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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

リンパ球性胃炎

Lymphocytic gastritis

別名
肥厚性リンパ球性胃炎varioliform gastritis
臓器系
消化器免疫・膠原病
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/33:胃炎内科学 S-27:胃炎
上位概念
胃炎
鑑別疾患
メネトリエ病
関連疾患
セリアック病
治療薬
ラベプラゾール
原因微生物
ヘリコバクター・ピロリ
症状
心窩部痛悪心嘔吐食欲不振体重減少
検査値
抗体価

🧠 全体像:は「胃の表層上皮にリンパ球が異常に多く入り込む」という組織所見で定義される特殊型の胃炎であり、原因ではなく現象そのものを指す名前である1。この所見の裏には主に2つの原因(セリアック病と*H. pylori*感染)が隠れており、⭐ の増加がどちらの原因かを、免疫染色の細胞種と分布が教えてくれる。内視鏡所見は正常粘膜から「胃炎」まで幅があり2、胃炎を呈した例がと紛らわしい理由になる。

位置づけ:診断名ではなく組織所見の名前

は、胃炎の中でも「特殊型」に分類される組織学的診断で、(IEL)が上皮細胞100個あたり25個以上という定量基準で定義される1。この基準は表層・小窩上部の上皮に限った話で、のは数えない。

💡 「」という診断名がついても、それだけではは決まらない。次に問うべきは「なぜリンパ球が増えているのか」——セリアック病かH. pylori感染か、あるいはまれに薬剤性かを詰める段階が必ず続く。

病態:CD8陽性上皮内リンパ球が原因を教える

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric antrum'>胃前庭部</span>上皮への<br>CD3+・CD8+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytic infiltration'>リンパ球浸潤</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraepithelial lymphocyte'>上皮内リンパ球</span>100個あたり25個以上"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytic gastritis'>リンパ球性胃炎</span>(組織診断)"]
    C --> D{"背景にある原因は"}
    D -->|"セリアック病"| E["CD8+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraepithelial lymphocyte'>上皮内リンパ球</span>が高値<br>(およそ17〜20個/100細胞)"]
    D -->|"H. pylori感染単独"| F["CD8+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraepithelial lymphocyte'>上皮内リンパ球</span>は低値<br>(およそ2個/100細胞)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gluten-free diet'>グルテン除去食</span>で組織学的に改善しうる"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eradication therapy'>除菌治療</span>の対象"]

小児を主体とする40例(年齢範囲1.5〜38歳。対照・セリアック病単独・H. pylori単独・両者合併の4群)を免疫染色で比較した研究では、CD3陽性かつCD8陽性のだけがセリアック病群で有意に増加し(H. pylori合併の有無によらずおよそ16.8〜20.2個/100細胞)、H. pylori単独群ではおよそ2.2個/100細胞にとどまった。H. pylori感染そのものはCD8陽性の増加に寄与しなかった3。

⭐ 判別に迷う症例では、CD8陽性の高値がセリアック病を、の密度がH. pylori感染を示唆する3。

セリアック病との関係

セリアック病患者213例の診断時生検を調べた研究では、16%(34/213例)にを認め、これらはいずれもH. pylori陰性であった2。

⭐ という診断がついたら、セリアック病の検索(などの測定、必要ならの追加)を促すべきという臨床的含意がここから導かれる。

⚠️ はに反応するという点が、通常の・慢性胃炎と大きく異なる。を18〜24か月継続した後の再評価では、を有した34例中32例(94.1%)で胃炎所見が組織学的に改善し、十二指腸病変も28例(82.3%)で改善した。通常のではこれほどの改善はみられなかった2。

臨床像・内視鏡所見

内視鏡所見は正常粘膜から胃炎まで幅があり、や、として現れることもある2。症状は・悪心・嘔吐など非特異的だが、無症候のことも多い。急速な体重減少とを伴う例も報告されている。

鑑別:メネトリエ病とは何が違うか

内視鏡でをみたとき、とは紛らわしい代表例である。

主体となる異常 の著増(IEL 25個/100細胞以上) の過形成(TGF-α/EGFRシグナル)
前景に立たない しばしばを来す
背景疾患 セリアック病・H. pylori感染 多くは原因不明(小児型は関連)
への反応 組織学的に改善しうる 反応しない

治療

原因への対応が主体となる——*H. pylori*陽性なら除菌、セリアック病が背景にあればを行う。⚠️ そのものを対象に治療法を検証した研究は乏しく、症状緩和には胃炎一般の管理に準じてなどのを用いることが多い。原因を除去しても組織所見が残る例や、原因がはっきりしない例もあり、その場合は自然軽快することもある。

まとめ

  • は「100個あたり25個以上」という組織所見で定義される特殊型の胃炎で、原因を示す診断名ではない。
  • 主な背景はセリアック病とH. pylori感染で、CD8陽性の高値(セリアック病)か低値(H. pylori単独)かで区別しうる。
  • セリアック病患者の16%に認め、いずれもH. pylori陰性という関連の強さから、診断時にはセリアック病の検索を促す。
  • ⭐ セリアック病関連のはで94.1%が組織学的に改善する——通常のには無い反応性である。
  • 内視鏡所見は正常粘膜から胃炎(varioliform gastritis)まで幅があり、胃炎を呈した例ではを来す点でと鑑別を要するが、の前景化とへの反応性で分かれる。

出典

  1. 1.Gastritis(StatPearls (NCBI Bookshelf, Azer SA, Awosika AO, Akhondi H)・2024)リンパ球性胃炎が上皮内リンパ球100個あたり25個以上という基準で定義される特殊型の胃炎であること、主体となる細胞がCD3陽性・CD8陽性リンパ球であること、成因は不明だが*Helicobacter pylori*感染とセリアック病の2つが関連因子として挙げられていることを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.Subtypes of chronic gastritis in patients with celiac disease before and after gluten-free diet(United European Gastroenterology Journal・2017)セリアック病患者213例を対象とした研究で、診断時にリンパ球性胃炎が16%(34/213例)に認められいずれもH. pylori陰性であったこと、リンパ球性胃炎の内視鏡所見が正常粘膜から疣状(varioliform)胃炎・結節状粘膜・肥厚性胃症・アフタ様びらんまで多様であること、グルテン除去食を18〜24か月継続した後の再評価でリンパ球性胃炎を有した34例中32例(94.1%)で胃炎所見が改善し十二指腸病変も28例(82.3%)で改善したこと、この改善の程度が通常の慢性活動性胃炎・慢性非活動性胃炎ではほとんど見られなかったことを確認した閲覧 2026-09-02
  3. 3.The immunohistochemistry profile of lymphocytic gastritis in celiac disease and helicobacter pylori infection: interplay between infection and inflammation(Mediators of Inflammation・2007)上部内視鏡を受けた40例(年齢範囲1.5〜38歳、平均10〜16歳台の小児を主体とする集団。対照8例、H. pylori陰性活動性セリアック病10例、セリアック病陰性H. pylori陽性12例、セリアック病とH. pylori陽性の重複10例)を対象に胃前庭部生検の免疫染色(CD20・CD3・CD4・CD8・CD57・CNA42・Ki67)を行ったこと、リンパ球性胃炎の頻度がH. pylori非合併セリアック病で50%・セリアック病とH. pylori合併で20%・H. pylori単独で8.3%・対照0%であったこと、CD3陽性かつCD8陽性の上皮内リンパ球のみがセリアック病群(H. pylori合併の有無を問わず)で有意に増加し値がおよそ16.8〜20.2個/100細胞であったのに対しH. pylori単独群はおよそ2.2個/100細胞・対照は0個であったこと、H. pylori感染そのものはCD8陽性上皮内リンパ球数の増加に寄与しなかったこと、セリアック病かH. pylori感染か判別しがたい症例ではCD8陽性上皮内リンパ球の増加がセリアック病を、リンパ濾胞の密度がH. pylori感染を示唆する所見になることをDiscussionで確認した閲覧 2026-09-02