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Disease Atlas · 神経 · 病態

非24時間睡眠覚醒障害

Non-24-hour sleep-wake rhythm disorder

別名
非24時間睡眠・覚醒リズム障害N24SWD
臓器系
神経精神
科目
PsychiatryMedical Physiology
トピック
精神医学 B-07:睡眠障害生理学 8.11:脳波(EEG);睡眠現象。学習と記憶。
上位概念
概日リズム睡眠・覚醒障害
治療薬
タシメルテオンメラトニン
症状
不眠日中傾眠
検査値
アクチグラフィ
適応薬
タシメルテオン

🧠 全体像:は、のなかで唯一症状が周期的に現れては消える病型である。が24時間にできず毎日少しずつ後ろへ流れるため、と位相が合う時期には無症状になり、位相がずれる時期に不眠と日中の眠気が同時に来る。⚠️ この「良い時期がある」という性質そのものが診断を遅らせる——患者は不調な時期にだけ受診し、不眠やとして単発で処理されてしまう。⭐ 診断は横断的なでは付かず、時間軸の記録でしか付かない。

分類上の位置づけ——版と呼称

体系 呼称
ICSD-3(2014年) 群のなかの()1
-TR(2022年) の病型指定の一つ「非24時間睡眠・覚醒型」
歴史的・慣用の別称 英語文献では free-running disorder、non-entrained disorder、hypernycthemeral syndrome とも呼ばれてきた1

⭐ 「する障害」という古い呼び名のほうが病態を正確に言い当てている。 から切り離された時計が、自分ののまま走り続ける——それがこの疾患である。

2つの病型

者
頻度 視床下部のへ光情報が届かないため多い2 比較的まれ2
機序 光によるが構造的に不可能 光は届くがが成立しない。や精神疾患と関連しうる2
治療の推奨 時刻を定めたを提案(弱い推奨)3 ⚠️ いずれの治療も根拠不足で推奨なし3

⚠️ 「の病気」と覚えて者を見落とさない。 逆に、者に向けの推奨をそのまま当てはめることもできない——AASMの指針は成人については明示的に「推奨なし」としている3。

💡 で光によるが成立しない機序と、それに対してが光の代わりを務める薬理はのノートに譲る。ここでは疾患側——誰に疑い、どう記録して確かめ、どの型として扱うか——に絞る。

晴眼者の臨床像

日本の1施設で1991〜2001年に連続して診断されたの57例の解析がある4。

項目 値
性別 男性41例(72%)、女性16例(28%)
発症年齢 63%が10代に発症
睡眠・覚醒周期 平均24.9±0.4時間(範囲24.4〜26.5時間)
睡眠時間 平均9.3±1.3時間。44%が9〜10時間
精神疾患との前後関係 16例(28%)で精神疾患が発症に先行。残る41例のうち14例(34%)が発症後にを発症

⭐ 「若年男性で、10代に始まり、1日1時間近く後ろへずれる」が型の顔である。 周期が24.9時間なら1日あたり約0.9時間ずれるので、位相が一周して元に戻るまでおよそ27日——ほぼ1か月の周期で不調と好調が入れ替わる。

⚠️ 精神疾患との関係を一方向に決めつけない。 28%では精神疾患が先行しているが、先行例を除いた41例のうち34%は本症の発症後にを発症している4。「うつ病だから眠れない」と読んで概日の評価を省くと、時計のずれが放置される。

診断——ICSD-3の4基準

ICSD-3は次の4つで定義する1。

  1. 不眠、、またはその両方の病歴があり、無症状の時期とに現れる。24時間のと、していない内因性の睡眠・覚醒傾向のとの不一致による。
  2. 症状が少なくとも3か月持続する。
  3. とを少なくとも14日間(ではより長期が望ましい)記録し、入眠・覚醒時刻が典型的には毎日遅れていき、概日周期が通常24時間より長いパターンを示す。
  4. 他の睡眠障害、内科的・疾患、精神疾患、薬物・でよりよく説明されない。

⚠️ 14日という下限は「非24時間型を疑うとき」の値である。 の一般的な記録期間より長いのは、周期が24時間からわずかしかずれていないため、短い記録では漂流が読み取れないからである。

アクチグラフィで足りないとき

⚠️ 活動的な患者では、やでも漂流が必ずしも明らかにならない1。社会生活のために無理に起床していると、記録の上では周期が24時間に見えてしまう。このときはの測定で確認する。

指標 測り方
(aMT6s) の主要代謝物。24時間尿・唾液・血液の検体を2〜4週間にわたり2〜3回反復して採取する。尿は日中4時間ごと、夜間8〜10時間ごとに集める。反復測定によって概日時計の周期が正常範囲外にあることを示す1
() 内因性リズムの位相を直接評価する生理学的指標

⭐ 1回の測定では診断にならない。 見たいのは「今どの位相にあるか」ではなく「位相が毎日どちらへどれだけ動くか」なので、反復測定でしか答えが出ない。

⚠️ スクリーニングの落とし穴。 は過去1か月を尋ねるため、症状期の間隔が1か月より長い患者は陰性になりうる1。陰性で除外しない。

flowchart TD
    A["不眠と日中の眠気が<br>無症状期と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alternating'>交互</span>に現れる"] --> B{"3か月以上続いているか"}
    B -->|"いいえ"| C["他の睡眠障害・<br>一過性の要因を評価"]
    B -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep diary'>睡眠日誌</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='actigraphy'>アクチグラフィ</span>を<br>14日以上記録する"]
    D --> E{"入眠・覚醒時刻が<br>毎日一定方向にずれ続けるか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-24-hour sleep-wake disorder'>非24時間睡眠覚醒障害</span>"]
    E -->|"はっきりしない"| G["aMT6sを2〜4週間で2〜3回<br>反復測定し周期を推定"]
    G -->|"周期が異常範囲"| F
    G -->|"周期が正常範囲"| H["他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circadian rhythm sleep-wake disorder'>概日リズム睡眠・覚醒障害</span><br>および他疾患を再評価"]
    F --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='light perception'>光覚</span>があるか"}
    I -->|"無い(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total blindness'>全盲</span>)"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total blindness'>全盲</span>型:時刻を定めた<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='melatonin receptor agonist'>メラトニン受容体作動薬</span>"]
    I -->|"ある(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sighted'>晴眼</span>)"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sighted'>晴眼</span>型:確立した推奨は無い"]

治療

  • 成人:時刻を定めたが提案されている(弱い推奨)3。⭐ 用量より投与時刻が重要であることが指針に明記されており、「概日作用に対するの最適用量は依然不明」とされる3。毎日同じ時刻に飲めないならは成立しない。
  • :夕方20 mgの用量で有効性と安全性が示され、の本症に対してとEMAが承認した唯一の治療である1(⚠️ の適応はに限定されないが、EMAは成人に限る)。
  • 成人:⚠️ いずれの治療についても根拠が不足しており、AASMは推奨なしとしている3。行動修正(の固定、朝の光曝露、夜間の光の回避)を土台に、個々の反応を見ながら調整する。
  • ⚠️ 効果判定を数日で行わない。 はゆっくりとしか動かないため、の成否は数週間単位で評価する。

まとめ

  • ICSD-3(2014年)では群の()、-TR(2022年)ではの「非24時間睡眠・覚醒型」。英語文献では free-running disorder()・non-entrained disorder(非)・hypernycthemeral syndrome とも呼ばれてきた。
  • 症状が無症状期とに現れるのが最大の特徴で、これが診断を遅らせる。
  • に多く、者では比較的まれでや精神疾患と関連しうる。
  • 型は男性72%、63%が10代発症、周期は平均24.9時間(およそ27日で一周)。精神疾患は先行することも、発症後にが続くこともあり、因果を一方向に決めつけない。
  • 診断は症状が3か月以上続くこと、とを14日以上(ではより長く)記録して毎日一定方向にずれることを示すこと、他疾患で説明されないこと。
  • 活動的な患者では漂流が記録に出ないことがある。aMT6sを2〜4週間で2〜3回反復測定して周期を推定する。1回の測定では診断にならない。過去1か月を尋ねるスクリーニングは陰性でも除外根拠にならない。
  • 治療は成人で時刻を定めた(弱い推奨、用量より時刻)、が夕方20 mgで・EMA承認の唯一の治療。成人は推奨なし。

出典

  1. 1.Non-24-Hour Sleep-Wake Rhythm Disorder in the Totally Blind: Diagnosis and Management(Frontiers in Neurology・2017)本症が「自由継続(free running)」「ヒペルニクテメラル(hypernycthemeral)」「非同調(non-entrained)」とも呼ばれること。ICSD-3が4つの基準で定義していること——①不眠・日中の過度の眠気またはその両方の病歴があり無症状の時期と交互に現れ、24時間の明暗周期と同調していない内因性の睡眠・覚醒傾向の概日リズムとの不一致による、②症状が少なくとも3か月持続する、③睡眠日誌とアクチグラフィを少なくとも14日間(全盲者ではより長期が望ましい)記録し、入眠・覚醒時刻が典型的には毎日遅れていき概日周期が通常24時間より長いパターンを示す、④他の睡眠障害・内科的/神経学的疾患・精神疾患・薬物や物質使用障害でよりよく説明されない。症状が周期的に現れるため臨床的な診断が難しく、活動的な人ではアクチメトリや睡眠日誌で漂流が必ずしも明らかにならないため、概日バイオマーカーの測定で確認すべきであること。メラトニンの主要代謝物である6-スルファトキシメラトニン(aMT6s)の測定が推奨され、24時間尿・唾液・血液の検体を2〜4週間にわたり2〜3回反復して採取し(尿は日中4時間ごと、夜間8〜10時間ごと)、概日時計の周期が正常範囲外にあることを示すこと。スクリーニング質問票は過去1か月を尋ねるため症状期の間隔が1か月より長い患者は陰性になりうること。米国の盲人約100万人のうち20%が完全盲(光覚なし)で、EUでは12万人と推定されること。管理は行動修正とメラトニンからなり、タシメルテオンは夕方20 mgの用量で有効性と安全性が示され、現時点でFDAとEMAが承認した唯一の治療であること閲覧 2026-09-03
  2. 2.Non-24-Hour Sleep-Wake Rhythm Disorder in Sighted and Blind Patients(Sleep Medicine Clinics(Uchiyama M, Lockley SW)・2015)本症が24時間の予定に合わせて眠れないことを特徴とする周期性の概日リズム睡眠障害であること、24時間の明暗周期から隔離された個人は24時間と異なる睡眠・覚醒周期を示すこと、晴眼者では比較的まれで睡眠・覚醒相後退障害や精神疾患と関連しうること、視床下部の概日ペースメーカーへ光情報が届かないため全盲者でより多いことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03
  3. 3.Clinical Practice Guideline for the Treatment of Intrinsic Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorders: Advanced Sleep-Wake Phase Disorder (ASWPD), Delayed Sleep-Wake Phase Disorder (DSWPD), Non-24-Hour Sleep-Wake Rhythm Disorder (N24SWD), and Irregular Sleep-Wake Rhythm Disorder (ISWRD). An Update for 2015(Journal of Clinical Sleep Medicine(Auger RR, Burgess HJ, Emens JS, Deriy LV, Thomas SM, Sharkey KM; American Academy of Sleep Medicine)・2015)全盲成人の非24時間型に対して時刻を定めたメラトニンを提案(WEAK FOR)する一方、晴眼成人の非24時間型についてはいずれの治療も根拠が不足しており推奨なし(No recommendation)としていること、「概日作用に対するメラトニンの最適用量は依然不明で、用量より投与時刻のほうが重要である」と明記していることを確認した閲覧 2026-09-03
  4. 4.Clinical analyses of sighted patients with non-24-hour sleep-wake syndrome: a study of 57 consecutively diagnosed cases(Sleep(Hayakawa T, Uchiyama M, Kamei Y, Shibui K, Tagaya H, Asada T, Okawa M, Urata J, Takahashi K)・2005)1991〜2001年に連続して診断された晴眼の非24時間睡眠覚醒症候群57例の解析で、男性41例(72%)・女性16例(28%)と男性が多かったこと、63%が10代に発症していたこと、睡眠・覚醒周期の平均が24.9±0.4時間(範囲24.4〜26.5時間)であったこと、平均睡眠時間が9.3±1.3時間で44%が9〜10時間であったこと、16例(28%)では精神疾患が本症の発症に先行しており、残る41例のうち14例(34%)が発症後に大うつ病を発症したことを確認した閲覧 2026-09-03