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Drug Atlas · B3 Other / その他 · 必修

ルスパテルセプト

luspatercept

分類
Erythroid maturation agents / 赤血球成熟促進薬
商品名(日本)
レブロジル
商品名(EU)
Reblozyl
科目
Pharmacology
トピック
B3: Agents used in anemias
承認適応
サラセミア骨髄異形成症候群
副作用
血栓塞栓症頭痛関節痛

🧠 全体像:は「赤血球を増やす」という結果は(製剤)と同じでも、狙う段階がまったく違う薬である。がの増殖を促すのに対し、はスーパーファミリーシグナルを遮断することで後期赤芽球の成熟を妨げているブレーキを外す。のは「前駆細胞が増殖はするが成熟段階で壊れる」病態であるため、増殖を促すでは根本的な解決にならず、成熟を助けるが独自の役割を持つ。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的段階 機序 特徴
早期の 組換え受容体作動 増殖を促すが、による成熟障害は解除できない
後期の赤芽球() スーパーファミリーリガンドの捕捉→Smad2/3抑制 そのものを標的とし、輸血依存例の輸血量を減らす

⭐ 「増殖を助ける薬」と「成熟を助ける薬」は併存しうる別カテゴリー。 やのでは、この2つの段階のどちらが主にボトルネックになっているかで治療反応性が変わりうる。を標的とする薬としては、経口のも成人の選択肢に加わっている。

⭐ 輸血量を減らすことは、鉄過剰の予防そのものでもある。 の管理では・によるが必須になるが、これらは既に蓄積した鉄を除く下流の治療である。のように輸血回数そのものを減らす薬、さらにはのように輸血依存から離脱させる治療は、鉄の流入側を減らす上流の介入という位置づけになる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Luspatercept'>ルスパテルセプト</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activin receptor type IIB (ActRIIB)'>アクチビン受容体IIB</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular domain'>細胞外ドメイン</span>+<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunoglobulin G1'>IgG1</span> <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc fusion protein'>Fc融合蛋白</span>)が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transforming growth factor-beta'>TGF-β</span>スーパーファミリーリガンドを捕捉"] --> B["リガンドが本来の受容体(ActRIIB)に結合できなくなる"]
    B --> C["下流のSmad2/3シグナル伝達が減弱する"]
    C --> D["後期赤芽球(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthochromatic erythroblast'>正染性赤芽球</span>)の成熟を<br>抑えていたブレーキが解除される"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ineffective erythropoiesis'>無効造血</span>で停滞していた赤芽球が成熟段階へ進み<br>末梢への赤血球放出が増える"]

💡 非依存の経路である点が臨床的に重要。 は受容体を介さないため、抵抗性の(重度のβサラセミアや一部の)でも独立した効果が期待できる。この非依存性が、既存のと併用ではなく別枠の薬効群として扱われる理由になっている。

適応

⚠️ 承認されている適応は地域で大きく違う。日本ではに適応が無い。

地域 承認されている適応
米国 ①定期的なを要する成人βサラセミアの貧血1 ②ESA未使用(ESA-naïve)でを要しうる very low〜intermediate リスクのに伴う貧血 ③ESAで効果が得られず8週間に2単位以上のを要する very low〜intermediate リスクのを伴う、またはとを伴う骨髄異形成/に伴う貧血。輸血非依存性のβサラセミアには適応がないと明記されている2
EU ①の very low・low・intermediate リスクのによる貧血(ESAの使用歴やの有無で区切られていない) ②・いずれのβサラセミアに伴う貧血3
日本 に伴う貧血のみ。の適応は無い。IPSS-RのHigh・Very Highに対する有効性・安全性は確立していない4

⚠️ 貧血の即時是正が必要な患者に、の代わりとして用いる薬ではない(米国の添付文書が「Limitations of Use」として明記している)2

用法・用量

皮下注射で1 mg/kgを3週毎に投与し、毎回の投与前にヘモグロビン値と輸血歴を確認する2。

適応 増量の刻み 上限
βサラセミア(米国・) 1 mg/kgを2回(6週間)以上投与しても量が減らなければ1.25 mg/kgへ(の基準は「輸血量が3分の1以上減らない場合」) 1.25 mg/kg
(米国・・日本) 1 mg/kg → 1.33 mg/kg → 1.75 mg/kg と、6週間(2回)以上の間隔をあけて1段階ずつ 1.75 mg/kg

⚠️ 増量の上限は適応で違う。 βサラセミアの上限は1.25 mg/kgであり、の1.75 mg/kgを読み替えて使わない。また1.33 mg/kgという中間の段がにだけ存在する23。

⚠️ の閾値は適応と国で違う。米国では、同じでも適応の切り方によって違う。 輸血をしていない状態での投与前ヘモグロビンについて、米国の添付文書はβサラセミアで11.5 g/dL以上、ESA未使用の(表3)で12 g/dL以上、ESA不応・不耐の(表4)で11.5 g/dL以上をの閾値とし、いずれも11 g/dL以下へ戻ったら同じ用量で再開する2。のは適応で分けず、3週間以上輸血のない状態でヘモグロビンが12 g/dL以上なら11 g/dL以下になるまで投与を延期するという単一の規定を置く3。日本の電子添文はについて11.5 g/dL以上で、11 g/dL以下で再開としている4。いずれも、輸血なしで3週間以内に2 g/dLを超える上昇があれば1段階減量する。実際のは治療反応性・に応じて施設のプロトコル・添付文書で確認する。

  • 減量の下限も違う。 米国はで1.75→1.33→1→0.8→0.6 mg/kgと下げ、0.6 mg/kgでも継続できなければ中止する2。はとβサラセミアでは0.8 mg/kg未満へ下げず、0.6 mg/kgという段が使えるのはβサラセミアだけである3
  • βサラセミア(のみの適応)は増量の判断基準も違う。 輸血依存例が「量が3分の1以上減らない」ことを増量の根拠にするのに対し、非輸血依存例では同じ用量を2回(6週間)以上投与してもベースラインからの投与前ヘモグロビンの上昇が1 g/dL未満であれば1段階増量する(上限は同じく1.25 mg/kg)3

禁忌・注意

⚠️ 禁忌は地域で違う。米国の添付文書には禁忌が1項目も無い。

地域 添付文書上の禁忌
①または添加剤への過敏症 ②妊娠 ③の増大を抑える治療を要する患者3
日本 本剤の成分に対する過敏症の既往のみ。妊婦は禁忌ではなく「投与しないことが望ましい」4
米国 なし(禁忌の項が「None」)。は「および使用上の注意」に置かれている2
  • ⚠️ 妊娠:では禁忌で、妊娠している女性に投与を開始してはならない3。日本では「投与しないことが望ましい」4、米国では禁忌ではなくのとして扱われる2。いずれも根拠は・ウサギの生殖発生毒性試験(胚・胎児死亡、発育への影響、)である。妊娠する可能性のある女性には、投与中および最終投与後3か月間の避妊を指導する
  • ⚠️ 血栓塞栓症:βサラセミアの試験で3.6%(8/223)に報告され、・肺塞栓症・・を含む。やの併用など危険因子のある患者ではリスクがさらに高まりうるため、を考慮する2。の添付文書はさらに、報告された血栓塞栓症は全例がで、の既往やの併用など他の危険因子を少なくとも1つ持っていたと記している。での血栓塞栓症は3.9%(13/335)で、いずれも心房細動・脳卒中・心不全・などの危険因子を持つ患者に生じた。⚠️ ただしでは プラセボ群も3.9% で、本剤群と同率である——リスクが示されているのはβサラセミアのほうである3
  • ⚠️ :βサラセミアの3.2%(10/315)に認められ、脊髄圧迫症状は1.9%(6/315)に生じた。危険因子はの既往・・脾腫・・ベースラインのヘモグロビン8.5 g/dL未満。開始時と治療中に症状・徴候を観察し、重篤な合併症を生じたら投与を中止する。ではの増大を抑える治療を要する患者そのものが禁忌である23。日本ではは海外市販後の自発報告としてまれに報告されている段階である4
  • ⚠️ 頻度が高いのは、だけが承認している「」βサラセミアのほうである。 βサラセミアではが 6.3%(6/96、2.0%)——の3.2%の約2倍——に生じ、脊髄圧迫は1.0%(1/96)。期を含めると 8/134(6.0%)で、7/8はGrade 1〜2、6/8は発現後も投与を継続できた3。米国はこの集団を適応に含めていないが、米国の添付文書もこの試験の数値(6.3% 対 2%)をの項に引いたうえで「本剤はβサラセミアの患者への使用に適応を持たない」と明記している2
  • ⚠️ は「開始後しばらく」の問題ではない。 のは、96週を超える長期投与のあとにもが生じうると明記している。したがって観察はで打ち切らず、治療期間を通して続ける3
  • ⚠️ 高血圧:11.4%(63/554)に報告され、Grade 3〜4の高血圧は試験により2〜9.6%だった。毎回の投与前に血圧を測定する2。の添付文書はさらに、血圧が十分にコントロールされてから投与を開始すること、持続する高血圧や既存の高血圧の増悪があれば治療継続の利益を再評価することを求めている3
  • 日本の電子添文は、の治療に十分な知識・経験を持つのもとで使用し、投与中はを定期的に観察して必要以上の造血作用が現れないよう注意することを求めている。またで、高リスクへの進行やへの移行を含むが報告されている4

副作用

頻度 内容
高頻度(10%超) 疲労、頭痛、、関節痛、めまい、悪心、下痢、咳嗽、腹痛、呼吸困難、、高血圧、過敏症2
重篤 血栓塞栓症(βサラセミアで3.6%)、(βサラセミアで3.2%、うち脊髄圧迫症状1.9%)2

まとめ

  • (増殖を促す製剤)と対比される、後期赤芽球の成熟を促す。
  • スーパーファミリーリガンドを捕捉してSmad2/3シグナルを減弱させ、で止まっていたのブレーキを外す、非依存の機序。
  • 適応は地域で違う——米国はの成人βサラセミアと一部の、は・いずれのβサラセミアとの、日本はに伴う貧血のみでの適応が無い。
  • 皮下注3週毎投与、は適応を問わず1 mg/kg。増量の上限はβサラセミア1.25 mg/kg・1.75 mg/kgで、混同しない。
  • ⚠️ の閾値を「なら12 g/dL」と覚えない。 米国の添付文書では12 g/dLはESA未使用のだけで、ESA不応・不耐のとβサラセミアは11.5 g/dL、日本のも11.5 g/dL、は適応を分けず12 g/dLである。再開の閾値だけがどこも11 g/dL以下で共通する。
  • 血栓塞栓症(βサラセミアの報告例は全例が)・(脊髄圧迫症状1.9%)・高血圧に注意し、毎回の投与前に血圧とヘモグロビンを測定する。
  • 禁忌の書き方も地域で違う。 は妊娠との増大制御を要する患者を禁忌に挙げるが、米国の添付文書には禁忌が1項目も無い。
  • 2019年に米国でβサラセミア適応が承認され、を標的とする薬物療法の代表例となった。

出典

  1. 1.BLA 761136 Approval Letter — REBLOZYL (luspatercept-aamt) for subcutaneous injection(U.S. Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research・2019)2019年11月8日を発効日とする承認書で、ルスパテルセプト(REBLOZYL)が「定期的な赤血球輸血を要する成人βサラセミア患者の貧血の治療」を適応として承認されたことを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.REBLOZYL (luspatercept-aamt) for injection — Prescribing Information(Bristol-Myers Squibb / U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2026)改訂表示は2026年2月。適応が3つ(定期輸血を要する成人βサラセミア、ESA未使用の very low〜intermediate リスク骨髄異形成症候群、ESA不応・不耐で8週に2単位以上の輸血を要する環状鉄芽球を伴う骨髄異形成症候群または環状鉄芽球と血小板増多を伴う骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍)であり、輸血非依存性βサラセミアには適応がないと明記されていること、禁忌が「None」であること、用法(皮下注1 mg/kgを3週毎、βサラセミアは1.25 mg/kg、骨髄異形成症候群は1.33を経て1.75 mg/kgが上限)、休薬の閾値が適応ごとに書き分けられており、輸血なしでの投与前ヘモグロビンがβサラセミア(2.1項)で11.5 g/dL以上、ESA未使用の骨髄異形成症候群(表3)で12 g/dL以上、ESA不応・不耐の骨髄異形成症候群(表4)で11.5 g/dL以上なら休薬し、いずれも11 g/dL以下で同用量再開とされること、骨髄異形成症候群の減量が1.75→1.33→1→0.8→0.6 mg/kgで0.6 mg/kgでも継続できなければ中止となること、警告(血栓塞栓症はβサラセミアで3.6%(8/223)・骨髄異形成症候群で記載なし、高血圧11.4%(63/554)でGrade3〜4は2〜9.6%かつ毎回の投与前に血圧測定、髄外造血巣は輸血依存性βサラセミアで3.2%・脊髄圧迫症状1.9%、胚・胎児毒性と最終投与後3か月間の避妊)を確認した閲覧 2026-09-08
  3. 3.Reblozyl 25 mg / 75 mg powder for solution for injection — Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2025)EUの適応が「輸血依存性の very low・low・intermediate リスク骨髄異形成症候群による貧血」と「輸血依存性および非輸血依存性いずれのβサラセミアに伴う貧血」の2つで、米国のようなESA使用歴・環状鉄芽球による区切りが無いことを確認した。禁忌は①有効成分または添加剤への過敏症②妊娠③髄外造血巣の増大を抑える治療を要する患者の3項目で、妊娠中は投与を開始してはならないと明記されている。血圧は十分にコントロールされてから開始し毎回の投与前に測定すること、骨髄異形成症候群での血栓塞栓症は3.9%(13/335)で全例が危険因子を持っており4.8項によればプラセボ群も同率の3.9%であること、βサラセミアの血栓塞栓症は全例が脾摘後で他の危険因子を少なくとも1つ持っていたこと、輸血依存性βサラセミアの髄外造血巣が3.2%(10/315、プラセボ0.0%)・脊髄圧迫症状1.9%(6/315)である一方、**非輸血依存性βサラセミアでは6.3%(6/96、プラセボ2.0%)・脊髄圧迫1.0%(1/96)で、非盲検期を含めると8/134(6.0%)**であること、危険因子に髄外造血巣の既往・脾摘・脾腫・肝腫大・ベースラインのヘモグロビン8.5 g/dL未満が挙がること、髄外造血巣は96週を超える長期投与のあとにも生じうると明記されていることも確認した。用量については、開始用量が適応を問わず3週毎1 mg/kgであること、休薬規定が適応で分かれず「3週間以上輸血のない状態でヘモグロビン12 g/dL以上なら11 g/dL以下になるまで投与を延期する」の1本であること、減量の下限が骨髄異形成症候群および輸血依存性βサラセミアで0.8 mg/kg・非輸血依存性βサラセミアでのみ0.6 mg/kgであること、非輸血依存性βサラセミアの増量基準が「同一用量を2回(6週間)以上投与してもベースラインからの投与前ヘモグロビン上昇が1 g/dL未満」であり上限は1.25 mg/kgであることも確認した閲覧 2026-09-08
  4. 4.レブロジル皮下注用25mg/レブロジル皮下注用75mg 電子添文(ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社 / 医薬品医療機器総合機構・2026)2026年4月改訂の第3版。日本での効能又は効果は「骨髄異形成症候群に伴う貧血」のみでサラセミアの適応が無いこと、IPSS-RのHigh及びVery Highに対する有効性・安全性が確立していないこと、禁忌が本剤の成分に対する過敏症の既往のみで妊婦は禁忌ではなく9.5項で「投与しないことが望ましい」とされていること、用法が1回1.0 mg/kgを3週間間隔で皮下投与し1回1.75 mg/kgを超えないこと、用量レベルが0.45〜1.75 mg/kgの6段階であること、輸血なしでヘモグロビン11.5 g/dL以上で休薬し11 g/dL以下で再開すること、妊娠する可能性のある女性には投与中および最終投与後3か月間の避妊を説明すること、髄外造血巣が海外市販後の自発報告としてまれに報告されていること、臨床試験で高リスク骨髄異形成症候群への進行や急性骨髄性白血病への移行を含む造血器悪性腫瘍が報告されていることを確認した閲覧 2026-09-08