薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · A2 Cholinergics / コリン作動薬 · 必修

ドネペジル

donepezil

分類
Cholinergics / コリン作動薬Antidementia drugs / 抗認知症薬
商品名(日本)
アリセプト
商品名(EU)
Aricept
科目
Pharmacology
トピック
A22: Drugs of neurodegenerative diseases (extrapyramidal motoric system, nootropic drugs)A2: Cholinomimetics
禁忌疾患
徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)消化性潰瘍
副作用
下痢不眠悪心
対象疾患
アルツハイマー病血管性・レビー小体型・前頭側頭型認知症など非アルツハイマー型認知症認知症

🧠 全体像中枢に移行する可逆的AChE阻害薬で、の中で唯一軽度から重度まで一貫して適応を持つ。同じ中枢性AChE阻害薬のとの違いは、酵素への結合様式(純粋な vs )と適応範囲(AD限定 vs AD+)にある。

薬効群の中での位置づけ

は「ChE阻害でACh↑」と「NMDA拮抗で↓」の2系統に大別され、機序が異なるため併用できる。

系統 代表 標的 適応 特徴
中枢性AChE阻害薬 AChE選択的 軽度〜重度AD 唯一重度まで適応、1日1回で足りる長い半減期
中枢性AChE阻害薬 AChE+BuChE 軽度〜中等度AD、 あり、CYP非依存の代謝でDDIが少ない
NMDA受容体 中等度〜重度AD 機序が全く異なるためChE阻害薬と併用できる
中枢 AChE の解毒(急性) 慢性AD治療ではなく急性期のという別枠

AD治療薬でBBBを通るのはの3系統だけ。 末梢性のは構造上BBBを通らずAD治療には使えない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='donepezil'>ドネペジル</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic cleft'>シナプス間隙</span>のAChEへ到達"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active site'>活性中心</span>(エステル部位)へ<br>可逆的・非共有結合"]
    B --> C["ACh分解が阻害される"]
    C --> D["大脳皮質・海馬の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic cleft'>シナプス間隙</span>で<br>ACh濃度が上昇"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholinergic neurotransmission'>コリン作動性神経伝達</span>が増強され<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive function'>認知機能</span>が部分的に改善"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurodegeneration'>神経変性</span>そのものは進行"] -.->|"対症療法であり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='disease-modifying effect'>疾患修飾効果</span>はない"| E

💡 はAChEに選択的でBuChEをほとんど阻害しない。 を起こさない純粋なのため、作用の持続は血中濃度(=半減期)にそのまま連動する。して血中濃度以上に効果が長引くのとは対照的。

薬物動態

項目 値・特徴
ほぼ100%
食事の影響 ほとんど受けない
蛋白結合率 約96%(高い)
代謝 肝臓(CYP3A4・CYP2D6)で広く代謝
排泄 腎・糞便
半減期 約70〜80時間(極めて長い

半減期が非常に長いため定常状態到達に3週間前後かかる。 増量の間隔を1〜2週間空ける漸増スケジュールはこのを反映している。

適応

病期 位置づけ
軽度〜中等度AD として第一選択の一角
中等度〜重度AD は重度まで承認を持つ数少ない薬。この病期ではNMDA拮抗薬のと併用することが多い
など非AD認知症 ガイドライン上の位置づけは限定的だが使用されることがある

用法・用量

経口、1日1回。3 mgから開始し、1〜2週間の間隔を空けて5 mgへ増量、重度例ではさらに10 mgまで増量する(海外には23 mg高用量剤形もある)。腎機能低下での調整は通常不要だが、重度肝障害では慎重投与とする。実際の用量は病期・で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心下痢不眠・鮮明な夢
注意 徐脈、
重篤・まれ 消化管出血(NSAIDs併用時)、痙攣、

まとめ

  • 中枢の可逆的AChE阻害薬。AChE選択的でBuChEはほとんど阻害しない。
  • 軽度〜重度までAD全病期に適応を持つ唯一のChE阻害薬。
  • 半減期約70〜80時間と非常に長く、1日1回投与・週単位の緩徐な漸増が特徴。
  • 中等度〜重度ではNMDA拮抗薬と機序が異なるため併用できる。
  • 様作用により徐脈・失神をきたしうるため、・房室ブロックは禁忌。
  • との違いは選択性(AChE単独 vs AChE+BuChE)と結合様式(可逆的 vs )。