病理学

病理学 · A/35

I型・II型過敏反応(即時型・細胞障害型)

Type I and Type II hypersensitivity reactions and their pathological presentations

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
蕁麻疹の病態機序と臨床病型輸血の適応と原則
疾患
花粉-食物アレルギー症候群血清病食物アレルギー胎児新生児溶血性疾患(Rh不適合)
検査値
抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体

🧠 全体像:過敏反応のI型とII型はどちらも抗体が引き金だが、標的が違う——I型は肥満細胞上のIgEがに架橋されて起こる「即時型」、II型は細胞表面・上の固定抗原にIgG/IgMが結合して起こる「型」。この違いが臨床像(アナフィラキシー・喘息 vs 溶血性貧血・Graves病・重症筋無力症)を説明する。

過敏反応 — 総論

過敏反応 は、本来は防御的な免疫応答が、制御不十分または不適切な標的により宿主組織を傷害してしまうもの。引き金となる刺激(、持続する微生物、環境抗原)は除去しにくいため、いったん始まると反応を終わらせるのが難しい。

原因: 自己免疫(の喪失)、微生物への過剰反応(例:の免疫複合体、でのT細胞傷害)、環境抗原への反応(人口の約20%、)。

型 機序 代表疾患
I — 即時型 IgE → 肥満細胞メディエーター アナフィラキシー、性喘息、
II — 抗体介在型 細胞表面・抗原に対するIgG/IgM 、Goodpasture、重症筋無力症、Graves病
III — 抗原–抗体複合体の沈着 SLE、、Arthus反応
IV — 細胞介在型 T細胞・マクロファージ 、結核、1型糖尿病、

I〜III型は抗体介在性、IV型はT細胞介在性。

I型(即時型・アナフィラキシー型)

で、抗原曝露から数分以内に起こる。局所(、喘息)にも致死的(アナフィラキシー)にもなる。

流れ:

  1. 初回曝露 → がMHC-II上でアレルゲンをTh2細胞に提示。
  2. Th2サイトカイン:IL-4 → B細胞がIgEへ、IL-5 → 好酸球を動員、IL-13 → 。
  3. IgEがを介し肥満細胞に結合(感作)。
  4. 再曝露でIgEが架橋 → 肥満細胞の:
    • 即時相(5〜30分) — 既成・一次メディエーター:ヒスタミン、セロトニン(血管拡張、透過性亢進、、粘液)、新合成されるプロスタグランジン()と(、攣縮)。
    • (2〜8時間、数日) — 好酸球、好中球、リンパ球(駆動)。好酸球の → 上皮傷害。
flowchart TD
    A["初回抗原曝露"] --> B["Th2細胞への提示<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='interleukin-4'>IL-4</span>→B細胞のIgE<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotype switching (class switching)'>クラススイッチ</span>"]
    B --> C["IgEが肥満細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc receptor'>Fc受容体</span>に結合<br>(感作)"]
    C --> D["再曝露でIgEが架橋"]
    D --> E["肥満細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='degranulation'>脱顆粒</span>"]
    E --> F["即時相:ヒスタミン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukotriene'>ロイコトリエン</span><br>→ 血管拡張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchospasm'>気管支攣縮</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late phase'>遅発相</span>:好酸球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue injury'>組織傷害</span>"]

臨床・病理:

  • 局所(): 鼻炎、蕁麻疹、、 — 可逆的な、、。所見に、、。慢性化 → 肺気腫 → 。
  • 全身性アナフィラキシー(、ペニシリン):蕁麻疹、、、消化器症状 → 。剖検で肺水腫・型の。

⭐ WAOは2020年にアナフィラキシーのを簡素化した。 2005年の第2回NIAID/FAANシンポジウムは、アナフィラキシーを高い精度で拾える臨床基準をめざして会議を開いた1。そこで提案された3項目の基準は、定義ではなく診断の補助で、感度95%超を狙って作られたものだった2。世界アレルギー機構(WAO)は2020年に、最初の2項目を統合し3項目目を修正して2条件へ改訂した——①典型的な状+他の1以上の有意な症状、②その患者にとって既知または可能性の高いアレルゲンへの曝露+呼吸器・循環器の障害(状が無くてもよい)。状はアナフィラキシーの10〜20%で欠けるため、皮膚所見がないことを理由に除外してはならない2。

💡 アドレナリンは大腿前外側へのが第一選択。 若年成人男性でので、大腿へのは上腕への・皮下注射よりのピークが有意に高く、著者らはこの経路・部位をアナフィラキシー初期治療に推奨した3。WAO 2020の推奨用量は0.01 mg/kg(最大0.5 mg)ので、症状が治療に反応しなければ5〜15分ごとに反復する2。

II型(抗体介在型・細胞障害型)

IgG/IgMが細胞表面やに固定された抗原(内因性・外因性、例:薬物)に結合。3つの機序:

  1. と貪食 — 抗体・C3bで被覆された細胞がFc/C3b受容体を介し貪食される(例:、)。
  2. 補体・Fc介在性の炎症 — 古典的が好中球を動員 → 、による融解(例:Goodpasture、、血管炎)。
  3. 抗体介在性の細胞機能異常 — 抗体が細胞を壊すことよりも、受容体の機能を変えることが主な作用になる:重症筋無力症(抗AChR → 遮断)、Graves病(抗TSHR → 刺激 → 甲状腺機能亢進)。

💡 重症筋無力症のは「ふたをする」だけではない。 受容体への結合による伝達の遮断に加えて、受容体どうしを架橋して・分解を促し、補体を活性化しての膜を傷害することも受容体数の減少に寄与する。「受容体機能異常」の代表例だが、の機序も併せ持つ。

疾患 臨床像
タンパク 溶血、貧血
血小板GpIIb/IIIa 出血
(表皮) 皮膚水疱
基底膜(NC1) 腎炎、
重症筋無力症 筋力低下
Graves病 受容体 甲状腺機能亢進
B12吸収低下、貧血

また — Rh⁻の母がRh⁺の胎児の赤血球に曝露して感作される → 次回以降のRh⁺胎児の妊娠で抗D IgGが胎盤を通過 → 胎児の溶血、浮腫、黄疸。感作は母体への投与で予防する。

💡 ポイント: I型 = IgE+肥満細胞(Th2 → /IL-5/)。即時相 = ヒスタミン、 = 好酸球 → アナフィラキシー・喘息。II型 = に対するIgG/IgM、・補体性炎症・受容体機能異常を介す(Graves = 刺激性、重症筋無力症 = 遮断性)。Goodpasture(抗GBM)→ 肺+腎。

まとめ

  • I〜III型は抗体介在性、IV型はT細胞介在性。I型はIgE+肥満細胞、II型は細胞表面・抗原に対するIgG/IgM。
  • I型:初回曝露でによるIgE→肥満細胞への感作→再曝露で架橋・。即時相はヒスタミン・、は好酸球主体。
  • I型の代表疾患はアナフィラキシー、、。
  • II型は3機序:・貪食、補体・Fc介在性炎症、抗体介在性の細胞機能異常(Graves=刺激性、重症筋無力症=遮断性)。
  • II型の代表疾患は、、、。
  • はにより肺と腎の両方を侵す。

出典

  1. 1.Second symposium on the definition and management of anaphylaxis: summary report--Second National Institute of Allergy and Infectious Disease/Food Allergy and Anaphylaxis Network symposium(The Journal of Allergy and Clinical Immunology・2006)抄録で、アナフィラキシーの定義・診断基準に普遍的な合意が無いこと、2005年7月にNIAIDとFAANが北米・欧州・豪州を含む16団体の代表を集めて第2回会議を開き、普遍的に受け入れられる定義と、アナフィラキシーを高い精度で拾える臨床基準の確立をめざしたことを確認した。本文は取得できていない(Unpaywallでclosed)ので、基準の項目数・感度の目標はこの出典では確かめておらず、WAO 2020の記述で確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.World allergy organization anaphylaxis guidance 2020(World Allergy Organization Journal・2020)Europe PMCの全文(PMC7607509)で確認した。2005年のNIAID/FAANシンポジウムが提案した臨床基準は定義ではなく診断の補助であり、少なくとも95%のエピソードを正しく拾う(感度95%超)ように作られていたこと、WAOは最初の2項目を統合し3項目目を修正して2条件に簡素化したこと(①典型的な皮膚症状+他の1臓器系以上の有意な症状、②その患者にとって既知または可能性の高いアレルゲンへの曝露+呼吸器・循環器の障害)、皮膚徴候はアナフィラキシーの10〜20%で欠けること、アドレナリンの推奨用量は0.01 mg/kg(最大0.5 mg)の筋肉内注射で、症状が治療抵抗性なら5〜15分ごとに反復すること、注射部位は大腿前外側(外側広筋)であること閲覧 2026-08-27
  3. 3.Epinephrine absorption in adults: intramuscular versus subcutaneous injection(Journal of Allergy and Clinical Immunology・2001)若年成人男性の無作為化クロスオーバー試験で、エピネフリンの血漿中濃度ピークは大腿への筋肉内注射の方が上腕への筋肉内注射・皮下注射より有意に高く、大腿への筋肉内注射をアナフィラキシー初期治療の推奨経路・部位としている閲覧 2026-08-27