微生物ノート一覧へ

Microbe Atlas · 細菌

Mycobacterium leprae

らい菌

分類
抗酸菌 / Acid-fastMycobacterium
性状
抗酸菌 Acid-fast桿菌 Bacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/34: Causative agents of human tuberculosis, Mycobacterium leprae5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis5/8: The most important microbial pathogens of the urinary tract (list)
原因となる疾患
ハンセン病
作用する薬剤
クロファジミンダプソンプロチオナミドリファンピシン

🧠 全体像もマクロファージに隠れる抗酸菌だが、と違うのは菌自体ではなく宿主のの強さが病型を決めるという点。強いTH1優位のCMIは菌を少数病変に封じ込めるを、弱いCMI・TH2優位のは菌が全身に広がるを生む——この1本の軸での臨床像・・感染性のすべてが説明できる。低温を好むため皮膚・末梢神経という体温の低い部位を選んで侵す点は、が酸素の豊富な肺を好む理由と対をなす。

微生物学的な特徴

項目 内容
染色性 グラム染色では染まりにくい抗酸菌を保持)
形態 桿菌(「葉巻状」に配列)
至適温度 低温を好む——皮膚・末梢神経・上気道粘膜など体温の低い部位で増殖
——(皮膚マクロファージ)、内で増殖

⚠️ 人工培地では培養不可能。 、または体温が低いでのみ増殖する——このため培養による確定診断ができず、・生検が診断の中心になる。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Mycobacterium leprae感染<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incubation period'>潜伏期間</span>は平均約5年、幅が大きい)"] --> B{"宿主の細胞性免疫(CMI)は?"}
    B -->|"強い(TH1優位)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tuberculoid leprosy'>類結核型</span><br>少数病変・非対称性神経障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lepromin'>レプロミン</span>陽性"]
    B -->|"弱い(TH2優位・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='humoral immunity'>液性免疫</span>優位)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lepromatous leprosy'>らい腫型</span><br>多数病変・対称性神経障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lepromin'>レプロミン</span>陰性<br>高い感染性"]
項目
位置づけ 側の限局病型。感染性はほぼない 側のびまん病型。未治療では感染性が高いが治療開始後は速やかに低下する
細胞性免疫 強い(TH1優位) 弱い、優位(TH2優位)
陽性 陰性
組織内菌量 皮膚生検でごく少数〜検出なし 皮膚生検で多数、血中にも検出
皮膚病変 少数の境界明瞭な 多数の境界不明瞭な丘疹・結節
神経病変 局在性・非対称性の末梢神経障害 広範・比較的対称性の末梢神経障害。進行例で毛脱落・鼻変形(獅子様

💡 こそがの障害の本体。 末梢神経障害による痛覚・温度覚の消失は、気づかれない外傷・熱傷・潰瘍を積み重ね、二次的な変形・切断へつながる——菌そのものが組織を壊すのではなく、感覚を奪うことで防御反応が働かなくなる点が障害の核心である。

感染経路と疫学

  • 主なはヒト。南北アメリカの一部では由来の人獣共通感染も報告される
  • 伝播は未治療患者との長期・濃厚接触による鼻・口からのが主体と考えられ、短時間の接触で容易に広がる感染症ではない
  • は平均約5年だが幅が大きく、1年以内〜20年後の発症もある

起こす疾患:ハンセン病

実務ではWHOの分類を用い、免疫学的スペクトラム名だけで治療期間を決めない。

分類 基準 WHO推奨(MDT)
皮膚病変1〜5個、で菌陰性 リファンピシン6か月
皮膚病変5個超、末梢神経病変あり、または病を問わず陽性 同じ3剤を12か月

の疾患ノートに、病型別の合併症・機能障害予防の詳細をまとめてある。

⚠️ 急性の神経障害()は治療中の緊急事態。 免疫反応の変動によってが急激に悪化することがあり、早期の副腎皮質ステロイド介入を怠ると不可逆的な機能障害に至る。

診断

  • を伴う淡色・紅色皮疹、感覚・運動障害を伴う末梢神経肥厚、での抗酸菌検出のいずれかを確認する
  • を用い、必要に応じ皮膚生検で腫と菌量を評価する
  • は細胞性免疫と病型分類の参考にはなるが、そのものには用いない陽性・陰性というパターンは病型判定の補助)

予防

  • 患者をに隔離せず、とWHO推奨MDTで感染源を治療する
  • 家庭・近隣のを診察し、活動性らい・結核などを除外したうえで、適格なには単回リファンピシンによる曝露後予防を行う

まとめ

  • 低温を好むで、人工培地では培養不能(が必要)。
  • 病型を決めるのは菌ではなく宿主のCMIの強さ——強いCMIは(少数病変・非対称性神経障害・陽性)、弱いCMIは(多数病変・対称性神経障害・陰性・高感染性)を生む。
  • が末梢神経障害の中核で、気づかれない外傷の蓄積が変形・切断につながる。
  • 実務はWHOの(MDT6か月)・(MDT12か月)分類で治療期間を決める。
  • 急性神経障害()は早期のステロイド介入を要する緊急事態。