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Microbe Atlas · 真菌

Trichophyton schoenleinii

黄癬菌

分類
皮膚糸状菌 / DermatophytesTrichophyton
科目
Medical Microbiology
トピック
4/5: Mycoses of the skin and its adnexes: dermatophytoses
原因となる疾患
黄癬皮膚糸状菌症(白癬)

🧠 全体像:Trichophyton schoenleiniiはという、の中で最もかつ破壊的な病型を単独で起こす種である。毛包内に空洞を残す特徴的な菌糸配列が、他のとは違い不可逆なというを残す理由を説明する。

微生物学的な特徴

  • (Trichophyton)に属し、皮膚・毛髪・爪すべてを侵しうるが、臨床的にはほぼ頭部に限局する(3属の守備範囲のはTrichophyton rubrumのノートを参照)
  • :endothrix型()感染だが、他のTrichophyton属種と異なり「favic hyphae()」と呼ばれる特有の配列を作る——菌糸の間に状の空隙を残しながら内を進み、“シャンデリア状”や““と形容される
  • 培養は遅発育性で、白色〜色の蝋様・平滑〜不整な表面を持つコロニーを作る。に乏しく、主に菌糸のみからなるのも同定上の特徴
  • はこの病原体を19世紀に初めて記載したドイツのJohann Lucas Schönleinに由来する——皮膚感染症の原因が真菌であることを示した最初期の実証例の一つとして、医学史上の意義も持つ

病原性の仕組み

他のTrichophyton属種によるが数週〜数か月で自然治癒しうるのに対し、T. schoenleiniiは毛包を深く長期間侵し続け、年単位で炎症と修復を繰り返す。この慢性の経過が毛包破壊とに直結する。

  • に菌糸・角質残屑・炎症細胞が蓄積し、黄色いカップ状のを毛の根元に形成する
  • 痂皮はしばしば特有のカビ臭・ネズミ臭を伴う
  • 慢性の炎症が毛包を破壊し尽くすため、治癒後も永続的なが残る——他の(を除く)が原則としてであるのと対照的

感染経路と疫学

  • ヒト-ヒト間の直接接触、または・帽子などの共有物を介した間接接触で伝播する
  • かつては世界的にの主要原因菌であったが、衛生環境の改善に伴い先進国ではきわめてまれになった一方、アフリカ・中東・南米・東欧の一部地域では今も的にみられる
  • 治療されないまま小児期から成人期まで数年〜数十年単位の慢性経過をたどることがある

起こす疾患

病型 特徴
黄色カップ状の、特有の悪臭、慢性の炎症を経て永続的なに至る

詳細な鑑別は(白癬)を参照。

診断

  • で内の(状の空隙を伴う菌糸配列)を確認する
  • (365 nm)で明るい緑黄色に光るのはMicrosporum canis・M. ferrugineumによるとM. gypseumによる一部であり、蛍光はMicrosporum属全体の性質ではない1。T. schoenleiniiは蛍光を示しうる数少ないTrichophyton属種として知られる2が、蛍光は淡く報告も一定しないため、感度・特異度ともに診断の主軸にはならない。⚠️ 外用薬・脂漏物・石鹸なども蛍光を発しうる(偽陽性)2
  • 培養は遅発育性で確定診断に時間を要するため、臨床像(痂皮・悪臭・)が診断の初動を担う。ただしではの感度が高くなく偽陰性になりやすいため、の実施が強く推奨される1

治療と予防

まとめ

  • T. schoenleiniiはの種で、という慢性・破壊的な病型を単独で起こす。日本では頭部のを「・頭部浅在性白癬・」の3病型に分ける伝統があり、は本菌による病型を指す1。
  • 特有の(状の空隙を伴う菌糸配列)が、黄色カップ状のと悪臭の原因になる。
  • 慢性の毛包破壊により永続的なを残す点が、他の(を除く)と決定的に異なる。
  • 先進国ではまれだが一部地域で今も持続。早期の全身治療開始が脱毛の進行を防ぐ鍵。

出典

  1. 1.皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会・2025)全文PDF(日皮会誌135巻13号2511-2566頁)で、本邦では頭部の皮膚糸状菌症を①ケルスス禿瘡②頭部浅在性白癬③黄癬(*T. schoenleinii* 感染症)の3病型に分類し、*T. schoenleinii* は「今日国際的にはまれ」とされること、365 nm(Wood灯)検査で侵された毛包の開口部が点々と緑黄色に輝くのは頭部白癬のうち *M. canis*・*M. ferrugineum* によるものと *M. gypseum* によるものの**一部**であり、蛍光は *Microsporum* 属全体の性質ではないこと、頭部白癬では直接鏡検の感度が高くないため真菌培養が強く推奨され、Wood灯で蛍光を発する部位などから病毛・落屑を採取するとよいこと、頭部白癬の治療は原則として経口テルビナフィンまたはイトラコナゾールで(CQ10、推奨度A)外用単独は本邦では推奨されないことを確認した閲覧 2026-09-27
  2. 2.Diagnosis and treatment of dermatophytosis in dogs and cats: Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology(Veterinary Dermatology(World Association for Veterinary Dermatology; Moriello KA, et al.)・2017)Consensus の全文抜粋で確認した。"With the exception of T. schoenleinii, dermatophytes that produce fluorescence are members of the Microsporum genus" と述べ、蛍光を示す皮膚糸状菌は *T. schoenleinii* を例外として *Microsporum* 属に限られるとしている。*M. canis* の緑色蛍光は毛の皮質・髄質に生じる水溶性代謝産物(プテリジン)によるもので胞子や感染性物質そのものによるのではないこと、リント・外用薬・脂漏物・石鹸残渣なども蛍光を発しうるため偽陽性が古くから問題とされてきたことも述べている。閲覧 2026-09-27