薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B3 Hematopoietic growth factors / 造血因子製剤

アバトロンボパグ

avatrombopag

分類
Hematopoietic growth factors / 造血因子製剤
商品名(日本)
ドプテレット
商品名(EU)
Doptelet
科目
Pharmacology
トピック
B3: Agents used in anemias
承認適応
免疫性血小板減少症(ITP)肝硬変
副作用
血栓塞栓症
監視検査値
血小板数
相互作用
フルコナゾールリファンピシン

🧠 全体像:アバトロンボパグはと同じ経口・低分子の受容体作動薬(-RA)だが、決定的に違うのは受容体への結合の仕方である。は内因性とは異なる部位()に結合してに働くのに対し、アバトロンボパグは内因性とを取り合わず、とに働く。この「競合しない」という性質が、にとして課される肝毒性モニタリングをアバトロンボパグが持たない、という臨床上の違いに直結する。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 剤形 受容体との関係 固有の注意点
経口・低分子 内因性とは異なる部位()に結合 :肝毒性。とので服用タイミング調整が必要
アバトロンボパグ 経口・低分子 内因性と競合せず、に作用 なし、禁忌も過敏症のみ。食後投与でのが無い
皮下注 (内因性と同じ部位)に結合 週1回通院が必要。のリスク

⭐ ASH 2026 は、アバトロンボパグ・・ヘトロンボパグ・・遺伝子組換えヒトの5剤を「刺激薬」として互換に扱っている。 副腎皮質ステロイド(±)による初回治療後になお追加治療を要する成人の原発性に刺激薬を推奨(強い推奨・確実性は中)し、承認されている薬剤であればいずれを標準で用いてもよいとする(優劣は述べない)1。したがって薬剤選択は、剤形(経口か皮下注か)・肝毒性モニタリングの要否・服用タイミングのなど個別の使い勝手で決まる。

機序

flowchart TD
    A["アバトロンボパグが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>される"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid peroxidase'>TPO</span>受容体(c-Mpl)に結合するが<br>内因性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid peroxidase'>TPO</span>とは結合部位を取り合わない"]
    B --> C["内因性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid peroxidase'>TPO</span>のシグナルと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='additive'>相加的</span>に<br>受容体を活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megakaryocyte progenitor cell'>巨核球前駆細胞</span>の増殖・分化が促進される"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thrombopoiesis'>血小板産生</span>が増加"]

💡 「競合しない」ことの意味は、内因性の働きを邪魔しないということ。 投与開始から3〜5日での上昇が始まり、10〜13日でピークに達する2。このの速さが、患者での「手技前投与」という使い方——手技の10〜13日前から服用を始めてピーク時に手技を迎える——を成立させている。

適応

日本の電子添文(2025年8月改訂)による。

領域 使いどころ
肝臓・消化器 な手技を予定している肝硬変などの患者の。出血リスクが高いと考えられる場合に使用し、開腹・・開心・または臓器切除を伴う手技の場合は投与を避ける3
血液内科 持続性及び慢性の()。診断後6か月以上経過し、他の治療で十分な効果が得られない患者に使用する3

⭐ 米国添付文書はの適応をさらに広げ、1歳以上の小児(持続性・慢性で前治療に反応不十分)にも認めている(DOPTELET SPRINKLE製剤)2。⚠️ 日本の電子添文の効能又は効果に小児の年齢区分は明記されていないため、この小児適応は米国添付文書の記載として確認したものである。

用法・用量

患者(日本の電子添文):手技の施行予定日の10〜13日前を目安に開始し、40,000/μL未満なら60 mg、40,000以上50,000/μL未満なら40 mgを1日1回・5日間・食後投与する3。慢性:20 mgを1日1回食後投与から開始し、2週間ごとにに応じて調整、最高40 mgまで3。米国添付文書の目標は50×10⁹/L以上の維持である2。実際の用量・調整幅は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

⚠️ と異なり、(・カルシウムなど)との服用間隔のは無い。 アバトロンボパグは食後投与のみが求められ、空腹時投与やを避けるための時間調整は不要である。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者のみ。米国添付文書も「None」(該当なし)としており、のような(肝毒性モニタリング)は課されていない32
  • ⚠️ が正常範囲以下であっても血栓症が報告されているため、にかかわらず血栓症の発現に十分注意する。重大な副作用として(0.3%)・脳卒中(0.3%)が挙がる3
  • CYP2C9及びの中等度・強度の二重阻害薬(など)併用時は本剤の血中濃度が上昇し副作用が増強しうるため、初回投与量を週3回20 mgに減量する32
  • CYP2C9及びの中等度・強度の二重(リファンピシンなど)併用時は本剤の血中濃度が低下し有効性が減弱しうるため、初回投与量を1日1回40 mgに増量する32

副作用

頻度 内容
高頻度() 発熱、腹痛、悪心、頭痛、疲労、2
高頻度(慢性) 頭痛、疲労、、、、関節痛、、点状出血、2
重篤・まれ 血栓塞栓症(・脳卒中を含む)、出血(0.3%)3

まとめ

  • と同じ経口低分子-RAだが、内因性とを競合せずに働く点が異なり、これが・食事の無さにつながっている。
  • 適応は日本ではの手技前のと、持続性・慢性(診断後6か月以上)の2領域。米国では1歳以上の小児にも適応が広がる。
  • では手技の10〜13日前から別(40 mg/60 mg)に5日間投与、では20 mgから開始しを指標に調整する。
  • 禁忌は過敏症のみだが、が正常でも血栓症が起こりうる点に注意が必要で、CYP2C9/の二重阻害薬・とはが要る。
  • ⭐ ASH 2026 は、追加治療を要する成人への刺激薬としてアバトロンボパグを他4剤(・ヘトロンボパグ・・遺伝子組換えヒト)と互換に扱い、優劣を述べていない。

出典

  1. 1.American Society of Hematology 2026 Guidelines for Immune Thrombocytopenia (ITP)—Initial and Second-Line Therapy in Adults with Primary ITP(American Society of Hematology・2026)全57頁の本文PDFを取得して確認した。推奨2aは、副腎皮質ステロイド(±IVIG)による初回治療の後になお追加治療を要する成人の原発性ITPに血小板産生刺激薬を推奨し(強い推奨・エビデンスの確実性は中)、またはリツキシマブを提案する(条件付き推奨・確実性は低)。そのRemarksは、承認されている血小板産生刺激薬であればいずれを標準開始用量で用いてもよいとするだけで薬剤間の優劣を述べない。Explanations and other considerationsの段は、2つの多群比較の設問でパネルがアバトロンボパグ・エルトロンボパグ・ヘトロンボパグ・ロミプロスチム・遺伝子組換えヒトトロンボポエチンのすべてを互換として扱ったと明記する。⚠️ 出版社サイトは今回も403で、読んだのはInternet Archiveに保存された出版社のFirst Edition版PDF(組版前の採択原稿、Tracking no ADV-2026-021269R1)であり、誌上版との異同は確認していない閲覧 2026-09-17
  2. 2.DOPTELET (avatrombopag) tablets and DOPTELET SPRINKLE (avatrombopag) oral granules: Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2025)全文PDF(Reference ID 5631127、Revised 07/2025)を取得して確認した。機序(12.1項)が「Avatrombopag does not compete with TPO for binding to the TPO receptor and has an additive effect with TPO on platelet production」——内因性TPOと受容体への結合を競合せず、内因性TPOと相加的に働く——であること。適応が①待機的な観血的手技を予定している成人の慢性肝疾患患者の血小板減少症、②前治療に反応不十分な成人の慢性免疫性血小板減少症、③1歳以上で持続性・慢性の免疫性血小板減少症を持つ小児患者(前治療に反応不十分)の3領域であること。慢性肝疾患患者の用量が、手技の10〜13日前から5日間、血小板数40×10⁹/L未満で60mg・40〜50×10⁹/L未満で40mgを1日1回食後投与であること、成人ITPでは20mgから開始し血小板数50×10⁹/L以上を維持するよう調整し1日40mgを超えないこと。**禁忌欄が「None」(該当なし)で枠組み警告も無い**こと(エルトロンボパグの肝毒性に関する枠組み警告とは対照的)。警告・注意(5.1項)がTPO受容体作動薬に共通する血栓性・血栓塞栓性合併症のリスクを述べ血小板数のモニタリングと血栓塞栓症の徴候の観察を求めること。相互作用(7.1項)でCYP2C9及びCYP3A4の中等度・強度の二重阻害薬併用時は週3回20mg、二重誘導薬併用時は1日1回40mgへ初期用量を調整するとしていること。成人ITPでの主な副作用(10%以上)が頭痛・疲労・打撲・鼻出血・上気道感染・関節痛・歯肉出血・点状出血・鼻咽頭炎であることを確認した閲覧 2026-09-22
  3. 3.ドプテレット錠20mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(Sobi Japan/旭化成セラピューティクス)・2025)電子添文の全文(2025年8月改訂・第6版、効能・用法及び用量が変更された版)を取得して確認した。効能又は効果が①待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善(出血リスクが高いと考えられる場合に使用し、開腹・開胸・開心・開頭または臓器切除を伴う観血的手技の場合は投与を避ける)、②持続性及び慢性免疫性血小板減少症(診断後6か月以上経過し他の治療で十分な効果が得られない患者に使用)であること。用法及び用量が、慢性肝疾患患者では血小板数40,000/μL未満で60mg・40,000以上50,000/μL未満で40mgを観血的手技の10〜13日前を目安に1日1回5日間食後投与し、慢性ITPでは20mg1日1回食後から開始し2週間ごとに血小板数に応じて調整し最高40mgまでであること。禁忌が本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者のみであること。血小板数が正常範囲以下でも血栓症が報告されており血小板数にかかわらず血栓症の発現に注意すべきこと、重大な副作用に門脈血栓症(0.3%)・脳卒中(0.3%)が挙がること。相互作用として、CYP2C9及びCYP3A4阻害剤(フルコナゾール等)との併用で本剤の血中濃度が上昇し副作用が増強しうるため初回投与量を週3回20mgとすること、CYP2C9及びCYP3A4誘導剤(リファンピシン等)との併用で本剤の血中濃度が低下し有効性が減弱しうるため初回投与量を1日1回40mgとすることを確認した閲覧 2026-09-22