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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

ハンセン病

Leprosy (Hansen's disease)

別名
Hansen's diseaseらい病
臓器系
感染症皮膚
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 2/34:ヒト結核の起因菌・らい菌皮膚科 1-12:ハンセン病とリーシュマニア症の臨床病型・治療
鑑別疾患
尋常性白斑
関連疾患
リーシュマニア症結核
治療薬
リファンピシンダプソンサリドマイド
原因微生物
Mycobacterium leprae
症状
疼痛乏汗症鞍鼻
適応薬
クロファジミンプロチオナミド

🧠 全体像による慢性抗酸菌感染で、低温部位(皮膚・末梢神経・上気道粘膜)を好んで侵す。病型を決めるのは菌の性質ではなく宿主のの強弱であり、強いCMIは少数病変・非対称神経障害のを、弱いCMIは多数病変・対称神経障害のを生む。診断は「皮疹の知覚低下」「神経肥厚+知覚・運動障害」「抗酸菌検出」のいずれかで確認し、治療はWHO推奨ので、急性神経障害()を見逃さないことが機能障害予防の鍵となる。

病原体と感染経路

は低温を好むで、(皮膚マクロファージ)、内で増殖する。人工培地では培養できず、または(低体温)でのみ増殖する。主なはヒトだが、中南米の一部では由来の人獣共通感染も報告される。

は、未治療の患者との長期・濃厚接触による鼻・口からのと考えられている。感染力は弱く、短時間の接触で容易に広がる疾患ではない。は平均約5年と長く、1年未満から20年後の発症まで幅がある。

flowchart TD
  A["Mycobacterium leprae感染<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incubation period'>潜伏期間</span>は平均約5年、幅が大きい)"] --> B{"宿主の細胞性免疫は?"}
  B -->|"強い(TH1優位)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tuberculoid leprosy'>類結核型</span><br>少数病変・非対称性神経障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lepromin'>レプロミン</span>陽性"]
  B -->|"弱い(TH2優位・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='humoral immunity'>液性免疫</span>)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lepromatous leprosy'>らい腫型</span><br>多数病変・対称性神経障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lepromin'>レプロミン</span>陰性<br>菌量が多い"]
  C --> E["未治療では末梢神経障害の進行<br>知覚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss (of neurological function)'>脱失</span>による外傷・潰瘍・変形"]
  D --> E

臨床像:免疫スペクトラム

細胞性免疫が強いほど菌量は少なく病変は限局し、弱いほど菌量が多くびまん性に広がる。

病型 免疫・菌量 皮膚病変 神経病変
細胞性免疫が強く菌量が少ない 少数で境界明瞭な〜紅色局面、辺縁隆起・中央萎縮、発汗・毛・知覚の消失 局在性・非対称性の神経肥厚が目立つ
中間で不安定 の中間、不均一な知覚低下 病型により様々
細胞性免疫が弱く菌量が多い 左右対称の多数の斑・丘疹・結節、びまん性浸潤、毛脱落、(進行例ではの破壊から)、耳朶肥厚 広範で比較的対称性の末梢神経障害。進行例で手足の変形
早期で分類困難 少数の淡色〜紅色斑と軽い知覚変化 軽微。自然軽快または他病型へ進展しうる

⚠️ 病変が無痛であること自体より、温痛覚・触覚の低下とが重要である。によるの外傷・熱傷・潰瘍が変形の主因となるため、神経障害・眼障害・手足の傷を系統的に評価する。

診断

次の少なくとも1つを確認する(WHOの診断三徴候)。

  1. 淡色または紅色皮疹に明らかな知覚低下がある。
  2. 末梢神経が肥厚し、その支配領域に知覚低下または筋力低下がある。
  3. または組織で抗酸菌を認める。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypochromia'>低色素</span>〜紅色皮疹+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral nerve symptoms'>末梢神経症状</span>を疑う"] --> B{"知覚低下のある皮疹"}
    A --> C{"神経肥厚+知覚・運動障害"}
    A --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin smear'>皮膚スメア</span>・組織で抗酸菌陽性"}
    B -->|"いずれか1つ以上あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leprosy'>ハンセン病</span>と診断"]
    C -->|"いずれか1つ以上あり"| E
    D -->|"いずれか1つ以上あり"| E
    E --> F["WHO治療分類(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paucibacillary, PB'>少菌型</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multibacillary, MB'>多菌型</span>)を決定"]
  • を用いる。は細胞性免疫の強弱・病型分類の参考にはなるが、としては用いない(陰性でもを除外できない)。
  • 培養は人工培地で不可能であり、菌の証明は組織・スメアでの直接検出による。

治療:WHO多剤併用療法(MDT)

WHOは臨床実務では免疫学的スペクトラム名ではなく、皮疹数・神経病変・スメア所見に基づく治療分類(で治療期間を決める。

治療分類 基準 WHO推奨MDT
(PB) 皮膚病変1〜5個、神経障害やスメア陽性を伴わない リファンピシン+を6か月
(MB) 皮膚病変6個以上、末梢神経病変あり、または病を問わずスメア陽性 同じ3剤を12か月

単剤を数年間、またはリファンピシン・のみを無期限に投与する旧来の処方は、耐性と再発の観点から現在は用いない。患者をに隔離せず、により感染源としての意義は速やかに低下する。

らい反応:急性増悪の見逃しを防ぐ

治療開始後に炎症が悪化する「」は再発ではなく、多くは治療継続下で対応する。

反応 特徴 対応の原則
1型反応(境界反応) 既存皮疹・神経の・筋力低下 多剤療法を継続し、神経障害があれば速やかに副腎皮質ステロイドなどを専門管理下で開始する
2型反応( 発熱、有痛性結節、全身臓器炎症 重症度に応じステロイド、、厳格管理下のなどを用いる

⚠️ ・急な筋力低下・新規の知覚低下は緊急評価が必要である。 治療の遅れは不可逆的な神経障害・変形につながるため、「反応か再発か」の判断を待たずに神経症状そのものへ対応する。

予防

  • 患者を隔離せず、とWHO推奨MDTで感染源を治療することが最も有効なである。
  • 家庭・近隣のを診察し、活動性の・結核などを除外して適格性を確認したには、単回リファンピシンによる曝露後予防を行う。

まとめ

  • は低温を好むM. lepraeによるで、宿主のCMIの強弱が(少数病変・非対称神経障害)と(多数病変・対称神経障害)というスペクトラムを決定する。
  • 診断三徴候(知覚低下のある皮疹・神経肥厚を伴う知覚/運動障害・抗酸菌検出)のいずれか1つで確定でき、反応は診断には用いない。
  • WHO標準治療は6か月・12か月のリファンピシン+3剤併用である。
  • (1型・2型)による急性神経障害は再発と誤認せず緊急に対応し、による外傷の蓄積が変形の主因であることを踏まえて系統的な神経・眼・四肢の評価を続ける。