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Microbe Atlas · 原虫

Leishmania infantum

分類
鞭毛虫 / FlagellatesLeishmania
科目
Medical Microbiology
トピック
4/21: Leishmaniae
原因となる疾患
リーシュマニア症

🧠 全体像L. infantumL. donovaniと並ぶ)の起因種だが、広がり方がまるで違う。L. donovaniがインド亜大陸でヒト-ハエ-ヒトの感染環を作る(東アフリカではイヌ・げっ歯類も関与する)のに対し、L. infantum地中海沿岸・中東・中央アジア・中南米に分布し、イヌを主要なとする人獣共通感染症である。イヌの感染率が高い地域で小児の発症が目立つのも、このへの曝露を反映している。新世界(中南米)では長らくL. chagasiという独立種として記載されてきたが、分子によりL. infantumと同一種であることが判明し、現在は統合されている——旧世界と新世界のが実は同じ寄生虫による、という点が本種最大の要点である。

微生物学的な特徴

原虫の分類ではL. donovaniと同じく(キネトプラス類)に属し、体内のとヒト・イヌのマクロファージ内のを行き来する。両形態とも顕微鏡所見は属内の他種と区別できず、種の同定には・分子学的手法(PCR、)を要する点はL. donovaniと共通する。

💡 L. chagasiL. infantumと同一種である。 かつて新世界(中南米)で見つかるの原因種はL. chagasi、旧世界(地中海沿岸・中東)のものはL. infantumとして別々に記載されていたが、両者は同一の生物であることが確認され、現在はL. infantumに統合されている1。旧世界から新世界へどのように伝播したかは議論があるが、大航海時代にイヌとともに持ち込まれたとする説が有力である。

生活環

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sandfly'>サシチョウバエ</span>(Phlebotomus属/Lutzomyia属)が<br>感染イヌを吸血"] --> B["イヌの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amastigote'>無鞭毛型</span>を摂取"]
    B --> C["ハエの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midgut'>中腸</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='promastigote'>前鞭毛型</span>に分化・増殖"]
    C --> D["口吻に移動し感染性を獲得"]
    D --> E["ヒトまたは別のイヌを吸血し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='promastigote'>前鞭毛型</span>を注入"]
    E --> F["マクロファージに貪食される"]
    F --> G["マクロファージ内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amastigote'>無鞭毛型</span>に変化<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='core body temperature'>深部体温</span>37℃でも増殖可能)"]
    G --> H["肝・脾・骨髄(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticuloendothelial system, RES'>網内系</span>)へ播種"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visceral leishmaniasis'>内臓リーシュマニア症</span>"]
    G -.->|"イヌは無症候〜軽微な皮膚病変のまま<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>に高い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parasitemia'>寄生虫血症</span>を維持しやすい"| J["イヌが感染源として<br>次の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sandfly'>サシチョウバエ</span>に吸血される"]
    J --> C

病原性の仕組み

  • 耐性・(37℃)でのL. donovaniと共通し、これが肝・脾・骨髄という深部臓器まで到達できる理由になる。皮膚型・粘膜皮膚型を起こす種のが低温(30〜35℃)でしか増殖できないのとは対照的である。
  • L. donovaniとの最大の違いは病原体側の性質ではなく、宿主側()にある。 L. infantumイヌの・皮膚で高い寄生虫負荷を維持できるため、イヌが効率的な感染源としてへ寄生虫を供給し続ける。イヌの感染は無症候〜軽微な皮膚病変にとどまることが多く、気づかれないまま感染環を支える2
  • 小児・免疫不全者で臨床的な発症に至りやすい一方、免疫正常な成人ではにとどまることが多い3
  • 浸潤による肝脾腫(赤血球・白血球・血小板すべての低下)はL. donovaniによる内臓型と同じ機序で起こる。

感染経路と疫学

  • 媒介動物:旧世界(地中海沿岸・中東・中央アジア)ではPhlebotomus属)、新世界(中南米)ではLutzomyia属、特にLutzomyia longipalpis
  • はイヌ。 L. donovaniがヒトのみを宿主とするインド亜大陸型を主とするのに対し、L. infantumイヌが主要なとなる人獣共通感染症である12。キツネなど野生イヌ科動物が補助的なリザーバーになる地域もある。
  • 主要:地中海沿岸諸国(南欧・北アフリカ)、中東、中央アジア、中南米(ブラジルなど)。
  • 10歳未満の小児と免疫不全者(特にHIV感染症・AIDS合併例)で臨床的な発症に至りやすい3HIV感染症・AIDS合併は成人での再活性化の重要な危険因子でもある。
  • の輸血、間の針の共有、(母子間)による伝播もまれに報告されている。

起こす疾患

項目 L. donovani L. infantum(本ページ)
疾患
主要 インド亜大陸、東アフリカ 地中海沿岸、中東、中央アジア、中南米
主にヒト(人-ハエ-人の感染環) イヌ(人獣共通感染症)
好発年齢 全年齢層 小児・免疫不全者に多い
治療後の皮膚病変 を残しうる PKDLはL. donovaniほど特徴的ではない

臨床像(発熱・肝脾腫・)そのものはL. donovaniによる内臓型と同じで、の一病型として扱う。

診断

  • 診断手技はL. donovaniと共通する:によるの検出が確定診断、が現場でのスクリーニングに広く用いられる。
  • の形態は属内の他種と区別できないため、L. donovaniとの鑑別(の推定に直結する)にはPCR・などの分子学的手法を要する。
  • イヌの飼育歴・地中海沿岸/中南米への渡航歴・小児という患者背景は、インド亜大陸・東アフリカ渡航歴を持つ症例よりL. infantumを疑う手がかりになる。

治療と予防

まとめ

  • L. infantumL. donovaniと並ぶの起因種で、での増殖という共通機序で肝・脾・骨髄に播種する。
  • 両種の違いは病原体そのものよりもにある——L. donovaniはインド亜大陸ではヒト-ハエ-ヒトの感染環(東アフリカではイヌ・げっ歯類も関与)、L. infantumイヌを主要なとする人獣共通感染症(地中海沿岸・中東・中央アジア・中南米)。
  • 10歳未満の小児と免疫不全者で臨床的発症に至りやすい。
  • 新世界でL. chagasiとして記載されていた種は、現在L. infantumと同一種として統合されている。
  • 診断・治療の手技そのものはL. donovaniと共通するが、予防にはイヌの感染対策が加わる。

出典

  1. 1.Leishmaniasis (Cutaneous and Visceral)(Center for Food Security and Public Health, Iowa State University College of Veterinary Medicine・2022)L. donovaniとL. infantumがヒト内臓リーシュマニア症の主な2菌種であること、イヌがL. infantumの主要な保虫宿主であること、新世界(中南米)で使われていたL. chagasiという種名は現在L. infantumと同一種とみなされていること、L. infantumが中南米・中東・地中海・アジアの一部に広く分布することを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Canine Leishmaniasis Control in the Context of One Health(Centers for Disease Control and Prevention(Emerging Infectious Diseases誌)・2019)イヌがLeishmania infantumの主要な保虫宿主であること、イヌの殺処分は内臓リーシュマニア症の制御策として科学的根拠に支持されていないこと、寄生虫・サシチョウバエ・イヌを統合したOne Healthアプローチが必要であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Visceral Leishmaniasis: Epidemiology, Diagnosis, and Treatment Regimens in Different Geographical Areas with a Focus on Pediatrics(Microorganisms(MDPI)・2022)L. infantumによる臨床的な内臓リーシュマニア症は10歳未満の小児と免疫抑制患者に発症しやすいことを確認した閲覧 2026-08-10