薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B24 Antiemetics / 制吐薬

アコチアミド

acotiamide

分類
Antiemetics / 制吐薬
商品名(日本)
アコファイド
科目
Pharmacology
トピック
B24: Antiemetic drugs. Prokinetic agents
承認適応
機能性ディスペプシア
副作用
下痢便秘

🧠 全体像:アコチアミドは、日本で「」という病名そのものに承認されている唯一の薬である(2013年承認、効能効果は食後・上)。同じ(AChE)阻害+末梢という点でと機序が近いが、狙いはさらに狭く絞られている——には効くが、には有効性が確立していないという限定を持つ薬である。「なら何でも効く薬」ではなく「胃が広がらない・空にならないタイプに効く薬」という理解が実地での使い分けを決める。

薬効群の中での位置づけ

項目 アコチアミド
承認病名 に伴う消化器症状(は適応外) 消化器症状全般(は適応外) (食後・上)そのもの
中心機序 D2拮抗+AChE阻害 D2拮抗(高用量で5-HT4刺激) AChE阻害+M1/M2受容体拮抗
中枢移行 乏しい 良好(のリスク) 乏しい
PDS/EPSでの効き方 使い分けの記載なし 使い分けの記載なし PDSに有効、EPSには有効性が確立していない
作用 副次的にあり 主作用の一つ 持たないとしての適応はない)

💡 同じAChE阻害でも、はD2拮抗を併せ持つ「」のから出発しているのに対し、アコチアミドは最初からの症状改善だけを狙って開発された薬である。 そのためとしての適応を持たず、B24の中でも純粋に側に位置づけられる。

機序

flowchart TD
    A["アコチアミドを内服"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myenteric plexus (Auerbach&#39;s plexus)'>筋層間神経叢</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic'>シナプス前</span>M1/M2受容体を遮断"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetylcholinesterase (AChE)'>アセチルコリンエステラーゼ</span>(AChE)を阻害"]
    B --> D["負のフィードバックが外れ<br>アセチルコリン遊離が増える"]
    C --> E["遊離したアセチルコリンの分解が減る"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic cleft'>シナプス間隙</span>のアセチルコリン濃度が上昇"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus'>胃底</span>部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adaptive relaxation'>適応性弛緩</span>が改善"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric emptying'>胃排出</span>が促進"]
    G --> I["食後<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bloating'>膨満感</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early satiety'>早期満腹感</span>が軽快<br>(PDS優位に効く)"]
    H --> I

💡 AChE阻害という機序そのものは、によりのアセチルコリン濃度を高め、これが胃運動の調節に働くという的モデルとして確認されている1

日本の多施設では、アコチアミド100 mgを1日3回・4週間投与した群が、全体的治療効果の52.2%(34.8%、p<0.001)、食後・上の3症状すべての消失率15.3%(9.0%、p=0.004)と、いずれもを有意に上回り、この結果が日本での承認の根拠になった2

添付文書の「効能・効果に関連する注意」に、「におけるの疼痛や灼熱感に対する有効性は確認されていない」と明記されている。 これがEPS限定の最も直接的な根拠である3。標的はPDSの中核病態である「」と「」で、EPSの中核病態であるをアコチアミドの機序は直接標的にしていない。7件のRCTを統合したでも、PDSでは症状改善の1.29(有意)だった一方、EPSでは1.29ではなく0.92(有意差なし)にとどまり、この添付文書の記載と整合する4に有効」ではなく「PDSに有効」と覚える。

薬物動態

項目 値・特徴
経口
投与タイミング 食前投与(食後投与では吸収・効果が低下するとされる)
代謝・排泄 主に代謝を受けたのち排泄される

適応

領域 使いどころ
消化器( における食後、上3

⚠️ 投与開始前に、検査等により胃癌等の悪性疾患を含む疾患を除外することが添付文書上の要件になっている。 であり、症状だけで安易に投与を開始しない3

日本で「」という病名そのもので承認されているのはアコチアミドのみである。は臨床使用として同じ場面で使われるが、承認病名はそれぞれ別(に伴う消化器症状など)で、としての適応は持たない。

用法・用量

PO。通常、成人には1回100 mgを1日3回、食前投与する3

⚠️ 1ヵ月投与しても症状の改善が認められない場合は投与中止を考慮する。 症状が持続する場合は、疾患の可能性を再検討し、を含む追加検査を考慮する3

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者3
  • AChE阻害薬であり、アセチルコリン作用を増強する。症状改善後の長期漫然投与は避ける3
  • ⚠️ など)との併用では、本剤の作用が減弱する可能性がある(機序が拮抗するため。一方向の記載であり、側の作用が減弱するとはされていない)3
  • ・コリンエステラーゼとの併用では、本剤及び併用薬の双方の作用が増強される可能性がある3

副作用

添付文書「11.2 その他の副作用」は頻度区分で整理されている(重大な副作用の記載はない)3

頻度区分 内容
1%以上 血中プロラクチン増加、血中トリグリセリド増加
0.5〜1%未満 下痢便秘、悪心・嘔吐、AST増加、ALT増加、γ-GTP増加
0.5%未満 発疹、蕁麻疹、増加、めまい、腹痛、、血中ビリルビン増加、血中ALP増加

💡 と異なり、中枢のD2受容体を遮断しないためは基本的に問題にならない。ただし⚠️ 血中プロラクチン増加は添付文書上「1%以上」の頻度区分で報告されており、できない(AChE阻害による末梢性の機序が想定され、の中枢性D2遮断とは機序が異なる)。QT延長への影響も目立たない。

まとめ

  • アコチアミドは日本で「」という病名そのもので承認されている唯一の薬(2013年承認)。
  • 機序はAChE阻害+M1/M2受容体拮抗によるアセチルコリン濃度の上昇で、胃のを改善する。
  • ⚠️ 添付文書に「の疼痛や灼熱感に対する有効性は確認されていない」と明記され、PDS()向けでEPS()には確立していないでも0.92、有意差なし)。
  • ⚠️ 投与開始前に検査等で胃癌等の疾患を除外することが添付文書上の要件。
  • 用法は1回100 mgを1日3回、食前投与。1ヵ月で改善しなければ中止を検討する。
  • 禁忌は成分への過敏症のみ。との併用では本剤の作用が減弱しうる(一方向)。・コリンエステラーゼとの併用では本剤・併用薬双方の作用が増強しうる。
  • ⚠️ 血中プロラクチン増加が「1%以上」の頻度で報告されており、中枢性D2遮断が無いからといっての副作用が無いわけではない。
  • は同じ場面で臨床使用されるが、としての承認は持たない。

出典

  1. 1.アコファイド錠100mg 添付文書(ゼリア新薬工業/PMDA医療用医薬品情報・2013)効能・効果が「機能性ディスペプシアにおける食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感」であること、用法・用量が1回100 mgを1日3回食前投与であること、1ヵ月投与しても症状改善が認められない場合は投与中止を考慮し症状が続く場合は器質的疾患の再検討を行うこと、禁忌が本剤成分への過敏症の既往のみであること、効能・効果に関連する注意として「5.1 機能性ディスペプシアにおける心窩部の疼痛や灼熱感に対する有効性は確認されていない」「5.2 上部消化管内視鏡検査等により、胃癌等の悪性疾患を含む器質的疾患を除外すること」の2項目があること、10.2併用注意として抗コリン薬(本剤の作用が減弱する可能性がある、と本剤側のみの片方向で記載)とコリン作動薬・コリンエステラーゼ阻害剤(本剤及び併用薬共に作用が増強される可能性がある)があること、11.2その他の副作用が頻度区分「1%以上」(血中プロラクチン増加、血中トリグリセリド増加)「0.5〜1%未満」(下痢、便秘、悪心・嘔吐、AST増加、ALT増加、γ-GTP増加)「0.5%未満」(発疹、蕁麻疹、白血球数増加、めまい、腹痛、口内炎、血中ビリルビン増加、血中ALP増加)に分かれることを、添付文書本文(効能・効果に関連する注意/用法・用量/用量に関連する注意/禁忌/10.2併用注意/11.2その他の副作用の各節)で確認した。頭痛・腹部膨満はこの表に存在しない。閲覧 2026-08-12
  2. 2.A placebo-controlled trial of acotiamide for meal-related symptoms of functional dyspepsia(Gut・2012)日本の多施設プラセボ対照第III相試験で、アコチアミド100 mgを1日3回・4週間投与した群は、全体的治療効果の奏効率52.2%(プラセボ34.8%、p<0.001)、食後膨満感・上腹部膨満感・早期満腹感の3症状すべての消失率15.3%(プラセボ9.0%、p=0.004)で、いずれもプラセボを有意に上回ったことを抄録から確認した。この試験が日本での承認の根拠になった。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Efficacy and Safety of Acotiamide for the Treatment of Functional Dyspepsia: Systematic Review and Meta-Analysis(The Scientific World Journal・2014)7件のRCTを統合したメタ解析で、アコチアミドは食後愁訴症候群(PDS)の症状改善に有意な効果を示した(プールされたリスク比1.29、95%信頼区間1.09-1.53、p=0.003、2試験396例)一方、心窩部痛症候群(EPS)では有意差がなかった(リスク比0.92、95%信頼区間0.76-1.11、p=0.39、2試験320例)ことをTable 2から確認した。閲覧 2026-08-12
  4. 4.Physiologically-Based Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Modeling for the Inhibition of Acetylcholinesterase by Acotiamide, A Novel Gastroprokinetic Agent for the Treatment of Functional Dyspepsia, in Rat Stomach(Pharmaceutical Research・2015)アコチアミドがアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を阻害してシナプス間隙のアセチルコリン濃度を高め、これが胃運動の調節に働きうるという機序を本文で確認した。閲覧 2026-08-12