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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

化膿性血栓性静脈炎

Septic thrombophlebitis

別名
敗血症性血栓性静脈炎化膿性静脈血栓症Suppurative thrombophlebitis
臓器系
感染症循環器
科目
PathologyObstetrics and Gynecology (Obstetrics)
トピック
病理学 A/28:血栓症の原因と種類産科学 43:異常産褥と産褥敗血症
治療薬
バンコマイシンピペラシリンヘパリン
原因微生物
黄色ブドウ球菌大腸菌Bacteroides fragilis
症状
発熱圧痛
検査値
血算
下位分類
Lemierre症候群

🧠 全体像:は、「炎症で血栓ができる()」だけでなくその血栓と静脈壁そのものに感染が定着しているという点で、単なる血栓症とも単なる感染症とも違う病態である。に隣接する静脈、あるいはカテーテルが留置された静脈に細菌が定着して血栓を形成すると、その血栓が持続的な菌血症の温床(の台)になる。発生する静脈によって病名も臨床像もまったく別物に見える——なら、骨盤静脈ならのの遷延、門脈なら後の性、なら感染の——が、「の近くの静脈に血栓ができ、抗菌薬だけではしない発熱性菌血症が続く」という共通の骨格で束ねて理解する。

病態

は、皮の損傷(、隣接組織の炎症の波及)と、その部位での細菌定着、が重なって成立する。いったん血栓の中に細菌が封じ込まれると、血栓表面から持続的に菌が血流へ供給され続けるため、抗菌薬だけでは制御できない・の原因になる1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous'>静脈内</span>皮障害<br>(カテーテル・隣接組織の感染波及)"] --> B["局所の細菌定着"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombus formation'>血栓形成</span>"]
    C --> D["血栓内・静脈壁での化膿"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent bacteremia'>持続性菌血症</span>の温床"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic embolism'>敗血症性塞栓</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='discharge'>発射</span>台"]

⭐ どの静脈に起きるかで、原因菌も基礎疾患も一変する。 末梢・中心静脈カテーテル関連では黄色ブドウ球菌が最多の原因菌である一方、に続発する病変ではFusobacterium属、に続発する門脈病変ではグラム陰性桿菌・嫌気性菌が中心になる1。

部位別の臨床像

部位 主な誘因 代表的な原因菌
() (咽頭炎・) Fusobacterium necrophorum
骨盤静脈 (分娩後3週間以内)の、、、挿入後 (大腸菌、嫌気性菌など)
門脈 (最多)、、膵炎、 大腸菌、Bacteroides属、属
・・副鼻腔・歯の感染、髄膜炎からの直接波及 黄色ブドウ球菌、属
末梢・中心静脈カテーテル そのもの 黄色ブドウ球菌

⭐ 骨盤静脈のは、の「しない」として現れることが多い。 抗菌薬治療にもかかわらず48〜72時間でしないでは、耐性菌・胎盤遺残・骨盤膿瘍・創感染とならんでを鑑別に挙げる。

💡 門脈のはの遷延から疑う。 ・虫垂炎などの巣があり、造影CTのでの造影増強異常、で血栓像がみられれば診断される。感染が42.8%、が27.2%を占め、大腸菌・Bacteroides属・属が最頻出である2。

診断

  • 画像検査:造影CTが充満欠損・周囲のの検出に有用で、多くの部位で第一選択になる。病変の評価には・の感度が高い。はには有用だが骨盤静脈・の評価には限界がある1。
  • 微生物学的検索:血液培養に加え、疑わしい部位からの培養(を含む)を行う。
  • ⚠️ 抗菌薬でいったんしても、持続する菌血症・繰り返す塞栓症状があれば血栓内感染の持続を疑い、画像で静脈の評価をやり直す。

治療

⭐ 治療の骨格は、抗菌薬の静注とカテーテル(可能な部位では感染血管の切除)である。 のように到達可能な部位では感染した血管そのものを切除できるが、門脈・のような中枢の静脈では切除は現実的でない1。

部位 抗菌薬の目安
末梢・中心静脈カテーテル関連 起因菌に応じた。カテーテルはする 通常は不要
門脈 経験的からに応じて狭域化し、計4〜6週間投与する2 症例報告ではヘパリン2〜3週間後に経口抗凝固薬へ移行した群で死亡率が低い傾向がみられるが、対照試験による確立した推奨ではない2
骨盤静脈 に準じた(嫌気性菌カバーを含む) 血栓伝播・肺塞栓のリスクに応じて個別に検討する

⚠️ の位置づけは部位によらず議論が続いており、対照試験による裏づけがない。 血栓の進展を防ぐ目的で追加する立場と、進展がなければ抗菌薬単独で経過をみる立場があり、血小板5万/μL未満では出血リスクから抗凝固を避けるべきとされる1。

⚠️ 膿瘍が形成されていればドレナージを併せて行う。病変では隣接する副鼻腔・中耳などの原発の外科的処置も並行して検討する。

予後

死亡率は部位によって大きく異なる。門脈病変は現代でも最大25%(近年の報告では11〜32%)、は3年間の研究で9%、病変はで30%、では78%に達するとされ、と迅速な治療開始が死亡率を左右する最大の因子である12。

まとめ

  • は、感染に隣接した静脈・静脈に細菌が定着して血栓を形成し、・の温床となる病態である。
  • 発生部位によって病名・原因菌・基礎疾患が大きく異なる:(、Fusobacterium属)、骨盤静脈(、)、門脈(・虫垂炎後、グラム陰性桿菌・嫌気性菌)、(感染)、カテーテル関連(黄色ブドウ球菌)。
  • 診断は造影CT(またはでは/)と血液培養・部位別の培養による。
  • 治療の骨格はとカテーテル・可能な部位での感染血管切除で、抗菌薬期間は部位により数週間に及ぶ(門脈病変で4〜6週間)。の適応は対照試験のエビデンスがなく議論が続く。
  • 死亡率は部位差が大きく、病変(特に)で最も高い。・早期治療が予後を左右する。

出典

  1. 1.Septic Thrombophlebitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)化膿性血栓性静脈炎(STP)が、細菌または真菌感染を伴う血管内血栓の存在で定義され、末梢静脈・骨盤静脈・上大静脈・内頸静脈・門脈・硬膜静脈洞など全身の静脈構造に生じうること、末梢カテーテル関連STPが1000カテーテル日あたり0.5件、中心静脈カテーテル関連が1000カテーテル日あたり2.7件、帝王切開後の骨盤STPが500〜2000分娩に1件、経腟分娩後が9000分娩に1件であること、原因菌として黄色ブドウ球菌が最多で連鎖球菌属・嫌気性菌・グレン陰性菌・真菌も報告されること、造影CTが充満欠損と周囲炎症の検出に有用で硬膜静脈洞の評価にはMRI・MR静脈撮影の感度が高いこと、治療の基本が広域スペクトル静注抗菌薬とカテーテル抜去・可能なら感染血管の切除であること、抗凝固療法の役割には議論がありエビデンスとなる対照試験が無いこと、血小板5万/μL未満では抗凝固を避けるべきこと、門脈血栓性静脈炎(pylephlebitis)の死亡率が最大25%、Lemierre症候群の死亡率が3年間の研究で9%、海綿静脈洞血栓性静脈炎の死亡率が30%、上矢状静脈洞では78%に達することを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Pylephlebitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)門脈血栓性静脈炎(pylephlebitis)が腹腔内・骨盤内感染のまれだが生命を脅かす合併症であり、憩室炎(発症患者の年齢中央値58歳)と急性虫垂炎(年齢中央値22.5歳)が2大原因であること、単一菌感染が42.8%・多菌性感染が27.2%を占め大腸菌・Bacteroides属・連鎖球菌属が最頻出でクレブシエラ肺炎桿菌やBacteroides fragilisの分離も近年増えていること、造影CTが第一選択の画像検査で動脈相での実質造影増強と門脈相での血栓所見が診断の手がかりになること、標準的な抗菌薬投与期間が4〜6週間で当初は非経口投与とし培養結果に応じて狭域化すること、抗凝固療法を受けた症例で死亡率が低い傾向が症例報告で観察されヘパリンを2〜3週間投与後に経口抗凝固薬へ移行する方法が提案されていること、死亡率が1990年以前は75%であったのに対し1990年以降は25%へ低下し現代では11〜32%とされることを確認した閲覧 2026-09-06