酒が各研究で追加の危険因子として挙げられていたこと、著者らが結論で「観察された関連は測定されていない交絡因子の影響を受けている可能性がある」と述べ因果関係の解明には質の高い縦断研究が必要としていることを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Long-term outcome of frozen shoulder(Journal of Shoulder and Elbow Surgery・2008)一次性凍結肩と診断された223例269肩について症状発症からの平均4.4年(範囲2〜20年)の追跡で、長期的に59%が正常またはほぼ正常な肩であった一方、41%が何らかの症状の残存を報告したこと、残存症状の94%は軽度で最も多い訴えは疼痛であり、疼痛と機能障害を伴う高度の症状は6%であったこと、発症時に最も症状が重かった者の長期予後が最も不良であったこと(P < .001)、発症時平均年齢53.4歳・女性対男性1.6対1.0・20%が両側性で再発例は無かったことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-03
  4. 4.Management of adults with primary frozen shoulder in secondary care (UK FROST): a multicentre, pragmatic, three-arm, superiority randomised clinical trial(The Lancet・2020)英国35施設で他動外旋が50%以上制限された一次性凍結肩の成人503例を、麻酔下授動術(201例)・関節鏡下関節包解離(203例)・早期構造化理学療法(99例)に2対2対1で割り付け、いずれの群にもステロイド注射を併用または選択可能とし、手術群には術後理学療法を行ったこと。12か月時のOxford Shoulder Score(0〜48)の平均推定値が麻酔下授動術38.3、関節包解離40.3、理学療法37.2であり、群間差が関節包解離対授動術で2.01点(95%信頼区間0.10〜3.91)、関節包解離対理学療法で3.06点(0.71〜5.41)、授動術対理学療法で1.05点(−1.28〜3.39)であったこと、試験が事前に設定した目標差は理学療法とどちらかの手術のあいだで5点、授動術と関節包解離のあいだで4点であったことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-03