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9の法則

Rule of Nines

臓器系
皮膚
科目
Forensic Medicine
トピック
法医学 27:熱傷・熱中症と寒冷障害・低体温症
適用疾患
熱傷

🧠 全体像は、に占める割合をおおまかに見積もる、記憶しやすい概算法である。頭部・上肢・体幹・下肢を9または9の倍数に区切るだけで暗算できる手軽さが利点で、もとは熱傷の重症度評価・輸液蘇生量の算出のために考案されたが、同じ「皮膚のどれだけが侵されているか」を数値化する必要がある場面——によるSJS/TEN病型分類、のA(範囲)——にそのまま流用されている。成人・年長児用と2歳未満の乳幼児用で頭頸部・下肢の配分が異なる2種類の図を使い分ける点が、暗算の単純さの中で唯一の複雑さである。

目的と適用場面

内容
目的 に占める病変(熱傷・剥離・皮疹)の割合を、体表を9または9の倍数の区画に分けておおまかに見積もる
対象 熱傷患者、SJS/TEN患者、患者など、皮膚病変の面積を数値化する必要がある患者全般
使う場面 熱傷の初期評価と輸液蘇生量の算出、SJS/TENの病型分類・面積項目、のA(範囲)算出
位置づけ それ自体は診断・重症度の判定基準ではなく、他のスコア・分類が使うという数値を作る計算法である

体重10kg超80kg未満の患者で最も正確とされ1、体重10kg未満の乳児には後述の「8の法則」、高度肥満患者には「5の法則」という別配分が提案されている。

構成要素と配点

は年齢によって配分の異なる2種類の図を使う。上肢・体幹の配分は共通で、頭頸部と下肢の配分だけが年齢で変わる2

成人・年長児用

部位
頭頸部 9%
上肢(片側) 9%
体幹前面 18%
体幹後面 18%
下肢(片側) 18%
1%

⭐ 頭頸部9%、上肢各9%、体幹前後各18%、下肢各18%、1%——この配分をそのまま暗記して使う1

2歳未満の乳幼児用

部位
頭頸部 17%
上肢(片側) 9%
体幹前面 18%
体幹後面 18%
下肢(片側) 12%
1%

💡 乳幼児は体表に占める頭部の割合が成人より大きく、下肢の割合が小さいため、頭頸部の配分を9%から17%へ増やし、下肢の配分を片側18%から12%へ減らす。上肢・体幹の配分は成人と同じである2

体重10kg未満の乳児にはさらに別の簡略配分(「8の法則」:体幹32%・頭部20%・上肢各8%・下肢各16%)が使われることもある1

解釈とカットオフ

で算出したの割合は、用いる文脈によって意味が変わる。自体は判定のを持たず、利用する側のスコア・分類がそれぞれ独自にを定める。

文脈 割合の意味
熱傷の輸液蘇生 成人はTの15%超、小児は10%超で正式な輸液蘇生(Parklandなど)の適応となる3
SJS/TEN病型分類 がTの10%未満でSJS、10〜30%で、30%超でTENに分類する4
入院初日の面積がTの10%を超えるかどうかを1項目1点として加算する
算出した割合(0〜100)をA/5という重みで合計点に組み込む

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 面積が大きくなるほど過大評価しやすい。 25%・30%・35%T付近では実際の面積を約20%過大に見積もる傾向が報告されている1

⚠️ 子どもに成人用の図を使うと不正確になる。 は本来、小児での精度が低いとされ、厳密な評価には年齢に応じて連続的に配分が変わるLund and Browderチャートが推奨される3。本ノートの2歳未満用の図はあくまで簡便な代用であり、精密な評価が必要な場面でLund and Browderチャートの代わりにはならない。

⚠️ 高度肥満患者では体幹の実際の率が過小評価される。 BMI 30超では体幹が標準の36%より大きくなる傾向があり、体幹50%・上肢各5%・下肢各20%とする「5の法則」が代替として提案されている1

⚠️ そのものはでも予後スコアでもない。 算出した割合は、熱傷の輸液蘇生量算出、SJS/TENの病型分類、といった個々のスコア・分類へ入力される数値にすぎず、単独で重症度や予後を意味しない。

💡 小範囲の熱傷(T 15%未満)や逆に極めて広範な熱傷(85%超)では、患者自身の手掌(指を含む)を約0.8%とみなすの方がより簡便に使われる3

まとめ

  • の割合を9または9の倍数の区画で概算する、記憶しやすい計算法である。
  • 成人・年長児用(頭頸部9%・上肢各9%・体幹前後各18%・下肢各18%・1%)と、2歳未満の乳幼児用(頭頸部17%・下肢各12%、それ以外は成人と共通)の2種類の図を使い分ける。
  • もとは熱傷の輸液蘇生量算出のために考案され、SJS/TENの病型分類・面積項目・のA(範囲)算出にも流用されている。
  • 面積が大きいほど過大評価しやすく、小児では不正確でLund and Browderチャートが推奨され、高度肥満患者では「5の法則」のような代替配分が必要になる。
  • 自体はを持たない計算法であり、は利用する側の熱傷輸液蘇生基準・SJS/TEN分類・が個別に定める。

出典

  1. 1.Rule of Nines(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)9の法則が熱傷患者の総体表面積(TBSA)を頭部9%・体幹36%(前面18%・後面18%)・上肢各9%(合計18%)・下肢各18%(合計36%)・外陰部1%に区分して概算する手法であること、体重10kg未満には頭部20%・体幹32%・上肢各8%・下肢各16%に配分し直す「8の法則」が用いられること、肥満患者(BMI 30超)では体幹の占める割合が実際にはより大きくなるため体幹50%・上肢各5%・下肢各20%とする「5の法則」が代替として提案されていること、25〜35%TBSA付近で実際の面積を約20%過大評価する傾向が報告されていること、体重10kg超80kg未満の患者で最も正確とされることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Initial management of a major burn: II—assessment and resuscitation(BMJ・2004)成人ではTBSAの15%超、小児では10%超の熱傷で正式な輸液蘇生が必要とされていること、9の法則は小児では不正確でありLund and Browderチャートを用いるべきとされていること、手掌法(指を含む手掌)がTBSAの約0.8%に相当し15%未満の小範囲熱傷または85%超の極めて広範な熱傷の評価に用いられることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Severity Scoring of Atopic Dermatitis Index (SCORAD)(MidCentral District Health Board・2012)採点用紙に印刷された2種類の体表面積図のうち、「2歳未満」用では頭部が前面8.5%・後面8.5%(合計17%)、下肢は各前面6%・後面6%(片側合計12%)に配分され、「年長児」用では頭部が前面4.5%・後面4.5%(合計9%)、下肢は各前面9%・後面9%(片側合計18%)に配分されること、両図とも上肢は各前面4.5%・後面4.5%(片側合計9%)、体幹は前面18%・後面18%で共通していることを確認した。外陰部1%(および手掌各1%)の数値は年長児用の図にのみ記載されており、2歳未満用の図には記載がないことも確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Stevens-Johnson Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)SJS(表皮剥離が体表面積の10%未満)・SJS/TENオーバーラップ(10〜30%)・TEN(30%超)という、体表面積に占める表皮剥離割合による病型分類の閾値を確認した閲覧 2026-08-10