疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 神経 · 腫瘍

脊髄腫瘍

Spinal cord tumor

臓器系
神経腫瘍
科目
NeurologyPathology
トピック
神経内科 G1-25:脊柱管・脊髄の占拠性病変病理学 C/111:中枢・末梢神経系腫瘍
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
治療薬
デキサメタゾン
症状
背部痛感覚異常筋力低下側弯症

🧠 全体像は「どこに生じたか」で臨床像も代表的な腫瘍も決まる——(最多、多くは転移)・硬膜内(髄膜・神経根由来)・髄内(脊髄実質由来、最少)という3つの解剖学的区分が、この主題を読み解く唯一の軸である。全全体の約15%を占めるにすぎないが、進行すれば不可逆的な麻痺に至るため、初発症状(多くは夜間に増悪する疼痛)を見逃さず、造影MRIで早期に評価することが転帰を左右する。

分類:3つの解剖学的区分

区分 頻度 由来 代表的な腫瘍
最多 椎体・の構造 が多くを占める
硬膜内 2番目 髄膜・神経根
髄内 最少(全硬膜内の20〜30%、全の2〜5%) 脊髄実質(主にグリア組織) 腫(最多)、血管芽腫(詳細はの項)1
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal cord tumor'>脊髄腫瘍</span>を疑う臨床像"] --> B{"病変は硬膜のどちら側・脊髄のどこにあるか"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural'>硬膜外</span>"| C["椎体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural space'>硬膜外腔</span>の病変<br>多くは転移性"]
    B -->|"硬膜内・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extramedullary'>髄外</span>"| D["髄膜・神経根由来<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meningioma'>髄膜腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schwannoma'>神経鞘腫</span>など"]
    B -->|"硬膜内・髄内"| E["脊髄実質由来<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ependymoma'>上衣腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stellate cells'>星細胞</span>腫・血管芽腫"]
    C --> F["造影MRIで評価"]
    D --> F
    E --> F

硬膜外腫瘍:転移が主体

腫瘍はのうち最も頻度が高く、画像上出会う脊椎腫瘤の約90%を占める2は乳癌(21%)、肺癌(19%)、前立腺癌(7.5%)、(5%)、消化管癌(4.5%)、(2.5%)の順に多い2

⚠️ への進展を伴う脊椎転移は、緊急外科コンサルテーションを要する腫瘍緊急症である。 未治療のまま進行すれば数日単位でに陥りうる。に対する外科的は死亡率・を有意に減らすが、受診時のが重いほど回復の見込みは悪くなるため、疼痛の性質から早期に疑い、治療を急ぐことが転帰を左右する2

硬膜内髄外腫瘍・髄内腫瘍

硬膜内腫瘍は2番目に多く、くも膜などの髄膜または神経根から生じるが代表的で、多くは良性である。

髄内腫瘍は最も頻度が低く、全硬膜内の20〜30%、全のわずか2〜5%にとどまる1。脊髄実質(多くはグリア組織)から生じ、腫が最多で、血管芽腫がこれに続く1。これらの組織学的特徴はの項に譲る。

臨床像

診断

造影MRIが第一選択の画像検査であり、腫瘍の大きさ・部位・長さ、周囲の浮腫、脊髄と腫瘍の境界、随伴する嚢胞やの評価に有用である1

⚠️ (左凸カーブ、10歳未満での発症、急速進行、異常を伴う例)は、を含むを検索するためMRIを検討するな適応である。 851例の解析ではを含む)の頻度が13.4%に上ったが、これらの「」自体がの存在を確実に予測するわけではなく、を見たら年齢・進行速度・にかかわらずMRIを検討する姿勢が重要である3(詳細はの項)。

治療

治療の骨格は外科的切除・放射線療法・(原疾患に応じた)薬物療法の3本柱である。

  • 脊髄圧迫の急性期: を軽減する目的で10mg静注後、4mgを6時間ごとに投与し2週間かけてする投与法が疼痛軽減・症状改善に有効である2
  • 放射線療法: などでは10回ので総線量30〜40Gyが標準的である2
  • 手術: 摘出しきれない浸潤性腫瘍では、術後の残存腫瘍に対して放射線療法を追加することがある。を来した例では、外科的が死亡率・を有意に減らす2

は「重症化してから見つける」のではなく、疼痛の性質(夜間増悪・臥位で悪化)の段階で疑うことが治療成績を左右する。 受診時の障害が軽いほど、治療後の機能回復も良好である2

まとめ

  • (最多、多くは転移)・硬膜内など)・髄内(腫が最多、最少)の3区分で理解する。
  • 脊椎転移は脊椎腫瘤の約90%を占め、乳癌・肺癌・前立腺癌が主なである。
  • 最も多い初発症状は夜間臥位で増悪する疼痛で、・筋力低下がこれに続く。
  • 造影MRIが第一選択の画像検査で、(左凸カーブ・早期発症・急速進行・異常)も検索の契機になる。
  • への進展を伴う脊椎転移は腫瘍緊急症で、受診時のが軽いほど治療後の回復が良い。、放射線療法、外科的を組み合わせて治療する。

出典

  1. 1.Intramedullary Spinal Cord Tumors(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)脊髄腫瘍全体が中枢神経系腫瘍全体の約15%を占めること、脊柱部の腫瘍が硬膜外・硬膜内髄外・髄内の3群に解剖学的分類されること、硬膜外腫瘍が最多で転移性が多いこと、硬膜内髄外腫瘍が2番目に多く髄膜・神経根由来(髄膜腫・神経鞘腫など)であること、髄内腫瘍が最も少なく全硬膜内原発腫瘍の20〜30%・全脊髄腫瘍の2〜5%にとどまり上衣腫・星細胞腫が最多で血管芽腫が続くこと(Introduction節)、造影MRIが髄内腫瘍の評価に最適な画像検査で腫瘍の大きさ・部位・長さ・周囲浮腫・脊髄腫瘍界面・随伴嚢胞や脊髄空洞症の評価に有用であること(Evaluation節)、最も多い初発症状が疼痛でしばしば夜間臥位で増悪すること、次いで異常感覚、その後運動障害の順に多いこと(History and Physical節)を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Spinal Metastasis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)脊椎転移が脊椎腫瘍の中で最も多く画像上出会う脊椎腫瘤の約90%を占めること(Introduction節)、原発巣の頻度が乳癌21%・肺癌19%・前立腺癌7.5%・腎癌5%・消化管癌4.5%・甲状腺癌2.5%の順であること(Etiology節)、疼痛が最も多い初発症状で夜間就寝中に増悪し患者を覚醒させる性質を持つこと(History and Physical節)、脊柱管への進展を伴う例では数日で歩行不能に陥りうるため外科的コンサルテーションを急ぐべきであり、急性麻痺に対する外科的除圧が死亡率・罹患率を有意に減らすこと、受診時の神経脱落症状が重いほど回復の見込みが悪いこと(Treatment/Management節)、脊髄圧迫にはデキサメタゾンをボーラス10mg静注後4mgを6時間ごと投与し2週間かけて漸減する投与例が疼痛軽減・症状改善に有効であること、放射線療法は10回の分割照射で総線量30〜40Gyが標準的であること(Treatment/Management節)を確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Is the routine use of magnetic resonance imaging indicated in patients with scoliosis?(Journal of Spine Surgery・2018)特発性側弯症のうち左凸胸椎カーブ・早期発症(10歳未満)・急速進行・両胸弯・神経学的異常のいずれかを伴う非典型例では、伝統的にMRIによる神経軸異常の検索が行われてきたこと、851例の解析で神経軸異常(Arnold-Chiari奇形10.3%、脊髄空洞症5.5%を含む)の頻度が13.4%であった一方、これらの「危険信号」自体は神経軸異常の存在を確実に予測するものではなかったことを確認した閲覧 2026-08-11