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Disease Atlas · 血液 · 疾患

フォン・ヴィレブランド病

Von Willebrand disease

別名
VWD
臓器系
血液
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 H-12:フォン・ヴィレブランド病
鑑別疾患
血友病A・B
続発疾患
分娩後出血
関連疾患
血管異形成
治療薬
デスモプレシン
症状
過多月経出血消化管出血遷延出血
検査値
フェリチンリストセチン誘発血小板凝集血算血小板数プロトロンビン時間
スコア
出血評価ツール(ISTH-BAT)
原因となる疾患
真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症

🧠 全体像)は、(VWF)の量的・質的異常による最も頻度の高い遺伝性である。VWFは血小板を損傷血管壁へさせるであると同時に、血中の第VIII因子を安定化させる役割を持つため、は「粘膜出血主体の」でありながら病型によっては第VIII因子低下も伴う。学習の幹は「粘膜出血歴+家族歴でを疑う→・活性・第VIII因子を組み合わせて測定する→VWFは変動しやすいため疑いが強ければ安定時に再検する→病型に応じてDDAVPかVWF濃縮製剤かを選ぶ」。

病態

VWFはと血小板の(骨髄)で合成され、血中では(マルチマー)として循環する。血管内皮が損傷すると、露出したコラーゲンにVWFが結合し、血小板膜の受容体を介して血小板を損傷部位へさせる()。同時にVWFは血中の第VIII因子と複合体を形成してその分解を防ぎ、)を支持する。ほど能が高く、ではADAMTS13という酵素が過大なを切断してバランスを保っている。

flowchart TD
    A["血管内皮損傷"] --> B["内皮・血小板からVWFが放出される"]
    B --> C["VWFが露出コラーゲンへ結合"]
    C --> D["血小板膜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycoprotein Ib'>GPIb</span>を介した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet adhesion'>血小板粘着</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary hemostatic plug'>一次止血栓</span>の形成"]
    B --> F["VWFが循環中の第VIII因子を結合・保護"]
    F --> G["第VIII因子の分解を防ぎ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary hemostasis'>二次止血</span>を支持"]
    H["ADAMTS13による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high molecular weight'>高分子量</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='oligomer / multimer'>多量体</span>の切断"] --> B

はVWF遺伝子(VWF、12番染色体)の変異により、VWFの産生量が減る(量的異常)か、産生されたVWFの機能が損なわれる(質的異常)ことで発症する。多くはだが、重症型の一部は劣性遺伝である。

病型分類

病型 異常の性質 遺伝形式 特徴
1型 VWFの部分的な量的低下 多くは常染色体優性 最多(全の大半)、軽症〜中等症
2A型 の選択的減少 多くは優性 血小板依存性のVWF活性が低下
2B型 血小板への親和性が異常に亢進 優性 が消費され血小板減少を伴い得る
2M型 構造を保ちながら血小板結合能が低下 優性 VWF活性/抗原比が低い
2N型 第VIII因子との結合能が低下 劣性 第VIII因子が低下し血友病Aに類似する
3型 VWFがほぼ完全に欠如 劣性 最重症、関節・筋肉出血など深部出血も起こり得る

💡 2B型は「VWFが多すぎて機能する」のではなく、血小板への親和性が異常に高いためにが消費され、結果として機能的なVWFが減る病型である。投与でさらに異常VWFの放出が促され血小板減少が悪化するため、2B型・3型にはを用いない(詳細は「治療」節)。

臨床像

の出血は障害の典型像である粘膜・皮膚出血が主体で、血友病のような深部出血(関節内・)は3型など高度なVWF・第VIII因子低下例に限られる。

症状 背景
反復する 粘膜出血の基本パターン
容易な皮下出血・紫斑 障害
女性で診断契機となることが多い
・手術・分娩後の 止血はいったん得られても再出血しやすい
消化管出血 の合併で目立つことがある
関節・筋肉出血 3型やFVIII高度低下例など重症例に限られる

⭐ 標準化された等)は病歴の定量化に有用だが、強い出血歴があればスコアが低いことを理由に検査を中止してはならない。

診断

初期検査

検査
血算・ は通常正常(2B型では低下し得る)。で鉄欠乏を伴う
PT 通常正常
APTT 正常、または第VIII因子低下時に延長
血中のVWFタンパク量を評価
血小板依存性VWF活性(VWF活性) への結合能を評価
第VIII因子活性 VWFによる安定化を反映し、低下すれば血友病Aとの鑑別を要する
flowchart TD
    A["粘膜出血歴・出血の家族歴"] --> B["血算・PT・APTTを測定"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor antigen'>VWF抗原</span>・VWF活性・第VIII因子活性を測定"]
    C --> D["VWF量が比例して低下"]
    C --> E["VWF活性が抗原より強く低下"]
    C --> F["第VIII因子が不均衡に低下"]
    D --> G["1型または3型を評価"]
    E --> H["2A・2B・2M型を評価"]
    F --> I["2N型と血友病Aを鑑別"]
    H --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oligomer / multimer'>多量体</span>解析・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ristocetin-induced platelet aggregation (RIPA)'>リストセチン誘発血小板凝集</span>・遺伝学的検査へ"]

⚠️ VWFはであり、ストレス、感染、炎症、運動、妊娠、エストロゲン投与で上昇し、逆に血液型O型では基礎値が低めである。初回検査が正常でも強い出血歴があれば、健康で安定した時期に反復測定する。古典的な測定は現在も利用されるが、施設間差が少ない結合活性を用いたVWF活性測定への置き換えが進んでいる。は再現性が低く、現在の診断には用いない。

病型確定のための追加検査

  • VWF活性/抗原比:2A・2B・2M型と1型・3型の鑑別に用いる
  • VWF解析:の欠失パターンを評価
  • (低用量):2B型で異常高値の凝集を示す
  • VWF-第VIII因子結合試験:2N型の評価
  • 遺伝学的検査:2B型・2N型・3型など、表現型と管理方針が変わる場合に特に有用

治療

治療は病型、既知の反応性、出血部位、手術規模、妊娠、などに応じて個別化する。大手術では単独に頼らず、VWF活性と第VIII因子活性を目標期間維持する計画を血液専門医とあらかじめ立てる。

治療 主な適応 重要な注意
(DDAVP) 反応が事前に確認された1型、一部の2型における軽度の出血・小手技 2B型・3型には用いない(2B型では血小板減少を悪化させ、3型ではVWFの内因性貯蔵がなく無効)。低Na血症予防のため水分制限を行い、頻回投与では反応が低下する
VWF含有濃縮製剤 3型、無効・禁忌例、重症出血、大手術 投与中はVWF活性・第VIII因子活性を監視し、過剰な上昇による血栓に注意する
・口腔内出血・など粘膜出血、歯科処置時の補助 上部尿路出血ではによる閉塞を悪化させ得るため避ける
(経口避妊薬など) と妊娠希望を考慮して選択する

は心血管疾患、けいれんリスク、乳幼児(特に2歳未満)などで慎重投与または禁忌となり得るため、事前に反応性を確認したうえで使用する。

妊娠・分娩

妊娠中はVWF・第VIII因子がともに生理的に上昇することが多いが、分娩後は急速に低下し、遅発性のを起こし得る。妊娠第3三半期にVWF・第VIII因子を測定し、分娩様式、の可否、の止血計画を産科・麻酔科・血液内科で共有する。自己判断でを使用しない。

後天性フォン・ヴィレブランド症候群

家族歴のない成人発症の粘膜出血では、を考慮する。高いがVWFを機械的に切断するなどの極端な、重症、自己免疫疾患などが背景となる。家族歴のない成人発症例で疑い、止血治療と基礎疾患の治療を組み合わせる。

まとめ

  • はVWFの量的・質的異常による最も頻度の高い遺伝性で、障害を反映した粘膜出血が主体である。
  • 診断は出血歴に加え、・血小板依存性VWF活性・第VIII因子活性を組み合わせて評価する。
  • VWFは急性期・妊娠・血液型で変動するため、疑いが強ければ安定時に反復測定する。
  • は反応が確認された1型・一部2型に用い、2B型・3型には用いない。
  • 大手術・重症出血ではVWF濃縮製剤を中心に病型別の管理計画を立て、妊娠・分娩ではの遅発性出血にも備える。