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Symptoms · Published

汗疱

Pompholyx

別名
異汗性湿疹異汗性皮膚炎dyshidrotic eczemapompholyx
臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-20:汗疱・異汗性湿疹皮膚科 1-05:皮膚炎・湿疹群の臨床病型と治療
関連疾患
手湿疹接触皮膚炎

🧠 全体像は、手掌・指側面・足底に深い場所から生じる、強い掻痒を伴う小水疱である。「汗」を病名に冠するが汗腺・そのものの疾患ではなく、・接触アレルゲン・発汗・ストレスなどが重なり合うとして理解する。診療の最大のは、単独のと、離れたから生じるを見分けることにあり、手だけでなく足のまで行う姿勢が診断の質を決める。

定義と用語の整理

は、手掌・指側面・足底に左右対称に多発するの小水疱である。初期の小水疱は透明で周囲に紅斑を欠くが、次第に乾燥・し周囲に紅斑を伴うようになり、強い掻痒を伴う1。足底にも同様の病変がみられることが多く、夏期に増悪する傾向がある1

⭐ 「」「異汗性」という名称は、かつて汗腺・の異常による発汗の貯留が原因と考えられていた歴史的経緯に由来する。しかし汗腺が病態にどこまで関与するかは現在も見解が一致しておらず、汗腺の閉塞だけで説明できる病態と決めつけることはできない2「汗の病気」という語感を先に切り離しておくことが、この症状を理解する最初の一歩である。

病態生理

の機序は単一ではなく、複数の因子が重なって発症するとして位置づけられる3

  • :Lodiらによる104例の検討では、の既往・家族歴が患者群の50%にみられ、対照群の12%より高頻度だった2
  • 接触アレルゲン・金属アレルギー:特にへの感作が対照群より高頻度に報告される2。金属を含む食品・歯科金属からの全身性吸収が誘因になることもある。
  • 発汗・多汗、高温多湿:夏期に増悪しやすい1
  • ストレス:誘因として疑われる因子の一つに挙げられる3
  • 喫煙:増悪因子として報告されている2
  • に対する遠隔反応に対する免疫反応として、手に状のが生じることがある。

💡 単一の原因を決めつけない枠組みが実地診療に合う。近年は3・10という水輸送蛋白が表皮全層でし水分バリアの破綻に関与するとの仮説も提唱されているが、確立した機序ではない3

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ を見落とした 手の状の小水疱だけを見て終わらせず、を疑うなら足のまで行う。が真菌陽性で皮疹部が陰性という組み合わせがを支持し、では皮疹部への抗真菌薬外用は無効での治療が本体になる。

⚠️ 細菌の による膿疱・痂皮、急速な発赤拡大、疼痛・熱感を伴えば培養で確認する。

⚠️ 水疱性の 粘膜病変・発熱を伴う広範な水疱や、口腔粘膜・体幹にも及ぶ水疱はの分布から外れる。の有無を確認する。

⚠️ 夜間増悪する掻痒、・手関節の丘疹や線状の鱗屑()、同居者の発症があれば疑う。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["手掌・足底・指側面の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep-seated'>深在性</span>小水疱"] --> B{"分布は手掌足底に限局するか"}
    B -->|"限局する"| C["皮疹部と足など離れた部位を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='KOH direct microscopy'>KOH直接鏡検</span>"]
    B -->|"体幹・粘膜にも及ぶ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug eruption'>薬疹</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune bullous disease'>自己免疫性水疱症</span>を再検討"]
    C --> D{"皮疹部そのものがKOH陽性か"}
    D -->|"陽性(片側性が多い)"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vesicular tinea'>手白癬</span>を考える"]
    D -->|"陰性"| L{"足など離れた部位がKOH陽性か"}
    L -->|"陽性(皮疹は両側性・対称性)"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermatophytid'>白癬疹</span>を考える"]
    L -->|"陰性"| F["接触歴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patch test'>パッチテスト</span>を確認"]
    F --> G{"曝露歴と分布が一致するか"}
    G -->|"一致する"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contact dermatitis'>接触皮膚炎</span>を考える"]
    G -->|"一致しない"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pompholyx'>汗疱</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dyshidrotic eczema'>異汗性湿疹</span>として経過を追う"]
鑑別 見分け方
片側性のことが多い。皮疹部そのものがで菌糸陽性となる1
両側性・対称性に生じるのが典型。皮疹部は陰性で、離れた(足など)が陽性という組み合わせが特徴
曝露部位と皮疹分布が一致するか、で確認する
手掌・や手関節の丘疹・、通常他部位にも症状がありで虫体・虫卵を検出する1
無菌性膿疱、紅斑・鱗屑が主体で水疱そのものは目立たない
細菌の 、急速な発赤腫脹、疼痛・熱感があれば培養で確認する

対症療法の考え方

のように「原疾患の治療に委ねる」型ではなく、それ自体を対象として治療する症状である。

  • 急性水疱期は冷湿布・短時間の浸漬のあと、部位に応じた十分な力価のを用いる。同ガイドラインでは、アレルギー性へのが推奨度B〜C1・エビデンスレベルIIで支持されている(への適用は同ガイドラインに明記されていない)1
  • 連日使用しても改善しない難治例・重症例では、漫然と外用を続けず接触アレルギーや白癬の再評価に戻る1
  • 乾燥・期は保湿剤でバリアを補い、・長時間の湿潤・金属曝露などの増悪因子を避ける。
  • ⚠️ 抗菌薬は細菌感染が確認・強く疑われる場合に限り、確定診断のないまま予防的に使わない。
  • 難治・反復例ではなど、専門的な治療の追加を検討する。

まとめ

  • は手掌・指側面・足底に生じるで強い掻痒を伴う小水疱であり、名称に反して汗腺・そのものの疾患ではない。
  • 、接触アレルゲン・金属アレルギー、発汗・多汗、ストレス、喫煙、白癬の遠隔反応など多因子が重なって生じる。
  • 最重要の鑑別はを見落としたであり、手だけでなく足のまで行う。
  • 細菌、水疱性のも見逃してはならない。
  • 治療はが中心で、それ自体を対象に治療する症状であり、難治例では原因の再評価に戻る。

出典

  1. 1.手湿疹診療ガイドライン(日本皮膚科学会・日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 手湿疹診療ガイドライン委員会・2018)再発性水疱型(汗疱型)手湿疹は手掌・指側縁に両側性・対称性に小水疱が多発し強い掻痒を伴うこと、初期の小水疱は透明で周囲に紅斑を欠くが次第に乾燥・落屑し周囲に紅斑を伴うこと、しばしば足底にも同様の病変がみられ夏期に増悪する傾向があること、原因不明のことが多いがニッケルなど金属アレルギーを伴うこともあること、鑑別診断として手白癬(片側性のことが多く直接鏡検で菌糸を検出)や疥癬(手掌・指間や手関節屈側の丘疹・疥癬トンネル、通常他部位にも症状)が挙げられていること、CQ2aでアレルギー性手湿疹・アトピー性手湿疹に外用副腎皮質ステロイドを推奨し(推奨度B〜C1、エビデンスレベルII)連日使用で改善しない難治例・重症例では漫然と外用を続けず原因検索を行うとされていること(「汗疱性」への適用は明記されていない)を確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Hand Eczema(Indian Journal of Dermatology・2014)汗疱・異汗性湿疹は手湿疹全体の5〜20%を占めること、Lodiらによる104例の検討ではアトピーの既往・家族歴が患者群の50%・対照群の12%にみられたこと、接触アレルゲンとして対照群より高頻度のニッケル感作が報告されていること、アスピリン内服・経口避妊薬・喫煙が増悪因子として挙げられていること、汗腺そのものの役割は現在も見解が一致していないことを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.The Key Role of Aquaporin 3 and Aquaporin 10 in the Pathogenesis of Pompholyx(Medical Hypotheses・2015)汗疱の正確な免疫学的機序は依然として不明であり、アレルゲン・ストレス・季節変化などが誘因として疑われる多因子性の病態として位置づけられていること、近年の仮説として水輸送蛋白であるアクアポリン3・10の表皮全層における過剰発現が水分バリアの破綻に関与するとの提唱があることを確認した(仮説論文であり確立した機序ではない)閲覧 2026-08-04