麻酔・集中治療

麻酔・集中治療 · B-15

麻酔科学II:前投薬

Anesthesiology II.: Premedication

前提:病態
ベンゾジアゼピン制吐薬・消化管運動促進薬ムスカリン受容体遮断薬

🧠 全体像:は「全員に鎮静薬を投与すること」ではなく、不安、疼痛、誤嚥、PONV、感染など患者ごとの問題に対して、必要な介入を選ぶ過程である。説明と安心できる環境も重要なであり、薬の利益が呼吸抑制・せん妄・誤嚥リスクを上回る場合だけ用いる。

前投薬の目的

目的 介入例 注意点
不安軽減・健忘 説明、同伴、ベンゾジアゼピン 高齢、OSA、で・せん妄
術前鎮痛 、、 腎機能、出血、アレルギーを確認
PONV予防 、など リスク因子に応じ異なる機序を組み合わせる
誤嚥リスク低減 H2拮抗薬、、非粒子性、 高リスク患者に選択し、気道戦略を代替しない
分泌・抑制 、 一律投与せず、適応を限定する
挿管時交感神経反応の抑制 十分な・鎮痛、選択例でやα2作動薬 低血圧・徐脈を避け、一律には投与しない
予防 手術に適した抗菌薬 切開前に有効濃度を確保する

患者別の選択

flowchart TD
    A["術前患者"] --> B["不安・疼痛・PONV・誤嚥を評価"]
    B --> C["非薬物介入で十分"]
    B --> D["薬物介入の利益が大きい"]
    C --> E["説明・環境調整・再評価"]
    D --> F["最小<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effective dose'>有効量</span>を選択"]
    F --> G["呼吸・意識・循環を監視"]

不安と鎮静

  • 手術・麻酔の流れを具体的に説明し、質問に答え、患者の希望を確認する。
  • などのベンゾジアゼピンは健忘とに有効だが、の呼吸抑制、、低血圧を起こす。反復・や脆弱患者ではせん妄に注意する一方、短時間作用薬の単回が高齢者の早期を増やすとは限らない。1
  • 高齢者、OSA、呼吸不全、重症患者、オピオイド併用では減量または回避する。投与後は監視と気道管理手段を確保する。
  • 小児では年齢・発達に応じて保護者同伴、、経口・経鼻薬を個別化する。

鎮痛

  • 予測される痛みに応じ、、/阻害薬、局所・をとして計画する。
  • 強い痛みや慢性オピオイド使用では周術期疼痛チームと計画する。
  • 術前オピオイドの一律投与は呼吸抑制、悪心、鎮静を増やすため避け、必要時に監視下でする。

PONV予防

女性、非喫煙、PONV/歴、術後オピオイド使用などからリスクを評価する。

誤嚥予防

  • 健康な患者にやを一律投与しない。
  • 腸閉塞、症候性、妊娠、、緊急手術などでは、非粒子性、H2拮抗薬/、を状況に応じて検討する。
  • 薬物予防を行っても、適切な絶食確認、胃内容評価、などの誤嚥対策は必要である。

抗コリン薬

  • やは、分泌過多、強いの予測、特定の小児・気道手技などに選択する。小児扁桃・アデノイド手術の比較試験では分泌抑制は同等で、の方が心拍変化は小さかったが、これは一律投与の根拠ではない。2
  • 口渇、頻脈、尿閉、せん妄を起こし得るため、一律の分泌抑制には用いない。への影響は(眼)に限った問題で、によるが急性発作を誘発しうる。は禁忌ではなく、日本でも2019年に添付文書の禁忌が「緑内障」から「」へ改められている。
  • による拮抗時は、を抑える薬として別目的で併用する。

投与前の安全確認

  1. 患者識別、薬剤アレルギー、絶食、妊娠可能性を確認する。
  2. 既存の鎮静薬・オピオイド・アルコール、OSA、、肝腎機能を確認する。
  3. 投与後の移送方法、、監視、酸素・吸引・換気手段を確保する。
  4. 薬剤名、量、時刻、効果と副作用を記録し、手術室チームへ引き継ぐ。

まとめ

  • は目的別・患者別に選び、一律の多剤投与を避ける。
  • 説明と不安軽減、、PONVリスク低減が基本である。
  • ベンゾジアゼピンとオピオイドは呼吸抑制・せん妄リスクを評価し、最小を監視下で用いる。
  • 誤嚥予防薬は高リスク例に選択し、気道管理計画の代わりにしない。

出典

  1. 1.Midazolam Premedication Immediately Before Surgery Is Not Associated With Early Postoperative Delirium(Anesthesia & Analgesia・2021)65歳以上の待機非心臓手術患者では術直前ミダゾラム前投薬と術後1日目せん妄の増加に関連を認めなかった閲覧 2026-08-20
  2. 2.Effects of glycopyrrolate and atropine for oral secretions and perioperative hemodynamics in children undergoing tonsillectomy and adenoidectomy: a prospective, single-center, randomized, double-blind, controlled trial(Frontiers in Pharmacology・2024)小児扁桃・アデノイド手術でグリコピロレートとアトロピンの分泌抑制は同等で、前者の心拍変化が小さかった閲覧 2026-08-20