内科学

内科学 · S-57

丹毒・蜂窩織炎

Erysipelas and Cellulitis

前提:病態
化膿レンサ球菌(A群)
前提:正常
皮膚・付属器:真皮と皮下組織
疾患
丹毒・蜂窩織炎
症状
皮膚亀裂

🧠 全体像:は表皮に近い真皮・リンパ管、蜂窩織炎は深部真皮・皮下組織の細菌感染である。病変ではを中心に治療し、膿瘍はする。を示すは検査より先に外科緊急対応する。

比較

特徴 蜂窩織炎 膿瘍
深さ 真皮・表在リンパ管 深部真皮・皮下組織 局所
境界 隆起し明瞭 不明瞭 波動を伴う限局性腫瘤
主な菌 主に、時にMSSA 黄色ブドウ球菌、を含む
治療の軸 抗抗菌薬 抗抗菌薬 切開・排膿

は、、潰瘍、外傷、浮腫・である。発熱、疼痛、紅斑、熱感、腫脹を評価し、範囲をマーキングすると進展を追いやすい。

診断と鑑別

典型的な単純例は臨床診断し、血液培養や画像をルーチンには行わない。重症、免疫不全、特殊曝露、治療不応では培養・画像を追加する。膿があれば培養する。

鑑別には、、、痛風、、がある。両下腿対称性の紅斑は感染以外を再考する。

⚠️ 蜂窩織炎の診断は3割前後が外れる。 蜂窩織炎として救急から入院管理された116例を前向きに検討すると、39例(33.6%)は医によりと判定され、その34例(87.2%)はすでに抗菌薬が始まっていた1。の代償は不要な抗菌薬曝露と入院であり、米国規模でも相当の費用・合併症負担が推計されている2。「偽物」の中身はをはじめとする炎症性皮膚疾患で、両側性・無熱・慢性経過は感染から離れる手掛かりになる。は上記の34例中28例(82.4%)で抗菌薬中止を勧め、退院した偽蜂窩織炎例に増悪は起きなかった1。

治療

flowchart TD
    A["赤く腫れた疼痛性皮膚病変"] --> B{"膿瘍・排膿あり"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incision and drainage'>切開排膿</span>+必要時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methicillin-resistant Staphylococcus aureus'>MRSA</span>薬"]
    B -->|"なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='streptococcal'>連鎖球菌</span>を標的に抗菌薬"]
    D --> E{"全身毒性・急速進行"}
    E -->|"あり"| F["入院・静注薬・緊急再評価"]
    E -->|"なし"| G["挙上・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal of entry'>侵入門戸</span>治療・経過観察"]

蜂窩織炎で薬をルーチンに追加せず、、既往・保菌、注射薬使用、膿性病変、重症全身所見などで考慮する3。病変の第一選択はKやなどレンサ球菌を狙うで、標準的な治療期間は5日間、改善が不十分なときに延長する3。再発例では、浮腫、肥満、を治療し、には選択的にを検討する。

💡 は「飲んでいる間だけ」効く。 下腿蜂窩織炎を2回以上繰り返した274例の試験(PATCH I)では、ペニシリン250 mg 1日2回を12か月続けると予防期間中の再発が22%となり、の37%を下回った(0.55、再発1件を防ぐ5)。しかし中止後の追跡期には両群とも再発率27%で差が消えた4。だからこそ、・浮腫・という門戸と背景の治療を抗菌薬よりに置く。

壊死性感染の危険徴候

疼痛が見た目に比して強い、数時間で進行、水疱、皮膚、、紫斑・壊死、ショックを認めればを疑う。緊急、、早期を行い、画像で手術を遅らせない。

まとめ

  • は境界明瞭で表在性、蜂窩織炎は境界不明瞭で深い。
  • 膿瘍の基本は、病変の基本標的はである。
  • 強い疼痛と急速進行はとして即時に外科対応する。

出典

  1. 1.Outcomes of Early Dermatology Consultation for Inpatients Diagnosed With Cellulitis(JAMA Dermatology・2018)蜂窩織炎として救急・入院管理された116例のうち39例(33.6%)が皮膚科医により偽蜂窩織炎と診断され、そのうち34例(87.2%)はすでに抗菌薬が開始されていた。皮膚科は34例中28例(82.4%)で抗菌薬中止を、39例中20例(51.3%)で退院を勧告し、偽蜂窩織炎と診断され退院した患者に増悪はみられなかったことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Costs and Consequences Associated With Misdiagnosed Lower Extremity Cellulitis(JAMA Dermatology・2017)下腿の炎症性皮膚疾患が蜂窩織炎と誤診されて抗菌薬投与や入院につながる「偽蜂窩織炎(pseudocellulitis)」が広くみられ、その医療費と合併症の負担を米国全体規模で推計した研究であることを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Skin and Soft Tissue Infections: 2014 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2014)非化膿性丹毒・蜂窩織炎の第一選択はレンサ球菌を標的とする経口薬(ペニシリンVK・セファレキシンなど)であり、MRSAカバーは穿通外傷・MRSA既往や保菌・注射薬使用・SIRSなどで考慮すること、標準的な治療期間は5日間で改善不十分なら延長することを確認した(2014年版が撤回・更新されていない現行の推奨であることを確認)。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Penicillin to prevent recurrent leg cellulitis(The New England Journal of Medicine・2013)下腿蜂窩織炎を2回以上繰り返した274例の二重盲検試験(PATCH I)で、ペニシリン250 mg 1日2回を12か月投与すると予防期間中の再発は22%(136例中30例)となり、プラセボの37%(138例中51例)を下回った(ハザード比0.55、95%信頼区間0.35〜0.86、再発1件を防ぐ治療必要数5)。ただし投与を中止すると予防効果は徐々に失われ、非投与追跡期では両群とも再発率27%で差がなかった。閲覧 2026-08-25