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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

Vogt-小柳-原田病

Vogt-Koyanagi-Harada disease

別名
原田病VKH
臓器系
眼科免疫・膠原病全身
科目
Medical Genetics and Immunology (Immunology)Pulmonology and Thoracic SurgeryOncology and Reconstructive Oncoplastic Surgery
トピック
免疫学 8.1:免疫寛容呼吸器内科 40:サルコイドーシス腫瘍学 I-28:がん免疫療法の副作用
鑑別疾患
サルコイドーシスベーチェット病中心性漿液性脈絡網膜症
合併症
網膜剥離緑内障白内障
関連疾患
尋常性白斑
治療薬
メチルプレドニゾロンプレドニゾロンシクロスポリンAアザチオプリンミコフェノール酸モフェチルアダリムマブ
症状
脈絡網膜炎急性前部ぶどう膜炎耳鳴難聴頭痛羞明
検査値
髄液検査
画像所見
脈絡網膜萎縮

🧠 全体像:は「に対する自己免疫」という機序ひとつで全身像が説明できる疾患である。が多い臓器を順に並べると、眼()・髄膜・内耳・皮膚——そのまま本症の4つの症状群になる。もう一つの軸が病期で、の髄膜炎症状 → の両眼性と → の(・・) → の前部ぶどう膜炎、と主役が入れ替わる。は「今起きていること」ではなく「起きたことの跡」で、これを見た時点では過ぎている。だから治療は「早期の大量ステロイドと、十分に長い」に尽きる。

一本の機序が4つの臓器を説明する

本症はに対するが破綻し、T細胞主体のがに富む組織を攻撃する疾患である。標的はをはじめとする分化関連蛋白で、侵される臓器は・髄膜・内耳・皮膚である1。

侵される臓器 の所在 現れる症状
眼 (ぶどう膜) 両眼性の、(漿液性)、
髄膜 ・くも膜 頭痛・・発熱などの、髄液の
内耳 、高音域優位の感音難聴、めまい
皮膚・毛 表皮・毛包 、、脱毛

💡 臓器の並びを暗記するのではなく、「はどこにいるか」を思い出せばよい。 前庭・聴覚症状は患者の75%にみられ、感音難聴は高音域から始まる1。

遺伝素因と誘因

  • HLA-DRB1*04:05 が最も強い感受性因子である1。日本・中国・ラテンアメリカなど、有色人種の集団に多く、欧州系には少ない。
  • が誘因の候補として提唱されている。の462番付近の配列とのは、HLA-DRB1*0405 への結合に重要な6アミノ酸を共有する1。ウイルス抗原に応答したT細胞が自己のとする、という筋書きである。
  • インドではぶどう膜炎の原因として最多(21.08%)、米国のぶどう膜炎紹介例の約4%、日本では8%を占める1。

病期で主役が入れ替わる

病期 中心となる所見
数時間〜数週間続く、頭痛、、めまい、。髄液のがこの時期にみられ、症状が消えたあとも数週間持続しうる1
(急性ぶどう膜炎期) 両眼性のびまん性炎、、の充血・浮腫、。のでがし、を来すことがある2
が前面に出る。(とのびまん性による赤色調の眼底)と(周囲の)。・・脱毛は急性期の数週間〜数か月後に出現する2
肉芽腫性の前部ぶどう膜炎が反復する。・緑内障・・を合併しやすい2

⚠️ を「診断の決め手」として待たない。 これはの所見であり、が失われた結果として現れる。ここに至ってから治療を強化しても、失われた色素は戻らない。急性期のとの組み合わせで疑うのが正しい順序である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='melanocyte'>メラノサイト</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune tolerance'>免疫寛容</span>の破綻(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human leukocyte antigen'>HLA</span>-DRB1*04:05 素因)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Prodromal stage'>前駆期</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meningismus'>髄膜刺激症状</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CSF pleocytosis'>髄液細胞増多</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tinnitus'>耳鳴</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular phase'>眼病期</span>:両眼性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffuse granulomatous uveitis'>びまん性肉芽腫性ぶどう膜炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='exudative retinal detachment'>滲出性網膜剥離</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic disc edema'>視神経乳頭浮腫</span>"]
    C --> D{"この時期に大量ステロイドを開始できたか"}
    D -->|"開始できた・十分な期間<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>した"| E["炎症が鎮静し視力が回復"]
    D -->|"遅れた・早く切った"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recovery phase'>回復期</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sunset glow fundus'>夕焼け状眼底</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitiligo'>白斑</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='poliosis'>白毛</span>・脱毛"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic recurrent phase'>慢性再発期</span>:肉芽腫性前部ぶどう膜炎の反復<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cataract'>白内障</span>・緑内障・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroidal neovascularization'>脈絡膜新生血管</span>"]

診断は改訂国際診断基準(2001年)による

現行の基準は、1999年の第1回国際ワークショップの議論をもとに国際委員会が起草し、2001年に公表した改訂基準である3。多臓器性であることと、病期によって眼所見が変わることの両方を織り込んで作られている点が旧基準との違いになる。

3区分の要点は次のとおり2。

区分 満たすもの
complete(完全型) 眼所見に加えて、神経・聴覚所見と皮膚所見の両方がある
incomplete() 眼所見に加えて、神経・聴覚所見か皮膚所見のいずれか一方がある
probable(疑い/眼型) 眼所見のみで、も皮膚所見も無い

completeの5大項目は次のように整理できる。

  1. ぶどう膜炎の発症前に・の既往が無いこと。
  2. 他の眼疾患を示唆する臨床的・検査的根拠が無いこと。
  3. 両眼性の。早期はびまん性炎(限局性の漿液貯留または水疱状のを伴う)、後期はまたはといった所見に、の・の凝集や移動・反復性/慢性の前部ぶどう膜炎などの追加所見を伴うもの。
  4. 神経・聴覚所見(、、のいずれか1つ)。診察時にすでに消失していてもよい。頭痛だけでは不十分。
  5. 皮膚所見(脱毛・・のいずれか1つ)。中枢神経またはの発症より後に生じたものであることを要する。

⚠️ 1と2は3区分すべてに共通する除外項目である。 特に・の既往は、後述するとの線引きそのものであり、これをで落とすと診断名が入れ替わる。

補助検査

  • (OCT):急性期はと、慢性・再発期はの菲薄化。
  • (点状の漏出と貯留、の染色)と(炎症の評価と、ステロイド中の潜在的活動性の検出)。
  • :〜早期急性期に、蛋白上昇、糖正常というの像2。症状発現の近くで行うほど情報が得られる。
  • 聴力検査:両側高音域優位の感音難聴が、が軽微でも検出されることがある。
  • 感染性・肉芽腫性の類似疾患(梅毒・結核・)の除外検査は、診断を確定する前に必須である2。

鑑別

相手 分ける手がかり
両眼性の・・点状漏出まで酷似し、・の既往が分からなければ臨床的に区別できない2。既往の有無が唯一かつ決定的な鍵で、病期が整然と進むに対しの経過は不規則、全身症状も乏しい
は共通だが所見を欠き、非対称のことが多い。ステロイドの使用後に起こりうる点も逆で、ステロイド中止で軽快する2
感冒様・頭痛・急速な・斑状白色を共有する。自然軽快し、に乏しく、髄液は通常正常2
として重なる。・血清・全身の肉芽腫所見で分ける
再発性のとが中心で、口腔・を伴う。性のは来さない
梅毒・結核 感染性のぶどう膜炎。ステロイド単独で悪化させるため、確定前に必ず除外する
白血病の ぶどう膜炎・炎・を来し、点状漏出まで似ることがある2

治療:早く、強く、長く

⭐ 「早期の大量ステロイドと、十分な期間の」が予後を決める。

  • 急性期は1,000 mg/日を3日間静注し、続いて経口1〜2 mg/kg/日を最低6か月かけてするのが従来からの標準である2。
  • ⚠️ 6か月未満で切ると再発する。 6か月以上の全身ステロイド投与は短期投与より再発率が低く視力予後が良く、ある研究ではの早期中止が再発リスクを8倍超に上げた2。
  • 免疫調節薬をステロイドへ早期に併用すると、再発が有意に減り、最終視力が改善し、のリスクが下がる2。には()・・・()が用いられる1。
  • 「」という概念があり、発症から3〜4週間の治療開始の遅れは、用いたステロイドによらず再発と合併症のリスク上昇と関連すると観察研究で示唆されている1。
  • 適切な治療が速やかに行われれば、60〜70%の患者で視力の実質的な改善が得られる1。
  • 局所(・)ステロイドは補助にはなるが、聴覚・状には作用しない。全身治療の代わりにはならない。

💡 治療戦略の要点は「炎症を鎮めること」だけでなく「へ移行させないこと」にある。・・はいずれも慢性化の帰結であり、初期治療の強度と期間で確率が変わる。

まとめ

  • はに対するT細胞性の自己免疫で、・髄膜・内耳・皮膚というに富む4臓器が侵される。HLA-DRB1*04:05 が最も強い感受性因子。
  • 病期は(・)→ (両眼性と)→ (・・・脱毛)→ (肉芽腫性前部ぶどう膜炎の反復)。
  • はの所見であり、診断を待つ目印にしてはいけない。急性期に疑って治療を始めることが目標。
  • 診断は2001年の改訂国際による。complete(神経・聴覚所見と皮膚所見の両方)・incomplete(いずれか一方)・probable(眼所見のみ)の3区分で、いずれも・の既往と他の眼疾患の除外が前提になる。
  • は臨床像がほぼ同じで、・の既往の有無だけが分ける。梅毒・結核などの感染性ぶどう膜炎はステロイド開始前に必ず除外する。
  • 治療はの大量静注に続くの最低6か月の。早期中止は再発リスクを8倍超に上げ、免疫調節薬の早期併用は再発とを減らす。

出典

  1. 1.Vogt-Koyanagi-Harada Syndrome: Clinical Features, Immunogenetic Predisposition and PD-1 Inhibitor-Induced Forms-A Comprehensive Review(Journal of Clinical Medicine (MDPI)・2026)本症がメラノサイトに対する免疫寛容の破綻によるT細胞主体の自己免疫であり、標的がメラノサイトの分化に関わる蛋白(チロシナーゼなど)で、脈絡膜・髄膜・内耳・皮膚というメラノサイトに富む組織が侵されること、感受性遺伝子として HLA-DRB1*04:05 が中心で、チロシナーゼの462番付近の配列とサイトメガロウイルスのエンベロープ糖蛋白が HLA-DRB1*0405 への結合に重要な6アミノ酸を共有するという分子擬態が提唱されていることを確認した。前庭・聴覚症状が患者の75%にみられ感音難聴が高音域を中心に生じること、大多数で2週間以内に対側眼へ症状が及ぶこと、髄液細胞増多が前駆期にみられ症状消失後も数週間持続しうることを確認した。治療は全身ステロイドが第一選択で急性期に大量静注パルスから開始し安定後に漸減すること、「治療の窓」という概念があり発症から3〜4週間の治療開始の遅れが用いたステロイドによらず再発と合併症のリスク上昇と関連すると観察研究で示唆されていること、適切な治療が速やかに行われれば60〜70%の患者で視力の実質的な改善が得られること、二次治療にカルシニューリン阻害薬・抗TNF薬・ミコフェノール酸モフェチルが用いられることを確認した。インドではぶどう膜炎の原因として最も多く21.08%を占め、米国のぶどう膜炎紹介例の約4%、日本の8%を占めること、米国の年間発症率が人口100万人あたり1.5〜6例と報告されていることも確認した。⚠️ 本出典のTable 1は第3・第4病期のラベルを入れ替えており(回復期を RECURRENT、慢性再発期を CHRONIC と表記)、Sugiura徴候を periorbital albinism と誤記述し綴りも Sugiyura としている。病期の記述には本出典を用いない。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Vogt-Koyanagi-Harada Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)2001年改訂診断基準が complete(眼所見に加えて神経・聴覚所見と皮膚所見の両方を要する)・incomplete(眼所見に加えて神経聴覚所見か皮膚所見のいずれか一方)・probable(眼所見のみで神経・皮膚所見を欠く)の3区分からなり、いずれも眼内炎症の他の原因(ぶどう膜炎発症前の穿孔性眼外傷・内眼手術、他の眼疾患を示唆する所見)の除外を必須とすること、completeの5大項目が①穿孔性眼外傷・内眼手術の既往が無いこと②他の眼疾患を示唆する臨床的・検査的根拠が無いこと③両眼性の眼病変(早期はびまん性脈絡膜炎・限局性漿液貯留や水疱状漿液性網膜剥離、所見が不明瞭なら蛍光眼底造影と超音波の追加所見を要する。後期は夕焼け状眼底またはSugiura徴候の脱色素所見と、貨幣状脈絡網膜瘢痕・網膜色素上皮の凝集や移動・反復性/慢性前部ぶどう膜炎などの追加所見)④神経・聴覚所見(髄膜刺激症状、耳鳴、髄液細胞増多のいずれか1つ。頭痛のみでは不十分。診察時に消失していてもよい)⑤中枢神経または眼病変の発症より後に生じる皮膚所見(脱毛・白毛・白斑のいずれか1つ)であることを確認した。病期が前駆期・急性期・回復期(chronic/convalescent)・慢性再発期に分かれ、回復期の特徴が夕焼け状眼底(脈絡膜と網膜色素上皮のびまん性脱色素による赤色調の眼底)とSugiura徴候(角膜輪部周囲の白斑)で、白斑・白毛・脱毛は急性期の数週間〜数か月後に出現すること、慢性再発期は肉芽腫性の前部ぶどう膜炎の再燃を特徴とし白内障・緑内障・脈絡膜新生血管・網膜下線維化を合併しやすいこと、免疫抑制療法が遅れたり不十分だと再発リスクが上がることを確認した。治療は歴史的にメチルプレドニゾロン1,000 mg/日の3日間静注に続いて経口プレドニゾロン1〜2 mg/kg/日を最低6か月かけて漸減する方法がとられ、6か月以上の全身ステロイド投与が短期投与より再発率が低く視力予後が良いこと、ある研究では経口ステロイドの早期中止が再発リスクを8倍超に上げたこと、免疫調節薬を早期にステロイドへ併用すると再発が有意に減り最終視力が改善し夕焼け状眼底のリスクが下がることを確認した。鑑別として交感性眼炎(穿孔性眼外傷・手術の既往が鍵で、既往が不明なら臨床的に区別困難)、中心性漿液性脈絡網膜症(眼内炎症所見を欠き非対称)、急性後部多発性斑状色素上皮症、白血病浸潤が挙げられることも確認した。⚠️ 本出典は同じ節の中で3区分を「complete・incomplete・suspected」と書いた直後に「Probable Vogt-Koyanagi-Harada disease」の項を立てており、区分名の表記が一貫していない。原委員会報告の語は probable である。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Revised diagnostic criteria for Vogt-Koyanagi-Harada disease: report of an international committee on nomenclature(American Journal of Ophthalmology / International Committee on Nomenclature・2001)現行の診断基準が1999年10月にカリフォルニアで開かれた第1回国際Vogt-小柳-原田病ワークショップの議論をもとに委員会が起草し2001年に公表した改訂基準であること、本症が原因不明の慢性・両眼性の肉芽腫性かつ多臓器性の炎症性疾患と定義されること、改訂基準が本症の多臓器性という性質と、病期によって眼所見が異なることの両方を織り込んで作られたことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得のため、基準の各項目の文言は本出典では確認していない。閲覧 2026-09-03