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Disease Atlas · 神経 · 疾患

急性高山病

Acute mountain sickness

別名
AMS
臓器系
神経
科目
Translational Medicine and PathophysiologyPharmacology
トピック
病態生理学 2-17:呼吸性酸塩基平衡障害:呼吸性アシドーシスとアルカローシス薬理学 B10:カリウム排泄性利尿薬
合併症
高地脳浮腫
関連疾患
高地肺水腫
治療薬
アセタゾラミドデキサメタゾン
症状
頭痛悪心嘔吐めまい食欲不振倦怠感

🧠 全体像:(AMS)は、2,500m以上への急速なに対する身体側の不全がまねく症候群で、頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまいの4症状を各0〜3点で採点し、頭痛が1点以上あり、かつ合計3点以上であればAMSとする(2018年改訂)1。機序は低酸素によると軽いが中心で、(HAPE)・(HACE)と同じ「急速不全」というスペクトラムの入口にあたる。HACEの大半はAMSを経て起こるので、AMSを見逃さずを止めることが、その先の重症化を防ぐ最大のになる。⚠️ ただしAMSが先行しないHACEも報告されており、とくにHAPEに伴う場合である2。「AMSが無いからHACEではない」とは言えない。

位置づけと疫学

AMSは2,500m以上の高所で生じ、2,500m未満では稀だが感受性の高い個人では2,000mでも発症しうる3。頻度は高度に強く依存し、2,500〜4,300mへので25〜43%、6,000m以上へのでは60%を超えるとされる3。年間およそ2億人が高所目的地へ渡航しており、危険因子は急速な、初日のが2,800mを超えること、1日あたり500mを超える上昇、AMSの既往(既往があると再発リスクは少なくとも2倍)、片頭痛の既往、若年、脱水、強い身体的負荷である3。

⭐ AMS・HAPE・HACEは同じ「急速な高所不全」という土台を共有するスペクトラムの一部だが、主座(頭蓋内か肺か)が異なる別々の臨床像である。AMSはHAPEと合併しうるが、頭痛はHAPEのには含まれない3。

病態

低酸素は脳血管を拡張させ、軽度のと交感神経活動の亢進を引き起こす3。かつて「AMS=脳浮腫」という理解が広まっていたが、軽症〜中等症のAMSはもはや浮腫を伴うとは考えられていない。浮腫が関わるのは重症例に限られ、中等症〜重症では頭蓋内圧の上昇が観察されている3。

💡 「tight-fit仮説」:脳室が小さくが低い人ほど、同じ程度の浮腫でも頭蓋内圧が上昇しやすいとされる。高齢者はもともとの容積が減っている(コンプライアンスにがある)ため、若年層よりAMSの頻度が低いことの説明に用いられる3。

flowchart TD
    A["急速な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-altitude exposure'>高所曝露</span>(2,500m以上)"] --> B["低酸素による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral vasodilation'>脳血管拡張</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased sympathetic activity'>交感神経活動亢進</span>・軽度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial edema'>間質性浮腫</span>"]
    C --> D["軽症〜中等症:浮腫を伴わない症状"]
    C --> E["重症:軽度の脳浮腫と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='raised intracranial pressure'>頭蓋内圧上昇</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-altitude cerebral edema, HACE'>高地脳浮腫</span>(HACE)への進行"]

診断:Lake Louise AMSスコア(2018年改訂版)

臨床上のAMSの診断は病歴と症状だけで成立する。検査室検査・画像検査は診断に必須でも有用でもない3。

⚠️ は研究用のツールである。 2018年の合意文書は、このスコアが「AMSを研究する研究者が使うためのもので、臨床医・山岳ガイド・一般登山者がAMSを診断・管理するために用いることは意図していない」と明記している1。臨床で使うなとまでは書かれていないが、下の点数の線引きは研究上の判則であって、臨床判断をそのまま置き換えるものではない。

⚠️ 版に注意する。 1991年原版は頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまい・睡眠障害の5症状を採点したが、2018年改訂で睡眠障害の項目が削除された。高所での睡眠障害はAMSそのものよりも高所低酸素自体に起因する可能性が高く、AMSとの相関が乏しいと複数の研究で示されたためである(重症頭痛例の40%で睡眠障害を欠いた)1。

の版 採点する症状
1991年原版 頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまい・睡眠障害(5項目、各0〜3点)
2018年改訂版 頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまい(睡眠障害を除いた4項目、各0〜3点)

配点(2018年改訂版)

各項目を0〜3点で採点する。原文の選択肢は次のとおり1。

項目 0点 1点 2点 3点
頭痛 なし 軽度 中等度 重度で行動不能
消化器症状 食欲良好 食欲低下または悪心 中等度の悪心または嘔吐 重度の悪心と嘔吐で行動不能
倦怠感/脱力 疲れも脱力もない 軽度 中等度 重度で行動不能
めまい/ なし 軽度 中等度 重度で行動不能

💡 「食欲低下」は独立した5番目の項目ではなく、消化器症状の1点の選択肢である。 二次資料には2018年版の判則を「頭痛+・倦怠感脱力・めまい・食欲低下のうち1つ以上」と、5症状の有無として簡略化して書いているものがあり(StatPearlsがこの書き方をしている3)、そのまま覚えると項目数も判則も原著とずれる。原著の規則は下の合計点である。

判定規則

⭐ 4項目の合計が3点以上、かつ頭痛が1点以上でAMS。 これより高いを提案した研究もあるが、コンセンサス委員会は睡眠障害の項目を除いたことでこの3点という閾値のままでも真のAMS例をより多く拾えると判断した1。

  • 頭痛が0点なら、合計が3点以上でも研究上はAMSとしない。ただし原著は「頭痛が無いことが臨床上の診断を除外するわけではない」と但し書きを付けている1。
  • 逆に、重度の頭痛(3点)だけで他症状がゼロでもAMSである1。
  • 症状はから6時間以内に出現しうるが、旅行や急性低酸素への反応(など)による症状と区別するため、スコアの評価は6後に行うことが推奨される1。
合計点(4項目、各0〜3点、頭痛1点以上が必須) 判定
3〜5点 軽症AMS
6〜9点 中等症AMS
10〜12点 重症AMS

⚠️ この重症度の線引きは目安にとどまる。 原著自身が「スコアを重症度に分けるだけの研究は足りていない」と断ったうえで、分けたい人のために提案した区分である1。

💡 WMSは2区分に束ねている。 が「軽症」と「中等症〜重症」で分かれるため、WMS 2024年版の分類表は軽症AMS=3〜5点、中等症〜重症AMS=6〜12点とし、HACEは「スコア適用外」として症状ではなく徴候(・高度の倦怠感・意識変容・脳症)で分けている4。AMSでは軽症・中等症〜重症のいずれも身体所見は無い——所見が出た時点でHACEの側である。

AMS臨床機能スコア(併用が推奨される別立ての項目)

症状が高所での活動にどう影響したかを、上の合計点とは別に0〜3点で記録する1。

点 内容
0 まったく影響しなかった
1 症状はあったが、活動や行程を変えずに済んだ
2 症状のためを中止した、または自力で下降した
3 低地へ搬送を要した

⚠️ ・・・・意識障害・発熱は、AMSでは説明できない所見であり、HACEへの進行か別の診断を疑う3。AMS単独では異常所見は出ず、自然軽快する——これがHACEとの分かれ目である1。とくには、単独のAMSでは出ない所見である。

治療

⭐ 「の中止」と「」は別の段階である。 WMS 2024年版は、軽症〜中等症ではまずそれ以上登らないことと綿密な観察・対症療法を優先し、症状が遷延する例や中等症〜重症ではを優先する(可能な場合)という順序を採っている5。

flowchart TD
    A["高所での頭痛と随伴症状<br>(Lake Louise 合計3点以上に相当)"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia'>運動失調</span>・意識障害があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-altitude cerebral edema, HACE'>高地脳浮腫</span>(HACE)として直ちに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='descent'>下山</span>"]
    B -->|"なし"| D{"症状の重症度"}
    D -->|"軽症"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ascent'>登高</span>中止・安静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydration'>水分補給</span>で経過観察"]
    D -->|"中等症〜重症"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='supplemental oxygen'>補助酸素</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral oxygen saturation'>SpO2</span> 90%超目標)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dexamethasone'>デキサメタゾン</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetazolamide'>アセタゾラミド</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='descent'>下山</span>できなければ携帯高圧バッグ"]
    E --> G["改善すれば慎重に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ascent'>登高</span>再開"]
    F --> H{"改善するか"}
    H -->|"改善"| G
    H -->|"改善なし・悪化"| C

Wilderness Medical Societyの2024年改訂ガイドラインは、と投与( 90%超を目標)をいずれも強い推奨・高品質エビデンスとしている5。

内容 推奨度(WMS 2024)
最優先 強い推奨・高品質エビデンス5
90%超を目標 強い推奨・高品質エビデンス5
携帯高圧バッグ 重症例、またはできない場合 強い推奨・中等度品質エビデンス5
AMSの治療は4mgを6時間ごと(小児0.15mg/kg/回を6時間ごと、1回最大4mg)4 強い推奨・低品質エビデンス5
250mgを12時間ごと(小児2.5mg/kg、1回最大250mg)4 強い推奨・低品質エビデンス5

⚠️ の「8mg負荷」はHACEの用量であってAMSの用量ではない。 WMSのTable 1は治療の行をAMSとHACEに分けており、AMS=4mgを6時間ごと、HACE=8mg単回後4mgを6時間ごとである4。ガイドラインを要約した2025年の総説はこの2行を「AMSとHACEの治療」として一括りにし8mg負荷の側だけを書いており、そのまま写すとAMSに負荷投与を行う方向へ倒れる5。

⚠️ を5〜7日を超えて使ったら、急に止めず1週間かけてする4。また、はを促進しないので、服用を終えて無症状であることを確認するまでを再開しない4。

💡 中等症〜重症では、薬物治療としてはよりのほうが確実とされる4。またWMSは、AMS・HACEを疑う患者ではまたはで治療してもなお症状が悪化するならを開始するという線引きを置いている4。

⚠️ ・は頭痛の緩和にとどまる。 高所頭痛を和らげることは示されているが、AMS・HACEそのものの治療としては推奨されない(強い推奨・低品質エビデンス)5。で頭痛だけが消えると、を続ける判断につながりうる点が危うい。

はによりHCO3⁻のを増やして軽い代謝性アシドーシスを起こし、換気を刺激して生理的な過程を模倣する。は抗炎症作用で脳浮腫を軽減するが、そのものを促進せず酸素化も改善しない点がと異なる3。は予防投与が小児に推奨されない(AMS・HACEの治療としての使用まで否定されているわけではない)3。

予防

⭐ 最も安全なは計画的なそのものである。 3,000m以上ではの上昇を1日500m以内にとどめ、2〜4日ごとに休息日を置き、3,000m到達時点で数日〜1週間の期間を設ける3。WMS自身の要約は同じ規則を「3,000m超ではの上昇を1日500m以内、休息日は3〜4日ごと」と書いており、休息日の間隔の数字だけが資料間でやや異なる4。

💡 薬より先に行程で下げる。 WMSは、行程上の対策(緩やかな、中間高度での1泊)を第一とし、薬物予防は低リスクの行程では通常不要で、行程上のでゆっくり登れない中〜高リスクの状況において緩やかなにして考慮するもの、と位置づけている4。

WMS 2024年版が挙げる主な予防手段は次のとおり(網羅ではない)。

予防手段 用法・扱い 推奨度(WMS 2024)
緩やかな 1日の高度上昇を抑える行程設計そのもの 強い推奨・中等度品質エビデンス5
125mgを12時間ごと、前夜から開始(小児1.25mg/kg、1回最大125mg)4 強い推奨・高品質エビデンス5
(代替) 2mgを6時間ごと、または4mgを12時間ごと。小児には予防投与しない4 強い推奨・高品質エビデンス5
もも使えないときの選択肢 弱い推奨・中等度品質エビデンス5
中間高度での滞在を挟む・事前 行程の途中に滞在を入れる/出発前に高所へ曝露しておく 強い推奨・低品質エビデンス5
吸入 使うべきでない(再現性のあるエビデンスがない) 強い推奨・高品質エビデンス5
(予防目的) 推奨されない(研究の方法論的問題) 強い推奨・低品質エビデンス5
低酸素テント 推奨されない(2試験でAMS発症率・事前・登頂率のいずれも有意差なし) 強い推奨・中等度品質エビデンス5
推奨されない(原料・組成のばらつきで結果が一定しない) 強い推奨・低品質エビデンス5

⚠️ 125mgは低〜の行程に対する用量である。 高リスクの行程では250mgを1日2回を考慮するとされ、5,000mを超えるに適切な用量は分かっていない4。またはアレルギーで(頻度は極めて低いものの)アレルギー反応を誘発しうるため、でのアナフィラキシーの既往またはの既往がある人には禁忌である4。

💡 同じ薬が予防と治療で用量も位置づけも変わる。 は予防125mg・治療250mgをいずれも12時間ごと、は予防2mgを6時間ごと(または4mgを12時間ごと)・AMSの治療は4mgを6時間ごとである4。は予防では代替薬になるが、治療ではAMSそのものに効くとはされていない(頭痛の緩和にとどまる)——予防と治療で扱いが逆転するので、混ぜて覚えない5。

⚠️ 予防的はの1〜2日前から開始し、目標高度で2日間、速度が推奨を超えたときは2〜4日間続ける3。

⚠️ 2024年版ガイドラインは2019年版と比べてを緩め、予防戦略の適用対象を広げた。また、遷延する症状・関連心筋炎・血栓塞栓症の既往がある場合は、前に慎重な評価を要するという考慮事項が新たに加わった5。

見逃してはいけないもの:HACEへの進行

⚠️ HACE患者の大半は、まずAMSを経験している。 AMS症状を認識せずにを続けることが、(HACE)に至る主要な危険因子であり、未治療・見逃されたAMSはHACEへ進行しうる32。(酔ったような千鳥足)が出現した時点で、それはもうAMSではなくHACEとして扱い、直ちにさせる。

⚠️ ただし「AMSが無いからHACEではない」とは言えない。 AMSが先行しないHACEの症例が報告されており、とくに(HAPE)に伴う場合である2。HAPEの患者に意識変容やが出たら、AMSの経過を経ていなくてもHACEを疑う。

まとめ

  • AMSは2,500m以上への急速なで生じ、頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまいを主症状とする症候群。頻度は高度依存で2,500〜4,300mで25〜43%、6,000m以上で60%超。
  • 機序はのとが中心で、軽症〜中等症は浮腫を伴わない。浮腫とは重症例に限られる。
  • 判定はの2018年改訂版で、4項目(頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまい)を各0〜3点、合計3点以上かつ頭痛1点以上。食欲低下は独立項目ではなく消化器症状の1点である。睡眠障害の項目は2018年に削除された——AMSとの相関が乏しかったため。⚠️ 原著はこのスコアを研究用ツールと位置づけている。
  • 治療の柱は中止・・( 90%超)で、できなければ携帯高圧バッグ。薬物は(AMSの治療は4mgを6時間ごと。8mg負荷はHACEの用量)または250mgを12時間ごと。予防は125mg 12時間ごと(前夜から)、代替で2mg 6時間ごとまたは4mg 12時間ごと(小児には予防投与しない)、どちらも使えなければ(弱い推奨)。
  • ・意識障害・はAMSでは説明できず、HACEへの進行を疑って直ちにする。逆に、AMSが先行しないHACEもHAPEに伴って報告されており、AMSの経過が無いことはHACEの除外にならない。

出典

  1. 1.The 2018 Lake Louise Acute Mountain Sickness Score(High Altitude Medicine & Biology(Lake Louise AMS Score Consensus Committee)・2018)PMC(PMC6191821)で全文を読んだ。1991年に最初に発表されたLake Louise AMSスコアが5症状(頭痛・消化器症状・倦怠感/脱力・めまい/立ちくらみ・睡眠障害)を0〜3点の重症度スケールで採点する研究ツールとして有用であったこと、近年の研究(Hall 2014の292例のネットワーク解析、MacInnis 2013の491例の因子分析)で睡眠障害が他の4症状と相関が乏しく重症頭痛例の40%で睡眠障害を欠くなど高所低酸素そのものに起因する可能性が高いと示されたこと、これを受けてボルツァーノ(2014年5月、国際山岳医学会世界会議)およびLake Louise(2015年2月、国際低酸素シンポジウム)での国際的な合意形成を経てコンセンサス委員会が質問票から睡眠障害の項目を削除したこと、**2018年改訂版の診断基準が残る4症状の合計点3点以上(頭痛から少なくとも1点を含む)と定義されること**、より高いカットオフを提案した研究もあるが同委員会は睡眠項目を除くことで3点という閾値のままでも真のAMS例をより多く検出できると判断したこと、重症度分類を設ける根拠となる研究は十分でないと断りつつ希望する者向けに**軽症3〜5点・中等症6〜9点・重症10〜12点**という目安を提案したこと、症状は高度上昇から6時間以内に出現しうるが旅行や急性低酸素への反応による交絡症状と区別するためAMSスコアの評価は6時間経過後に行うことを推奨することを確認した。あわせてTable 1の各項目の0〜3点の選択肢(頭痛=なし/軽度/中等度/重度で行動不能、消化器症状=食欲良好/食欲低下もしくは悪心/中等度の悪心もしくは嘔吐/重度の悪心と嘔吐で行動不能、倦怠感かつ/または脱力=疲労も脱力もない/軽度/中等度/重度で行動不能、めまい/ふらつき=なし/軽度/中等度/重度で行動不能)と、別立てのAMS臨床機能スコア(0=まったく影響しない、1=症状はあるが活動や行程の変更を強いられない、2=症状のため登高を中止したか自力で下降した、3=低地へ搬送を要した)を確認した。⚠️ 本文書は「This Lake Louise AMS score is for use by investigators studying AMS. It is not intended for use by clinicians, professional outdoor guides, and laypersons to diagnose or manage AMS.」と明記しており、研究用ツールとして位置づけられている。判定の例示として、頭痛が無ければ合計2点超でも研究上はAMSとしないが「absence of a headache does not exclude a diagnosis for clinical purposes」と断り、重度頭痛3点のみで他症状ゼロでもAMSとすることを確認した。HACEとの区別について「AMS alone exhibits no neurological findings, and is self-limited」と述べ、HACEは通常24〜72時間後に発症し意識変容かつ/または運動失調を特徴とし、AMSまたは高地肺水腫のある人に起こるのが通例であるとしていることも確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.High Altitude Cerebral Edema(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)NCBI Bookshelfで全文を読んだ(Last Update は2025年12月1日)。HACEがAMSの進行型であり、逐語で「Most patients initially experience AMS before progression to HACE, although isolated cases of HACE without preceding AMS have been documented, particularly in association with high-altitude pulmonary edema (HAPE).」=AMSが先行しないHACEも報告されており、とくにHAPEに伴うことを確認した。またHACEの症状は登高後1〜2日で現れること、AMS症状を認識せずに登高を続けることがHACEに至る主要な危険因子であることを確認した(詳細な機序・治療は高地脳浮腫ノート側のsourcesを参照)。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Acute Mountain Sickness(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)NCBI Bookshelfで全文を読んだ(2025年9月15日最終更新)。AMSが2,500m以上への高所曝露後6〜12時間以内に生じる頭痛・悪心・めまい・倦怠感・睡眠障害を特徴とすること、2,500m未満では稀だが感受性のある個人では2,000mでも生じうること、2,500〜4,300mへの登高で25〜43%、6,000m以上への登高で60%超に生じること、年間2億人が高所目的地へ渡航すること、既往があると再発リスクが少なくとも2倍になること、危険因子(急速な登高、初日の睡眠高度2,800m超、1日500m超の睡眠高度上昇、片頭痛の既往、若年、脱水、強い身体的負荷)、機序が低酸素による脳血管拡張・軽度の間質性浮腫・交感神経活動亢進であり軽症〜中等症AMSはもはや浮腫を伴うとは考えられていないこと、重症例では軽度の脳浮腫を伴いうること、中等症〜重症例で頭蓋内圧の上昇が観察されていること、tight-fit仮説(脳室が小さい・頭蓋内コンプライアンスが低い人ほど頭蓋内圧が上昇しやすい)、高齢者は脳容積の減少ゆえ若年層よりAMS頻度が低いこと、検査室検査・画像検査は診断に不要かつ有用でないこと、⚠️ 本章は2018年改訂Lake Louiseスコアの判定規則を「頭痛に加え悪心嘔吐・倦怠感脱力・めまい・食欲低下のうち少なくとも1つ」と書いており、原著(roach-lake-louise-ams-score-2018)の「4項目の合計3点以上かつ頭痛1点以上」とは異なる簡略化であること(食欲低下は原著では消化器症状の1点の選択肢で独立項目ではない)、脳神経障害・巣症状・視覚変化・運動失調・意識障害・発熱は別診断やHACEへの進行を示唆すること、治療の第一選択がアセタゾラミド(予防125mgを1日2回、治療250mgを1日2回、目標高度で2日間または登高速度超過時は2〜4日間)であり炭酸脱水酵素阻害による代謝性アシドーシスで換気を刺激し順化を模倣すること、デキサメタゾン(予防2mgを6時間ごとまたは4mgを1日2回、治療4mgを6時間ごと、頂上到達後2〜4日間)が抗炎症作用で脳浮腫を軽減するが生理的順化は促進しないこと、⚠️ 逐語は「Dexamethasone prophylaxis is not recommended for children.」であり小児に推奨されないのは**予防投与**であって治療ではないこと、対症療法として登高中止・安静・補液・酸素投与・携帯高圧バッグが中等症〜重症で有効であること、予防戦略として3,000m以上では1日500m以内の睡眠高度上昇、2〜4日ごとの休息日、3,000mでの数日〜1週間の順化を要すること、予防的アセタゾラミドは登高1〜2日前から開始すること、未治療・見逃されたAMSがHACEへ進行しうること、AMSがHAPEと合併しうるが頭痛はHAPEの診断基準ではないこと、予後は一般に良好で適切な支持療法・薬物療法で完全回復することを確認した。閲覧 2026-09-02
  4. 4.2024 Altitude Summary(Wilderness Medical Society・2024)発行団体自身が公開している2024年改訂・急性高所疾患ガイドラインの要約。誌上版(DOI 10.1016/j.wem.2023.05.013)は出版社が403、Unpaywallもリポジトリ版を持たず取得できなかったため本頁を参照した。Table 1の逐語で、アセタゾラミドはAMS・HACEの予防が125 mgを12時間ごと(小児1.25 mg/kg、1回最大125 mg)、AMSの治療が250 mgを12時間ごと(小児2.5 mg/kg、1回最大250 mg)であること、デキサメタゾンはAMS・HACEの予防が2 mgを6時間ごとまたは4 mgを12時間ごと(小児には予防投与しない)、治療はAMSが4 mgを6時間ごと・HACEが8 mg単回後4 mgを6時間ごと(小児0.15 mg/kg/回を6時間ごと、1回最大4 mg)であること、イブプロフェンは高所頭痛の治療として600 mgを8時間ごとであることを確認した。Table 1の注は、アセタゾラミド125 mgが低〜中リスクの行程に当てはまる用量で高リスクでは250 mgを1日2回を考慮すること、5,000m超の適切な用量は不明であることを述べている。本文では、酸素はSpO2が90%を超えれば通常十分であること、デキサメタゾンは中等症〜重症のAMS/HACEの薬物治療としてアセタゾラミドより信頼できると位置づけられること、デキサメタゾンを5〜7日を超えて使ったら1週間かけて漸減すること、3,000m超では睡眠高度の上昇を1日500m以内とし3〜4日ごとに休息日を置くことを確認した。Table 2のAMS分類は、軽症AMS=Lake Louise AMSスコア3〜5点、中等症〜重症AMS=6〜12点、HACE=スコア適用外(運動失調・高度の倦怠感・意識変容・脳症)としている。閲覧 2026-09-16
  5. 5.What Is New in Altitude- and Cold-Related Illnesses of Travel: Appraisal and Summary of the Updated Guidelines from the Wilderness Medical Society(International Journal of Environmental Research and Public Health・2025)DOIをCrossrefで解決し、題名・誌名・22巻2号284・2025年2月14日が一致することを確認したうえで、Europe PMCの全文(PMC11855094)を読んだ。Wilderness Medical Society 2024年改訂ガイドラインが、AMSの予防としてアセタゾラミド125mgを12時間ごと・登高前夜から開始すること(強い推奨・高品質エビデンス)、代替としてデキサメタゾン2mgを6時間ごと投与すること(強い推奨・高品質エビデンス)を推奨すること、吸入ブデソニドは再現性のあるエビデンスがなく高所発症予防に使うべきでないこと(強い推奨・高品質エビデンス)、アセトアミノフェンも研究の方法論的問題から予防に推奨されないこと(強い推奨・低品質エビデンス)を確認した。治療については下山(強い推奨・高品質エビデンス)と補助酸素投与でSpO2 90%超を目標とすること(強い推奨・高品質エビデンス)を最優先とし、デキサメタゾン8mg投与後4mgを6時間ごと(強い推奨・低品質エビデンス)とアセタゾラミド250mgを12時間ごと(強い推奨・低品質エビデンス)を治療選択肢とすること、イブプロフェン・アセトアミノフェンは頭痛症状の緩和のみに用いAMS自体の治療を目的としないこと(強い推奨・低品質エビデンス)を確認した。また低酸素テントは無作為化2試験でAMS発症率・事前順化・登頂率のいずれも有意に改善せず推奨されないこと(強い推奨・中等度品質エビデンス)、イチョウ葉は製品による組成のばらつきから結果が一定せず推奨されないこと(強い推奨・低品質エビデンス)、2024年版は2019年版と比べリスク層別化を緩め予防戦略の適用対象を広げたこと、遷延するCOVID-19症状・COVID-19関連心筋炎・血栓塞栓症の既往がある場合は高所曝露前の慎重な評価を要するという新たな考慮事項が加わったことも確認した。⚠️ 本総説は治療の段で「AMSとHACEの症状を緩和する治療」としてデキサメタゾンを一括りに8mg投与後4mgを6時間ごとと書いているが、発行団体自身の要約のTable 1(wms-altitude-guidelines-2024-summary)はAMSの治療を4mgを6時間ごと、HACEの治療を8mg単回後4mgを6時間ごとと**別の行に分けている**。本ノートの用量は後者に従う。閲覧 2026-09-16