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Microbe Atlas · 真菌

Candida tropicalis

分類
酵母 / YeastsCandida
科目
Medical Microbiology
トピック
4/11: Candida genus
原因となる疾患
カンジダ症
作用する薬剤
アニデュラファンギンフルコナゾールミカファンギンレザフンギン

🧠 全体像:Candida tropicalisは「C. albicansに次いで組織侵入力が強い非albicans種」として読む。耐性の型はC. kruseiのような一律のではないが、日本の血液由来株では耐性率が高く(2019年で耐性17.8%)、のためを試験しないC. kruseiを除けば主要菌種の中で最も高いと報告されており1、「非albicans種だがで大丈夫」と決めてかかれない。加えて好中球減少患者・患者でのという臨床的な出現場面が特徴的で、この集団ではC. albicansと並ぶ、あるいはそれ以上に重篤な転帰と関連する菌種として扱われる。

微生物学的な特徴

  • 陰性の——C. albicansとの第一の鑑別点になる。
  • ・を旺盛に形成する能力を持ち、形態学的には非albicans種の中で最もC. albicansに近い挙動を示す。
  • の主要4菌種(C. albicans・C. glabrata・C. parapsilosis・C. tropicalis)の一角を占める。日本の全国(2010〜2019年、血液由来57,001株)では4番目に多い6.7%で、C. albicans 43.6%・C. glabrata 19.5%・C. parapsilosis 18.8%に次ぐ1。
  • ⭐ 占める割合は地域で大きく違う。 日本の菌種分布は北米・欧州の報告に近く、本菌の割合がより高いアジア太平洋地域の報告とは異なる。日本国内でも沖縄では北海道より本菌の割合が有意に高い1。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Candida tropicalis<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut flora'>消化管フローラ</span>として定着"] --> B{"宿主の防御は保たれているか"}
    B -->|"崩れている<br>(好中球減少・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematologic malignancy'>血液悪性腫瘍</span>・化学療法)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrointestinal mucosal barrier'>消化管粘膜バリア</span>の破綻を越えて血流侵入"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='candidemia'>カンジダ血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated infection'>播種性感染</span><br>(肝脾・腎・眼への播種を含む)"]

💡 なぜ好中球減少患者で目立つのか。 C. albicansに匹敵する組織侵入力(形成による粘膜貫通)を持ちながら、消化管への定着頻度が患者で高いことが重なり、化学療法後の好中球減少期にを起こしやすい。同様に好中球減少患者で問題になるC. kefyrとあわせて、この臨床背景では非albicans種の関与を積極的に疑う。

感染経路と疫学

  • が中心——からの侵入。
  • 高リスク群:好中球減少症(の化学療法後、特に)、。

起こす疾患

病型 特徴
・ カンジダ症の一部として、好中球減少患者に多く重症化しやすい

診断

  • 陰性のという所見でC. albicansと鑑別する。
  • 血流由来株ではを行う。ただし結果を待たずにを始めるのが原則で、日本では耐性が1割台後半、耐性が1割強という報告があるため1、初期治療にを当て込まない。

治療と予防

好中球減少患者のについてのの推奨は次のとおり2。

状況 治療 推奨の強さ
初期治療 (70 mg負荷後50 mg/日・100 mg/日・200 mg負荷後100 mg/日) 強い推奨・中等度の質のエビデンス
代替 脂質製剤3〜5 mg/kg/日——有効だが毒性の点で劣る 強い推奨・中等度の質
代替 800 mg(12 mg/kg)負荷後400 mg(6 mg/kg)/日——重症でなくのない例に限る 弱い推奨・低い質
好中球減少が続く臨床的に安定した例で、感性株かつ血流からの消失が確認できているなら400 mg/日へ 弱い推奨・低い質
  • 治療期間は、がなければ血液培養が陰性化してから最低2週間で、好中球減少と症状の消失が条件になる(強い推奨・低い質)2。
  • ⚠️ 好中球減少中はが出ない。 網膜・の炎症所見は好中球が回復するまで乏しいため、好中球減少からの回復後1週以内に下のを行う(強い推奨・低い質)2——好中球減少期に眼底が正常でも眼内播種を否定したことにならない
  • ⚠️ 好中球減少患者では中心静脈カテーテルを反射的に抜かない。 この集団では消化管などカテーテル以外の感染源が優位であり、は個別に判断する(強い推奨・低い質)2——非好中球減少患者でカテーテルを感染源と推定したときに早期を勧める考え方と区別する。好中球数の回復自体が治療反応を大きく左右する。

まとめ

  • 陰性ので、非albicans種の中ではC. albicansに最も近い組織侵入力を持つ。
  • 好中球減少患者・患者でのが臨床的に重要な出現場面。
  • 感受性は菌種として一律ではなく地域差が大きい。日本では血液由来株の耐性率が高く、のC. kruseiを除けば主要菌種の中で最も高いと報告されており1、はから開始する(好中球減少患者では強い推奨・中等度の質のエビデンス)2。
  • 好中球減少患者ではカテーテル以外の感染源が優位で、カテーテルは個別判断になる2。

出典

  1. 1.Distribution, trends, and antifungal susceptibility of Candida species causing candidemia in Japan, 2010-2019: A retrospective observational study based on national surveillance data(Medical Mycology(Kajihara T, Yahara K, Nagi M, et al.)・2022)PMC全文(PMC9521341)で確認した。日本のJANIS surveillance 2010〜2019年の血液由来Candida 57,001株のうちC. tropicalisは6.7%(3,827株)で4番目に多く(C. albicans 43.6%、C. glabrata 19.5%、C. parapsilosis 18.8%)、2019年のC. tropicalisはフルコナゾール耐性17.8%・ボリコナゾール耐性13.5%で、期間中のフルコナゾール耐性率10.1〜30.5%は他地域の報告より高く、著者は本研究でアゾールに対する耐性率が最も高かったのはC. tropicalisだったと述べていること(C. kruseiは自然耐性のためフルコナゾールの試験対象外)、菌種分布は北米・欧州の報告に近くアジア太平洋地域の報告とは異なること、沖縄では北海道よりC. tropicalisの割合が有意に高かったことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2016)PMC全文(PMC4725385)で確認した。好中球減少患者のカンジダ血症の初期治療はエキノキャンディン系(カスポファンギン70 mg負荷後50 mg/日、ミカファンギン100 mg/日、アニデュラファンギン200 mg負荷後100 mg/日)を推奨(強い推奨・中等度の質のエビデンス)、脂質製剤アンフォテリシンB 3〜5 mg/kg/日は有効だが毒性の点で劣る代替(強い推奨・中等度の質)、フルコナゾールは800 mg(12 mg/kg)負荷後400 mg(6 mg/kg)/日で、重症でなくアゾール前治療歴のない例に限る代替(弱い推奨・低い質)、好中球減少が続く臨床的に安定した例で感性株かつ血流からの消失が確認できていればフルコナゾール400 mg(6 mg/kg)/日へのステップダウンが可能(弱い推奨・低い質)、糸状菌のカバーを追加したい場面ではボリコナゾールも選択できる(弱い推奨・低い質)、C. krusei による感染ではエキノキャンディン系・アンフォテリシンB脂質製剤・ボリコナゾールのいずれかを推奨(強い推奨・低い質)、転移性合併症のないカンジダ血症の治療期間は血液培養陰性化後最低2週間で好中球減少と症状の消失を条件とする(強い推奨・低い質)、好中球減少からの回復まで網膜・硝子体の眼所見は乏しいため回復後1週以内に散瞳下の眼底検査を行う(強い推奨・低い質)、好中球減少患者では消化管など中心静脈カテーテル以外の感染源が優位でカテーテル抜去は個別に判断する(強い推奨・低い質)と記載されていることを確認した。閲覧 2026-09-27