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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

手湿疹

Hand eczema

別名
手部湿疹hand dermatitischronic hand eczema慢性手湿疹
臓器系
皮膚免疫・膠原病
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-01:皮膚の原発疹・続発疹皮膚科 1-06:アトピー性皮膚炎皮膚科 1-20:汗疱・異汗性湿疹
鑑別疾患
アトピー性皮膚炎尋常性乾癬接触皮膚炎皮膚糸状菌症(白癬)
治療薬
トリアムシノロンタクロリムスアリトレチノイン
症状
汗疱・異汗性湿疹皮膚亀裂掻痒
適応薬
アリトレチノイン

🧠 全体像は単一の疾患名ではなく、手という部位に生じた湿疹性皮膚炎の総称である。診断の実務は「である」ことを確認して終わりではなく、・刺激物曝露・アレルゲン感作という3つの土台がどの配分で関与しているかを突き止めることにある。この配分によって、が必要かどうか、の曝露回避で解決するかどうか、全身治療へ進むべきかどうかというの分岐が決まる。であることが実地の最大の落とし穴で、1つの診断で説明がついたと思っても、実際には6割超の患者に追加の診断が併存する。

病態・分類の枠組み

手掌・の皮膚は、他部位よりが厚い一方で、に水仕事・・摩擦・アレルゲンに繰り返しさらされる特殊な環境にある。この「バリアが酷使される部位」という条件の上に、患者ごとに異なる比率で次の要因が重なり、という共通の臨床像を形成する。

  • 内因性(素因)異常などによる低下)
  • 外因性・非免疫性(水仕事、、摩擦、消毒による直接障害)
  • 外因性・免疫性(金属、ゴム、香料などへの
flowchart TD
    A["手のバリアが酷使される環境<br>(水仕事・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detergent'>洗剤</span>・摩擦・アレルゲン曝露)"] --> B{"素因・曝露の配分"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atopic diathesis'>アトピー素因</span>が優位"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atopy'>アトピー</span>性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hand eczema'>手湿疹</span>"]
    B -->|"感作を伴わない直接障害"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='irritant contact dermatitis'>刺激性接触皮膚炎</span>型"]
    B -->|"特定抗原への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type IV hypersensitivity reaction'>IV型過敏反応</span>"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allergic contact dermatitis'>アレルギー性接触皮膚炎</span>型"]
    B -->|"内因性・機序不明"| F["角化型・水疱型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pompholyx'>汗疱</span>)内因性湿疹"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hand eczema'>手湿疹</span>という共通の臨床像"]
    D --> G
    E --> G
    F --> G
    G --> H{"単一の型で説明できるか"}
    H -->|"できない・多因子"| I["複数の診断が併存<br>(6割超の患者で追加診断あり)"]

⚠️ 各機序の詳しい病態(、刺激性の直接障害機序)はに譲る。の学習で押さえるべきは、この3つの土台が同じ手という部位で重なりやすく、実臨床では単一の原因に決め打ちできないことが多いという点である。

臨床亜型

⭐ 2015年の欧州環境研究グループによる分類研究では、紹介受診患者427例のうち89%が次の6つの診断亜型のいずれかに分類でき、刺激性・を合わせると58%を占めた1

亜型 特徴 参照
水仕事・・摩擦の反復曝露で緩徐に生じる。最多の亜型
特定抗原(ゴム手袋、金属、など)への曝露歴と陽性
の既往・家族歴を伴う。に好発
蛋白・接触蕁麻疹 食品(魚介・野菜・など)への曝露直後に・そう痒。調理従事者に多い
角化型内因性湿疹 手掌のが主体で水疱を欠く。そう痒は比較的軽い
水疱型内因性湿疹( 手掌・指側縁の小水疱と強い掻痒。夏季に増悪しやすい

💡 水疱型(型)は全体の5〜20%を占める頻度の高い亜型で、詳しい病態・鑑別(特にから生じるとの区別)はに譲る2

疫学と職業性

は最も頻度の高い皮膚疾患の一つで、医療従事者、美容師、調理従事者、清掃業など頻回の水仕事・手袋着用・洗浄剤曝露を伴う職種でリスクが高い。のある患者は非患者より若年で発症し、より難治性・慢性の経過をたどりやすい。Lodiらの104例の検討では、(水疱型)患者の50%にの既往・家族歴がみられ、対照群の12%より有意に高頻度であった2

⚠️ は、休職・配置転換につながりうるインパクトの大きい疾患である。手袋の材質変更(ゴム手袋自体がアレルゲンになりうる)、保護の使用、作業手順の見直しを産業医・職場と連携して検討する。

診断とパッチテストの位置づけ

であることが多いため、「1つの診断で説明がついた」と考えても、実際には追加の要因が併存していることが少なくない。427例の分類研究では、38%が追加診断を1つ、26%が2つ以上有していた1

が特に有用な場面は、①曝露歴からが疑われる、②標準治療(保湿・・刺激回避)に反応しない難治例、③の同定が休職・配置転換の判断に直結する場合である。の手技・判定・I型検査との違いはに譲る。

鑑別 手掛かり
乾癬) 境界明瞭な紅斑・厚い鱗屑、爪や他部位の典型病変を伴うことが多い
片側性のことが多く、皮疹部そのものがで菌糸陽性
両側性・対称性の水疱だが皮疹部は陰性で、足など離れた部位にがある
他部位の典型分布・既往・家族歴を伴う。はその部分症のことがある

治療

⚠️ 慢性(3か月を超えて持続する、または年に2回以上を繰り返す病型)は、急性期と同じ外用治療の反復だけでは制御できないことが多く、原因の再評価と治療強化が必要になる。

  • 基本治療:無香料の保湿剤を頻回に使用してバリアを補い、水仕事・・アレルゲンへの曝露を可能な限り回避する。手袋(内側に綿手袋を重ねる)で刺激物・アレルゲンとの直接接触を減らす。
  • 外用抗炎症治療:部位・重症度に応じた力価のなど)を期に用いる。同ガイドラインでは、アレルギー性・へのが推奨度B〜C1で支持されている3
  • ステロイド節約を繰り返す部位や長期使用を避けたい部位には、)を維持療法として検討する。
  • 難治例:連日使用しても改善しない場合、漫然と外用を続けず、接触アレルギー・白癬の再評価に戻る3や全身治療(重症の慢性に対する系薬など)は専門医管理下で検討する。

⚠️ 抗菌薬・抗真菌薬をルーチンに併用しない。細菌の、急速な発赤拡大、疼痛・熱感)や真菌感染が確認・強く疑われる場合に限って追加する。

まとめ

  • は単一疾患ではなく、・刺激性接触・アレルギー性接触という3つの土台が手という部位で重なって生じる臨床像の総称である。
  • 分類研究では、刺激性・で約6割を占めるが、6割超の患者に追加の診断が併存するの病態である。
  • 亜型には刺激性・型のほか、、蛋白、角化型・水疱型()内因性湿疹がある。
  • の関与が疑われる場合、難治例、で原因同定が必要な場合に行う。乾癬・との鑑別を要する。
  • 治療は保湿とアレルゲン・刺激物回避を基本に、を急性期の中心とし、ステロイド節約にはを用いる。慢性・難治例では原因の再評価に戻り、・全身治療を専門医管理下で検討する。

出典

  1. 1.手湿疹診療ガイドライン(日本皮膚科学会・日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 手湿疹診療ガイドライン委員会・2018)再発性水疱型(汗疱型)手湿疹は手掌・指側縁に両側性・対称性に小水疱が多発し強い掻痒を伴うこと、鑑別診断として手白癬(片側性のことが多く直接鏡検で菌糸を検出)や疥癬が挙げられていること、CQ2aでアレルギー性手湿疹・アトピー性手湿疹に外用副腎皮質ステロイドを推奨し(推奨度B〜C1、エビデンスレベルII)連日使用で改善しない難治例・重症例では漫然と外用を続けず原因検索を行うとされていることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Hand Eczema(Indian Journal of Dermatology・2014)汗疱・異汗性湿疹は手湿疹全体の5〜20%を占めること、Lodiらによる104例の検討ではアトピーの既往・家族歴が患者群の50%・対照群の12%にみられたこと、接触アレルゲンとして対照群より高頻度のニッケル感作が報告されていること、アスピリン内服・経口避妊薬・喫煙が増悪因子として挙げられていることを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Classification of hand eczema(Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology(Agner T, et al.; European Environmental and Contact Dermatitis Research Group)・2015)9施設の紹介受診患者427例を対象とした前向き研究で、アレルギー性接触皮膚炎・刺激性接触皮膚炎・アトピー性手湿疹・蛋白接触皮膚炎/接触蕁麻疹・角化型内因性湿疹・水疱型内因性湿疹の6診断カテゴリーのうち単一診断で89%(379例)が分類でき、刺激性・アレルギー性接触皮膚炎を合わせると58%(249例)を占めたこと、38%が追加診断を1つ、26%が2つ以上有する多因子性の病態であったことを確認した。閲覧 2026-08-11