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Drug Atlas · A18 Antipsychotics / 抗精神病薬

チオリダジン

thioridazine

分類
Antipsychotics / 抗精神病薬
商品名(日本)
メレリル
科目
Pharmacology
トピック
A18: Antipsychotics
承認適応
統合失調症
禁忌疾患
先天性QT延長症候群認知症
副作用
求心性視野狭窄ジスキネジア低血圧
監視検査値
QT延長カリウム

🧠 全体像:はの第一世代(定型)抗精神病薬でありながら、同世代の中で突出して強いQT延長作用を持つ薬である。この一点が薬としての立ち位置を決めている——かつて広く使われたが、2000年に「Dear Doctor」レターでされが付き、(メレリル)は2005年に世界的に販売中止となった。現在の適応は「他の抗精神病薬で十分な治療を受けても反応不良、またはできない患者」というに限定されている。もう一つの特徴的な有害事象がので、に似たとを来す。

薬効群の中での位置づけ

力価・世代 代表薬 の特徴 現在の位置づけ
・定型 抗コリン・α1遮断が強く鎮静的 今も使用される
・定型 と同系統だが遮断・QT延長が最強クラス に限定。は販売中止
高力価・定型 D2遮断が強くEPSが目立つ 今も広く使用される

⭐ 「=穏やか」ではない。 と同じ・鎮静系の系でありながら、だけが心毒性を理由に事実上のへ格下げされた——力価の高低と安全性プロファイルは別軸であることを示す好例である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thioridazine'>チオリダジン</span>内服"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesolimbic system'>中脳辺縁系</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dopamine D2 receptor'>ドパミンD2受容体</span>を遮断"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positive symptoms'>陽性症状</span>の軽減"]
    A --> D["ムスカリン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='M1 muscarinic receptor'>M1受容体</span>遮断"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticholinergic symptoms'>抗コリン症状</span>(口渇・便秘など)"]
    A --> F["α1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenergic receptor, adrenoceptor'>アドレナリン受容体</span>遮断"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthostatic hypotension (postural hypotension)'>起立性低血圧</span>"]
    A --> H["ヒスタミン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 receptor blockade'>H1受容体遮断</span>"]
    H --> I["鎮静"]
    A --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human ether-a-go-go-related gene'>hERG</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='potassium channel'>カリウムチャネル</span>を強く遮断"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dose-related'>用量依存性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corrected QT interval'>QTc</span>延長"]
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torsades de pointes'>トルサード・ド・ポアン</span>ト→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatal arrhythmia'>致死的不整脈</span>のリスク"]
    A --> M["メラニンへの選択的な取り込み・蓄積<br>(ぶどう膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>)"]
    M --> N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal pigment epithelium'>網膜色素上皮</span>への沈着・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative phosphorylation'>酸化的リン酸化</span>の障害"]
    N --> O["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmentary retinopathy'>色素性網膜症</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dose-related'>用量依存性</span>)"]

💡 QT延長もも、同じ「強い脂溶性・受容体外への非特異的な結合」という性質から生まれる。 チャネルへの親和性が同世代薬の中でも際立って強く、また高いメラニン親和性ゆえに眼球のぶどう膜・へ選択的に蓄積する1。D2遮断という「効かせたい」作用とは別の経路で毒性が出る点が、この薬を語るときの軸になる。

薬物動態

肝臓のにより代謝され、同時に自体を阻害する。の活性が生来低い遺伝的欠損を持つ患者は正常人口の約7%存在し、これらの患者は禁忌に該当する——代謝が進まず血中濃度が異常に上昇し、QT延長のリスクがさらに高まるためである21。

⚠️ を阻害する薬剤との併用も禁忌である。 ・・・・・などがこれにあたり、これらを併用すると遺伝的に正常な代謝能を持つ患者でもの血中濃度が2.4〜4.5倍に上昇したことが報告されている2。「が絡む薬剤相互作用」の代表例として覚える。

適応

⚠️ はではない。 添付文書は適応を「他の抗精神病薬による十分な治療歴があるが反応不良、またはできない患者」に限定しており、少なくとも2剤の抗精神病薬を適切な用量で試みた既往を文書化することを求めている2。この限定は感想ではなく添付文書の記載そのものである。

⭐ なぜここまで限定されたか。 2000年7月、精神科医宛の「Dear Doctor」レターで延長とト・突然死との関連が周知され、添付文書にが追加された2。(日本ではメレリル)は、この心毒性リスクが上回るとして2005年に製造販売元により世界的に販売中止となった一方、ジェネリック医薬品は今も入手可能である1。

用法・用量

成人患者の通常は1日50〜100mgを3回に分割投与し、必要に応じて最大1日800mgまで漸増する2。

⚠️ 投与前後のECGモニタリングが必須である。

時点 確認事項
投与開始前 ECGでを確認(450ミリ秒を超える患者には投与しない)、血清カリウム値を確認
投与中 が500ミリ秒を超えたら中止する

実際のは施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:QT延長( 450ミリ秒超)または、不整脈または心疾患の既往、延長作用のある薬剤との併用、を阻害する薬剤(・・・など)との併用、の活性が生来低い遺伝的欠損(正常人口の約7%)を持つ患者、(新生児ののリスク)21
  • ⚠️ 認知症関連精神病のに対する。 抗精神病薬クラス共通のとして、のに投与すると死亡リスクが上昇する(主にまたは感染症による)1
  • ⚠️ はである。 推奨用量を超えた投与で主に観察され、・褐色調の・夜間視力障害を来し眼底に色素沈着がみられる。推奨用量の範囲内にとどまることでリスクを軽減できるとされる2。は曝露開始後の最初の1年間にから斑状・銭形の外観へ変化する一方、視機能とERGはこの時期にむしろ改善する傾向がある——見た目と機能の経過は必ずしも一致しない。まれに数年後にと機能低下を来す例もあり、はと独立して経過観察する必要がある3
  • 定期的な(の検出)、網膜色素沈着を確認する眼科診察を要する1

副作用

頻度 内容
高頻度 (口渇・便秘・)、低血圧(起立性)、鎮静
注意 のQT延長、(・夜間視力障害・褐色調の)
重篤・まれ ト型不整脈・突然死、(遅発性を含む)、

まとめ

  • はので、D2遮断に加えムスカリン・α1・による副作用プロファイルを持つ。
  • ⭐ 同世代薬の中で突出した遮断作用によるQT延長が最大の特徴。 2000年のDear Doctorレターを機にが付き、(メレリル)は2005年に世界的に販売中止となった。
  • 現在の適応は他の抗精神病薬に反応不良・の患者に限定(少なくとも2剤の既往治療を文書化)。
  • で代謝され自らも阻害するため、阻害薬との併用および活性の低い患者(約7%)は禁忌。
  • 投与前にECGで 450ミリ秒超なら投与しない。投与中に 500ミリ秒を超えたら中止する。
  • ⚠️ はで、推奨用量内にとどめることでリスクを軽減できる。 と視機能の経過は乖離しうる(見た目が変化していく時期に機能はむしろ改善することがある)。
  • のへの投与は抗精神病薬クラス共通の(死亡リスク上昇)の対象。

出典

  1. 1.Thioridazine(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)2023年2月6日最終更新の版で、チオリダジンが低力価の第一世代抗精神病薬であり中脳辺縁系のドパミンD2受容体遮断を主作用としつつムスカリンM1受容体(抗コリン作用)・α1アドレナリン受容体(起立性低血圧)・ヒスタミンH1受容体(鎮静)・hERG遺伝子産物(心毒性)にも作用すること、先発品が2005年に重篤な不整脈などの有害事象を理由に製造販売元により世界的に販売中止となった一方でジェネリック医薬品は引き続き入手可能であること、禁忌にQT延長(450ミリ秒超)または先天性QT延長症候群・不整脈または心疾患・認知症関連精神病(枠組み警告)・妊娠後期(新生児離脱症状のリスク)が含まれること、CYP450 2D6により代謝されると同時にこの酵素を阻害すること、CYP2D6阻害薬(フルオキセチン・パロキセチン・デュロキセチン・フルボキサミン・プロプラノロールなど)との併用に注意を要すること、モニタリングとしてベースラインおよび定期的なECG・QTc評価・血清カリウム値・白血球減少症検出のための定期的な全血球計算・網膜色素沈着を確認する眼科診察が必要であることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Thioridazine Hydrochloride Tablets, USP — prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2025)2025年4月改訂の添付文書で、枠組み警告が「用量依存性にQTc間隔を延長し、トルサード・ド・ポアント型を含む重篤で致死的となりうる心室性不整脈のリスクを高める」ことであり、2000年7月に精神科医宛のDear Doctorレターでこの危険性が周知されたこと、適応が「他の抗精神病薬による十分な治療歴があるが反応不良または忍容できない統合失調症患者」に限定され添付文書が2剤以上の適切な用量での既往治療を文書化するよう求めていること、CYP2D6を阻害する薬剤(フルオキセチン・パロキセチン・フルボキサミン・プロプラノロール・ピンドロールなど)およびCYP2D6の活性が生来低い遺伝的欠損を持つ患者(正常人口の約7%)が禁忌であること、QTc延長作用のある薬剤との併用も禁忌であること、50mgの単回投与によるクロスオーバー試験で平均約23ミリ秒のQTc延長が観察されたこと、成人統合失調症患者の通常開始用量が1日50〜100mgを3回に分割投与しで必要に応じて最大1日800mgまで漸増すること、投与開始前にECGと血清カリウムを確認しQTcが450ミリ秒を超える患者には投与しないこと、投与中にQTcが500ミリ秒を超えたら中止すべきこと、色素性網膜症が推奨用量を超えて投与された患者に主として観察され視力低下・褐色調の色覚異常・夜間視力障害を来し眼底に色素沈着がみられること、この合併症は推奨用量の範囲内にとどまることで軽減しうると記載されていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Is thioridazine retinopathy progressive? Relationship of pigmentary changes to visual function(British Journal of Ophthalmology(Marmor MF)・1990)チオリダジン網膜症の経過を追った研究で、曝露開始後の最初の1年間に眼底の色素沈着が顆粒状から斑状・銭形の外観へと変化する一方、視機能および網膜電図(ERG)はこの期間にむしろ改善する傾向にあること、すなわち眼底所見の見た目と視機能の経過が乖離しうること、まれに数年後に脈絡網膜萎縮と機能低下を来す例もあり眼底所見だけでなく機能検査を独立して経過観察する必要があることを確認した。閲覧 2026-09-16