組織学

組織学 · 5.4

神経組織:神経線維

Nervous tissue — Nerve fibers

応用トピック
多発性硬化症の症候と診断ギラン・バレー症候群多発ニューロパチーの症候と主な原因
疾患
小径線維ニューロパチー
症状
末梢神経障害
検査値
表皮内神経線維密度

🧠 は「軸索+それを包む鞘(髄鞘があるかないか)」の組み合わせとして捉え、髄鞘がある場合は「誰が巻いているか(CNSかPNSか)」で担当細胞が変わる、と覚える。 はが速くを行い、は遅い連続伝導——「巻いてあるか・誰が巻いているか・速いか遅いか」の3点セットが本節の骨格。

有髄線維と無髄線維

flowchart TD
  A["軸索"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelinated fiber'>有髄線維</span>:髄鞘に包まれる、太い軸索(1.5〜2μm以上)"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unmyelinated fiber'>無髄線維</span>:髄鞘なし、細い軸索(1.5μm未満)"]
  B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saltatory conduction'>跳躍伝導</span>:速い"]
  C --> E["連続伝導:遅い"]
軸索の太さ 太い(約1.5〜2μm以上) 細い(1.5μm未満)
髄鞘 あり なし(軸索はに包まれるがき状の髄鞘は形成されない)
伝導様式 (間をジャンプ) 連続伝導
速い 遅い

髄鞘形成細胞:CNSとPNSで異なる

CNS PNS
髄鞘形成細胞 (05-3-neuroglia) (05-3-neuroglia)
1細胞が担当する範囲 多数の軸索にそれぞれ1つずつ髄鞘分節(突起を伸ばして同時に)。マウス視神経で平均19本(12〜35本)、節間長は平均138 μm(50〜350 μm)1 1本の軸索の1区間のみ
flowchart TD
  A["軸索の周囲に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroglia'>グリア細胞</span>の細胞膜が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='whirl / whorl'>渦巻</span>き状に何重にも巻きつく"]
  A --> B["脂質に富む多層の髄鞘が完成"]
  B --> C["区間の境界=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='node of Ranvier'>ランビエ絞輪</span>:髄鞘を欠く"]
  C --> D["活動電位は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='node of Ranvier'>ランビエ絞輪</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='node of Ranvier'>絞輪</span>へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saltatory conduction'>跳躍伝導</span>"]

⭐ 1つのは1本の軸索の1つの区間(節間, internode)にしか対応しないのに対し、1つのは多数の軸索にそれぞれ1つずつ節間を配る——05-3-neurogliaで述べたこの非対称性は、CNS(など)が1個のの障害でより広範囲に影響しうる理由の理解にもつながる。

ランビエ絞輪と跳躍伝導

髄鞘は軸索全体を連続して覆うのではなく、一定間隔ごとに髄鞘を欠くが存在する。このにイオンチャネルが密に集まっており、活動電位は髄鞘に覆われた区間を飛び越えてからへとすることで、よりはるかに高速に興奮を伝導する。

💡 は理屈ではなく実測されたもの。 単離した末梢に沿ってを測ると、興奮がからへ跳ぶことが直接示された(1949年)2。

💡 を決めるのは軸索の太さだけではない。 幾何学的に相似なでははほぼ直径に比例するが、髄鞘の厚さと節間距離も直径と線形に結びついているため、どれがどれだけ効いているかは単純には切り分けられない。を固定すると髄鞘が厚いほど速くなり、逆に線維全体の径を固定すると/線維径の比にが最大となる最適値が存在する(髄鞘を厚くしすぎると軸索が細くなって損をする)。は節間距離にも依存し、正常な末梢線維の節間距離の近傍で広い最大をとる。さらに温度と軸索内環境にも左右される3。「太い=速い」で止めず、髄鞘の厚さ・節間距離・温度まで含めて押さえる。

💡 「髄鞘は電気を通しにくいとして働くのに、なぜ伝導が“速く”なるのか」という一見矛盾する現象は、髄鞘が電流の漏れを防いでを伝わるを減衰させずに次のまで届け、でのみ活動電位を再生する、という仕組みで説明できる——電線の被覆が電流を効率よく遠くまで届けるのと同じ発想。

まとめ

  • は太い軸索に髄鞘をもちで速く、は細く連続伝導で遅い。
  • CNSではが複数軸索の複数区間を、PNSではが1軸索の1区間のみをする。
  • は髄鞘を欠く区間で、活動電位はここを跳躍することで高速に伝導する(1949年にの実測で示された)。
  • 1個のは複数区間をまとめて巻くのではなく、多数の軸索に1つずつ節間を配る(マウス視神経で平均19本、節間長平均138 μm)。
  • はにほぼ比例するが、髄鞘の厚さ・/線維径の比(最適値がある)・節間距離・温度にも依存する。

出典

  1. 1.Three-dimensional morphology of astrocytes and oligodendrocytes in the intact mouse optic nerve(Journal of Neurocytology・1994)成熟マウス視神経で単一細胞を色素注入して三次元再構築すると、1個のオリゴデンドロサイトは近傍の平均19本(幅12〜35本)の軸索に対してそれぞれ1つずつ髄鞘分節を提供し、節間長は平均138 μm(幅50〜350 μm)である。1個の細胞が支える髄鞘の本数と節間長は取り巻く軸索の直径と相関する閲覧 2026-08-24
  2. 2.Evidence for saltatory conduction in peripheral myelinated nerve fibres(The Journal of Physiology・1949)単離した末梢有髄線維に沿って局所電流を測定し、興奮がランビエ絞輪から絞輪へ跳ぶ跳躍伝導であることを実験的に示した報告閲覧 2026-08-24
  3. 3.Determinants of conduction velocity in myelinated nerve fibers(Muscle & Nerve・1980)幾何学的に相似な有髄線維では伝導速度はほぼ直径に比例し、髄鞘の厚さと節間距離も直径と線形関係にある。軸索径を固定すると伝導速度は髄鞘が厚いほど速く、線維全体の径を固定すると軸索径/線維径の比に伝導速度が最大となる最適値が存在する。伝導速度は節間距離にも依存し(正常末梢線維の値の近傍で広い最大をとる)、温度と軸索内環境にも左右される閲覧 2026-08-24