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Microbe Atlas · 細菌

Capnocytophaga canimorsus

分類
G− 桿菌・通性嫌気性 / Gram− rods (facultative anaerobe)Capnocytophaga
性状
Gram陰性 (G−)紡錘形桿菌 Fusiform rods
科目
Medical Microbiology
トピック
1/30: Role of the host organism in the pathogenesis5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis
原因となる疾患
無脾症・脾機能低下症

🧠 全体像:Capnocytophaga canimorsusを覚える最短経路は「イヌ・ネコに舐められた・咬まれた後、患者が数日〜1週間で劇症敗血症になる」という一続きの物語である。イヌ・ネコの口腔内常在菌でありながら、Pasteurella multocidaのように数時間で発症する蜂窩織炎ではなく、発育が遅く(血液培養で陽性化するまで平均6日、最長14日)、その分発症までの潜伏期も長いのが対照的な特徴である。莢膜を持つため脾臓による濾過処理に強く依存しており、・・という「脾機能が弱い・が乏しい」患者群で選択的に致死的な感染を起こす。

微生物学的な特徴

(両端が細くなった)のグラム陰性桿菌で、莢膜を持つ。発育がきわめて遅いことが検査室的に最大の特徴で、血液培養が陽性化するまで平均6日、長ければ14日を要するため、標準的な培養期間の設定では検出されずに終わることがある1。

項目 内容
形態 のグラム陰性桿菌、莢膜を持つ
発育速度 遅発育——血液培養陽性化まで平均6日、最長14日を要する
莢膜 あり——補体・貪食からの回避に働く
由来 イヌ・ネコの口腔内

病原性

莢膜が補体による認識とによる処理を妨げるため、莢膜を持つ細菌を専門的に処理する脾臓(による抗体非依存性の濾過)の機能が不可欠になる。脾臓がその役割を果たせない(・)と、菌は血中で無制限に増殖し、劇症敗血症・()・へ進展しうる1。も同様に感染リスクを高めるとして知られる1。

感染経路と疫学

  • イヌ・ネコの咬傷、引っかき傷、および咬傷を伴わない唾液曝露(傷のある皮膚を舐められる等)を介して伝播する人獣共通感染症である
  • 健常者への曝露はに起こるが、健常な脾機能・免疫能があれば重症化は稀——発症するかどうかは曝露そのものより宿主の脾機能・免疫状態に大きく左右される
  • ・、、その他の免疫不全が確立した危険因子である21

起こす疾患

疾患 特徴
劇症敗血症・ ・患者で発症。ショックに至った場合の転帰は不良(後述)
・ 敗血症に伴うの破綻。四肢末端の対称性壊疽に至ることがある
髄膜炎 頻度は敗血症より低いが報告例があり、他病型に比べ転帰は比較的良好
蜂窩織炎 咬傷部の。全身化しなければ経過は比較的軽症

⚠️ 転帰は病型によって大きく異なる。 髄膜炎の致死率がおよそ5%であるのに対し、菌血症ではおよそ26〜36%、に至った例では60%に達するとされる——同じ菌でも「どこまで進展させて診断がついたか」が予後を大きく左右する1。

診断

  • での好中球内のグラム陰性桿菌の観察が、劇症例における迅速な推定診断の手掛かりになる(を待たずにを開始する根拠になりうる)
  • 血液培養は発育が遅いため、通常の培養期間では陰性のまま見過ごされうる。臨床的に本菌を疑う病歴(イヌ・ネコとの接触、の既往)があれば、検査室へ長期培養を依頼する必要がある1
  • 確定同定には・()などの追加手法を要することが多い

治療と予防

  • ⚠️ 重症例ではを待たずを開始する。 患者のイヌ・ネコ咬傷後の劇症経過は進行が速く、確定診断を待つがないことが多い
  • 第一選択は阻害薬配合のβ-ラクタム系(アモキシシリン・など)または(・)——産生株の広がりとセフトリアキソン耐性の報告があり、単純なセフトリアキソン単剤に頼らない1
  • 創に対する予防的抗菌薬としても、アモキシシリン・が第一選択に挙げられる2
  • 予防の要は、・の患者にイヌ・ネコとの濃厚接触(咬傷に限らず、舐められることを含む)のリスクをの段階で伝えることにある——曝露そのものを完全には避けられないため

まとめ

  • イヌ・ネコの口腔内常在菌で、の莢膜を持つグラム陰性桿菌。血液培養の発育が遅く(平均6日、最長14日)、検出を逃しやすい。
  • 莢膜を脾臓が処理できないと病原性が顕在化するため、・・が確立した重症化因子である。
  • 病型により転帰が大きく異なり、髄膜炎(致死率約5%)より菌血症(約26〜36%)・(約60%)で予後が悪い。
  • での好中球内の観察がの手掛かりになる。治療は阻害薬配合β-ラクタム系またはが第一選択で、産生株の広がりによりセフトリアキソン単剤には頼らない。

出典

  1. 1.Severe Capnocytophaga Canimorsus Purpura Fulminans After a Cat Bite in an Asplenic Patient: Diagnostic and Therapeutic Challenges(Cureus・2025)Capnocytophaga canimorsusが莢膜を持つグラム陰性桿菌であること、平均6日・最長14日を要する遅い発育のため通常の微生物検査室のプロトコルでは検出に十分な培養期間を確保できないことがあること、脾臓が莢膜を持つ細菌を補体・抗体を介して除去する特有の役割を担うため無脾症患者・アルコール多飲患者で重症感染のリスクが高いこと、転帰は病型により髄膜炎で5%程度と低い一方、菌血症で26〜36%、敗血症性ショックでは60%に達しうること、第一選択治療がβ-ラクタマーゼ阻害薬配合のβ-ラクタム系またはカルバペネム(イミペネム・メロペネム)であること、β-ラクタマーゼ産生株の広がりとセフトリアキソンへの耐性が報告されていることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Animal Bites(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)2025年4月10日改訂版。Capnocytophaga canimorsusがイヌの口腔内フローラに常在するグラム陰性菌であること、無脾症をはじめとする免疫不全患者は本菌による感染リスクが高いこと、イヌ咬傷の予防的抗菌薬としてアモキシシリン・クラブラン酸が第一選択であることを確認した閲覧 2026-09-05