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Disease Atlas · 神経 · 疾患

急性散在性脳脊髄炎

Acute disseminated encephalomyelitis

別名
ADEM感染後脳脊髄炎
臓器系
神経免疫・膠原病小児
科目
NeurologyPathology
トピック
神経内科 G3-01:ウイルス感染による神経疾患病理学 C/110:髄鞘の疾患
鑑別疾患
横断性脊髄炎多発性硬化症
治療薬
メチルプレドニゾロン免疫グロブリン
症状
意識障害発作対麻痺
検査値
髄液検査
原因となる疾患
MOG抗体関連疾患

🧠 全体像:(ADEM)は、感染やワクチン接種の後に、脳と脊髄のあちこちで一斉に脱髄が起こる、の自己免疫疾患である。(MS)と同じ「中枢神経の脱髄」という土俵にいるが、決め手は1つしかない——⭐ 意識障害・行動変化を伴う「脳症」があるかどうか。ADEMの診断には脳症が必須で、MSの再発は通常これを欠く。でも、ADEMは境界不明瞭で大きな病変が両側性・非対称性に多発し全部がほぼ同じ時期のものであるのに対し、MSは境界明瞭な病変が時期をずらして脳室周囲に積み重なる。⚠️ で終わるはずの「典型的なADEM」の一部は、実は(MOGAD)の初回発作である——ここを見極めそこなうと、再発する患者を疾患として扱ってしまう。

病態

先行する感染・への免疫応答が、標的を誤って中枢神経のを攻撃することで、脳・脊髄の複数箇所に急性の脱髄が一斉に生じる1。

flowchart TD
    A["先行する感染または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Vaccination'>予防接種</span><br>(50〜85%で同定される)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-reactivity'>交差反応性</span>の自己免疫応答"]
    B --> C["中枢神経の複数箇所で急性脱髄が同時多発"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral white matter'>大脳白質</span>・脳幹・小脳・脊髄が巻き込まれる"]
    D --> E["脳症+多巣性の神経症候"]
    C --> F{"3か月以降に新たな脱髄エピソードが起こるか"}
    F -->|"いいえ(大部分)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monophasic'>単相性</span>ADEM"]
    F -->|"はい"| H["多相性ADEM"]

⚠️ が、先行するの中で最も多く報告されている1。ただし特定のワクチン・感染症に限らず、幅広い病原体・が引き金になりうる。

疫学

小児10万人年あたり0.07〜0.9例と推定される。発症年齢中央値は5〜8歳で10歳未満が大多数を占め、男女比は1.3対1とやや男性に多い。成人例(18〜82歳)も報告されている1。

臨床像

先行する感染・の後、日から週の単位で急性に発症し、脳症(意識障害・行動変化)と多巣性の神経症候(、、、失調、発作など)を呈する。発熱を伴うことが多い。

多発性硬化症との違い——決め手は「脳症」

⭐ の再発は通常、の特徴を欠くのに対し、ADEMの診断には脳症が必須である1。「意識障害・行動変化を伴わないの」を見たらADEMより先にMS・などのを考える(ノート参照)。

項目 ADEM
脳症(意識障害・行動変化) 必須 通常は伴わない1
病変の境界 不明瞭1 明瞭に境界づけられる1
病変の分布 より広範・両側性・非対称性に多発1 脳室周囲病変がより一般的1
病変の時期 全病変がほぼ同時期(単一の炎症エピソード)1 異なる時期の病変が混在1
灰白質病変 対称性で視床・基底核を巻き込むことが多い2 灰白質病変は前景に立たない
経過 大部分は1 が典型

⚠️ 「病変が両側性・対称性で視床・基底核を巻き込む」というパターンを見たら、MSより先にADEMを考える2。逆に、脳室周囲に境界明瞭な病変が時期をずらして積み重なっていれば、脳症が乏しくてもMSを疑う。

MOG抗体関連疾患との重複

⚠️ 「のはずのADEM」の一部が、実はMOGADの初回発作である。 一部の小児ADEM患者にが見出され、これらの患者はより再発性の経過をとりやすく、や長大な脊髄病変(LETM)としての表現が多い1。MOGは本疾患のとして示され、という概念とも関連する2。

💡 は、ADEMを「で終わる病気」から「再発しうる病気」へと読み替える鍵になる。 初発時にか再発性かを予測することは難しいため、臨床的に典型的なADEMでも・の測定を検討し、再発時の対応(としての長期管理)に備える。

診断

International Pediatric MS Study Groupの現行は、ADEMを①脳症、②多巣性の中枢神経障害、③での、の3つを必須要件とする急性脱髄症候群と定義する1。は炎症所見(、蛋白上昇)を確認し、や感染性脳炎など他のの原因を除外する。

治療

⭐ 第一選択は高用量の(静注30mg/kg/日、最大1,000mg/日、3〜5日間)で、その後経口をする1。

  • 無効例の第二選択は(2g/kgを2〜5日かけて投与)である1。
  • 難治例ではまたはを考慮する1。

まとめ

  • ADEMは、先行する感染・(症例の50〜85%で同定され、が最多)への異常な免疫応答により、中枢神経の複数箇所で脱髄が一斉に生じる、大部分がの疾患である。
  • ⭐ との決め手は脳症の有無——ADEMの診断には脳症が必須だが、MSの再発では通常みられない。
  • では、ADEMの病変は境界不明瞭・両側性・非対称性で全病変がほぼ同時期であるのに対し、MSは境界明瞭な病変が時期をずらして脳室周囲に多い。対称性で視床・基底核を巻き込む灰白質病変もADEMを示唆する。
  • ⚠️ 一部のADEMは(MOGAD)の初回発作であり、これらはより再発性の経過をとる。臨床的に典型的なADEMでもの測定を検討する。
  • 治療は高用量パルスが第一選択で、無効例には、難治例には・を考慮する。

出典

  1. 1.Acute Disseminated Encephalomyelitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)ADEMが先行する感染または予防接種への反応として脳・脊髄に脱髄を来す急性かつ急速進行性の自己免疫過程であること、大部分の症例が単相性で3か月以降に別の脱髄エピソードが生じた場合には多相性ADEMと呼ばれること、International Pediatric MS Study Groupの現行診断基準がADEMを脳症・多巣性の中枢神経障害・脳MRIでの脱髄病変の存在を必須とする急性脱髄症候群と定義していること、多発性硬化症の再発では通常急性脳症の特徴を欠く一方でADEMの診断には脳症が必須であること、MRIではADEMの病変が境界不明瞭でより広範・両側性・非対称性かつ多発し全病変がほぼ同時期のものである傾向があるのに対し多発性硬化症では病変の境界が明瞭で異なる時期の病変が混在し脳室周囲病変がより一般的であること、一部の小児ADEM患者に抗MOG抗体が見出されこれらの患者はより再発性の経過をとりやすく視神経炎や長大な脊髄病変(LETM)としての表現がより多いこと、推定発生率が小児10万人年あたり0.07〜0.9例であること、発症年齢中央値が5〜8歳で10歳未満が大多数を占め男女比は1.3対1で男性にやや多いこと、成人例(18〜82歳)も報告されていること、先行する同定可能な感染または予防接種が症例の50〜85%に報告されており狂犬病ワクチンが最も多く報告されていること、第一選択治療がメチルプレドニゾロン静注30mg/kg/日(最大1,000mg/日)を3〜5日間投与した後に経口プレドニゾロンを漸減する方法であること、無効例の良好な第二選択治療が免疫グロブリン静注2g/kgを2〜5日かけて投与する方法であること、難治例では血漿交換またはシクロホスファミドを考慮することを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Acute disseminated encephalomyelitis: current knowledge and open questions(Journal of NeuroVirology・2015)ADEMが通常は急性・多巣性・単相性の免疫介在性中枢神経疾患と定義されること、診断基準が多症状性の臨床像(行動変化・意識変化を含む)を要件とすることを確認していること、MRIでの白質病変が通常は複数かつ非対称性であるのに対し灰白質病変は対称性で視床・基底核を巻き込むことが多いこと、MOGが本疾患の標的抗原として示され視神経脊髄炎スペクトラム障害という新しい概念とも関連すること、標準治療が高用量副腎皮質ステロイド(通常メチルプレドニゾロン20〜30mg/kg/日)であり免疫調節療法として免疫グロブリン静注・血漿交換を用いることを確認した閲覧 2026-09-06