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Lab values · Published

CH50

CH50

別名
血清補体価総補体活性古典経路溶血活性
臓器系
免疫・膠原病全身
科目
Medical Genetics and Immunology (Immunology)
トピック
免疫学 3.3:補体アッセイ免疫学 3.1:補体系
関連疾患
C1q欠損症悪性関節リウマチ血清病補体C2欠損症
監視対象薬
エクリズマブ

🧠 全体像:CH50は個々のの「量」ではなく、が最初から最後まで通しで働くかという「機能」を測る検査である。感作したを溶かせるかどうかを見ているので、C1からC9までのどの成分が欠けても値は下がる——逆に言えば、低いという結果だけでは「どこが」欠けているかは分からない。だからCH50は単独では終着点にならず、①の(AP50/AH50)と組み合わせて欠損部位を絞り、②C3・C4の濃度と並べて「消費」か「先天欠損」かを分ける、という二段構えで使う。そして低値を見たら、病態を考える前にまず検体の扱いを疑う。

何を測っているか

CH50は補体のを利用したである。抗抗体で感作したに患者血清を加えると、赤血球表面の免疫複合体がを活性化し、最終的に()が形成されて溶血が起こる。遊離したヘモグロビンをで測り、の50%を溶血させる血清希釈倍数の逆数をCH50と定義する。加熱(56℃)で失活させた血清では溶血が起こらないことが、補体活性を見ていることの対照になる。

この検査が見ているのは、認識段階からの形成までの経路全体であり、1つの成分の濃度ではない1。

flowchart TD
    A["感作<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sheep RBC'>羊赤血球</span><br>(抗<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sheep RBC'>羊赤血球</span>抗体が結合)"] --> B["患者血清を加える"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C1 complex'>C1複合体</span>が結合<br>→ C4・C2 → C3 → C5〜C9"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane attack complex (MAC)'>膜侵襲複合体</span>が形成される"]
    D --> E["溶血 → ヘモグロビン遊離<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='absorbance'>吸光度</span>で定量"]
    E --> F["50%溶血させる希釈倍数の逆数<br>= CH50"]

⭐ 「機能を測る検査」であることが、この検査のすべての性質の源になる。 成分の濃度を測る検査(C3・C4)は、その成分が存在するかどうかしか答えない。CH50は経路が通るかどうかを答えるので、でもC2欠損でもC7欠損でも同じように低下する。感度の広さと、部位を特定できないことは同じ性質の裏表である。

基準値と単位

古典的なMayer法では上記の希釈倍数の逆数(CH50 U/mL)で報告し、など自動化された代替法も用いられる。⚠️ は測定法・施設で大きく異なるため、報告書のを優先する。

⚠️ 他施設の値や過去の別法での値と直接比較しない。 C3・C4などごく少数の蛋白を除いて、補体検査にはよく特性評価された標準品もされたアッセイも存在せず、施設間差はとくに・・ので大きい2。は同一検査室で追う。

低値の意味

低値の解釈は、まず先天欠損か消費か産生低下かの3群に分けるところから始まる。

群 機序 CH50以外の手掛かり
先天欠損 ・のいずれかの成分が遺伝的に欠けている 著減〜測定感度以下になることが多い。C3・C4は正常。や若年発症の自己免疫の既往
免疫複合体などがを持続的に活性化する 中等度の低下にとどまることが多い。C4・C3も一緒に低下する。原疾患の活動性所見
産生低下 、高度の 他の肝合成蛋白(アルブミン・)も並行して悪い
採血後の in vitro 消費・失活 臨床像とまったく合わない低値。再検で正常化する

⭐ 測定感度以下の「ゼロ」と、中等度の低下は意味が違う。 経路上のある成分が完全に欠けていれば、その経路はどうやっても通らないのでCH50は底を打つ。これに対し消費による低下は、産生が続いている以上ゼロにはなりにくい。⚠️ CH50がまったく検出されないのにC3・C4が正常という組み合わせは消費では説明できず、成分そのものの欠損を強く示唆する(・がその典型)。

活動性のSLE・、、の、、亜急性のは消費側の代表である。では症状の出現時期に一致してC3・C4とCH50がそろって低下する。

⚠️ 欠乏()は「消費」だがではない。 制御が外れたの自発的活性化によりC4が持続的に低下し、CH50も下がりうる。ただしこの病態のスクリーニングと診断はC4との機能・蛋白量で行い、CH50は主役ではない。

高値の意味

はでもあるため、炎症・感染・悪性腫瘍では産生が増えてCH50は上昇する。実地では低下より上昇の方が高頻度に遭遇する所見だが、高値そのものは原因を特異的に絞り込む情報をほとんど持たない。

⚠️ 臨床的により重要なのは、この上昇が低値を隠すことである。 慢性ので補体が消費されていても、同時にで産生が増えていれば、CH50は内に見えうる。内のCH50はのを除外しない。

⚠️ CH50が正常でも補体異常を否定できない

CH50を「補体全体の検査」と読むと、次の3つを取りこぼす。

CH50では捕まえられないもの 理由
に固有の成分の欠損(・・) 感作赤血球で動かすのはであり、固有の上流を通らない
の異常(MBL・MASP) 同じ理由で経路が使われない
個々の成分の部分的な低下 機能的なが大きく、一定の減少では溶血能に反映されない

⭐ だから補体欠損のスクリーニングでは、とのを両方測るのが原則である1。CH50単独では、欠損のように髄膜炎菌感染を反復する臨床的に重要な欠損を原理的に見逃す。

AP50/AH50と組み合わせて欠損部位を絞る

3つの活性化経路はC3より下流(C3・C5〜C9)を共有し、上流はそれぞれ固有である。この構造から、2つのの組み合わせだけで欠損部位に当たりをつけられる。

CH50() AP50/AH50() 示唆される部位
低下 正常 に固有の成分——C1q・C1r・・C4・C2
正常 低下 に固有の成分——・・
低下 低下 共有部分——C3、または(C5〜C9)
正常 正常 古典・の完全欠損は考えにくい(と部分低下は別に評価する)

💡 絞り込んだ先を確定するのは別の検査である。 疑った成分の蛋白量を測り、した当該成分を患者検体に加えてが回復するか(再構成試験)を見て、最終的にはで確定する1。CH50・AP50はあくまで「どこを調べるか」を決めるための検査である。

flowchart TD
    A["反復する侵襲性感染<br>若年発症のSLE様病態<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypocomplementemia'>低補体血症</span>"] --> B["CH50とAP50/AH50を同時に測る"]
    B --> C{"どちらが低いか"}
    C -->|"CH50のみ低下"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classical pathway'>古典経路</span>固有の成分<br>C1q・C1r・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement C1s'>C1s</span>・C4・C2"]
    C -->|"AP50のみ低下"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alternative pathway'>第二経路</span>固有の成分<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement factor B'>B因子</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement factor D'>D因子</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='properdin'>プロパージン</span>"]
    C -->|"両方低下"| F["C3または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal component'>終末成分</span><br>C5〜C9"]
    D --> G{"C3・C4は正常か"}
    G -->|"ともに正常"| H["先天欠損を疑い成分定量へ"]
    G -->|"どちらかが低下"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune complex disease'>免疫複合体病</span>による消費を疑う"]
    F --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal component'>終末成分</span>欠損なら<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Neisseria infection'>ナイセリア感染</span>の反復を確認"]

⚠️ 臨床像の非対称も絞り込みに使える。 (C1q・C1r/・C4・C2)の欠損は免疫複合体の除去不全からSLE様病態に、(C5〜C9)の欠損は形成不全から——とくに髄膜炎菌による——の反復に傾く。検査結果と病歴が同じ部位を指しているかを突き合わせる。

⚠️ 検体の扱い——低値を見たらまず疑うこと

補体蛋白は熱と時間に弱く、採血後のでも活性化・分解が進む。臨床像に合わない低値は、病態ではなく検体由来であることが少なくない。

健常者5名の検体を用いた実測では、次のことが確認されている3。

条件 CH50 AP50
氷上の血清 約1週間安定 約1週間安定
室温の血清・1日後 88%が保持 85%が保持
室温の血清・7日後 基準下限を下回る 基準下限を下回る
室温の血漿 血清より約2倍速く低下 血清より約2倍遅く低下(4日後でも88%残存)
  • 第一選択は氷上の血清。 採血後は速やかに冷却し血球から分離する。
  • 氷上輸送ができない場合は、室温24時間以内の血清までが実務上の許容範囲になる。
  • の検査に限れば、のC3安定化作用により4日以内の血漿も使える。⚠️ 同じ血漿がCH50にとっては不利に働く——1本の検体で両方を測る運用を組むときに落とし穴になる。
  • ⚠️ 説明のつかない低値は、病態を組み立てる前に再検する。 補体の活性化マーカーは採血後の in vitro 活性化で容易に生成されるため、検体の採取と取り扱いは結果の解釈と同等に重要である1。

補体標的治療のモニタリング

抗C5抗体(・)はを遮断するため、有効な血中濃度が保たれていればCH50は強く抑制される。CH50は薬剤によって生じたの機能的欠損と、消費による低下の双方を検出できる4。

⚠️ 抗C5抗体療法中の溶血には、投与量の不足だけでなく「阻害能を超える大量の」という別の機序がありうる4。CH50が抑制されていない場合と、抑制されているのに溶血が起きる場合とでは次の一手が変わるため、症状だけで増量を決めない。

💡 この文脈では「CH50が低い」ことがである。 などでを使っている患者の低CH50を、やの所見として読み違えないよう、必ずを確認する。

まとめ

  • CH50は感作の溶血を指標に、+が通しで働くかという機能を測る。個々の成分の濃度ではない。
  • C1〜C9のどの成分が欠けても低下するため感度は広いが、どこが欠けているかは単独では分からない。
  • AP50/AH50と組み合わせると、固有・固有・共有部分のどこに問題があるかまで絞れる。確定は成分定量・再構成試験・による。
  • 測定感度以下の著減は先天欠損を、C3・C4の低下を伴う中等度の低下はを示唆する。
  • 補体はでもあり、炎症下では消費されていても内に見えうる。正常値はの傷害を除外しない。
  • 固有の欠損(欠損など)との異常は、CH50では原理的に検出できない。
  • 検体は氷上の血清が第一選択。臨床像に合わない低値は、まずを疑って再検する。
  • 抗C5抗体治療中はCH50が抑制されるのが正常な姿であり、を知らずに読むと補体欠損と取り違える。

出典

  1. 1.Interpretation of Serological Complement Biomarkers in Disease(Frontiers in Immunology・2018)古典経路の機能検査は認識段階から膜侵襲複合体形成(=溶血)までの経路全体を1つの値として監視する検査であり、補体欠損のスクリーニングには古典経路と第二経路の両方の機能検査が必須であると述べている。欠損の疑いは蛋白量の測定と、精製した当該成分を患者検体に加えて活性が回復するかを見る再構成試験で確認する。活性化マーカーは採血後の in vitro 活性化で容易に生成されるため検体の採取と取り扱いが決定的に重要であるとしている。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Complement analysis 2016: Clinical indications, laboratory diagnostics and quality control(Immunobiology・2016)C3・C4などごく少数の蛋白を除いて、よく特性評価された標準品も較正されたアッセイも存在せず、これは特に古典経路・第二経路・レクチン経路の機能を評価する検査の施設間差として現れると述べている。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Preanalytical classical and alternative complement pathway activity loss(Biochemia Medica・2019)健常者5名の検体で、CH50とAP50は氷上の血清では約1週間安定し、室温の血清では1日後にCH50 88%・AP50 85%が保たれるが7日後には基準下限を下回った。室温ではCH50はEDTA血漿で血清の約2倍速く低下し、逆にAP50はEDTA血漿で約2倍遅く低下した(4日後でも88%が残存)。機能検査の検体は氷上の血清が最適であると結論している。閲覧 2026-09-03
  4. 4.Current and Future Approaches for Monitoring Responses to Anti-complement Therapeutics(Frontiers in Immunology・2019)CH50は治療によって生じた補体成分の欠損と、消費による補体活性の低下の双方を検出できると述べている。抗C5抗体療法中の突発性溶血は、投与量の不足または阻害能を超える大量の補体活性化によって起こりうるとしている。閲覧 2026-09-03