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Drug Atlas · B3 Other / その他 · 必修

エクサガムグロジーン オートテムセル

exagamglogene autotemcel

分類
Gene & nucleic acid therapies / 遺伝子治療・核酸医薬
商品名(EU)
Casgevy
科目
Pharmacology
トピック
B3: Agents used in anemias
承認適応
鎌状赤血球症サラセミア
副作用
発熱口内炎
監視検査値
好中球絶対数血小板数
影響検査値
胎児ヘモグロビン好中球絶対数血小板数

🧠 全体像:は、CRISPR/Cas9という「遺伝子を狙って切る」技術を初めて承認まで到達させた治療である。狙う先は病的な遺伝子そのものではなく、()の産生を抑えているスイッチ(BCL11A遺伝子)——これを患者自身の造血幹細胞の中で切断・不活化することで、出生後は眠っているはずの産生を人為的に呼び覚ます。は鎌状赤血球症ではHbSの重合を妨げ、では不足するを代替するため、病型の異なる2つの疾患に同じ1つの戦略で効くという点が最大の特徴である。

薬効群の中での位置づけ

治療 手法 標的
他者ドナー由来の正常造血幹細胞へ置換 に依存、のリスク
遺伝子治療(Zynteglo等) 正常を追加導入 を用いた
(Casgevy) CRISPR/Cas9でBCL11A遺伝子を編集 患者自身の細胞。を使わない遺伝子破壊により産生を再活性化

⭐ ドナーを探す必要がなく、患者自身の細胞を使う()ため拒絶やのリスクがない点が、との決定的な違いである。一方でで遺伝子を「足す」既存の遺伝子治療とも異なり、CRISPR/Cas9は特定領域を「切って壊す」ことで、本来にしか働かない産生の抑制を解除する。

機序

flowchart TD
    A["患者自身のCD34+造血幹細胞を採取<br>(動員・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apheresis'>アフェレーシス</span>)"] --> B["体外でCRISPR/Cas9により<br>BCL11A遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythroid-specific enhancer'>赤芽球特異的エンハンサー</span>領域を編集"]
    B --> C["BCL11A発現が低下"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-globin gene'>γグロビン遺伝子</span>への抑制が解除され<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal hemoglobin (HbF)'>胎児ヘモグロビン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal hemoglobin'>HbF</span>)産生が再活性化"]
    D --> E["鎌状赤血球症:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal hemoglobin'>HbF</span>がHbSの重合を阻害"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thalassemias'>サラセミア</span>:不足する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta chain'>β鎖</span>の機能を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal hemoglobin'>HbF</span>が代替"]
    A --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='busulfan'>ブスルファン</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myeloablative conditioning'>骨髄破壊的前処置</span>後に<br>編集済み細胞を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='single infusion'>単回輸注</span>"]
    G --> H["編集細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='engraftment'>生着</span>し恒久的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal hemoglobin'>HbF</span>産生能を獲得"]

💡 BCL11Aは本来「胎児から成人への切り替えスイッチ」を担う転写因子。 出生後はBCL11Aがを抑制することでからHbAへの切り替えが起こるが、この治療はそのスイッチを人為的に「オフのまま」にすることで、のヘモグロビン産生プログラムを成人になっても維持させる。が多いほどHbSの重合や不足の影響が緩和されるため、遺伝子型そのものを修復せずとも症状を大きく改善できる。

適応

領域 使いどころ
血液内科 2歳以上の反復を伴う鎌状赤血球症、の1

用法・用量

CD34+造血幹細胞の動員・を行い、必要に応じて未編集の(2×10⁶ CD34+細胞/kg以上)を凍結保存したうえで、によるを輸注の48時間〜7日前に行う。編集済み細胞(最低用量3×10⁶ CD34+細胞/kg)を単回輸注する1。までの入院管理・支持療法を要するため、実施可能な専門施設でのみ行われる。

禁忌・注意

  • 明確な禁忌はないが、薬(など)自体の禁忌・注意事項に準じる
  • ⚠️ による骨髄破壊で好中球減少・血小板減少が必発であり、までの・出血リスクへの支持療法が前提となる
  • (VOD)が報告されており、歴・肝機能を踏まえた注意が必要
  • (DMSO)・を含む製剤に対する過敏症反応に注意

副作用

頻度 内容
高頻度(ほぼ必発) による好中球減少・血小板減少
高頻度(≧25%) Grade 3/4の、発熱を伴う好中球減少()
重篤・まれ に伴う出血、、1

まとめ

  • 技術を用いた米国初の承認治療(2023年12月、12歳以上の鎌状赤血球症)2。
  • 患者自身のCD34+細胞のBCL11A遺伝子領域を編集し、()産生を再活性化する——で遺伝子を「足す」既存の遺伝子治療とは異なる「切って壊す」戦略。
  • はHbSの重合を妨げ(鎌状赤血球症)、不足するを代替する()ため、病型の異なる2疾患に同じ機序で効く。
  • によるとを要し、までの好中球減少・血小板減少への支持療法が前提となる。
  • 適応年齢は当初12歳以上(鎌状赤血球症2023年12月・βサラセミア2024年1月の承認)だったが、2026年7月に2歳以上へ拡大された1。
  • 輸血依存そのものを断つ治療である点で、輸血量を減らすや、蓄積した鉄を除く・とは介入の階層が異なる。

出典

  1. 1.CASGEVY (exagamglogene autotemcel) — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Vertex Pharmaceuticals・2026)適応は2歳以上の反復血管閉塞発作を伴う鎌状赤血球症および輸血依存性βサラセミア(臨床試験の評価対象は5歳以上)。機序(CRISPR/Cas9によるBCL11A遺伝子赤芽球特異的エンハンサー領域の編集、HbF再活性化)、投与プロセス(動員・アフェレーシス、バックアップ細胞の凍結保存、ブスルファンによる骨髄破壊的前処置、単回輸注)、重大な副作用(Grade3/4の粘膜炎・発熱性好中球減少、好中球減少・血小板減少、遅延性血小板生着、静脈閉塞性肝疾患)を確認閲覧 2026-08-03
  2. 2.FDA Approves First Gene Therapies to Treat Patients with Sickle Cell Disease(U.S. Food and Drug Administration・2023)2023年12月8日にFDAが12歳以上の鎌状赤血球症患者に対する細胞由来遺伝子治療としてCasgevyとLyfgeniaを承認したこと、そのうちCasgevyはゲノム編集技術を用いた米国初のFDA承認治療であることを確認した閲覧 2026-08-25