薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B32 Antineoplastics / 抗腫瘍薬 · 必修

オキサリプラチン

oxaliplatin

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
商品名(日本)
エルプラット
商品名(EU)
Eloxatin
科目
Pharmacology
トピック
B32: Drugs used in cancer treatment II (cytotoxic agents targeting DNA)
副作用
知覚異常しびれ
対象疾患
Krukenberg腫瘍胃癌癌性腹膜炎食道癌大腸癌膵癌
原因となる疾患
薬剤の血管外漏出

🧠 全体像は第3世代ので、DACH(diaminocyclohexane)というのおかげでシスプラチン抵抗性の腫瘍にも効くうえ、腎毒性・がほとんどないという利点を持つ。その代わりにで誘発される特徴的な末梢神経障害を持ち込み、これが大腸癌のFOLFOXレジメンで患者に「冷たい飲み物が飲めない、金属を触れない」という具体的なにつながる。

薬効群の中での位置づけ

プラチナ製剤3剤の比較

項目 シスプラチン
世代 第1世代 第2世代 第3世代
投与量の決め方 AUCベース(
腎毒性 強い(が必須) 軽度 軽度
あり(不可逆的な高音域感音難聴) 軽度 ほとんどない
骨髄抑制 中等度 強い(特に血小板減少) 中等度
末梢神経障害 あり(性・感覚優位) 少ない 特徴的(寒で誘発される急性型+性の慢性型)
の代表 中等度 中等度〜高度
代表適応 精巣癌・卵巣癌・・肺癌・ 卵巣癌・肺癌(腎機能低下・高齢者で優先) 大腸癌・胃癌(FOLFOX)

はシスプラチン・の弟分ではなく、DACHという別設計を持つ独立した 機構による認識のされ方がシスプラチンと異なるため、大腸癌のようなMMR関連の耐性機構を持つ腫瘍にも活性を示す点が使い分けの理由になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxaliplatin'>オキサリプラチン</span>が細胞内へ取り込まれる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Oxalate'>シュウ酸</span>(オキサラト)<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligand'>配位子</span>が外れる"]
    B --> C["DACH-白金の活性型がDNA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='guanine'>グアニン</span>N7に結合"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DNA intrastrand crosslink'>DNA鎖内架橋</span>を形成し複製・転写を停止"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell cycle-nonspecific'>細胞周期非特異的</span>)"]
    B -.->|"代謝物の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Oxalate'>シュウ酸</span>が<br>末梢神経の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated Na+ channel'>電位依存性Na⁺チャネル</span>に作用"| F["末梢神経の異常興奮"]
    F -.->|"寒<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cold'>冷刺激</span>でチャネル動態がさらに変化"| G["急性の寒冷誘発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory disturbance (paresthesia)'>感覚異常</span>"]

💡 DACHが「効き方」と「性」の両方を説明する。 DACH-白金はシスプラチンのアンミンよりDNA修復酵素に認識されにくく、を含む幅広い腫瘍に活性を持つ。一方で代謝過程で生じるが末梢神経のの不活性化を妨げるため、末梢神経が過剰に興奮しやすくなる。寒はこのチャネル動態をさらに助長するため、投与直後は冷たい飲食物・金属の接触・への曝露で症状が誘発される

薬物動態

項目 値・特徴
IVのみ
分布 と広く結合するが、その多くは不可逆的(活性体としては消失)
代謝 に速やかに加水分解される
排泄 が主体
半減期 白金の最終は非常に長い(週単位)が、遊離型のは数時間で消失する

適応

領域 使いどころ
消化器 大腸癌FOLFOXレジメンの中核。stage III・転移例)、胃癌(FOLFIRINOXの一部)

用法・用量

に基づくIV。大腸癌のFOLFOXレジメンではを併用する。を避ける(投与後数日は冷たい飲食物・への曝露、金属製の食器の使用を避ける)を必ず併せて行う。とともに末梢神経障害が悪化するため、症状に応じて減量・の調整を行う。実際の用量・投与期間はレジメン・術後補助か転移例かで大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:既存の高度末梢神経障害、への過敏症、妊娠
  • ⚠️ 急性の末梢神経障害は寒で誘発・増悪する。 投与直後の冷たい飲食物・曝露・金属接触を避けるよう患者指導を徹底する
  • 慢性の末梢神経障害は性。 蓄積するとに支障をきたし、しても回復に時間がかかることがある
  • 過敏反応は投与回数を重ねるほど増えるため、再投与時は観察を強化する

副作用

頻度 内容
高頻度 寒冷誘発性の急性(咽頭喉頭のを含むことがある)、消化器症状
注意 性の慢性末梢神経障害、骨髄抑制
重篤・まれ 過敏反応(アナフィラキシー様)、

まとめ

  • 第3世代の。DACHを持ち、という機序はプラチナ3剤で共通するが、修復されにくく大腸癌などdMMR腫瘍にも活性を示す。
  • 腎毒性・はほとんどない代わりに、寒で誘発される特徴的な末梢神経障害を持つ。
  • 急性型(投与直後・寒冷誘発性)と慢性型(性)の2相性を理解することが臨床対応の鍵。
  • 大腸癌のFOLFOXレジメンの中核であり、消化器癌全般に用いられる。
  • プラチナ3剤は親子ではなく並列——腎/耳毒性を避けたい場面でシスプラチンの代わりにはならず、独自の適応(大腸癌)を持つ。