微生物学

微生物学 · 4/6

表在性・皮下真菌症

Superficial and sub-cutaneous mycoses

応用トピック
癜風微胞子虫症・小胞子菌症と表在性真菌症深在性真菌症(スポロトリコーシス・クロモブラストミコーシス・真菌性菌腫)脂漏性皮膚炎の臨床型と治療
微生物
Malassezia furfurMalassezia globosaMalassezia restrictaSporothrix schenckii
疾患
スポロトリコーシスマラセチア毛包炎リンパ管炎癜風

🧠 「どこまで皮膚バリアを破っているか」がこのノート全体を貫く軸。 はに住み着くだけで免疫応答すら起こさない「美容上の問題」にとどまるが、(Sporothrix、、)は外傷という物理的な突破口を必要とし、いったん皮下に入ると慢性・破壊的な経過をたどる。この深さの違いが、治療の重さ(シャンプー→内服→切断術)にそのまま反映される。

表在性真菌症

の原因菌は皮膚・毛・爪の最表層のにのみ定着する。主に美容上の問題であり、免疫応答を誘発しない。

Malassezia furfur

  • 二形性真菌:
    • 酵母集塊(“meatballs”)
    • 短く湾曲した(“spaghetti”)
  • 顕微鏡像は「スパゲッティと」と形容される

病原性・感染経路

  • 正常。のための多い皮膚に定着する
  • 皮膚の最表層であるに留まる
  • 温暖・湿潤な気候で「疾患形」へ転換する
  • 日光曝露が多いこともリスクを高める

臨床像:(pityriasis/tinea versicolor)

健常者では:

  • 体幹・胸部を中心に色素沈着/が出現
  • 脂質分解産物として生じる酸がを傷害しを起こす
  • 色調は経過とともに変化する:当初は周囲の皮膚より濃く見える(色素沈着)が、日焼けした皮膚では逆に周囲より白く見える(、「日焼けしても跡だけ白く残る」)

新生児では:

  • (TPN=total parenteral nutrition)を受けている新生児で、脂質輸液用カテーテル内に本菌が増殖し(敗血症)とを起こしうる

診断

  • 顕微鏡:皮膚検体の(水酸化カリウム)標本で「」像
  • :黄金色の蛍光
  • 特殊培地:オイルを添加した培地で発育を促進

治療

⚠️ の起因菌はMalassezia furfurに限らない。 属Malasseziaは分子分類の見直しで数種から10種以上へ拡大しており、から実際に分離される菌種には大きな地域差がある。イランの報告ではM. globosaが最多(の53.3%)1だったのに対し、インド・カルナタカ州の報告ではM. sympodialisが最多(50%)でM. globosaは14.3%にとどまった2。地域や研究によって優勢な菌種が異なるため、「M. furfur」はな代表病原体名として扱い、他菌種の関与を排除しない。

皮下真菌症

Sporothrix schenckii(スポロトリコーシス)

  • 二形性真菌:
    • 環境中(カビ形):菌糸に分生子の房飾り(rosette)とを持つ
    • 組織内():

病原性・感染経路

  • 土壌(庭)、バラのとげ、樹皮など植物に存在
  • により感染(「rose gardener’s disease=」)

臨床像

  • 局所外傷部に膿疱・結節が生じ、その後リンパ管に沿って上行性に広がり皮膚に紅色隆起を形成 → 未治療では・排膿する
  • :ホームレス・者に多い(急性/慢性)
  • :免疫不全患者に見られる

診断

  • 皮膚生検の培養:、、を確認

治療

  • (リンパ管型・固定型皮膚病変の第一選択。全病変消失後2〜4週間の継続を含め合計3〜6か月投与する)3
  • リンパ管型にはを、資源下の代替治療として用いる3

⚠️ 近年はネコを介したSporothrix brasiliensis感染症がブラジルで拡大している。 本ノートが扱う土壌・バラのとげを介した古典的の起因種S. schenckiiとは別に、Sporothrix属の中でS. brasiliensisという近縁種がネコの・引っかき傷を介してヒトへ伝播する人獣共通感染症として上のになっており、感染ネコが高い菌量を保有し人・他のネコへ伝播しうる4。

真菌腫

形態

  • で構成され、黒色または淡白色を呈する

臨床像

  • 降雨量の少ない熱帯地域に多い
  • 足・手が最も好発
  • 限局性・慢性・肉芽腫性の感染過程で皮膚・皮下組織に始まり、筋肉・筋膜・骨まで破壊しうる
  • 皮膚表面に瘻孔が形成される

診断

  • 顆粒(grains/granules)の証明が診断の鍵

治療

  • 抗真菌薬治療は通常無効で、切断術が唯一のとなる

クロモブラストミコーシス

皮膚・皮下組織を侵す慢性で、緩徐に増大する結節・局面を特徴とする。

形態

  • カビの一群。組織内ではメラニンを細胞壁に含むため褐色の多形細胞を形成する

臨床像

  • 主に下肢・上肢を侵す
  • は同一領域にするカリフラワー様増殖を呈する
  • 二次性の細菌感染を合併すると、・・に至ることがある

診断

  • 培養:の細胞が診断を確定する
  • 顕微鏡:10% およびH&E染色で

治療

⚠️ は「治療」より「予防」の意味が大きい。 もも進行例では抗真菌薬の効果が乏しく、に至っては切断術が唯一の根治手段になる——外傷部位の清潔管理と早期受診が事実上のになる。

まとめ

  • の代表はMalassezia furfurによるで、に限局し免疫応答を起こさない「美容上の問題」。診断は標本の「」像との黄金色蛍光、治療は・。
  • は共通してを感染経路とし、緩徐・慢性・破壊的な経過をたどり、ヒト-ヒト間の伝播はない。
  • Sporothrix schenckii()はリンパ管に沿って上行するが特徴で、治療はまたは。
  • (マドゥラ足)は顆粒の証明で診断し、進行例では切断術以外に根治手段がない。
  • は褐色の多形細胞(メラニン含有)が特徴で、++の併用療法を行う。

出典

  1. 1.Study of the distribution of Malassezia species in patients with pityriasis versicolor and healthy individuals in Tehran, Iran(BMC Dermatology・2004)テヘランの癜風(pityriasis versicolor)病巣から最も高頻度に分離された菌種はMalassezia globosa(53.3%)で、M. furfurは25.3%にとどまったこと、健常皮膚でもM. globosaが最多(41.7%)であったこと、Malassezia属の分類は近年見直され7菌種に整理されたことを確認した。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Study of the Distribution of Malassezia Species in Patients with Pityriasis Versicolor in Kolar Region, Karnataka(Indian Journal of Dermatology・2015)インド・カルナタカ州カロール地域の癜風患者100例(培養陽性70例)でMalassezia sympodialisが最多(50%)、次いでM. furfur(32.9%)、M. globosa(14.3%)であったこと、Malassezia属は分類学的に14菌種へ整理されたがそのうち7菌種のみが癜風との関連で十分に研究されていることを確認した。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Clinical Practice Guidelines for the Management of Sporotrichosis: 2007 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America・2007)リンパ管型・固定型皮膚スポロトリコーシスの第一選択がイトラコナゾール(全病変消失後2〜4週間の継続を含め合計でおおむね3〜6か月)であること、ヨウ化カリウム飽和溶液が資源制約下の代替治療として位置づけられることを確認した。閲覧 2026-08-26
  4. 4.The spread of cat-transmitted sporotrichosis due to Sporothrix brasiliensis in Brazil towards the Northeast region(PLOS Neglected Tropical Diseases・2021)ネコを介したSporothrix brasiliensisの人獣共通感染がブラジルで公衆衛生上の脅威として拡大し、ネコが高い菌量を保有し人・他のネコへ伝播しうることを確認した。閲覧 2026-08-26