内科学

内科学 · S-21

急性尿細管間質性疾患

Acute Tubulointerstitial Diseases

前提:病態
急性尿細管壊死(ATN)
前提:正常
尿細管輸送過程
疾患
横紋筋融解症急性・慢性尿細管間質性腎炎骨髄腫腎
検査値
尿中好酸球

🧠 全体像:(acute tubular injury:ATI;組織学的壊死を伴う場合はATN)は虚血、、ヘム色素などで起こる。やとは原因治療が異なるため、尿沈渣、薬剤歴、全身所見を統合する。治療の基本は原因除去と支持療法で、利尿薬は腎回復を促進しない。

腎前性AKIとATI/ATN

指標 を示唆 ATI/ATNを示唆
尿Na <20 mmol/L >40〜50 mmol/L
尿浸透圧 >500 mOsm/kg <350 mOsm/kg
/クレアチニン比 >20 約10〜15
FeNa <1% >2%
尿沈渣 、

これらは補助所見であり、、利尿薬、敗血症、造影、色素腎症では典型値を示さない。利尿薬使用中はFeUrea <35%がを支持することがあるが、単独で確定しない。

原因別の要点

虚血・薬剤・造影

ショック、敗血症、大手術、アミノグリコシド、シスプラチン、などを検索し、を中止・する。造影関連AKI高リスクでは必要性を吟味し、造影量を最小化し、選択例にで補液する。予防目的にを加えると容量枯渇を悪化させ得るため行わない。自体は造影腎毒性物質ではないが、重度AKI時はリスクから中断を要する場合がある。欧州泌尿生殖器放射線学会の指針は、 30 mL/min/1.73 m²未満では造影剤投与の時点からを中止するとしている1。

エチレングリコール中毒

、、低Ca血症、尿中を手掛かりにする。第一選択の阻害薬はで、重症アシドーシス、腎不全、高濃度、重篤な電解質異常ではを行う。治療の適応は、重症症候・AKI・・および濃度で層別化する2。エタノールはが使えない場合の代替である。

横紋筋融解症

著増、ヘム陽性だがRBCの乏しい尿、高K血症を認める。早期の、原因除去、を行う。やをルーチンには用いない。

AIN

抗菌薬、、、などの薬剤が多く、感染、、なども原因となる。AKI、、WBC cast、軽度蛋白尿を呈し、発熱・発疹・好酸球増多のは揃わないことが多い。原因薬を直ちに中止し、診断不明・回復不良例では腎生検を検討する。感染を除外し、活動性炎症が疑われる選択例では早期グルココルチコイドを考慮する。

💡 原因薬の顔ぶれは動いている。抗菌薬だけを疑わない。 生検確定133例の連続例では原因が薬剤70%・自己免疫疾患20%・感染4%で、薬剤性の内訳は抗菌薬49%、 14%、 11%。単剤のは12%、アモキシシリン8%、8%だった。による例は高齢で症状に乏しく、曝露期間も生検・ステロイド開始までの遅れも長い——つまり「疑われにくい」ことがそのまま診断の遅れになる3。

⚠️ は診断の役に立たない。 腎生検を基準にした566例(91例、16%)では、汎用される1%で感度30.8%・特異度68.2%、0.97・1.01——をどちら向きにも動かさない。5%へ上げると特異度は上がるが感度が落ち、との区別にも役立たなかった4。陰性を根拠にを否定しない。

💡 ステロイドを使うなら「早く」が効き目を左右する。 上記の連続例でステロイドを受けた薬剤性の6か月後は完全回復49%・部分回復39%・回復なし12%で、回復不良は原因薬の曝露期間(完全/部分/回復なしで15日・30日・130日、P=0.04)とステロイド開始までの遅れ(8日・11日・35日、P=0.05)に相関した3。ただしこれはではなく、ステロイドの適否そのものは依然議論がある。感染の除外が先である点は変わらない。

💡 関連AKIは、大半がである。 138例のでは、投与開始からAKIまでの中央値は14週(6〜37週)と遅く、生検した60例の93%でがだった。多くは非で約半数にを伴う。低いベースライン、併用、の併用療法が独立した危険因子で、86%がステロイド治療を受け、腎機能は完全回復40%・部分回復45%・回復なし15%。再投与した22%のうち23%が再発した5。など他の間質性腎炎起因薬を併用していることが多く、を1つに決めつけない。

骨髄腫円柱腎症

flowchart TD
    A["AKI+貧血/高Ca血症/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone lesions'>骨病変</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum free light chain'>血清遊離軽鎖</span>+血清・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine immunofixation'>尿免疫固定</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cast nephropathy'>円柱腎症</span>を疑う"]
    C --> D["等張補液・高Ca血症是正・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drug'>NSAID</span>回避"]
    C --> E["迅速なbortezomib-based抗骨髄腫治療"]
    D --> F["必要時透析"]
    E --> F

は標準治療でなく、による改善も確立していない。high-cutoff透析も一律には行わず、血液専門医・腎臓専門医と適応を判断する。

腎代替療法

薬剤で制御できない高K血症・アシドーシス・肺水腫、や脳症、除去可能毒物などが適応であり、クレアチニン値だけで決めない。

まとめ

  • 尿沈渣とで、ATI/ATN、AIN、を分ける。
  • 造影予防にを使わず、にはを第一選択とする。
  • では軽鎖産生を迅速に抑える抗骨髄腫治療が核心である。

出典

  1. 1.Post-contrast acute kidney injury. Part 2: risk stratification, role of hydration and other prophylactic measures, patients taking metformin and chronic dialysis patients(European Society of Urogenital Radiology・2018)eGFR 30 mL/min/1.73 m²未満では、造影剤投与時からメトホルミンを中止する指針を示した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Extracorporeal treatment for ethylene glycol poisoning: systematic review and recommendations from the EXTRIP workgroup(EXTRIP Workgroup・2023)エチレングリコール中毒の体外循環治療適応を、重症症候、AKI、アニオンギャップ、グリコール酸・エチレングリコール濃度などで層別化した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Biopsy-proven acute interstitial nephritis, 1993-2011: a case series(American Journal of Kidney Diseases・2014)生検確定の急性間質性腎炎133例で、原因は薬剤70%、自己免疫疾患20%、感染4%。薬剤性の内訳は抗菌薬49%、プロトンポンプ阻害薬14%、NSAID 11%で、単剤ではオメプラゾール12%、アモキシシリン8%、シプロフロキサシン8%が上位だった。プロトンポンプ阻害薬による例は高齢で症状に乏しく、曝露期間と生検・ステロイド開始までの遅れが長かった。ステロイドを受けた薬剤性の6か月後の腎機能は完全回復49%・部分回復39%・回復なし12%で、回復不良は薬剤曝露期間の長さ(15日対30日対130日、P=0.04)とステロイド開始の遅れ(8日対11日対35日、P=0.05)と相関した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Utility of urine eosinophils in the diagnosis of acute interstitial nephritis(Clinical Journal of the American Society of Nephrology・2013)腎生検を基準として尿好酸球検査566例(急性間質性腎炎91例、有病率16%)を解析すると、汎用される1%カットオフで感度30.8%・特異度68.2%、陽性尤度比0.97・陰性尤度比1.01で、検査前確率をどちら向きにも動かさない。5%カットオフでは感度がさらに下がる。尿好酸球は急性間質性腎炎以外の多様な腎疾患でも出現し、急性尿細管壊死との区別にも役立たなかった。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Clinical Features and Outcomes of Immune Checkpoint Inhibitor-Associated AKI: A Multicenter Study(Journal of the American Society of Nephrology・2020)免疫チェックポイント阻害薬関連AKI 138例と対照276例の多施設研究。低いベースラインeGFR、プロトンポンプ阻害薬使用、併用療法が独立した危険因子で、投与開始からAKIまでの中央値は14週(四分位範囲6〜37週)。多くは非ネフローゼ域蛋白尿で約半数に膿尿を認め、生検した60例の93%で主病変は尿細管間質性腎炎だった。86%がステロイドで治療され、腎機能の完全回復40%・部分回復45%・回復なし15%。ステロイド治療は腎予後の改善と関連した。再投与した22%のうち23%が再発した。閲覧 2026-08-25