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Imaging findings · Published

脈絡網膜萎縮

Chorioretinal atrophy

別名
脈絡膜網膜萎縮chorioretinal degeneration
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼
関連疾患
Vogt-小柳-原田病近視性脈絡膜新生血管

🧠 全体像:は特定の疾患名ではなく、(RPE)・脈絡毛細血管板・その上にあるが境界明瞭な範囲でまとめて脱落したことを示す所見である1。この3層が同時に失われるため、眼底では通常RPEに隠れているや太い血管が透見される白〜黄白色の局面として現れる。⭐ 臨床的な重みは「何が原因でこの脱落が起きたか」にあり、の進行性変化・ぶどう膜炎の慢性期の瘢痕・の晩期像・遺伝子治療後の合併症という、機序も予後も異なる複数の系統がこの一つの所見を共有する。

所見の定義

は、と脈絡毛細血管板が失われることでその上にある感覚網膜への栄養供給が絶たれ、二次的にも脱落した状態を指す。組織学的にはRPEの脱落そのものであり、の文脈ではかつての痕跡(Dalen-Fuchs結節)と考えられていたが、現在は萎縮そのものと理解されている1。

💡 「萎縮」と「変性」を区別する。 は組織が一度形成された後に失われた状態を指し、先天的に形成不全であることを意味しない。多くは進行性で、境界がしだいに拡大する。

モダリティと写り方

手法 見え方
・ 境界明瞭な白〜黄白色の局面。RPEが失われた部分では下床のの白色やの太い血管が透見される
(FAF) RPEの色素()が失われるため低自発蛍光を示す。萎縮の辺縁が活動性を持つ場合は縁取り状のを伴うことがある
(OCT) RPE層・層(ellipsoid zoneなど)の消失と、それに伴うからの光透過性の増加(がより深部まで明るく描出される)
(FA) RPEのが失われることによるとして早期からを示す

原因ごとの特徴

同じ「」という所見でも、背景にある機序と経過はまったく異なる。

原因 特徴 経過
IMIのATN分類でCategory 2(びまん性萎縮)〜Category 3(斑状萎縮)として段階づけられる。Category 4()まで進むとが失われる2 の定義そのものに組み込まれるほど中核的な所見で、年単位で緩徐に拡大する
慢性期・に(・RPEの広範な化)とともに周辺部のが出現する。組織学的にはRPE脱落そのもので、Dalen-Fuchs結節の痕跡ではない1 慢性化の帰結であり、視覚予後不良の指標となる
の。曝露開始1年以内は→斑状・銭形の色素沈着に変化する一方、視機能・ERGはむしろ改善する時期があり、まれに数年後にへ進行する3 と視機能の経過が乖離するため、両者を独立に経過観察する必要がある
の網膜下投与後 注入手技に関連するの萎縮。touchdown型(注入部位に一致)・nummular型(円形)・perifoveal型(周囲)の3型に分かれ、拡大速度は型により大きく異なる(touchdown型1.7±1.3、nummular型5.5±1.3、perifoveal型16.7±1.8 mm²/年)4 進行性で、術後長期にわたる眼科的経過観察が前提となる

⚠️ 投与前からすでに一定のが存在する集団もある。 のでは、未治療の対照眼でもベースラインから1年後にかけて所見が増えている(第III相の対照眼で5.9%→11.1%、第I相の対照眼で40%→42.9%)5。⭐ 治療眼のだけを見て「治療が原因」と即断せず、対照眼のと並べて読む必要がある——これはRPE65関連という基礎疾患自体がを来しうるためである。

紛らわしいもの

  • :性変化の中でも最も軽度な段階(IMI ATN分類のCategory 1)で、RPEの菲薄化により血管が透見されるが、組織そのものは失われていない。(Category 2以上)とは連続的だが区別される2。
  • :のでを含む黄斑に生じる特有の呼称。病理はと同じ(RPE・脈絡毛細血管板・の脱落)だが、という特定の背景疾患に限定して使う用語である。
  • ・lacquer crack:のATN分類とは別枠の「plus病変」で、の段階分類(Category 0〜4)とは独立に、どのカテゴリーの眼にも生じうる2。

評価の進め方

flowchart TD
    A["眼底に境界明瞭な<br>白〜黄白色局面を認める"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus autofluorescence'>眼底自発蛍光</span>で<br>低自発蛍光を確認"]
    B --> C["OCTでRPE・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photoreceptor'>視細胞</span>層の<br>脱落と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>透過性亢進を確認"]
    C --> D["背景疾患を探る"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high myopia'>高度近視</span>があるか<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial length'>眼軸長</span>・屈折値を確認"]
    D --> F["ぶどう膜炎の既往<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sunset glow fundus'>夕焼け状眼底</span>の有無"]
    D --> G["原因薬剤の使用歴<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phenothiazine'>フェノチアジン</span>系抗精神病薬など)"]
    D --> H["網膜下手術・<br>遺伝子治療の既往"]
    E --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathologic myopia'>病的近視</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='staging'>病期分類</span>へ"]
    F --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Vogt-Koyanagi-Harada disease'>Vogt-小柳-原田病</span>の<br>病期評価へ"]
    G --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug-induced retinopathy'>薬剤性網膜症</span>として<br>投与継続の可否を検討"]
    H --> L["注入部位との関係を確認し<br>型を分類・経過観察"]

まとめ

  • は特定の疾患ではなく、・脈絡毛細血管板・が境界明瞭な範囲で脱落した所見である。
  • では低自発蛍光、OCTではRPE・層の消失と透過性の増加として描出される。
  • ではATN分類のCategory 2(びまん性)〜Category 3(斑状)として病期そのものに組み込まれている。
  • の慢性期ではとともに出現し、組織学的にはDalen-Fuchs結節ではなくRPE脱落そのものである。
  • では数年後に進行することがあり、と視機能の経過は必ずしも一致しない。
  • の網膜下投与後は注入手技に関連したの萎縮(touchdown・nummular・perifoveal型)として現れ、拡大速度は型によって大きく異なる。
  • ⚠️ 疾患によっては投与・治療前からすでにが存在し自然に増加するため、治療の影響を論じるときは無治療対照との比較が欠かせない。

出典

  1. 1.Vogt-Koyanagi-Harada Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)2026年3月1日更新のライブページで確認した。Vogt-小柳-原田病の慢性期・慢性再発期の眼底所見として、夕焼け状眼底(sunset glow fundus)が脈絡膜と網膜色素上皮の広範な脱色素化に起因する特徴的な赤色調の脱色素外観であること、周辺眼底の瘢痕が組織学的には脈絡網膜萎縮と網膜色素上皮の脱落からなり、以前考えられていたDalen-Fuchs結節ではなく萎縮そのものを表すこと、メラニン顆粒の段階的喪失により脈絡膜メラノサイトから色素が消失し淡く脱色素した眼底が形成されること、これらの所見が慢性期および慢性再発期に発展し視覚予後不良の指標となることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.IMI Pathologic Myopia(Investigative Ophthalmology & Visual Science(International Myopia Institute; Ohno-Matsui K, et al.)・2021)Europe PMCの全文(PMC8083114)で確認した。近視性黄斑症のATN分類(Meta-analysis for Pathologic Myopia)で近視性脈絡網膜萎縮をCategory 0(近視性網膜変性病変なし)〜Category 4(黄斑萎縮)の5段階に分け、Category 1を豹紋状眼底のみ、Category 2をびまん性脈絡膜萎縮、Category 3を斑状脈絡膜萎縮と定義していること、この段階分類とは別に「plus病変」としてlacquer crack・近視性脈絡膜新生血管・Fuchs斑の3つを置き、これらはどのカテゴリーの眼にも生じうるとしていること、病的近視の更新された定義が「びまん性脈絡膜萎縮以上の近視性脈絡膜萎縮がある、または後部ぶどう腫がある」ことで特徴づけられるとしていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Is thioridazine retinopathy progressive? Relationship of pigmentary changes to visual function(British Journal of Ophthalmology(Marmor MF)・1990)チオリダジン網膜症の経過を追った研究で、曝露開始後の最初の1年間に眼底の色素沈着が顆粒状から斑状・銭形の外観へと変化する一方、視機能および網膜電図(ERG)はこの期間にむしろ改善する傾向にあること、まれに数年後に脈絡網膜萎縮と機能低下を来す例もあり、眼底所見の見た目と視機能の経過が乖離しうることを確認した。閲覧 2026-09-16
  4. 4.Classification and Growth Rate of Chorioretinal Atrophy after Voretigene Neparvovec-Rzyl for RPE65-Mediated Retinal Degeneration(Ophthalmology Retina・2024)5施設でボレチゲン ネパルボベクの網膜下投与後に後極の脈絡網膜萎縮を生じた14例27眼を集めた後ろ向き解析で、萎縮がtouchdown型14眼・nummular型15眼・perifoveal型12眼に分類され(15眼は2型以上を併存)、線形混合効果モデルによる萎縮面積の増加速度が推定値±標準誤差でtouchdown型1.7±1.3mm²/年、nummular型5.5±1.3mm²/年、perifoveal型16.7±1.8mm²/年であったこと、14例中13例が両眼性であったこと、著者らがこれらの所見を一部の患者に生じるものと位置づけていることを抄録で確認した(全文は未取得)。閲覧 2026-09-13
  5. 5.Luxturna 5 × 10^12 vector genomes/mL concentrate and solvent for solution for injection — Annex I Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2025)4.8項の`Description of select adverse reactions`が、脈絡網膜萎縮の副作用一覧(Table 2・Table 3)での頻度区分はいずれも`Not known`(入手可能なデータから推定できない)であるとしたうえで、41例中39例の眼底写真を後ろ向きに読み直した有所見割合として、第III相試験の治療眼で投与前15.4%・1年後42.6%・1年より後55.6%、未治療の対照眼で投与前5.9%・1年後11.1%と推移したこと、第I相試験の治療眼で投与前35%・1年後66.7%・1年より後73.9%、対照眼で投与前40%・1年後42.9%・1年より後41.7%と推移したこと、脈絡網膜萎縮が市販後に報告され一部で進行性とされることを確認した。閲覧 2026-09-13