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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

化膿性汗腺炎

Hidradenitis suppurativa

別名
Acne inversaVerneuil病
臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-08:伝染性膿痂疹・毛包炎・せつ・よう皮膚科 3-01:皮膚の構造
鑑別疾患
クローン病尋常性痤瘡
関連疾患
集簇性ざ瘡頭部解離性蜂窩織炎毛巣洞
治療薬
ドキシサイクリンクリンダマイシンリファンピシンアダリムマブインフリキシマブ
症状
皮膚結節面皰分泌物疼痛

🧠 全体像は、長らく「の炎症」と誤解されてきたが、実際は毛包の閉塞から始まる慢性炎症性疾患である。腋窩・鼠径・乳房下などが豊富なに好発するためこの名がついたが、初発病変はの閉塞であり、そのものが一次的に障害されるわけではない。Hurleyで軽症(I)から瘻孔・瘢痕が癒合する重症(III)まで進行し、いったん瘻孔・瘢痕が完成すると薬物治療だけでは戻らない。などの登場は、外科的切除と抗菌薬に頼っていた治療の選択肢を広げ、病期の進行そのものを止められる可能性を生んだ点で治療の転換点になった。

病態

の起点は、欠陥のある・閉塞である。閉塞した毛包が破裂すると、内容物の様物質と細菌が真皮へ放出され、増殖と自然免疫の活性化を引き起こし、好中球・リンパ球の増殖と膿瘍形成へ進む1が豊富な(腋窩・鼠径・乳房下・肛門周囲・会陰)に好発するために「の疾患」と誤解されやすいが、病変の一次的な座は毛包であり、の関与は二次的である。この点で、と機序を共有する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular infundibulum'>毛包漏斗部</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperkeratosis'>過角化</span>"] --> B["毛包閉塞"]
    B --> C["毛包破裂"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>様物質・細菌の真皮内放出"]
    D --> E["自然免疫の活性化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic inflammation'>好中球性炎症</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep-seated'>深在性</span>結節・膿瘍形成"]
    F --> G["反復・慢性化"]
    G --> H["瘻孔(連通する洞)・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serpentine'>索状</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous scar (fibrotic scar)'>線維性瘢痕</span>"]

⭐ 危険因子は肥満(摩擦の増加、発汗の増加・停滞、ホルモン変化)と喫煙(が毛包の・閉塞を助長し、重症度・進行を悪化させる)である1は1%未満〜4%とされ、女性が男性のおよそ3倍多く、思春期から40歳、特に21〜29歳での発症が最多である1

臨床像

  • 好発部位は腋窩が最多で、次いで鼠径・・肛門周囲・会陰・乳房下などの1
  • 直径0.5〜2cmのや膿瘍を形成し、圧痛と排膿を伴う。
  • 進行すると病変どうしが皮下でつながる瘻孔(洞)を形成し、を残す1
  • 2つの開口部を持つ「双孔性」はに特徴的なの所見である。

Hurley病期分類

病期 所見
I 瘻孔・瘢痕を伴わない単発または多発の膿瘍
II 瘻孔・瘢痕を伴う再発性膿瘍。単発または離れて多発
III 多数の交通する瘻孔があり、病変がほぼ全域を占める

Hurley病期はの目安になる1。⭐ 病期は不可逆的ながどこまで進んだかを表すため、軽症のうちに炎症を抑えることが瘻孔・瘢痕の完成を防ぐ唯一の手段である。

診断

臨床像(の再発性結節・膿瘍、、双孔性)と経過(改訂Dessau基準では6か月間に2回以上の再発が診断要素の一つ)で診断できることが多く、特異的な検査はない2。膿瘍を繰り返す患者では、局所の異物・などの他の局所原因や、他の毛包閉塞四徴の構成疾患の合併を確認する。

治療

Hurley病期に応じて治療を段階づける。

病期 治療の中心
I〜軽症II 局所・全身抗菌薬(ドキシサイクリンクリンダマイシンリファンピシン併用など)、局所ステロイド注射
中等症〜重症(II〜III) などの生物学的製剤を軸に、抗菌薬・外科的処置を組み合わせる
III・瘻孔完成例 広範切除術などの外科的介入

は、で最も研究の蓄積された生物学的製剤であり、中等症〜重症の第一選択に位置づけられる1。第3相試験であるPIONEER I・IIでは、12週時点での臨床反応(膿瘍・炎症性結節数が50%以上減少し、膿瘍・排膿瘻孔数の増加を伴わない)を達成した割合が、週1回投与群でPIONEER I 41.8%対26.0%、PIONEER II 58.9%対27.6%と、いずれも有意にを上回った3。抗菌薬と外科的切除に限られていた肢に、炎症そのものを制御し病期の進行を止めうる薬剤が加わったことは、この疾患の治療の転換点である。は難治例でに次いで検討される。

⚠️ 瘻孔・瘢痕が完成した部位は薬物治療のみでは改善しない。結節を繰り返す患者を経過観察だけで終わらせず、瘻孔完成前に全身治療へ進む判断を早める。

鑑別・合併

鑑別 区別の要点
の閉塞という点は共通するが、部位(顔・体幹)との性状、瘻孔・瘢痕を通常欠く点で区別する
肛門周囲・会陰に病変がある例で鑑別が問題になる。腸管症状の有無、瘻孔の分布パターン、生検所見(では腫)で区別する

とともに、毛包閉塞という共通の病態を持つ「毛包閉塞四徴」を構成する4。いずれかを持つ患者では他の3疾患の合併を確認する。

まとめ

  • は、の一次疾患ではなく毛包の閉塞から始まる慢性炎症性疾患である。
  • 腋窩・鼠径・乳房下などのに好発し、Hurley(I〜III)での進行度を評価する。
  • 双孔性・瘻孔・が特徴的な所見で、肥満・喫煙が危険因子である。
  • 軽症は抗菌薬、中等症〜重症はなどのを軸に治療し、瘻孔完成前のが予後を左右する。
  • とともに毛包閉塞四徴を構成し、合併の有無を確認する。

出典

  1. 1.Hidradenitis Suppurativa(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)病態生理節で、欠陥のある毛包の閉塞・破裂によりケラチンと細菌が真皮へ放出され、角化細胞増殖と免疫反応を経て好中球・リンパ球の増殖と膿瘍形成に至るという機序を説明。疫学節で有病率1%未満〜4%、女性が男性のおよそ3倍多いこと、好発年齢は思春期〜40歳(21〜29歳が最多)であること。危険因子節で肥満(摩擦・発汗増加)と喫煙(ニコチンが毛包閉塞を助長し重症度・進行を悪化させる)を挙げていること。身体所見節でHurley病期分類(I:瘻孔・瘢痕を伴わない膿瘍、II:瘻孔・瘢痕を伴う再発性膿瘍で単発または離れて多発、III:多数の交通する瘻孔を伴い病変がほぼ全域を占める)、直径0.5〜2cmの深在性結節、進行例の索状線維性瘢痕と「墓石状」面皰、腋窩を最多部位として鼠径・大腿内側・肛門周囲・会陰・乳房下に好発することを記載。治療節でアダリムマブが最も研究の蓄積された生物学的製剤の第一選択であること閲覧 2026-08-12
  2. 2.Two Phase 3 Trials of Adalimumab for Hidradenitis Suppurativa(New England Journal of Medicine・2016)PIONEER I(307例)・PIONEER II(326例)の2つの第3相プラセボ対照試験で、主要評価項目(12週時点で膿瘍・炎症性結節数がベースラインから50%以上減少し、膿瘍・排膿瘻孔数の増加を伴わないこと)を達成した割合が、アダリムマブ週1回投与群でPIONEER I 41.8%対プラセボ26.0%(P=0.003)、PIONEER II 58.9%対プラセボ27.6%(P<0.001)と有意に高かったこと閲覧 2026-08-12
  3. 3.Dissecting Cellulitis of the Scalp(Kansas Journal of Medicine・2024)考察節で、頭部解離性蜂窩織炎は集簇性ざ瘡・化膿性汗腺炎・毛巣洞とともに毛包閉塞症候群(follicular occlusion syndrome)の一員であり、共通の機序は毛包閉塞によるケラチン様物質の貯留と続く毛包破裂であると述べていること閲覧 2026-08-12
  4. 4.Hidradenitis suppurativa(DermNet NZ・2025)「How is hidradenitis suppurativa diagnosed?」節で、臨床診断(改訂Dessau基準)は3要素すべてを満たすことを要し、その1つが「病変の再発・慢性化(6か月間に2エピソード以上)」であると述べていること閲覧 2026-08-12