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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

悪性腸閉塞

Malignant bowel obstruction

別名
MBO
臓器系
消化器腫瘍
科目
Surgery
トピック
外科学 A/09:イレウス(腸閉塞)の診断と治療外科学 S-24:麻痺性イレウスと機械的腸閉塞
上位概念
イレウス・腸閉塞
治療薬
オクトレオチドデキサメタゾンメトクロプラミド
症状
悪心嘔吐腹痛腹部膨満便秘
原因となる疾患
癌性腹膜炎

🧠 全体像:(MBO)を理解する一点は⭐ 「の標準治療である外科的解除が、多くの場合そもそも選べない」という点である。原因がなど多発性・びまん性の病変であるとき、1か所を解除しても別の部位で再閉塞するため、根治的な外科的アプローチより症状緩和を目的とした薬物療法(などの分泌抑制薬、副腎皮質ステロイド)と、必要に応じた減圧処置(・)が治療の中心になる1。⚠️ 閉塞部位がより(近位)であるほど外科手術がしにくいため、手術適応の判断には閉塞部位・多発性・全身状態を総合的に見る1。

病態:なぜ外科的解除が選べないのか

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal dissemination'>腹膜播種</span>・多発転移などによる<br>びまん性・多発性の腸管閉塞"] --> B{"単一部位の閉塞か<br>多発部位の閉塞か"}
    B -->|"多発部位"| C["1か所を解除しても<br>別の部位で再閉塞する"]
    B -->|"単一部位(限局例)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palliative'>姑息的</span>外科手術・バイパスを<br>検討しうる"]
    C --> E["根治的な外科的アプローチは非現実的"]
    E --> F["症状緩和を目的とした薬物療法<br>(分泌抑制薬・ステロイド)"]
    E --> G["必要に応じた減圧処置<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasogastric tube (NG tube)'>経鼻胃管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrostomy'>胃瘻</span>)"]

MBOは大腸癌・卵巣癌などの/を原因として、小腸・大腸を問わず単一部位・多発部位いずれの形でも起こりうる1。⭐ 癒着によるのと異なり、による腸閉塞は多発性に起こりやすく外科的な解除が困難なことが多い。 閉塞部位がより(近位)であるほど外科手術がしない確率が高く、この部位による違いが手術適応の判断材料になる1。

手術非適応の判断

手術非適応と判断される典型的な状況は、による多発部位の閉塞、全身状態不良、予後の短さ、既往の広範な癒着・照射歴などである。単一部位に限局する狭窄であればな・が選択肢になりうるが、による多発部位の閉塞では1か所を解除しても別の部位で再閉塞するため、根治的な外科的アプローチは非現実的になりやすい1。この場合、根治を目指す外科的解除ではなく、症状緩和を目的とした個別対応へ方針を切り替える。

症状が生じる機序

腸閉塞の先で消化管内容物・分泌液が滞留すると、が進行性に伸展され、悪心・嘔吐・腹部膨満・疝痛様の腹痛が生じる。が(VIP)を抑制してとを減らし水・電解質の吸収を高める作用機序は、この「滞留する分泌液を減らせば症状が緩和する」というの症状緩和治療全体の考え方を体現している2。

分泌抑制薬:オクトレオチド

⭐ は、腸閉塞そのものを解除するのではなく、閉塞の先で滞留する消化管分泌液を減らすことで症状を緩和する薬である。 として膵・小腸の受容体に結合し水・ナトリウム・塩化物の分泌を減らし、(VIP)を抑制することでとを減らし、水・電解質の吸収を高める2。

用量 反応率
1日300マイクログラム(典型的な) 最大約50%
1日600〜800マイクログラム 75〜90%
1日1,500マイクログラムまで(高用量例) 報告あり

2

⚠️ 症状の完全な消退までの時間は3日(範囲1〜6日)で、嘔吐の消失は2〜3日以内に得られることが多い。 ある報告では、投与によりの量が減少し、有害事象なくできた例もある2。

副腎皮質ステロイド

などの副腎皮質ステロイドも症状緩和に用いられる。3件・患者89例を対象としたCochraneのでは、ステロイド投与群のほうがプラセボ群より腸閉塞が非解除に終わるが0.51(95%信頼区間0.19〜1.43)と、には至らないものの解除に有利な傾向を示した3。検討された用量域はの6〜16mg/日であった3。

⚠️ ステロイドは生存期間を延ばすものではない。 1か月時点の死亡率にはなく、ステロイドが生存期間に影響しないと考えられている一方、含まれた試験全体で副作用のは極めて低く安全性は高いとみられる3。

⭐ 併用療法として、・・の3剤併用(0.3mg/24時間・1mg/kg/24時間・16mg/日)が安全に症状を緩和し、5日以内に定期的な排便が得られたとする報告もある2。

症状緩和としての減圧処置

薬物療法だけで症状(悪心・嘔吐・腹部膨満)が制御できない場合には、による一時的な減圧、あるいはより長期的な症状緩和として(減圧目的の)による減圧処置を検討する2。は挿入に伴う不快感が強く長期留置に適さないため、などの薬物療法で分泌量を減らせればでき、症状が持続する例でのみなど、より長期に耐えうる減圧経路へ切り替える。

まとめ

  • ⭐ はなどによる多発性・びまん性の閉塞であることが多く、外科的解除が現実的でない例が中心となる。閉塞部位がより(近位)であるほど外科手術がしにくい。
  • 手術非適応例の治療の柱は、などの分泌抑制薬による症状緩和と、副腎皮質ステロイドの併用である。
  • は分泌を減らすことで症状を緩和する薬で、に反応率が上がる(300マイクログラム/日で約50%、600〜800マイクログラム/日で75〜90%)。症状消退までは平均3日程度。
  • ステロイド(6〜16mg/日静注)は腸閉塞の解除に有利な傾向を示すがはなく、生存期間には影響しない。安全性は高い。
  • 薬物療法で症状が制御できない場合は、やによる減圧処置を症状緩和の手段として検討する。

出典

  1. 1.Prognostic Factors for Surgical Failure in Malignant Bowel Obstruction and Peritoneal Carcinomatosis(Frontiers in Surgery・2021)腹膜転移による悪性腸閉塞は小腸・大腸を問わず単一部位・多発部位いずれの形でも起こりうること、閉塞部位がより口側(近位)であるほど姑息的外科手術が奏効しない確率が高いこと閲覧 2026-09-07
  2. 2.Clinical Benefits of Octreotide for Managing Persistent Gastrointestinal Fluid Loss in Malignant Small Bowel Obstruction: A Case Report and Literature Review(Cureus・2024)オクトレオチドがソマトスタチンアナログとして膵・小腸の受容体に結合し水・ナトリウム・塩化物の分泌を減らし血管作動性腸管ペプチド(VIP)を抑制することで胃液分泌と腸管運動を減らし水・電解質の吸収を高めること、手術不能で減圧処置(経鼻胃管・胃瘻)を要する持続的な閉塞症状を持つ患者にオクトレオチドが投与されること、典型的な開始用量が1日300マイクログラムで最大約50%の患者が反応し1日600〜800マイクログラムでは反応率75〜90%まで上がること、1日1,500マイクログラムまでの高用量投与例も報告されていること、症状の完全な消退までの時間は3日(範囲1〜6日)で嘔吐の消失は2〜3日以内であること、ある報告では経鼻胃管排液量が8例で減少し有害事象なく抜去できたこと、オクトレオチド0.3mg/24時間・メトクロプラミド1mg/kg/24時間・デキサメタゾン16mg/日静注ボーラスの併用が安全性と症状緩和を示し5日以内に定期的な排便を得たことを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Corticosteroids for the resolution of malignant bowel obstruction in advanced gynaecological and gastrointestinal cancer(Cochrane Database of Systematic Reviews・2000)ランダム化比較試験3件・患者89例を対象としたメタ解析で、副腎皮質ステロイド投与群のほうがプラセボ群より腸閉塞が非解除に終わるオッズ比が0.51(95%信頼区間0.19〜1.43)であり有意差には至らないものの解除に有利な傾向を示したこと、検討された用量域は静脈内投与のデキサメタゾン6〜16mg/日であったこと、1か月時点の死亡率に統計学的有意差はなくステロイドが生存期間に影響しないと考えられること、含まれた試験全体で副作用の発生率が極めて低くステロイドに伴う有害性は非常に低いとみられることを確認した。閲覧 2026-09-07