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Microbe Atlas · 真菌

Candida krusei

分類
酵母 / YeastsCandida
科目
Medical Microbiology
トピック
4/11: Candida genus
自然耐性薬
フルコナゾール
原因となる疾患
カンジダ症
作用する薬剤
アニデュラファンギンカスポファンギンボリコナゾールミカファンギンレザフンギン

🧠 全体像:Candida kruseiは「カンジダ属の耐性の代表例」として読む菌である。C. glabrataの感受性とは違い、には菌種として効かない——は本菌のを勧めず、試験せずに耐性と報告してよいとしている1。この菌と分かった時点では選択肢から外れる。予防投与を受けている好中球減少患者での菌としても重要である。

微生物学的な特徴

  • 陰性の。
  • ⭐ 現在の正式な学名はPichia kudriavzevii。 本菌はIssatchenkia orientalisなどの名でも呼ばれてきたが、2013年の二重の廃止とを経て、上の優先権によりPichia kudriavzeviiとして正式に記載された。検査報告では「Pichia kudriavzevii(Candida krusei)」のように旧名を併記することが勧められている2。名前が変わっても臨床上の性質(が効かない)は変わらない。
  • 培養では他のカンジダ属より平たく広がるコロニーを作ることがあり、発色培地上でも独特の色調を呈する(施設のプロトコルで確認する)。

⚠️ が効かないのは「たまたま感受性が低い」のではなく、種として本来備わった性質である。 標的酵素()がへの親和性が低いうえ、の働きも加わる。米国の判定基準にもの判定基準は置かれておらず3、は試験せずに耐性と報告してよいとしている1。など他のには活性が残るが、全体として他のカンジダ属より活性は低い3。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Candida krusei<br>消化管・環境中に存在"] --> B{"宿主の防御は保たれているか"}
    B -->|"崩れている<br>(好中球減少・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematopoietic stem cell transplantation, HSCT'>造血幹細胞移植</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematologic malignancy'>血液悪性腫瘍</span>)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal barrier'>粘膜バリア</span>を越えて血流侵入"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='candidemia'>カンジダ血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated infection'>播種性感染</span>"]
    D -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluconazole'>フルコナゾール</span>予防投与下での<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='breakthrough infection'>ブレイクスルー感染</span>として選択的に出現"| D

💡 なぜ予防投与を受けている患者にこの菌が出やすいのか。 予防投与は感受性の高いC. albicansなどを抑え込む一方、もともとが効かないC. kruseiにはとしてまったく働かない。結果として、予防投与を続けている好中球減少患者の腸管フローラの中で相対的にC. kruseiが生き残り、が破綻したときにを起こしやすくなる——「予防投与をしているのに起きた」がこの菌を疑う臨床的な手がかりになる。

感染経路と疫学

  • が中心——からの侵入。
  • 高リスク群:好中球減少症(の化学療法後)、、予防投与中の患者。
  • の9割以上を占める主要5菌種(C. albicans・C. glabrata・C. tropicalis・C. parapsilosis・C. krusei)の1つである3。免疫正常者での感染は稀。

起こす疾患

病型 特徴
・ 好中球減少患者に多く、カンジダ症の中でも予後不良な部類に入る
尿路感染症 尿中へ高濃度に出るが使えないため、治療が非常に難しい(下の表)3

診断

  • 陰性のという所見に加え、そのものがを決める——C. kruseiと判明した時点でを使わないという判断が確定する。
  • ⚠️ も、ほとんどのカンジダ属に効くのに本菌には活性が乏しい3。
  • の判定基準は機関で違う。は本菌について・には判定基準を置くが、・・は根拠不十分としている1。

治療と予防

状況 治療(米国感染症学会 2016)3
・侵襲性感染 (・・)、脂質製剤、のいずれか
経口への切り替え 臨床的に改善し血流から菌が消えたことを確かめ、感受性なら経口へ切り替えられる
膀胱炎・腎盂腎炎 0.3〜0.6 mg/kg/日を1〜7日
⚠️ 本菌には効かないので使わない
  • にも一部のは耐性を示し、感受性の低い菌種では1 mg/kg/日までの増量を考える3。

⭐ の初期治療がから始まる理由の1つが、C. kruseiやC. glabrataのようにが効きにくい菌種の存在である。 米国感染症学会は好中球減少の有無を問わずの初期治療にを勧め、は重症でなく耐性菌の可能性が低い(好中球減少患者ではの使用歴がない)患者での代替にとどめている3。前にで始めると、この菌であった場合に治療が最初から外れる。

  • 予防:好中球減少患者への予防投与は他の菌種には有効だが、この菌の出現自体は防げない点を理解しておく。

まとめ

  • 現在の正式な学名はPichia kudriavzeviiで、検査報告では旧名Candida kruseiを併記する。陰性の。
  • は菌種として効かない——は試験せずに耐性と報告してよいとし、C. glabrataの感受性とは異なる。も効きにくい。
  • 予防投与中の好中球減少患者での菌として重要。
  • 治療は・脂質製剤・のいずれかで、安定したら経口へ切り替えられる。
  • の初期治療がから始まる根拠の代表例。

出典

  1. 1.Breakpoint tables for interpretation of MICs for antifungal agents, version 12.1(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2026)版12.1(2026年4月10日から有効)のPDFの酵母の表で、C. kruseiのフルコナゾールの欄が「-」であり、凡例が「-」を「その菌種は当該薬の治療標的として不適なため感受性試験を勧めず、試験せずに耐性と報告してよい」と定義していること、同じ列でアニデュラファンギンとアンフォテリシンBには判定基準がある一方、ミカファンギン・ボリコナゾール・ポサコナゾールは根拠不十分(IE)とされ、ミカファンギンについてはC. kruseiのMICがC. albicansより約3段階高く臨床試験の症例も少ないためと注記されていることを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Fungal Nomenclature: Managing Change is the Name of the Game(Open Forum Infectious Diseases・2023)PMC全文(PMC9825814)で確認した。2013年の二重命名法の廃止と分子系統解析によりCandida kruseiはPichia kudriavzeviiに変わったこと、本菌はIssatchenkia orientalis・Candida glycerinogenes・Pichia kudriavzeviiとも呼ばれてきたが、命名上の優先権によりPichia kudriavzeviiとして正式に記載されたこと、Pichia系統群には感受性低下や自然耐性を示す菌種が含まれること、検査報告では新しい名に旧名を併記すること(例:「Pichia kudriavzevii(Candida krusei)」)を推奨していることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2016)PMC全文(PMC4725385)で確認した。C. kruseiによる感染にはエキノキャンディン系、アンフォテリシンB脂質製剤、ボリコナゾールのいずれかを推奨すること(推奨19、strong, low)、ボリコナゾールはC. kruseiによるカンジダ血症の一部で経口の切り替え治療として推奨されること(推奨9、strong, low)、アゾール系はいずれもC. glabrataとC. kruseiに対する活性が他のカンジダ属より低いこと、Table 1(CLSIの判定基準)でC. kruseiにはフルコナゾールの判定基準が置かれていないこと、フルシトシンはC. kruseiを除くほとんどのカンジダ属に活性があること、アンフォテリシンBデオキシコール酸は一部のC. krusei分離株に耐性があり、感受性の低い菌種では1 mg/kg/日までの増量を考えること、非好中球減少患者のカンジダ血症の初期治療はエキノキャンディン系であること(推奨1、strong, high)、フルコナゾールは重症でなくフルコナゾール耐性のカンジダである可能性が低いと考えられる患者での初期治療の代替にとどまること(推奨2、strong, high)、好中球減少患者でも初期治療はエキノキャンディン系で(推奨14、strong, moderate)、フルコナゾールは重症でなくアゾールの使用歴がない患者での代替であること(推奨16、weak, low)、C. kruseiによる膀胱炎・腎盂腎炎にはアンフォテリシンBデオキシコール酸0.3〜0.6 mg/kg/日を1〜7日間推奨すること(推奨103・109、strong, low)、フルコナゾール耐性のC. glabrataやC. kruseiによる尿路感染症は治療が非常に難しいことを確認した。閲覧 2026-09-27