内科学

内科学 · S-58

局所・全身性真菌感染症

Local and Systemic Fungal Infections

前提:病態
真菌症の分類・病態機序・危険因子カンジダ属
疾患
ヒストプラズマ症ムーコル症癜風
症状
脈絡網膜炎

🧠 全体像:は皮膚・粘膜に限局する表在性疾患と、肺・血流・中枢神経などを侵す疾患に分けて考える。免疫状態、地域曝露、侵入部位で原因菌を絞り、疾患では培養・抗原・画像・病理を組み合わせて早期治療する。

表在性・局所感染

疾患 原因・所見 診断 治療の軸
白癬 、Microsporum、;環状鱗屑、足・爪・頭部病変 、必要時培養 薬/;頭部・爪は全身薬
皮膚・粘膜カンジダ症 カンジダ;口腔、、 臨床+ 薬/、病型により
Malassezia;体幹の・微細鱗屑 薬または

主要な深在性真菌症

病原体 宿主・曝露 代表病態 治療の要点
Histoplasma 洞窟、鳥・コウモリ糞、 肺炎、播種性病変 軽症は、重症は後
Coccidioides 米国南など乾燥土壌 肺炎、皮膚・骨・ 重症・播種ではまたは
、移植、ステロイド 髄膜炎、肺病変 +導入後;頭蓋内圧管理
Aspergillus 好中球減少、移植、長期ステロイド 性肺病変、、脳播種 または1、・外科を検討
カンジダ 中心静脈カテーテル、腹部手術、、 、眼・心・肝脾播種 初期2、感受性と安定化後

💡 の第一選択は一択ではない。 侵襲性糸状菌症527例の第3相試験(SECURE)で、は42日19%対20%でにだった。薬剤関連有害事象は42%対60%、肝胆道系9%対16%、15%対27%と側が少なく、・肝毒性・強い薬物相互作用・が問題になる症例では有力な代替になる1。

⚠️ のは「単回高用量」に置き換わった。 アフリカ5か国の陽性成人844例を対象としたAMBITION試験で、 10 mg/kgを1日目に単回+14日間+1200 mg/日は、従来の7日間レジメンに対し10週死亡率でだった(24.8%対28.7%)3。はこれを受けて単回高用量製剤を第一選択に据え、が手に入らない場合の代替として+7日間→7日間を残している。は800 mg/日を8週間4。

診断アプローチ

flowchart TD
    A["発熱+肺・血流・中枢神経病変"] --> B["免疫状態と地域・医療曝露"]
    B --> C["培養・抗原・β-D-glucan・画像"]
    C --> D{"侵襲性病変を疑う"}
    D -->|"はい"| E["組織/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchoalveolar lavage'>BAL</span>/髄液で病理・培養"]
    E --> F["病原体と臓器に合わせ早期治療"]
    D -->|"いいえ"| G["定着・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-infectious'>非感染性</span>病変を再評価"]

Aspergillusのやカンジダのβ-D-glucanは宿主背景と検体で性能が異なり、単独陽性で確定しない。では髄液抗原に加え(opening pressure)を測定し、反復で髄液圧を20 cmH2O未満またはの半分以下まで下げる4。では適切なカテーテル管理、検索、血液培養陰性化を確認し、血液培養陰性化と症状改善から最低2週間治療を続ける5。

💡 の眼科診察は、いま推奨が割れている論点である。 は診断後1週間以内の下眼底診察を全例に推奨する(好中球減少例は回復後)5。一方で米国眼科学会は無症候例へのルーチンスクリーニングに反対しており、308例の検討でも、眼底診察を受けた148例中9例(6%)が推定Candidaにとどまり確定的なは1例もなく、無症候例で1例見つけるための検査必要数は20だった6。「やる/やらない」を暗記するのではなく、推奨が食い違っていること自体を覚える。

💡 Candida aurisは「治療」より「伝播」の問題である。 多剤耐性を示し医療環境で持続・するため、現行の国際ガイドラインはと並んで感染対策上の重点課題に挙げている2。の第一選択はのままだが、週1回投与のや経口が選択肢に加わった。なお2024年の系統分類学的再検討でCandidozyma aurisへの改名が提案されており、呼称はまだ定着していない7。

緊急病態

急速に壊死する・をや強い免疫不全で認めたらを疑い、、緊急、基礎因子是正を同時に行う。

まとめ

  • 表在性とを分け、宿主・曝露・臓器から原因菌を推定する。
  • は抗原検査だけでなく培養、画像、病理を統合する。
  • の頭蓋内圧、のカテーテル、のなどコントロールが生命予後を左右する。

出典

  1. 1.Isavuconazole versus voriconazole for primary treatment of invasive mould disease caused by Aspergillus and other filamentous fungi (SECURE): a phase 3, randomised-controlled, non-inferiority trial(The Lancet・2016)侵襲性糸状菌症527例の第3相二重盲検試験で、イサブコナゾールは42日全死因死亡(19%対20%、補正差−1.0%、95%信頼区間−7.8〜5.7)でボリコナゾールに非劣性であり、薬剤関連有害事象は42%対60%(P<0.001)、肝胆道系9%対16%、眼障害15%対27%とイサブコナゾールで少なかったことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Global guideline for the diagnosis and management of candidiasis: an initiative of the ECMM in cooperation with ISHAM and ASM(European Confederation of Medical Mycology (ECMM) / ISHAM / ASM・2025)エキノキャンディン系が引き続き侵襲性カンジダ症の第一選択であること、週1回投与のレザフンギンと経口薬イブレキサフンガープが新しい治療選択肢に加わったこと、Candida aurisの薬剤耐性と院内伝播が重点課題であることを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Single-Dose Liposomal Amphotericin B Treatment for Cryptococcal Meningitis(The New England Journal of Medicine・2022)アフリカ5か国のHIV陽性成人844例を対象としたAMBITION試験で、リポソーマルアムホテリシンB単回10 mg/kg+フルシトシン14日間+フルコナゾール1200 mg/日は、当時のWHO推奨(アムホテリシンBデオキシコール酸塩+フルシトシン7日間→フルコナゾール1200 mg/日7日間)に対し10週死亡率で非劣性だった(24.8%対28.7%、差−3.9ポイント、非劣性マージン10ポイント)。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Recommendations on induction, consolidation and maintenance antifungal treatment regimens — Guidelines for Diagnosing, Preventing and Managing Cryptococcal Disease Among Adults, Adolescents and Children Living with HIV(World Health Organization・2022)導入療法はリポソーマルアムホテリシンB単回高用量10 mg/kg+フルシトシン14日間(100 mg/kg/日を4分割)+フルコナゾール1200 mg/日を第一選択とし、リポソーム製剤が入手できない場合はアムホテリシンBデオキシコール酸塩+フルシトシン7日間に続けてフルコナゾール7日間とすること、地固め療法はフルコナゾール800 mg/日を8週間、反復腰椎穿刺では髄液圧を20 cmH2O未満または初圧の半分以下まで下げることを推奨する。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2016)非好中球減少症患者のカンジダ血症で中心静脈カテーテルを感染源と推定する場合は安全な範囲で早期に抜去すること、診断後1週間以内に散瞳下眼科診察を行うこと(好中球減少症患者は回復後に実施)、血液培養陰性化・症状改善後最低2週間治療を継続することを推奨している。閲覧 2026-08-25
  6. 6.Do Patients With Candidemia Need an Ophthalmologic Examination?(Open Forum Infectious Diseases・2024)米国感染症学会(IDSA)は全カンジダ血症例に散瞳下眼底診察を推奨する一方、米国眼科学会(AAO)は無症候例へのルーチンスクリーニングに反対しており推奨が食い違うこと、カンジダ血症308例の検討では眼底診察を受けた148例中9例(6%)が推定Candida脈絡網膜炎と判定され(うち4例44%は無症候)、確定的なCandida眼内炎は1例も認めず、無症候例で推定脈絡網膜炎を1例見つけるための検査必要数は20だったこと、陽性所見は初回血液培養陽性から7日を超えて診察した場合に多かったことを確認した。閲覧 2026-08-25
  7. 7.Beyond candidiasis: should infections caused by Candidozyma auris be renamed?(Journal of Clinical Microbiology (ASM)・2025)2024年の系統分類学的再検討でCandida aurisが新属Candidozymaへ再分類されCandidozyma aurisという名称が提案されたこと、およびその改名を採用すべきかが専門誌上でなお議論中で呼称が定着していないことを確認した。閲覧 2026-08-25