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Disease Atlas · 消化器 · 外傷

鈍的腹部外傷

Blunt abdominal trauma

別名
BAT腹部鈍的外傷
臓器系
消化器
科目
Traumatology
トピック
外傷学 14:鈍的腹部外傷の観察・診断・治療
続発疾患
循環性ショック
検査値
アミラーゼリパーゼ血糖
画像所見
腹腔内遊離ガス

🧠 全体像では、最初に損傷臓器を当てるのではなく、ABCDE評価と蘇生を進めながら「今すぐ止血手術が必要か」を判断する。循環不安定でが疑われればCTを待たず開腹し、安定例は造影CTで損傷を評価する。肝・脾損傷は高等級でも監視と血管塞栓を備えたが可能だが、FAST陰性や初回CT陰性は腸管・腸間膜・膵損傷を除外しない。

病態

は腹壁を破らず、圧迫、、急激なによって臓器を損傷する。交通事故、、圧挫、スポーツ外傷、ハンドルバー外傷、暴行が代表的である。

機序 起こりやすい損傷
前後方向の圧迫 肝・、腸管破裂、膵の脊椎への圧挫
腸間膜、腸管固定部損傷、血管損傷
シートベルト・ハンドルバー 腹壁痕の深部に腸管・腸間膜、十二指腸、膵損傷
胸郭への外力 肝・脾損傷、横隔膜損傷
骨盤への高エネルギー外力 、膀胱・尿道、腸管損傷

損傷では出血が主問題となり、へ進む。腸管・腸間膜損傷では、穿孔による腹膜炎のほか、血流障害から時間をおいて腸管壊死・遅発穿孔・敗血症が起こる。膵損傷は初期所見が乏しくても、があると膵液漏、膵炎、、膵瘻、を生じる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blunt force'>鈍的外力</span>"] --> B["圧迫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deceleration'>減速</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shear'>剪断</span>"]
    B --> C["肝・脾など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solid organ'>実質臓器</span>損傷"]
    B --> D["腸管・腸間膜損傷"]
    B --> E["十二指腸・膵損傷"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraperitoneal hemorrhage'>腹腔内出血</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circulatory shock'>循環性ショック</span>"]
    D --> H["出血・虚血・穿孔"]
    H --> I["腹膜炎・敗血症"]
    E --> J["後腹膜炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='main pancreatic duct'>主膵管</span>損傷"]
    J --> K["膵液漏・膵瘻・感染"]

臨床像

初期所見

  • 腹痛、圧痛、、腹部膨満
  • 頻脈、、蒼白、、意識変容、乏尿、低血圧
  • 腹壁のシートベルト痕、
  • 左肩へのである、骨盤不安定性
  • 血尿、、会陰部血腫など関連損傷の所見

血圧が正常でも出血は否定できない。若年者はだけを示すことがあり、高齢者、妊娠患者、β遮断薬使用者では頻脈が目立たないこともある。単回の数値ではなく、意識、、脈拍、乳酸・、尿量、輸血への反応をに評価する。

遅れて現れる損傷

損傷 見逃しやすい理由 再評価の手がかり
腸管・腸間膜 小穿孔、進行する虚血、初期CTで非特異的所見のみ 増悪する腹痛、、頻脈、発熱、乳酸上昇、説明できない腹水
十二指腸 後腹膜に位置し、遊離腹腔内ガスが乏しい 上腹部痛、嘔吐、後腹膜の空気・液体、炎症所見
初期CTと早期の感度が不十分 持続する上腹部痛、・リパーゼ上昇、膵周囲液体、不明瞭
横隔膜 小裂孔が初期画像で分かりにくい 呼吸症状、臓器、なヘルニア化

⚠️ 鎮痛、意識障害、、挿管、アルコール・薬物、他部位の強い痛みは腹部診察のを下げる。初回診察が静かでも、を軽視しない。

診断

初期評価

ABCDE一次評価を行い、破局的外出血があれば同時に圧迫・止血する。

  • A:気道保護を保ちながら気道を確保する。
  • B:呼吸、大量など、腹腔外の致死的原因も直ちに治療する。
  • C:循環―出血源を検索し、太いまたはを確保して、必要時はを開始する。
  • D:神経―意識、瞳孔、血糖を確認する。は腹部所見のと蘇生目標に影響する。
  • E:全身観察―完全に脱衣して背面・会陰を含め診察し、低体温を防ぐ。

では晶質液の過剰投与を避け、を早期に用い、低体温、アシドーシス、、低Ca血症を是正する。のために蘇生や確実な止血を遅らせない。

FAST・eFAST

FASTは心嚢、肝腎境界、脾腎境界、骨盤の遊離液体を迅速に探し、eFASTは胸腔の気胸・評価を加える。循環不安定例でを短時間に示す点が最大の価値である。

結果と 解釈と次の行動
不安定+FAST陽性 源を疑い、緊急開腹による止血を優先する
不安定+FAST陰性/ 胸部・骨盤・後腹膜・外出血を再検索し、反復FASTや施設に応じた(DPL)などの追加評価を行う。原因不明の不安定性が続けば、陰性FASTだけを根拠に手術を遅らせない
安定+FAST陽性 臓器損傷の詳細との可否を造影CTで評価する
安定+FAST陰性 高リスク機転、腹痛、信頼できない診察があれば造影CTまたは厳密な連続評価を行う

FASTは「血液などの液体」を検出する検査で、損傷臓器や活動性出血を十分に分類できない。後腹膜、腸管・腸間膜、膵、横隔膜、膀胱などの損傷は見逃しやすく、FAST陰性は腹腔内損傷を除外しない。

造影CTと再評価

が安定または蘇生後も安定を維持し、直ちに開腹する適応がない場合は、造影を用いた腹部骨盤CTが標準である。持続輸血やを要し、安定を維持できない一過性反応例を「安定化」とみなしてCTへ搬送しない。CTでは損傷臓器、、活動性造影剤漏出、、血腫、後腹膜、腹腔内液体を評価する。経口造影はルーチンには不要である。

flowchart TD
    A["ABCDE・蘇生・腹部診察"] --> B{"腹膜炎または明らかな穿孔か"}
    B -->|"はい"| C["緊急手術"]
    B -->|"いいえ"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodynamics'>循環動態</span>は安定しているか"}
    D -->|"いいえ"| E["FAST/eFASTを迅速に実施"]
    E --> F{"腹腔内液体あり"}
    F -->|"はい"| C
    F -->|"いいえ"| G["胸部・骨盤・後腹膜など他の出血源を検索<br>反復評価"]
    D -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous'>静脈内</span>造影CT"]
    H --> I{"手術を要する所見か"}
    I -->|"はい"| C
    I -->|"いいえ"| J["監視下の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-operative management, NOM'>非手術治療</span>±血管塞栓"]
    H --> K{"腸管・膵損傷の疑いが残るか"}
    K -->|"はい"| L["連続診察・検査・適時の再CT/MRCP/腹腔鏡"]
    K -->|"いいえ"| J

の欠損、腸管外造影剤、など特異度の高い所見は迅速な手術評価につなげる。損傷で説明できない腹水、肥厚、腸間膜血腫・脂肪織濃度上昇などが曖昧な場合は、連続診察を行い、疑いが続けば成人では約6時間後の再CTを検討する。

膵・十二指腸損傷は初期CTが陰性または非特異的でも否定できない。持続する上腹部痛、上昇、疑わしい機転があれば、安定例で12〜24時間以内の再CTを検討する。・リパーゼは早期には正常でもよく、単独で除外・確定に使わない。損傷が不明ならMRCP、必要時は診断と治療を兼ねるERCPを専門チームで検討する。

治療

緊急手術

持続する循環不安定性と、びまん性腹膜炎、、制御不能な出血は緊急開腹の適応である。では、まず、血管処置、汚染制御など生命を脅かす出血・汚染を短時間で制御し、で生理学的異常を是正した後にで再建する。

不安定例をCTへ移送して止血を遅らせない。FAST陽性は不安定例の意思決定を支えるが、腹膜炎など明らかな手術適応があればFASTを待つ必要はない。

肝・脾損傷

が安定し、腹膜炎や他の開腹適応がなく、連続監視、輸血、・塞栓、緊急手術へ即応できる施設では、AAST等級が高くてもを第一に検討する。

状況 主な対応
安定、活動性出血なし 入院監視、連続診察、血算・乳酸などの推移、適切な・活動再開計画
安定、CTで造影剤漏出・ ・塞栓術を早期に検討
成人の高等級脾損傷 造影剤漏出がなくても、施設能力と不成功リスクに応じを低い閾値で検討
不安定、腹膜炎、不成功 手術。肝では・止血、脾では必要なら

は「何もしない」ことではない。頻脈・低血圧、輸血需要、腹痛・、ヘモグロビン、乳酸、臓器機能を反復し、悪化時に塞栓または手術へ即時移行する。は肺炎球菌、髄膜炎菌、b型への予防と重症感染の教育を行う。

腸管・腸間膜損傷

穿孔、壊死、腸間膜、活動性出血は手術で修復・切除する。かは循環状態、汚染、輸血量、腸管浮腫、残存腸管、計画で決める。曖昧なCT所見だけで不要な開腹を増やさず、同時に「陰性CT」で観察を打ち切らない。

シートベルト痕やハンドルバー外傷、損傷で説明できない腹水、腹痛が改善しない患者は入院させ、同じチームが連続診察し、検査・再CT・を適時組み合わせる。診断遅延は腸管壊死、穿孔、敗血症を増やす。

膵損傷

治療は損傷の有無で決まる。を保つ軽度・裂傷は、安定例なら監視下のが可能である。損傷を伴う成人の高等級損傷は原則として早期の手術評価を行う。体部・尾部側の損傷ではを基本に検討し、頭部・近位側損傷では損傷制御ドレナージ、再建、切除を全身状態と十二指腸・胆道・血管損傷に応じて個別化する。循環が安定した一部の病型では、高度な外傷・肝胆膵・内視鏡・画像下治療のもと、ERCPによるや経皮的治療を組み合わせることがあるが、腹膜炎や循環不安定例でMRCP・ERCPのために手術を遅らせない。

⚠️ 初期CTが目立たない、または早期が正常という理由で膵損傷を除外しない。損傷の診断遅延は膵液漏、膵瘻、膿瘍、敗血症を増やす。

まとめ

  • ABCDE評価と蘇生を診断より先行・並行し、腹膜炎または循環不安定なではCTを待たず緊急開腹する。
  • FAST・eFASTは不安定例の迅速な分岐に有用だが、陰性でも腹腔内損傷、特に後腹膜・腸管・膵損傷を除外しない。
  • 安定例は造影CTで評価し、安定した肝・脾損傷は高等級でも監視と血管塞栓を備えたを検討する。
  • 腸管・腸間膜損傷は連続診察と必要時約6時間後の再CT、膵・十二指腸損傷は疑いが続けば12〜24時間以内の再CTと評価で見逃しを防ぐ。
  • は救済塞栓・緊急手術へ即移行できるで行い、経時悪化を見逃さない。