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Microbe Atlas · 真菌

Candida auris

分類
酵母 / YeastsCandida
科目
Medical Microbiology
トピック
4/11: Candida genus
原因となる疾患
カンジダ症
作用する薬剤
アニデュラファンギンイブレキサフンガープカスポファンギンミカファンギンレザフンギン

🧠 全体像Candida aurisは「病原性の強さ」ではなく「院内感染対策における厄介さ」で読む菌である——Candida albicansを基準にした通常の抗真菌薬感受性の枠組みが通用しにくい多剤耐性、通常の生化学的同定キットでは他菌種に取り違えられる同定の難しさ、皮膚に定着して医療環境で生き延び院内伝播を起こすという3つの性質が重なり、2009年に日本で初報告されて以降、世界的な院内感染対策上の課題として位置づけられている。

微生物学的な特徴

  • 陰性C. albicansとの第一の鑑別点)。
  • 42℃というでも増殖でき、も強い——他のカンジダ属より過酷な環境に耐える性質が、皮膚表面や医療環境表面での生存・伝播を助けている。
  • ⚠️ 従来の生化学的同定パネル(VITEK、APIなど)ではC. haemuloniiRhodotorula glabrataSaccharomyces cerevisiaeなどに誤同定されやすい。 確実な同定にはMALDI-TOF(更新済みデータベースが必要)や(ITS領域・D1/D2領域の配列決定)を要する。
  • 遺伝的に独立した複数の(南アジア・南アフリカ・東アジア・南米・イランなど)がほぼ同時期に世界各地で出現しており、単一起源からの拡散ではなく複数地域での並行的な出現と考えられている。
  • ⚠️ 2024年の系統分類学的再検討で新属Candidozymaへの再分類が提案され、Candidozyma aurisという名称が使われ始めている。 ただし改名すべきかは専門誌上で議論が続いており、呼称はまだ定着していない。臨床現場・上の文書では当面両名称が併用されるため、どちらの表記も同じ菌を指すものとして読む必要がある1

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Candida auris"] --> B["皮膚定着<br>(高温・高塩濃度耐性)"]
    B --> C["医療環境表面での長期生存<br>(ベッド柵・カーテン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medical devices'>医療機器</span>)"]
    C --> D["医療者の手指・共有機器を介した<br>患者間伝播"]
    D --> E["医療関連<span class='jp-term jp-term-diagram' title='outbreak'>アウトブレイク</span>"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central vein'>中心静脈</span>カテーテル・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urethral catheter'>尿道カテーテル</span>からの<br>血流侵入"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='candidemia'>カンジダ血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated infection'>播種性感染</span><br>(重症患者・ICUに多い)"]

💡 なぜこの菌だけ「感染対策」の比重が病原性そのものより大きいのか。 C. aurisの病原性自体は他のカンジダ属と大差ないが、①皮膚定着後も長期間生存する、②標準的な環境の一部に抵抗性を示す、③無症候のが伝播源になりうる、という3点が組み合わさることで、ひとたび医療施設に持ち込まれると通常のカンジダ属では起こらない規模の院内を起こす。CDCはこれを緊急のに指定し、他菌種以上に・環境消毒・を強調している。

感染経路と疫学

  • 高リスク群:ICU入室、長期入院、カテーテル・留置、・抗真菌薬の使用歴、他の医療機関からの転院(特に既知の施設からの転入)。
  • 医療関連のが特徴的——通常のカンジダ属が中心なのと対照的に、C. aurisは患者間・環境を介した伝播が臨床的に重要な経路になる。
  • 皮膚・・腋窩などに無症候性に定着することが多く、(腋窩・培養)が感染対策上の鍵になる。

起こす疾患

病型 特徴
ICU患者・患者に多い。他のカンジダ属によるものと臨床像は区別できない
創部感染・尿路感染 他菌種と同様のパターン
無症候性皮膚定着 感染ではないが伝播源として重要——スクリーニングの対象

診断

  • ⚠️ 通常の培養同定だけでは見逃す・取り違える。 疑わしい場合はMALDI-TOFまたは分子生物学的同定を追加する。
  • は腋窩・からのC. auris用の選択分離培地)で培養する。
  • は必須——株ごとにが大きく異なるため、をそのまま継続せず必ず個別に確認する。

治療と予防

状況 対応
侵襲性感染の )を第一選択とし、感受性結果で調整する2
耐性株 多くのへの感受性が失われており、単独での経験的使用は避ける
のすべてに耐性を示す株も報告されており、複数系統の併用や新規抗真菌薬が必要になることがある

⚠️ 感染対策はこの菌の治療そのものと同じ重みを持つ。 (ガウン・手袋)、専用の使用、通常のでは不十分な場合があるためEPA承認済みのC. auris対応による環境清拭、の同室患者へのスクリーニングを組み合わせて初めて院内伝播を止められる。抗真菌薬の選択だけでは施設内は制御できない。

まとめ

  • C. albicansと異なり陰性で、42℃・高塩濃度に耐える点が生存・伝播能力の背景にある。
  • 従来の生化学的同定キットでは他菌種に誤同定されやすく、MALDI-TOFやでの確認を要する。
  • 2024年の系統分類学的再検討で新属Candidozymaへの再分類が提案されているが、2025年時点でもCandida aurisの旧名が広く併用されている。
  • 多剤耐性耐性が多くの株で見られ、も報告)と院内伝播が最大の臨床的問題で、CDCは緊急のに指定している。
  • 病原性自体は他のカンジダ属と大差ないが、皮膚定着・環境残存・保菌伝播という性質が院内を起こしやすくする。
  • が第一選択だが、株ごとのが大きく異なるため必ずで確認する。
  • 治療と並んで・環境消毒・が制御の中心になる。

出典

  1. 1.Beyond candidiasis: should infections caused by Candidozyma auris be renamed?(Journal of Clinical Microbiology (ASM)・2025)2024年の系統分類学的再検討でCandida aurisが新属Candidozymaへ再分類されCandidozyma aurisという名称が提案されたこと、およびその改名を採用すべきかが専門誌上でなお議論中で呼称が定着していないことを確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Global guideline for the diagnosis and management of candidiasis: an initiative of the ECMM in cooperation with ISHAM and ASM(European Confederation of Medical Mycology (ECMM) / ISHAM / ASM・2025)エキノキャンディン系が引き続き侵襲性カンジダ症の第一選択であること、Candida aurisの薬剤耐性と院内伝播が現行ガイドラインでも重点課題とされていることを確認した。閲覧 2026-08-02