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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

ベゾルド膿瘍

Bezold abscess

別名
Bezold's abscess
臓器系
耳鼻咽喉科感染症
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 13:急性・慢性化膿性中耳炎の合併症
鑑別疾患
咽後膿瘍
合併症
脳膿瘍細菌性髄膜炎S状静脈洞血栓症縦隔炎
治療薬
バンコマイシンセフトリアキソンピペラシリンメトロニダゾールクリンダマイシン
症状
耳痛発熱
元疾患
急性乳様突起炎

🧠 全体像は、急性で破壊が進んだ乳突尖の骨を膿が突き破り、の付着部を伝って頸部深部へ下降するという解剖学的経路そのものが定義になっている疾患である。化が発達した年長児・成人に起こり、化が未発達な乳幼児では乳突尖の骨壁が厚く浸食されにくいためまず起こらない——このが病態理解の核である。頸部の腫脹・という耳と離れた場所の所見から乳突炎を疑えるかどうかが診断の分かれ目になる。

病態

内の感染(急性)が持続すると、骨中隔だけでなく乳突尖のも破壊されうる。乳突尖のうちが付着する部位より内側が破れると、膿は下ではなくへ流出し、に沿っての深部・頸部へ下降する1

flowchart TD
    A["急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coalescent mastoiditis'>融合性乳様突起炎</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mastoid air cells'>乳突蜂巣</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone erosion'>骨破壊</span>性感染)"] --> B["乳突尖の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortical'>皮質骨</span>破壊"]
    B --> C{"破綻する部位は?"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sternocleidomastoid / SCM'>胸鎖乳突筋</span>付着部より外側"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subperiosteal abscess'>骨膜下膿瘍</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postauricular'>耳後部</span>腫脹)"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sternocleidomastoid / SCM'>胸鎖乳突筋</span>付着部より内側"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infratemporal fossa'>側頭下窩</span>へ膿が流出"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep cervical fascia'>深頸筋膜</span>に沿って下降"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Bezold abscess'>ベゾルド膿瘍</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sternocleidomastoid / SCM'>胸鎖乳突筋</span>に沿う頸部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep abscess'>深部膿瘍</span>)"]

化が発達した年長児・成人に起こる。 乳幼児は乳突尖そのものが未発達で骨壁が厚く緻密なため、感染が骨を突き破って頸部へ抜けにくく、本膿瘍は極めて稀である2。同じでも年齢によって進展方向が変わりうる点が学習上の要である。

臨床像

  • ・難聴といった中耳炎・に共通する所見に加え、に沿った有痛性の頸部腫脹と、患側へのを来す。
  • 発熱を伴うことが多く、を合併することがある。
  • の腫脹が目立たないまま頸部腫脹が前景に立つことがあり、単独の頸部所見だけを見ると耳鼻科疾患をしにくい。

⚠️ 頸部腫脹・を来す小児・成人で、の既往・所見があれば、化膿性リンパ節炎など他の症だけでなくを鑑別に入れる。も頸部腫脹・様の姿勢を来しうるが、の先行所見を欠き、が前景に立つ点で区別の手がかりになる。

診断

造影CT(+頸部)が診断と手術計画の要である2消失・と、に沿う頸部の膿瘍貯留を一連の検査で評価する。では鼓膜の膨隆・発赤や外耳道後の下垂がみられ、急性に準じたの腫脹・圧痛を伴うことが多い。血液検査はなどの炎症所見の確認と、抗菌薬選択のための血液培養・膿培養を行う。起因菌はが最も頻度が高く、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌なども報告されている2を疑う場合は造影CTでを評価する2

治療

経験的な静注に加え、のドレナージを組み合わせる。バンコマイシンセフトリアキソンなどのをカバーする薬剤を軸に、深頸部への進展を踏まえて配合)のような広域薬や、クリンダマイシンメトロニダゾールによる嫌気性菌カバーを組み合わせる報告が多い2。文献レビューでは28例中21例(75%)でが行われており、抗菌薬単独での治癒は期待できない2

⚠️ 抗菌薬だけで治そうとしない。 を伴うと頸部のが残る限り、を組み合わせなければ改善しない。

合併症

⚠️ 未治療のまま進行するとへ波及しうる(未治療例では致死的となりうると報告される)2。文献レビュー28例の併存合併症としては)が6例と最も多く記録され、もそれぞれ1例ずつ報告されている2。乳突炎の他の進展経路と同様、乳突尖からの下降だけでなく頭蓋内方向への進展が並行して起こりうる点を念頭に置く。

💡 が化膿性から遠隔臓器へ播種する像はと機序が共通するが、レビュー対象28例でそのものが一般的な合併症として報告されているわけではなく、個別例でとの併存が記述されているにとどまる2

まとめ

  • は、乳突尖のうち付着部より内側のが破れ、膿がに沿って頸部深部へ下降した状態である。
  • 化が発達した年長児・成人に起こり、乳幼児では乳突尖が未発達なため稀というが要点。
  • に加え、に沿う有痛性頸部腫脹とが特徴的な臨床像で、など他の症との鑑別を要する。
  • 診断は造影CT(+頸部)+血算・CRP・培養。治療はバンコマイシン・セフトリアキソンなどの(嫌気性菌カバーとしてクリンダマイシン・メトロニダゾールを併用することが多い)に、ドレナージを組み合わせる。
  • ⚠️ へ波及しうるほか、側)が併存合併症として最も多く、も来しうる。

出典

  1. 1.Acute Mastoiditis in Children(Acta Bio Medica: Atenei Parmensis・2020)ベゾルド膿瘍が乳突骨皮質のうち胸鎖乳突筋付着部の内側が浸食されて生じ、膿が側頭下窩へ入り深頸筋膜に沿って進展するという解剖学的経路(外頭蓋合併症の項に記載)閲覧 2026-08-11
  2. 2.Bezold's Abscess: A Case Report and Review of Cases Over 20 Years(Cureus・2022)文献レビュー28例のうち成人が17例(60.7%)、小児が11例(39.3%)と成人に多いこと、乳幼児では乳突蜂巣の含気化が不完全なため骨壁が厚く浸食されにくく本膿瘍が極めて稀であること、起因菌は連鎖球菌が最頻出であること、造影CT(側頭骨・頸部)が診断・手術計画に最重要であること、28例中21例(75%)で乳突削開術と膿瘍ドレナージが行われたこと、未治療では縦隔炎に進展し致死率が高いこと(Discussion節)、Table 2の併存合併症の内訳として静脈洞血栓症6例・脳膿瘍1例・髄膜炎1例が記録されていること(内頸静脈血栓性静脈炎そのものの一般的な合併頻度としての記載はなく、Yaita et al.の1例でLemierre症候群との併存が個別に報告されているのみ)、経験的治療にセフトリアキソン・セファゾリン・ピペラシリン/タゾバクタム・メロペネム・バンコマイシン・クリンダマイシン・シプロフロキサシン・モキシフロキサシン・メトロニダゾールなどが用いられたこと(Table 2 Management欄)、静脈洞血栓症の評価は造影CT(充盈欠損・empty delta signなど)で行われMRVの明示的な記載はないこと(Table 3)閲覧 2026-08-11