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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

乳糖不耐症

Lactose intolerance

別名
ラクターゼ欠損症乳糖不耐性
臓器系
消化器
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 C/37:吸収不良症候群小児科 3-42:吸収不良:セリアック病・乳糖不耐・果糖吸収不良
鑑別疾患
食物アレルギー
続発疾患
発育不良
症状
下痢腹痛腹部膨満
原因となる疾患
クローン病セリアック病

🧠 全体像は、小腸活性が低下し、未消化の乳糖が大腸まで到達することで生じる。大腸に達した乳糖はを引き起こし、腸内細菌に発酵されてガス(水素・メタン)を産生する——この2つが症状の全てを説明する一本の機序である。臨床で重要なのは4つの型を区別することで、なかでも成人に最も多い一次性(成人型非持続症)は東アジア系で高頻度という民族差があり、二次性はやセリアック病などの一過性に起こり原疾患の治療で回復する。もう一つの軸はアレルギー)との違いで、は酵素欠損による量依存性の消化管症状にすぎず、免疫が関与するアレルギーとは機序も対応も別物である。

病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactase'>ラクターゼ</span>活性の低下(小腸<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brush border'>刷子縁</span>)"] --> B["乳糖が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monosaccharide'>単糖</span>に分解されず未消化のまま大腸へ到達"]
    B --> C["腸管内腔の浸透圧上昇"]
    C --> D["水分が腸管内腔へ引き込まれる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmotic diarrhea'>浸透圧性下痢</span>"]
    B --> F["大腸細菌による乳糖の発酵"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-chain fatty acid'>短鎖脂肪酸</span>+水素・メタン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbon dioxide, CO₂'>二酸化炭素</span>ガスの産生"]
    G --> H["腹部膨満・放屁・腹痛"]

は小腸に存在するで、乳糖をグルコースとに分解して吸収を可能にする。この活性が失われると、乳糖は分解されないまま小腸を通過して大腸へ流入し、①腸管内腔の浸透圧を高めて水分を引き込むと、②腸内細菌がこれを発酵して水素・メタンなどのガスを産生する腹部膨満・放屁という2つの機序で症状を来す。

4つの型

頻度・発症時期 機序 経過
一次性(成人型非持続症) 最多。離乳後〜学童期以降に発症 遺伝的に遺伝子の発現が加齢とともに低下する、正常な生理的変化 生涯持続。東アジア系(中国系・日本系)で高頻度という民族差がある一方、北欧系白人では低頻度1
二次性 セリアック病などによる小腸に続発 絨毛・の傷害で活性が二次的に低下 原疾患が治癒・寛解すれば粘膜が回復し、乳糖不耐も改善する(一次性との最大の違い)
先天性欠損 きわめてまれ(、報告例はごく少数) LCT遺伝子の変異によりがほぼ完全に欠損 から母乳・人工乳で重症の水様性下痢・脱水を来し、乳糖除去なしでは生命に関わる。診断が遅れれば脱水と栄養喪失が続きに至る
在胎28〜37週の早産児 に活性が上昇するの発達が未完了 一過性で、腸管の成熟とともに改善する

⭐ 一次性は東アジア系集団で特に高頻度で、離乳後3〜4年のうちに活性の80〜90%が失われるとされる一方、北欧系白人では非持続の頻度が2〜15%と対照的に低い1。日本人を含む東アジア系では「成人はが少ないのが正常」という前提で考えるとよい。

⚠️ 二次性は独立した病型ではなく他疾患の結果であり、乳糖除去だけで満足せず原疾患(、セリアック病、など)の検索・治療を優先する。

牛乳アレルギーとの鑑別

は「乳製品を飲むとお腹の調子が悪い」という点でアレルギー)としばしば混同されるが、機序・症状・対応のいずれも異なる別の病態である。

項目 アレルギー(の一型)
機序 酵素()の欠損 タンパク質(カゼイン・乳清タンパク)に対する
量依存性 量依存性:少量なら無症状のことが多い 量に関わらず微量でも症状が出うる
主な症状 下痢、腹部膨満、放屁、腹痛(消化管症状のみ) 消化管症状に加え、蕁麻疹・・アナフィラキシーなど全身症状を来しうる
発症までの時間 摂取後数十分〜数時間(発酵に時間を要する) なら数分〜2時間、なら数時間〜数日
対応 摂取量の調整、製剤 原因タンパク質の除去が必要(乳糖の有無は

⚠️ アレルギーでは乳糖を除去しても症状は改善しない(原因はタンパク質であって糖ではないため)。逆にの患者にアレルギーとして厳格な乳製品除去を指導するのは過剰対応である。

診断

  • 病歴・除去試験:乳製品摂取と症状の時間的関係を確認し、乳糖制限で症状が改善するかをみる。多くの症例はこれで診断・管理が完結し、追加検査は不要である。
  • :乳糖負荷後の呼気中水素濃度をに測定し、ベースラインから20ppmを超える上昇があれば乳糖吸収不良と判定する1。腸内細菌の発酵を直接反映する検査で、非侵襲的かつ広く用いられる。
  • :乳糖を経口摂取させ血糖上昇を測定する方法で、上昇が乏しければ吸収不良を示唆するが、に比べ利用頻度は低下している。
  • :一次性(非持続症)に関連するを調べる方法で、感度・特異度に優れるが日常診療での必須検査ではない。

治療

治療の主眼は完全除去ではなく摂取量の調整である。

  1. 乳糖摂取量の調整:多くの患者は1回あたり少量(目安として250 mL・乳糖12 g程度)なら無症状ででき、食事と一緒に摂る・1日の中で分けて摂ることでさらに多い量にも耐えられる2。1日15 gまでの乳糖は多くの患者で可能とされ、完全除去が必要になることは稀である1
  2. 製剤:乳製品摂取の直前に内服することで乳糖を事前に分解し、症状を予防できる。
  3. 発酵乳製品の活用:ヨーグルトは無加工乳のおよそ半分の乳糖しか含まず、細菌由来のβ-により消化を助けるため、無加工乳よりされやすい2。チーズ、特に長期熟成タイプは乳糖含有量がさらに低い。

⚠️ 乳製品を一律に完全除去するとカルシウム・ビタミンD不足を来し、症のリスクが高まる1。「=乳製品は一切禁止」ではなく、量の範囲で乳製品を続け、必要ならカルシウム・ビタミンDを補充する方針が基本である。

まとめ

  • 活性低下により未消化の乳糖が大腸へ到達し、と細菌発酵によるガス症状を生む。
  • 一次性(成人型、最多、東アジア系で高頻度)・二次性(原疾患治癒で回復)・先天性(新生児の重症下痢、きわめてまれ)・の4型を区別する。
  • アレルギーとは免疫機序の有無・量依存性の有無で明確に異なる別疾患であり、乳糖除去はアレルギー症状を改善しない。
  • 診断はが中心。治療は完全除去ではなく摂取量の調整と製剤・発酵乳製品の活用が基本で、乳製品の一律除去はカルシウム不足を招く。

出典

  1. 1.Lactose Intolerance(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)乳糖不耐症は一次性(成人型ラクターゼ非持続症)・二次性・先天性・未熟児の発達性の4型に分類されること、中国系・日本系集団では離乳後3〜4年でラクターゼ活性の80〜90%が失われるなど東アジア系集団で非持続の頻度が高い民族差があること(北欧系白人では2〜15%と対照的に低いこと)、水素呼気試験はベースラインから20ppm超の上昇で吸収不良と判定すること、多くの患者は1日15gまでの乳糖を耐容でき完全除去は稀にしか必要ないこと、未治療の吸収不良が骨減少症・骨粗鬆症のリスクとなりカルシウム・ビタミンD補充が推奨されること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Update on lactose malabsorption and intolerance: pathogenesis, diagnosis and clinical management(Gut・2019)乳糖不耐症患者の多くは1回250mL(乳糖12g)程度の牛乳を無症状で耐容でき、食事と一緒に摂れば・1日の中で分けて摂ればさらに多い量でも耐容しうるため厳格な乳糖除去食は不要であること、発酵乳(ヨーグルト)は無加工乳のおよそ半分の乳糖しか含まず細菌由来のβ-ガラクトシダーゼにより消化されやすいこと閲覧 2026-08-11