内科学

内科学 · L-21

糖尿病の食事療法と非インスリン薬

Treatment of diabetes mellitus with diet and noninsulin medications

前提:病態
経口血糖降下薬
前提:正常
インスリンシグナル伝達
疾患
2型糖尿病
症状
腹部膨満

🧠 全体像:糖尿病治療は血糖だけでなく、体重、、心不全、、低血糖、費用・負担を同時に改善するよう個別化する。1型糖尿病にはインスリンが必須で、2型糖尿病では生活支援と薬物療法を診断時から開始し、に応じ阻害薬や関連薬を・使用の有無だけに左右されず選ぶ。

治療目標

多くの非妊娠成人では <7% を出発点とするが、合併症のない若年者では安全に厳格化し、重い低血糖、、認知症、併存症、限られた予後では緩和する。CGMのtime in range、低血糖、体重、血圧、脂質、腎機能、生活の質も追跡する。

⚠️ レベル2以上の低血糖が1回でもあれば、目標ではなく処方を見直す。 低血糖はレベル1(血糖 54–69 mg/dL)、レベル2(<54 mg/dL)、レベル3(血糖値によらず他者の介助を要する重症イベント)に分けられ、レベル2またはレベル3が1回でも起これば治療計画の見直し(減量・薬剤変更)を促す1。レベル3低血糖はACCORD・ADVANCE試験でも実臨床でも死亡と関連した1。「が目標に届いていない」より前に、その目標が低血糖で買われていないかを見る。

食事・生活支援

  • ・支援を診断時、治療変更時、目標未達時、生活転機に提供する。
  • 、DASH、低炭水化物など複数の有効なから、文化・費用・嗜好に合うものを選ぶ。
  • 炭水化物、砂糖入り飲料、を減らし、野菜、豆、、、不飽和脂肪を増やす。
  • 炭水化物量だけでなく、総エネルギー、蛋白、脂質、食事時間、薬剤との整合をみる。
  • 週150分程度、筋力運動、、禁煙、睡眠、体重管理を組み合わせる。

2型糖尿病の薬剤選択

flowchart TD
    A["2型糖尿病を診断"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atherosclerotic cardiovascular disease'>ASCVD</span>・心不全・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic kidney disease'>CKD</span>・肥満・低血糖リスクを評価"]
    B --> C["心腎保護や体重効果を優先した薬剤"]
    B --> D["追加条件がなければ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metformin'>メトホルミン</span>等を個別選択"]
    C --> E["3〜6か月以内に再評価"]
    D --> E
    E --> F{"目標未達?"}
    F -->|"はい"| G["作用機序の異なる薬を併用/注射薬へ"]
    F -->|"いいえ"| H["効果・安全性・負担を継続評価"]
薬剤群 主な利点 主な注意
有効、安価、低血糖が少ない、 消化器症状、長期でB12低下。に応じ減量・中止し、急性低酸素・循環不全時はを検討
阻害薬 心不全・進展抑制、一部利益、体重・血圧低下 性器感染、脱水、。絶食・急性疾患・手術前は
受容体作動薬/GIP・作動薬 強力な血糖・体重低下、一部・腎利益 悪心、。では避け、急速改善時はを監視
() 2型糖尿病合併で腎複合を抑制。血糖降下作用は目的でない 。が正常で >25 の残存例に、RAS阻害薬・阻害薬の上へ積む
阻害薬 低血糖が少なく 効果は中等度。関連薬と併用しない。一部薬は心不全に注意
/グリニド 安価、 低血糖、体重増加。腎機能・食事不規則でリスク増加
インスリン抵抗性改善、低血糖が少ない 浮腫、体重増加、心不全、骨折
を抑え、低血糖が少ない 腹部膨満・。単独低血糖はブドウ糖で治療

では実証された受容体作動薬または阻害薬、心不全では阻害薬、では・に応じ阻害薬を優先する。体重減少が主要目標ならやなど高効果薬を検討する。

⚠️ 第一選択はもはや「全員」ではない。 ADAの現行基準は、・心不全・がある、またはそのリスクが高い成人では、の値にもを使っているかどうかにも関わらず、心血管・腎保護が実証された受容体作動薬または阻害薬を優先すると定めている2。「まず、効かなければ次を足す」という順番そのものが、この患者群では成り立たない。 は安価で有効な薬として残るが、臓器保護を目的とする薬とは選択の理由が別である。

💡 腎保護の根拠はのある集団から来ている。 DAPA-試験( 25〜75、尿中アルブミン/クレアチニン比200〜5000 mg/g)ではが腎複合を0.61(95%CI 0.51〜0.72)で減らし3、FLOW試験(2型糖尿病+ 3,533例)では1.0 mg週1回が主要腎イベントを0.76(95%CI 0.66〜0.88)で減らした4。どちらも組入れ時点で全例がを有するので、のない患者へそのまま外挿はできない。

💡 の「3本目の柱」がである。 2024は2型糖尿病合併について、RAS阻害薬と阻害薬( ≥20 で開始)を土台とし、が正常でのRAS阻害薬でも(30 mg/g超)が残る例に( >25。推奨3.8.1、2A=提案)を加え、と阻害薬でも個別の血糖目標に届かない(またはそれらを使えない)例に長時間作用型受容体作動薬を用いる(推奨3.9.1、1B。条件はではなく血糖目標の未達)という戦略を示す5。はFIDELIO-DKD試験で腎複合(持続的低下・・腎死)を有意に減らし6、はこれを推奨度2Aで第3の柱に置いている5。血糖降下が目的の薬ではない点に注意する。

💡 はGIPとのに作用するである。 SURPASS-2試験(1,879例、40週)では、5・10・15 mg週1回がをそれぞれ2.01・2.24・2.30ポイント下げ、1 mg週1回(1.86ポイント)に対しどの用量でもかつ優越だった(差 −0.15/−0.39/−0.45ポイント)。体重減少もより大きく(差 −1.9/−3.6/−5.5 kg、いずれもP<0.001)、有害事象は主に軽〜中等度の消化器症状だった(悪心17〜22%対18%)7。血糖と体重の下げ幅では上回るが、SURPASS-2はではない。

併用・注射治療へ進むとき

が目標より1.5%以上高い、単剤で届きにくい、治療遅延を避けたい場合は早期併用を考える。重症高血糖・症状、 >10%、血糖 ≥16.7 mmol/L、/、1型疑いではインスリンを優先する。重症高血糖がなければ、注射治療の初回・追加として関連薬をインスリンより先に選ぶことが多い。

薬剤追加時はやインスリン量を再評価し、低血糖と過剰治療を避ける1。3〜6か月ごと、または早期に効果・副作用・服薬可能性を再評価する。

特殊状況

  • 1型糖尿病:インスリンを中断しない。阻害薬はリスクから一般的な標準治療ではない。
  • 妊娠:インスリンが標準で、は・と地域指針を踏まえ専門管理する。「全が常に禁忌」と単純化しない。
  • 急性疾患・絶食:、ケトン測定、脱水予防、薬剤休止、インスリン調整を事前に教育する。

まとめ

  • 糖尿病はだけでなく、心腎保護、体重、低血糖、負担を含め個別化する。
  • ・心不全・では、や使用の有無によらず阻害薬/関連薬を心腎利益から優先する。糖尿病合併ではRAS阻害薬・阻害薬の上にを積む。
  • 重症高血糖がなければ関連薬をインスリンより先に検討し、定期的にを見直す。

関連ノート

出典

  1. 1.6. Glycemic Goals, Hypoglycemia, and Hyperglycemic Crises: Standards of Care in Diabetes—2026(American Diabetes Association・2026)低血糖の3段階分類(レベル1=54 mg/dL以上70 mg/dL未満、レベル2=54 mg/dL未満、レベル3=血糖値によらず他者の介助を要する重症イベント)と、レベル2またはレベル3の低血糖が1回でもあれば治療計画の見直し(減量・薬剤変更)を促すこと、レベル3低血糖がACCORD・ADVANCE試験および実臨床で死亡と関連したことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.9. Pharmacologic Approaches to Glycemic Treatment: Standards of Care in Diabetes—2026(American Diabetes Association・2026)動脈硬化性心血管疾患・心不全・慢性腎臓病がある、またはそのリスクが高い成人では、HbA1cの値やメトホルミン使用の有無に関わらず、心血管・腎保護作用が示されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を優先することを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease(New England Journal of Medicine・2020)DAPA-CKD試験。eGFR 25〜75 mL/min/1.73m²かつ尿中アルブミン/クレアチニン比200〜5000 mg/gの慢性腎臓病患者で、ダパグリフロジンが主要複合腎アウトカム(持続的eGFR 50%以上低下・末期腎不全・腎死または心血管死)をハザード比0.61(95%CI 0.51〜0.72)で減らしたことを確認した。全例がアルブミン尿を有するため、アルブミン尿のない患者への外挿はこの試験からは導けない。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine・2024)FLOW試験。2型糖尿病かつ慢性腎臓病の3,533例で、セマグルチド1.0 mg週1回皮下投与が主要腎イベント(腎不全・eGFR 50%以上低下・腎/心血管死の複合)をハザード比0.76(95%CI 0.66〜0.88)で減らしたことを確認した。組入れ時点で全例がアルブミン尿を有し全例が2型糖尿病であるため、アルブミン尿の有無によらないという一般化はこの試験からは導けない。閲覧 2026-08-25
  5. 5.KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease(KDIGO・2024)2型糖尿病合併CKDではRAS阻害薬とSGLT2阻害薬(eGFR 20以上で開始)を土台とし、血清Kが正常で最大耐用量のRAS阻害薬でもアルブミン尿(30 mg/g超)が残る例に非ステロイド型MRA(eGFR 25超。推奨3.8.1、2A=提案)を加え、メトホルミンとSGLT2阻害薬でも個別の血糖目標に届かない(またはそれらを使えない)例に長時間作用型GLP-1受容体作動薬を用いる(推奨3.9.1、1B。条件はアルブミン尿ではなく血糖目標の未達)という治療戦略を示すこと、フィネレノンをRAS阻害薬・SGLT2阻害薬に続く第3の柱として推奨度2Aで位置づけていることを確認した。閲覧 2026-09-24
  6. 6.Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine・2020)FIDELIO-DKD試験。2型糖尿病合併CKDで非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンが腎複合アウトカム(持続的eGFR低下・末期腎不全・腎死)を有意に減らしたことを確認した。閲覧 2026-08-25
  7. 7.Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine・2021)SURPASS-2試験。2型糖尿病1,879例を40週追跡し、GIP/GLP-1デュアル作動薬チルゼパチド5・10・15 mg週1回はHbA1cをそれぞれ2.01・2.24・2.30ポイント下げ、セマグルチド1 mg週1回(1.86ポイント)に対しいずれの用量でも非劣性かつ優越であった(差 −0.15/−0.39/−0.45ポイント)こと、体重減少もセマグルチドより大きかった(差 −1.9/−3.6/−5.5 kg、いずれもP<0.001)こと、主な有害事象が軽〜中等度の消化器症状(悪心17〜22%対18%)であったことを確認した。閲覧 2026-08-25