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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

Krukenberg腫瘍

Krukenberg tumor

臓器系
腫瘍消化器生殖・産婦人科
科目
Pathology
トピック
病理学 C/75:卵巣腫瘍病理学 C/35:胃腫瘍
鑑別疾患
卵巣癌
関連疾患
胃癌
治療薬
5-フルオロウラシルオキサリプラチントラスツズマブ
症状
腹部膨満腹痛

🧠 全体像は「卵巣に転移した」を指す臨床的な通称ではなく、を含み、かつ卵巣間質の増生(線維性・肉腫様の間質反応)を伴うという組織学的な定義を持つ転移性である。原発は胃癌が最多で、両側性が多いことが原発性卵巣癌との重要な対比点になる。臨床的に最も重い意味を持つのは、として先に発見され、原発が後から判明することがある点で、両側性・を見たら消化管内視鏡へ進むという判断の転換点を作る。

病態・組織像

診断には、粘液を細胞内に貯留するの存在と、それを取り巻く卵巣間質の増生という2つの所見がそろう必要がある1だけでは足りず、卵巣固有の間質反応を伴って初めてと呼ぶ。

原発部位は胃と大腸で全体の約90%を占め、単独では胃が約70%と最多で、大腸がこれに次ぐ。乳腺・虫垂を原発とする例はより少ない1胃癌の項で述べた「」の一つとして位置づけられる。

転移経路

の転移経路は単一ではなく、・血行性・が組み合わさって説明される1

flowchart TD
    A["胃癌などの消化管<span class='jp-term jp-term-diagram' title='signet ring cell carcinoma'>印環細胞癌</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>:胃-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HPO axis'>卵巣軸</span>に沿った逆行性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymph flow'>リンパ流</span>"]
    A --> C["血行性:卵巣の豊富な血流への播種"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal dissemination'>腹膜播種</span>:漿膜浸潤後の腹腔内播種"]
    B --> E["卵巣間質での増生反応"]
    C --> E
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Krukenberg tumor'>Krukenberg腫瘍</span>(多くは両側性)"]

💡 だけでは、両側の卵巣に選択的に、しかも早期から転移が生じる説明として弱い。胃から卵巣への逆行性という経路が想定されているのはこのためで1、単施設シリーズでは血管内が高頻度(72.3%)に確認されの関与を示す一方、多数のリンパ節転移を伴う例が大半(88.9%)で、・血行性の両方が並行して働いている可能性が報告されている2

両側性が約80%に達する1性が主体の原発性卵巣癌との対比で、両側性という所見自体が転移性を疑う手がかりになる。

臨床像・診断

腹部膨満・腹痛など非特異的な症状で発見されることが多く、腹部膨満腹痛を契機に画像検査へ進むことが典型的である。

⚠️ として先に見つかり、消化管の原発が後から判明することが多い1。したがって、両側性・を認めた場合は、原発性卵巣癌だけでなく転移性を念頭に置き、上部・下部消化管内視鏡検査を行う。

画像・には限界がある。CT・超音波では両側性・・境界明瞭という所見が転移性を示唆するが、原発性卵巣癌との鑑別は画像だけでは困難である。もCA-125上昇は約1/4の患者にとどまり、単独では診断の決め手にならない1

⭐ 画像・マーカーで分けられない分を埋めるのが免疫染色である。上皮マーカー(サイトAE1/AE3・上皮膜抗原)陽性かつ陰性であることでまず転移性を支持し、さらにCK7/CK20パターンで原発を絞り込む——原発性卵巣癌はCK7強陽性・CK20陰性の傾向を示すのに対し、はCK20陽性またはCK7・CK20両陽性を示す1。画像・CA-125だけで判断に迷う症例では、この染色パターンが原発性卵巣癌との実際の鑑別手段になる。

治療・予後

治療の主体はの治療であり、はその一部として位置づけが限定的である。切除+を含めた根治切除)が生存に寄与するとされ、片側性の卵巣転移であっても予防的に両側を行うことが推奨される1。全身薬物療法は原発の組織型に基づいてのガイドラインに準拠して選択する1。原発が胃癌であれば、を含むフッ化ピリミジン+の併用が化学療法の骨格となり、HER2陽性例ではを併用する。

⚠️ 予後は不良で、中央生存期間は14か月、2年を超える生存は稀とされる1。単施設シリーズでも生存17か月(範囲6〜67か月)と、報告間で幅はあるものの短命である点は一致する2

まとめ

  • と卵巣間質の増生を伴う転移性で、原発は胃が最多、次いで大腸。
  • 転移経路は・血行性・が組み合わさり、だけでは両側性・選択的な転移を説明しきれない。
  • 両側性が約80%と多く、原発性卵巣癌との重要な鑑別点になる。
  • ⚠️ として先に発見されることがあるため、両側性・では原発性卵巣癌と鑑別するために上部・下部消化管内視鏡を行う。
  • 画像・(CA-125)だけでは原発性卵巣癌と分けきれず、CK7/CK20パターンなど免疫染色が実際の鑑別手段になる。
  • 治療はの治療(胃癌ならなどの化学療法)が主体で、は限定的な位置づけ。予後不良(中央生存期間14か月前後)。

出典

  1. 1.Krukenberg Tumor(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)Krukenberg腫瘍の組織学的定義(粘液を含む印環細胞と、それに伴う卵巣間質の増生)、原発部位は胃と大腸で約90%を占め胃が約70%と最多であること、両側性が約80%であること、転移経路がリンパ行性・血行性・腹膜播種の複数経路により説明されること、CA-125上昇は約1/4の患者にとどまり原発性卵巣腫瘍との画像・マーカーによる鑑別が難しいこと、治療の中心はR0切除であり片側性でも予防的な両側卵巣摘出が推奨されること、中央生存期間14ヶ月・2年生存が稀であること、卵巣転移巣の発見が原発巣の診断に先行することが多いこと(Etiology・Pathophysiology・Epidemiology・Evaluation・Surgical Oncology・Prognosis各節に記載)、免疫染色で上皮マーカーのサイトケラチンAE1/AE3・上皮膜抗原陽性かつインヒビン・ビメンチン陰性を示すこと、原発性卵巣癌はCK7強陽性・CK20陰性の傾向があるのに対しKrukenberg腫瘍はCK20陽性またはCK7・CK20両陽性を示すこと(Histopathology節・Differential Diagnosis節)、化学療法は原発巣の組織型に基づき国内外のガイドラインに準拠して選択すること(Medical Oncology節)閲覧 2026-08-11
  2. 2.Molecular characteristics and metastatic mechanism of patients diagnosed with Krukenberg tumor from gastric cancer(Journal of Gastrointestinal Oncology・2026)単施設11例のシリーズで、72.3%に血管内腫瘍塞栓を認め血行性播種が主要な転移経路である可能性を示す一方、88.9%で6個以上のリンパ節転移を伴い、リンパ行性転移も並行して重要であること、対象例の全生存期間中央値が17か月(範囲6〜67か月)であったこと(Methods・Results・Discussion各節に記載)閲覧 2026-08-11