検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

VWF抗原・VWF活性

Von Willebrand factor antigen and activity

別名
VWF:AgVWF:RCoVWF活性フォン・ヴィレブランド因子抗原
臓器系
血液
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 H-12:フォン・ヴィレブランド病
関連疾患
Heyde症候群フォン・ヴィレブランド病血小板型フォン・ヴィレブランド病

🧠 全体像:抗原(:Ag)と活性は、()を疑ったときに最初に測る一次スクリーニングの中核である。単独の値ではなく、抗原・活性・第VIII因子活性という三点セットを組み合わせて読むことで初めて意味を持つ。⚠️ 単回の正常値はを除外しない——はであり、出血・炎症・妊娠・血液型・加齢で大きく変動するため、疑いが強ければ平常時に再検する。

何を測っているか(原理)

抗原と活性は、同じ分子の異なる側面を測る。

  • 抗原:(など)で血中の蛋白量そのものを測る。分子が機能するかどうかは問わない。
  • 活性:が血小板膜の受容体へ結合する機能を測る。な(:RCo、を介して患者血漿中の血小板結合活性を測る)は施設間差・再現性の問題が大きく、現在は断片への結合を直接測る:GPIbM・:GPIbRといった新しい測定法への置き換えが進んでいる1。

⭐ 患者血小板そのものの反応性まで評価するRIPAとは目的が異なる検査であり、名称は似ていても同一の検査ではない。RIPAとの使い分けはRIPAのノートに譲る。

基準値と単位

抗原・活性はいずれも健常者平均を基準(1.0 IU/mL、施設によっては100 IU/dLと表記)とした相対値で報告される。単位換算に注意する——0.30 IU/mL = 30 IU/dLであり、施設によって表記が違うだけで同じ値を指す。

💡 血液型による基礎値の違いが大きい。 1,117名の解析で、抗原の平均値はO型74.8 U/dLに対しA型105.9 U/dL、B型116.9 U/dL、AB型123.3 U/dLと、O型が最も低い2。年齢との相関も血液型を問わず有意であった2。別のは必須ではないが、O型で低め・AB型で高めに出ることを念頭に置いて解釈する1。

低値の意味:VWDの診断閾値

flowchart TD
    A["出血歴・家族歴から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand disease'>VWD</span>を疑う"] --> B["急性期・妊娠・慢性炎症を避けた時期に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor'>VWF</span>抗原・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor'>VWF</span>活性・第VIII因子活性を測定"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor'>VWF</span>抗原・活性が0.30 IU/mL未満、<br>または出血症状ありで0.30〜0.50 IU/mL"}
    C -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand disease'>VWD</span>の可能性は低い<br>疑いが強ければ時期を変えて再検"]
    C -->|"はい"| E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor'>VWF</span>活性/抗原比"}
    E -->|"0.7以上"| F["1型または3型を評価<br>(3型は抗原がほぼ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='limit of detection'>検出限界</span>以下)"]
    E -->|"0.7未満"| G["2型を疑う<br>マルチマー解析・RIPA・遺伝学的検査へ"]

⭐ 2021年ASH/ISTH/NHF/WFHガイドラインは次の閾値を示す1。

状況 閾値 意味
出血症状の有無を問わず 抗原・活性いずれかが0.30 IU/mL未満 と診断する
異常出血症状がある場合 抗原・活性いずれかが0.30〜0.50 IU/mL と診断する(施設の下限が0.50未満ならその値を使う)

病型の絞り込みには活性/抗原比を用いる。

活性/抗原比 示唆する病型 次に確認すること
0.7以上(量的にほぼ比例して低下) 1型(部分的な量的低下)、または3型(ほぼ完全な欠如) 3型は抗原量そのものが以下になる
0.7未満(活性が抗原より強く低下) 2型(質的異常:2A・2B・2M型) マルチマー解析・RIPA・遺伝学的検査で病型を確定する

⭐ 第VIII因子活性も同時に見る。 は血中第VIII因子を結合・安定化するため、抗原・活性に比べて第VIII因子活性が不均衡に低い場合は、と第VIII因子の結合が障害される2N型や、血友病Aとの合併・鑑別を考える。

💡 0.7未満というは、以前用いられていた0.5未満というより高い値へと、2021年ガイドラインで感度を上げる方向に改められた1。

⚠️ 測定上の注意:偽正常化の落とし穴

は複数の生理的要因で変動するため、正常値がを除外する根拠にならない場面がある。

影響 対応
血液型O型 基礎値が構造的に低い(平均74.8 U/dLとA型以上の血液型より2〜4割低い) O型であることを踏まえて解釈する。逆にAB型では遺伝的欠損が高値で見逃されうる2
(出血・外傷・炎症・手術直後) がとして上昇し、軽度のが偽陰性化しうる 疑いが強ければ平常時(急性期を外した時期)に再検する1
妊娠 エストロゲンの影響でが上昇する 妊娠中の値だけでを除外しない
加齢 20〜60歳で年0.01 IU/mLずつ上昇する1 高齢者では境界域の値がしうる

⚠️ 一度の正常値で1型を否定しない。 出血歴が強く疑わしい患者では、上記のを避けた時期に複数回測定して判断する。

経時変化とモニタリング

治療(や含有投与)の効果判定にも抗原・活性・第VIII因子活性を用いる。大手術前後は目標値を維持できているかを追跡し、過剰な上昇によるにも注意する。診断目的の測定は、を避けたに複数回の再検で確認することが望ましい。

まとめ

  • 抗原は蛋白の量、活性は血小板への結合機能を測り、第VIII因子活性と合わせた三点セットで解釈する。
  • ⭐ 診断の閾値は、出血症状を問わず0.30 IU/mL未満、異常出血があれば0.30〜0.50 IU/mLである。
  • 活性/抗原比が0.7未満なら2型を疑い、マルチマー解析・RIPA・遺伝学的検査で病型を確定する。
  • ⚠️ 血液型O型・・妊娠・加齢はいずれも値をさせうるため、単回の正常値でを除外しない。
  • :RCoから、再現性の高い:GPIbM/GPIbRへの測定法の移行が進んでいる。

出典

  1. 1.ASH ISTH NHF WFH 2021 guidelines on the diagnosis of von Willebrand disease(Blood Advances・2021)VWD診断におけるVWF抗原・VWF活性の閾値(出血症状の有無を問わず0.30 IU/mL未満、異常出血がある場合は0.30〜0.50 IU/mL、地域検査室の基準値下限が0.50未満ならその値を使う)、VWF活性/VWF抗原比0.7未満を2型VWD確認のカットオフとすること(従来の0.5未満より高い値へ変更)、VWF:RCoよりVWF:GPIbM・VWF:GPIbRなど血小板結合活性を直接測る新しい測定法を変動係数の低さ・再現性の高さから推奨すること、VWFが急性期反応物質として出血・外傷・妊娠で上昇すること、20〜60歳では加齢に伴いVWF値が年0.01 IU/mLずつ上昇すること、ABO血液型別の基準値は不要としつつ血液型O型で基礎値が低いことを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.The effect of ABO blood group on the diagnosis of von Willebrand disease(Blood・1987)献血者1,117名の解析でVWF抗原の平均値が血液型O型74.8 U/dL、A型105.9 U/dL、B型116.9 U/dL、AB型123.3 U/dLと血液型によって異なること、年齢とも各血液型で有意に相関すること、O型では構造的に正常だが濃度の低い集団が存在しうる一方AB型では遺伝的VWF欠損が血液型による高値で見逃されうることを確認した。閲覧 2026-08-20