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Disease Atlas · 血液 · 先天性疾患

周期性好中球減少症

Cyclic neutropenia

別名
周期性好中球減少
臓器系
血液小児
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 C/4:骨髄・リンパ系の非腫瘍性疾患小児科 3-58:口腔・咽頭疾患
鑑別疾患
PFAPA症候群
治療薬
フィルグラスチム
症状
発熱口内炎咽頭痛頸部リンパ節腫脹
検査値
血算

🧠 全体像:を理解する一点は⭐ 「好中球数が時計のように規則正しく約21日周期で上下し、その谷()に一致して発熱・・感染症状が現れる」ということである。原因の大半はをコードするELANE遺伝子ので、常染色体優性に遺伝する1。この「周期の規則性」こそが、同じく小児の反復性発熱を来すとの鑑別の軸になる——PFAPAは好中球数自体は正常に保たれたまま起こるであり、は好中球数の周期的な低下という血液学的な実体を持つ点が本質的に異なる2。⚠️ 重要な予後の違いとして、は悪性腫瘍・白血病への転化リスクの増加とは関連しない1——これは同じELANE関連好中球減少症のスペクトラムに含まれると対照的な点である。

病態:ELANE遺伝子変異と約21日周期

flowchart TD
    A["ELANE遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='autosomal dominant, AD'>常染色体優性遺伝</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='de novo mutation'>新生突然変異</span>例もあり)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil elastase, NE'>好中球エラスターゼ</span>の異常<br>骨髄での好中球産生の周期的な障害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='absolute neutrophil count (ANC)'>絶対好中球数</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='absolute neutrophil count'>ANC</span>)が<br>約21日周期で変動"]
    C --> D["好中球減少期(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='absolute neutrophil count'>ANC</span><0.2×10^9/L)が<br>3〜5日間持続"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Stomatitis'>口内炎</span>・発熱・咽頭炎・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical lymphadenopathy'>頸部リンパ節腫脹</span>・肛門周囲蜂窩織炎"]

患者105例を対象としたでは、94例(約90%)が7種類のELANEのいずれかについてであった1。だが例も報告されており、その頻度は不明である1。

⭐ 好中球数の変動は「なだらかな波」ではなく、はっきりした周期をもつ。 大半の患者で()が0.2×10⁹/L未満まで低下する好中球減少期が、およそ3週間隔で3〜5日間続く1。周期が3週間より長い、あるいは短い例、振幅が小さい例も5%未満で存在する1。この規則的な変動を、StatPearlsは「約21日周期(21-day turnover frequency)」と表現している2。⚠️ 小児のほうが成人より振動が明瞭で、症状も小児期のほうが重く、成人期には軽快する傾向がある1。

臨床像:好中球減少期に一致した症状の反復

好中球減少期には、約3週間隔でみられる、肛門周囲蜂窩織炎を含む蜂窩織炎、口腔咽頭の炎症・発熱・咽頭炎/扁桃炎・が繰り返し現れる。これらの症状セットが年5回以上みられる例は60%を超える1。⚠️ 重症・敗血症はまれだが、まれに敗血症・特発性腹膜炎・腸壊死といった重篤な長期合併症が報告されている2。

PFAPA症候群との鑑別

観点
病態 ELANE遺伝子変異による好中球産生の周期的障害 病態生理は未解明の
好中球数 周期的に低下する(好中球減少そのものが実体) 正常に保たれる
発作周期 約21日と規則的 2〜8日の発作が2〜12週間隔で反復し、ほど厳密には規則的でない
遺伝性 常染色体優性(家族性のことが多い)
診断の決め手 発作周期に合わせた血算の反復で好中球数の低下を確認する ()。の除外が診断要件の一つ3
重症度 敗血症・腹膜炎など重篤な感染症のリスクを伴いうる は完全に無症状、成長発達も正常で良性の経過

⭐ のは、の除外を診断要件の一つに明示的に組み込んでいる3。両者はともに小児の反復性発熱・・咽頭炎・という症状の組み合わせを呈するため、発作周期に合わせた血算の反復によって好中球数の推移パターンを確認することが鑑別の核心になる。

診断

診断には、規則的な好中球数の変動を実証するための血算(を含む)の反復測定が要る。StatPearlsは毎週の測定を挙げ、・病理組織学的検査、としてのELANE遺伝子の検査を併用するとしている2。

治療

⚠️ G-CSF(、約2μg/kg/日を連日または)が標準治療である。 は好中球減少期間の短縮に加え、周期そのものの長さも短縮する1。

予後

⭐ は、同じELANE関連好中球減少症のスペクトラムに含まれると異なり、悪性腫瘍・白血病への転化リスクの増加とは関連しない1。重症・敗血症はまれで、症状は小児期のほうが重く成人期に軽快する傾向がある1。ただし、まれに敗血症・特発性腹膜炎・腸壊死といった重篤な合併症が長期経過中に報告されている2。

まとめ

  • ⭐ はELANE遺伝子変異(常染色体優性)による好中球産生の周期的障害で、がおよそ21日周期・3〜5日間<0.2×10⁹/Lまで低下する好中球減少期を繰り返す。
  • 好中球減少期に一致して・蜂窩織炎(特に肛門周囲)・発熱・咽頭炎・が反復し、これらが年5回以上に及ぶ例が60%を超える。
  • との鑑別の核心は「好中球数そのものが周期的に低下するか」——PFAPAは好中球数が正常に保たれるで、はの除外を診断要件に明示する。
  • 治療は(、約2μg/kg/日)で、好中球減少期間と周期の長さの両方を短縮する。
  • リスクの増加はなく、症状は成人期に軽快する傾向があるが、まれに敗血症・腹膜炎など重篤な感染合併症が起こりうる。

出典

  1. 1.ELANE-Related Neutropenia(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2023)周期性好中球減少症の大半で絶対好中球数(ANC)が0.2×10⁹/L未満まで低下する好中球減少期がおよそ3週間隔で3〜5日間続くこと(周期が3週間より長い・短い例、振幅が小さい例が5%未満で存在する)、小児のほうが成人より振動が明瞭であること、好中球減少期に約3週間隔でみられる口内炎、好中球減少期に多い肛門周囲蜂窩織炎を含む蜂窩織炎、口腔咽頭の炎症・発熱・咽頭炎/扁桃炎・頸部リンパ節腫脹が年5回以上みられる例が60%を超えること、周期性好中球減少症患者105例中94例(約90%)が7種類のELANE病的バリアントのいずれかについてヘテロ接合性であったこと、常染色体優性遺伝で新生突然変異例も報告されているが頻度は不明であること、周期性好中球減少症が悪性腫瘍・白血病への転化リスクの増加と関連しないこと、症状が小児期のほうが重く成人期に軽快する傾向があること、重症新生児感染・敗血症はまれであること、G-CSF(約2μg/kg/日、連日または隔日投与)が好中球減少期間と周期の長さの両方を短縮することを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Cyclic Neutropenia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)周期性好中球減少症が常染色体優性遺伝でありまれな家族性の血液疾患であること、多くが小児期に発見され生涯にわたり持続すること、好中球数が約21日周期で変動すること(21-day turnover frequency)、PFAPA症候群が非遺伝性の自己炎症性疾患で3〜6日持続する反復性発熱にアフタ性潰瘍・咽頭炎・扁桃炎・頸部リンパ節炎を伴う点で周期性好中球減少症と異なること、長期合併症として敗血症・特発性腹膜炎・区域性腸壊死が report されているがまれであること、診断に毎週の白血球分画・骨髄生検・病理組織学的検査と確認検査としてのDNA検査を要することを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and cervical adenitis syndrome in children: a brief literature review(Revista Paulista de Pediatria・2022)PFAPA症候群の診断が除外診断であり修正Marshall基準(5歳未満発症の規則的な周期性発熱、上気道感染を伴わないアフタ性口内炎・頸部リンパ節炎・咽頭炎のいずれかを伴う、周期性好中球減少症の除外、発作間の完全な無症状期、正常な成長発達)に基づくことを確認した。閲覧 2026-09-07