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Drug Atlas · B12 Steroids / ステロイド · 必修

デフラザコート

deflazacort

分類
Steroids / ステロイド
商品名(EU)
Calcort
科目
Pharmacology
トピック
B12: Glucocorticoids for oral and parenteral use
承認適応
デュシェンヌ・ベッカー型筋ジストロフィー
副作用
体重増加

🧠 全体像は、Duchenne型(DMD)の標準治療という土俵のうえでと並ぶ「古株」の全身性ステロイドである。オキサゾリン環を持つ誘導体()という化学構造の違いは、(MC)作用を弱め体重増加を軽減するという分かりやすい利点を生む一方、成長抑制・のリスクはむしろより高いという直感に反する副作用プロファイルをもたらす。「体重は増えにくいが、背は伸びにくく目は濁りやすい」という非対称なを正確にすることが、この薬を理解する核心になる。

薬効群の中での位置づけ

DMDの標準治療は現在、の3剤がほぼ横並びで語られる。への効果はほぼ同等とされる一方、副作用の内訳がまったく違うため選択が分かれる。

薬剤 化学的特徴 体重・代謝への影響 成長・骨・眼への影響 承認・普及度
古典的な全身性グルココルチコイド 体重増加・が目立つ(1年で約20%超の体重増加という報告) 3剤の中では中間的〜相対的に緩やか 日本を含め広く承認された
のオキサゾリン誘導体()。MR親和性が相対的に低い 体重増加はより明確に小さい12 の約2.4倍、成長抑制()もより顕著2 米国ではEmflaza、欧州ではCalcortとして承認。日本の承認情報は2026年8月時点で確認できない
」GR調節薬。MRにはとして作用 3剤の中で最も体重増加・成長抑制が軽いとする報告がある 自体は起こりうるが、骨密度低下・の頻度は他の2剤より低いとされる 2023年に米国・EUで承認された新薬。日本は国内未承認

「体重は増えにくいのに、成長は抑制されやすい」というの非対称性は覚え間違えやすい。 MC作用が弱いことは、Na⁺・水分貯留が起こりにくく体重増加を抑えるという単純なロジックで説明できるが、成長軟骨・上皮への影響がより強く出る機序は完全には解明されていない。「MC作用が弱い=副作用全般が少ない」という短絡をしないこと。

機序

DMDにおけるグルココルチコイドの効果は、抗炎症作用そのものに加え、・ユートロフィンなど複数の機序が想定されているが、これはと共通のクラス効果であり、に特有ではない。に固有なのは、としての代謝過程と、受容体プロファイルの違いである。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deflazacort'>デフラザコート</span>(オキサゾリン誘導体、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> B["血中エステラーゼにより<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>21-デスDFZへ加水分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoid receptor (GR)'>糖質コルチコイド受容体</span>(GR)に結合"]
    C --> D["NF-κB経路を介した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>産生を抑制"]
    D --> E["筋線維の炎症性壊死が緩やかになり<br>線維脂肪組織への置換が遅れる"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mineralocorticoid receptor'>ミネラルコルチコイド受容体</span>(MR)への親和性は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>より低い"]
    F --> G["Na+・水分貯留が相対的に少ない"]
    G --> H["体重増加・浮腫が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>より軽い"]

💡 抗炎症効果(DMDへの効果)の土台はと共通で、違いを生むのは主にMR側の作用の弱さ。 このは後発のにも引き継がれており、はMRに対してさらに一歩進んでとして働く点でとも異なる(「薬効群の中での位置づけ」参照)。ただし、成長抑制・リスクがより高い理由はGR/MRのだけでは十分に説明されておらず、の違いなど複数の要因が関与すると考えられている。

薬物動態

項目 値・特徴
剤形 ・経口
活性化 血中エステラーゼにより速やかに21-デスDFZへ加水分解される
代謝・相互作用 はCYP3A4でさらに代謝される。阻害薬併用時は用量を1/3に減量との併用は有効性低下のため避ける3
用量設定 体重換算(mg/kg/日)

適応

領域 使いどころ
神経筋疾患 Duchenne型(DMD)、米国では2歳以上が適応3と並ぶ標準治療で、改善・年齢の延長効果はと同等かやや優るとする報告がある1

Becker型(BMD)は米国添付文書上の適応に含まれない。日本の電子添文・PMDA承認情報は2026年8月時点で確認できず、国内での承認状況は不明である(日本の標準治療は)。

ステロイドは変異の型を問わず使えるが、などの治療は特定のにしか使えない。 DMDの薬物治療は「全員に効く対症的なステロイド」と「一部の患者にしか適用できない変異特異的治療」の2層構造で理解し、両者は排他ではなく併用される。

用法・用量

約0.9mg/kg/日を1日1回するのが標準用量で、を用いる場合は投与可能な最も近い用量に切り上げる3。より高用量(1.2mg/kg/日)を検証した試験では、0.9mg/kg/日と比べて有効性のがない一方で副作用頻度が高く、1.2mg/kg/日は推奨されない3

⚠️ 数日を超えて投与した場合、中止・減量は必ずで行う。 急な中止は急性副腎不全()を来しうる3。実際のスケジュールは施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌または添加物への過敏症3
  • ⚠️ ・緑内障:長期投与、特に6週間を超える投与では定期的な眼科検査(を含む)が必要3発症のの約2.4倍とする総説があり、眼科フォローの重要性は以上に強調される2
  • ⚠️ 小児の成長抑制群で身長増加が群より小さいという報告があり1、定期的な成長評価が必要
  • 骨密度低下:長期ステロイド使用に共通する注意点。骨折は研究間で結果が一貫しない2
  • CYP3A4阻害薬・との相互作用:阻害薬併用時は用量を1/3に減量、との併用は避ける3
  • 易感染性(を含む)、消化性潰瘍、行動・気分変化(euphoria、不眠、抑うつ、精神症状)などステロイド全般に共通する注意も当てはまる

副作用

頻度 内容
高頻度(10%以上) Cushing様外観、体重増加より軽度)、、咳嗽、多尿、3
注意 ・緑内障(よりが高い)2、成長抑制、骨密度低下、行動・気分変化
重篤・まれ 急性副腎不全(急な中止時)、重篤な感染症の増悪

💡 体重増加が少ないことを「副作用が少ない薬」と早合点しない。 体重管理では有利でも、・成長という別の軸ではむしろ不利であり、総合的な副作用負担が軽いとは限らない。

まとめ

  • のオキサゾリン誘導体()で、DMDの標準治療としてと並ぶ地位を占める。21-デスDFZがGRに結合し抗炎症作用を発揮する点はと共通のクラス効果。
  • MR親和性がより低く体重増加・浮腫が軽減される一方、は約2.4倍高く、身長増加もより抑制されるという非対称なを持つ21
  • ・4段昇降)の維持効果はと同等〜やや優るとする事後解析があるが、48週という限られた観察期間に基づく1
  • 用法・用量は約0.9mg/kg/日を1日1回で、より高用量(1.2mg/kg/日)は推奨されない。CYP3A4阻害薬・との相互作用に注意し、数日を超える投与では急な中止を避け必ずする3
  • 米国ではEmflaza、欧州ではCalcortとして承認されているが、日本の承認情報は2026年8月時点で確認できず、国内標準治療はが担う。
  • 同じくDMD標準治療のは、MRに対してとして働く点でさらに一歩進んだ設計を持ち、体重増加・成長抑制がより軽いとする報告がある。

出典

  1. 1.EMFLAZA (deflazacort) — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2021)適応はDuchenne型筋ジストロフィー(2歳以上)で、用量は約0.9mg/kg/日1日1回。禁忌は過敏症のみ。CYP3A4阻害薬併用時は用量を1/3へ減量し、CYP3A4誘導薬との併用は有効性低下のため避ける。数日を超えて投与した場合は急性副腎不全を防ぐため漸減が必要で、頻度10%以上の副作用としてCushing様外観・体重増加・食欲亢進・上気道感染・多尿・多毛・中心性肥満が挙げられ、白内障・緑内障(6週間超投与時は眼圧モニタリング)、行動・気分変化、骨密度低下、小児の成長抑制が警告されている。1.2mg/kg/日は0.9mg/kg/日と比べ有効性の上乗せがなく副作用頻度が高いため推奨されない。初回承認は2017年。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Deflazacort versus prednisone/prednisolone for maintaining motor function and delaying loss of ambulation: A post hoc analysis from the ACT DMD trial(Muscle & Nerve(Shieh et al.)・2018)48週の無作為化プラセボ対照試験(ACT DMD試験)のプラセボ群のうち、試験登録前から6か月以上安定した用量でステロイドを継続していたデフラザコート群53例とプレドニゾン/プレドニゾロン群61例を比較した事後解析。6分間歩行距離の変化は-39.0m対-70.6m、4段階段昇降時間の変化は3.79秒対6.67秒増加といずれもデフラザコート群で運動機能低下が小さく、線形外挿による歩行不能到達までの推定期間は8.58年対4.74年だった。一方で48週間の体重増加は3.9kg対4.6kg、身長増加は3.2cm対3.9cmとデフラザコート群で小さく、椎体骨折(T12、軽度)がデフラザコート群で1例発生した(プレドニゾン群は0例)。白内障はこの48週間の観察では両群とも報告なし。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Comparing Deflazacort and Prednisone in Duchenne Muscular Dystrophy(Journal of Neuromuscular Diseases(Biggar, Skalsky, McDonald)・2022)複数の観察研究・臨床試験を統合した総説で、デフラザコートはプレドニゾンと比べ白内障発症のオッズが2.4倍高く、白内障手術を受けた7例は全てデフラザコート群だったことを報告。体重増加は一貫してデフラザコートで小さい(1年時21.65%対12.95%、18か月時32.04%対21.67%など)一方、デフラザコートは低身長との関連が指摘され、骨折発生率は研究により結果が一貫しない(ある研究ではデフラザコート1,367/1万人年対プレドニゾロン748/1万人年)ことを確認した。閲覧 2026-08-10