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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 先天性疾患

CARD9欠損症

CARD9 deficiency

別名
CARD9欠損Predisposition to invasive fungal disease due to CARD9 deficiency
臓器系
免疫・膠原病感染症皮膚
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-51:免疫不全症
上位概念
原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)
鑑別疾患
慢性皮膚粘膜カンジダ症
治療薬
ボリコナゾールイトラコナゾールアムホテリシンBテルビナフィン
原因微生物
Candida albicansTrichophyton rubrum
症状
爪囲炎皮膚結節リンパ節腫脹

🧠 全体像:CARD9欠損症は、(CMC)と同じ「Candidaに弱くなる」のでありながら、壊れている経路がまったく違う。CMCの原因群がへの分化・IL-17シグナル自体の破綻であるのに対し、CARD9欠損は(Dectin-1など)の下流でSykキナーゼからのシグナルを中継する分子そのものが壊れる。この違いが臨床像の重さに直結する——CMCが粘膜表面にとどまるのに対し、CARD9欠損は好中球の抗真菌まで巻き込むため、中枢神経系カンジダ症・型といった侵襲性・の真菌症に進みうる。「同じカンジダ易感染性でも、粘膜表面で止まるか、脳まで達するか」という一点で両者を区別すると理解しやすい。

病態:C型レクチン受容体の下流シグナルが途絶える

CARD9(Caspase recruitment domain-containing protein 9)は、Dectin-1・Dectin-2・Dectin-3・Mincleといった(CLR)が真菌の細胞壁成分(β-など)を認識した後、Sykチロシンキナーゼの活性化を経てPKCδがCARD9のThr231をリン酸化することでを開始する分子である1。この経路は、粘膜表面でのIL-17産生・誘導と産生を促すだけでなく、血液から好中球を脳などの標的臓器へ動員し、真菌感染から保護する役割も担う2。CARD9欠損はの遺伝形式をとり、この分子が働かないことでCLR経路全体のが途絶える1。

flowchart TD
    A["Dectin-1など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-type lectin receptor'>C型レクチン受容体</span>が真菌成分を認識"] --> B["Sykチロシンキナーゼ活性化"]
    B --> C["PKCδがCARD9をリン酸化"]
    C --> D["CARD9<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span><br>(IL-17産生・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil recruitment'>好中球動員</span>)"]
    D --> E["粘膜での抗真菌防御+好中球による深部組織の防御"]
    F["CARD9欠損(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autosomal recessive'>常染色体劣性</span>)"] -.->|"シグナルが途絶える"| D
    E -.->|"防御破綻"| G["粘膜にとどまらず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep-seated'>深在性</span>・侵襲性の真菌症へ進展"]

⚠️ CMCとの機序の違いはここにある。 CMCの原因(STAT1・IL17RA/RC/F欠損など)はへの分化やIL-17シグナルそのものの障害であり、防御の破綻は粘膜表面にとどまりやすい。CARD9欠損は好中球を介した深部組織の防御まで巻き込むため、同じ「Candidaに弱い」表現型でも行き着く先の重症度が異なる。

臨床像:粘膜にとどまらない深在性・侵襲性真菌症

⭐ CARD9欠損では、に加えて、の真菌感染を来しうる点が古典的CMCとの臨床的な違いになる。 89例の文献レビューでは、最も頻度の高い感染部位は皮膚・中枢神経系・リンパ節で、主要な病原体はTrichophyton属とCandida属であった。全例が感染を呈し、32.82%は侵襲性感染に至っている1。

  • 中枢神経系カンジダ症・:Candidaが血流を介して中枢神経系に達し、を来す。中枢神経系感染は予後不良と関連し、レビューでは16例(17.98%)が死亡した1。
  • 型:通常はにとどまる(Trichophyton属など)が真皮・皮下組織、時にリンパ節まで浸潤し、紅斑鱗屑局面、や、重度の、リンパ節腫脹を来す。
  • 発症年齢は幅広く(1〜91歳)、58.43%は18歳未満で発症する1。
  • 爪のとして・重度のを伴うこともあり、この点はCMCと外見上重なるが、CARD9欠損では深部・侵襲性の病変を伴いやすい。

診断

臨床的には、慢性・反復性の粘膜に加えて・侵襲性の真菌感染(中枢神経系カンジダ症、型、原因不明のリンパ節腫脹など)を認めた場合にCARD9欠損を疑う。確定診断は(Sanger法・全・標的)によるCARD9遺伝子変異の同定で行う。文献レビューでは82例中38種類の変異が同定され、c.865C>T・c.883C>T・c.819-820insGが高頻度であった1。

治療

⚠️ 長期の抗真菌薬治療が必要だが、反応は一様ではなく再発しやすい。 ・・・などが治療に用いられるが、文献レビューでの転帰は34例、部分改善13例、軽度改善6例、無効14例と幅があり、治療中止後の再発報告もある1。根治療法は確立されておらず、長期の予防投与と定期的な経過観察が必須とされる1。

まとめ

  • CARD9欠損症はので、(Dectin-1など)の下流でSyk・PKCδを介したシグナルを中継するCARD9分子そのものが障害される。
  • (Th17・IL-17経路の障害)とは機序が異なり、CARD9欠損は好中球を介した深部組織の防御まで巻き込むため、中枢神経系カンジダ症・型など侵襲性のに進みうる。
  • 主要な感染部位は皮膚・中枢神経系・リンパ節で、中枢神経系感染は予後不良と関連する。
  • 診断は(CARD9変異の同定)で確定する。
  • 治療は長期の抗真菌薬(・・・など)が中心だが反応は一様でなく再発しやすく、根治療法は確立されていない。

出典

  1. 1.Clinical features of patients with fungal infections caused by CARD9 deficiency: a literature review of case reports(Frontiers in Cellular and Infection Microbiology・2025)CARD9がC型レクチン受容体(Dectin-1・Dectin-2・Dectin-3・Mincle)の下流でSykチロシンキナーゼ・PKCδを介しThr231がリン酸化されることでシグナルを開始する常染色体劣性遺伝疾患であること、症例89例の解析で平均発症年齢33.43±19.12歳(1〜91歳)・58.43%が18歳未満で発症したこと、最頻感染部位が皮膚・中枢神経系・リンパ節で主要病原体がTrichophyton属とCandida属であり全例が深在性感染を呈し32.82%が侵襲性感染であったこと、中枢神経系感染が予後不良と関連し16例(17.98%)が死亡したこと、遺伝子検査(Sanger法・全エクソーム/標的シークエンス)で診断を確定しc.865C>T・c.883C>T・c.819-820insGが高頻度の変異であったこと、ボリコナゾール・イトラコナゾール・アムホテリシンB・テルビナフィンなどの抗真菌薬治療でも完全寛解は34例にとどまり14例が無効で治療中止後の再発例もあり長期の予防投与と定期経過観察が必要とされ根治療法が確立していないことを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.CARD9 gene(MedlinePlus Genetics (U.S. National Library of Medicine)・2024)CARD9蛋白がC型レクチン受容体などからのシグナルを中継してCandida真菌を認識し、粘膜表面ではIL-17経路を介したTh17細胞の誘導と抗菌ペプチド産生を促し、血液から好中球を脳などの臓器へ動員して真菌感染から保護する役割を担うこと、CARD9欠損では皮膚・爪・粘膜の慢性粘膜皮膚カンジダ症にとどまらず血液・脳を含む全身性カンジダ症に進みうることを確認した。閲覧 2026-09-07