病理学

病理学 · A/34

慢性炎症の病態機序と分類(臓器別例)

Pathomechanism and types of chronic inflammation, organic example

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
疾患
猫ひっかき病

🧠 全体像:慢性炎症はと違い、有害因子を除去しきれずに「組織破壊」と「修復」が同時進行する状態。主役はマクロファージで、M1(殺菌・炎症促進)とM2(修復・抗炎症)という相反する活性化型を使い分ける。肉芽腫は、この慢性炎症が持続的T細胞反応によって局所に凝縮した特殊型と捉えると理解しやすい。

定義と特徴

慢性炎症 は長期間(数週〜数か月)続く炎症で、活動性の炎症・・修復の試みが併存する。有害因子が除かれないとが慢性化する。と比べて:

  • のような浮腫・の変化は目立たず、好中球は少ない — 本質的に非(ただし修復としての血管新生はむしろ盛ん。下の3つ目を参照)。
  • 単核球(マクロファージ、リンパ球、形質細胞)の浸潤。
  • 炎症細胞による組織破壊+修復(血管新生+線維化)。

原因

細胞とメディエーター

  • マクロファージ — 主役の細胞。血中の単球が遊走・変換して生じる。組織常在型 = (肝)、(リンパ節)、(中枢神経)、(肺)→ 。活性化:

    • 古典的(M1) — 内毒素、IFN-γ → ROS、NO、リソソーム酵素 → +炎症促進。
    • 代替的(M2) — 、 → → 血管新生、線維芽細胞の活性化、コラーゲン → 修復+抗炎症。

    マクロファージの融合 → 。

⚠️ M1/M2の二分は「単純化しすぎ」と明確に批判されている。 2014年のガイドラインは、をM1・M2の2型だけで理解する見方が分野の進歩を妨げていると述べ、①マクロファージの供給源、②活性化因子の定義、③マーカーの合意という3原則で記述するよう提案した1。M1/M2は連続したスペクトラムの両端を指す便宜的なラベルであり、試験ではこののまま問われうるが、単純化された枠組みであることを踏まえておく。

  • リンパ球 — B細胞 → 形質細胞(抗体)、T細胞 → 炎症を維持するサイトカイン。
  • 好酸球 — IgE・寄生虫反応。顆粒にを含む。
  • 肥満細胞 — のヒスタミン放出。

肉芽腫性炎症

慢性炎症の特殊型:リンパ球の襟に囲まれた活性化(類上皮)マクロファージの = 肉芽腫。

  • 構成: (型による)、(必須)、巨細胞(融合したマクロファージ・)、リンパ球、線維芽細胞。
  • 巨細胞の2型: 核が辺縁にに並ぶLanghans型と、核が中央に集まる・散らばる型。どちらかの型が特定の疾患を意味するわけではない。を動物に埋植した実験では、同じ巨細胞が核の少ないうちは型の配置をとり、核が約5個に達するとLanghans型の配置へ移ることが観察されている2。
  • 形成: 持続的なT細胞反応(Th1)→ IFN-γ → なマクロファージ活性化。()やでも。
flowchart TD
    A["持続的なT細胞反応<br>(Th1)"] --> B["IFN-γ産生"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>なマクロファージ活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelioid cells'>類上皮細胞</span>への変化・融合"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granuloma formation'>肉芽腫形成</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelioid cells'>類上皮細胞</span>+巨細胞+リンパ球の襟"]
  • 分類: 壊死の有無(壊死性 — 結核、梅毒と、非壊死性 — 、)、型(免疫性 — 感染性・ — と異物性)。

⭐ はに特異的ではなく、自体がである。 の肉芽腫は非特異的病変であり、が同定されない限りそれ自体では診断できない——抗酸菌・真菌・、などの、、を除外してはじめて診断され、精査後も相当数の肉芽腫が分類不能のまま残る。また「非壊死性」といってもごく少量の限局性壊死はありうるが、それを超える壊死があれば感染症など他の原因を強く疑う3。も①矛盾しない臨床像、②組織標本での性炎症、③他のの除外という3基準により、これらを満たしたかを判定する普遍的な指標は無く「決して完全には確実にならない」である4。組織学的特徴とされるも、に病因特異的ではない。ただし見落とされやすい手がかりとして診断の助けにはなる。同じ報告は、を伴うサルコイド肉芽腫はと鑑別を要するとし、それでも大半の症例で診断は除外によってなされると述べる5。も同様にな所見ではないとされる(を参照)。

疾患 原因 主な特徴
結核 M. tuberculosis 、、Ranke–Ghon複合、Ziehl–Neelsen陽性
梅毒 T. pallidum (三期)、(先天性)
不明 (ごく少量の限局性壊死はありうる)、・(いずれも特異的ではない)
Bartonella henselae +好中球
免疫と腸内細菌・自己 、斑状、付近
、

線維化・瘢痕化

線維化 = (コラーゲン+)の過剰沈着による硬化・。正常な創傷治癒として、あるいは慢性炎症の病的な終末像として生じる。主要なは(主に線維芽細胞から分化し、肝臓ではが担う)→ 。進行性の線維化は臓器機能不全を来す。

  • 臓器例:
    • 心臓(+高血圧) — 間質のコラーゲン蓄積 → 心筋の硬化 → 不全。
    • 肝硬変(HCV、アルコール)— コラーゲンが構築を歪める → +抵抗増加 → 肝不全と門脈圧亢進。
    • (H. pylori)— リンパ球・、腺の萎縮、。

💡 ポイント: 慢性炎症 = 単核球(マクロファージ、リンパ球、形質細胞)+組織破壊+修復(血管新生・線維化)、非。M1(IFN-γ、)とM2(/、修復)——ただしこの自体、単純化しすぎとの批判がある。肉芽腫 = 類上皮マクロファージ(必須)+巨細胞、乾酪性 = 結核、 = ・だがはに特異的でなく、自体が。線維化は → コラーゲン → 肝硬変・心筋硬化が駆動。

まとめ

  • 慢性炎症は数週〜数か月続く炎症で、単核球(マクロファージ・リンパ球・形質細胞)の浸潤と、組織破壊+修復(血管新生・線維化)の併存が特徴(非)。
  • 主な原因は、過敏・、遷延する毒性曝露で、や動脈硬化などの軽度慢性炎症も含まれる。
  • マクロファージはM1(古典的活性化、・炎症促進)とM2(代替活性化、修復・抗炎症)に分けられる。
  • 肉芽腫は持続的なT細胞反応(Th1)→IFN-γ→マクロファージ活性化により形成され、壊死の有無で乾酪性(結核・梅毒)と(・)に分類される。
  • 慢性炎症の終末像として線維化(による)が生じ、肝硬変や心筋硬化などの臓器機能不全を招く。

出典

  1. 1.Macrophage activation and polarization: nomenclature and experimental guidelines(Immunity・2014)マクロファージ活性化をM1・M2の2型だけで理解する見方が分野の進歩を妨げているとして、供給源・活性化因子の定義・マーカーの合意という3原則に基づく命名枠組みが提案された。M1/M2は連続したスペクトラムの便宜的な両端を指すラベルであり、二分法そのものが単純化しすぎとの批判がある閲覧 2026-08-27
  2. 2.Experimental intraocular lens implantation in the rabbit eye and in the mouse peritoneal space. Part V: Phagocytosis and nuclear patterns of giant cells observed on the implanted lens surface(Journal of Cataract and Refractive Surgery・1990)抄録で、家兎眼内・マウス腹腔に埋植した眼内レンズ表面ではマクロファージと類上皮細胞が主体で、ときにそれらの融合による異物巨細胞が形成されたこと、巨細胞形成の過程で核は最初は中央に集まる異物巨細胞型の配置をとり、核数が約5個に達すると辺縁に並ぶLanghans型の配置へ移ったことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Pathology of sarcoidosis(Seminars in Respiratory and Critical Care Medicine・2007)抄録で、サルコイドーシスの肉芽腫は非特異的病変であり、原因物質が同定されない限りそれ自体では診断できないこと、抗酸菌・真菌・寄生虫感染、慢性ベリリウム症などの塵肺、過敏性肺炎、Wegener肉芽腫症(現在の多発血管炎性肉芽腫症)を除外する必要があり、精査後も相当数の肉芽腫が分類不能のまま残ること、サルコイドーシスの肉芽腫にもごく少量の限局性壊死はありうるが、それを超える壊死があれば感染症など他の原因を強く疑うべきことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Diagnosis and Detection of Sarcoidosis: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society・2020)サルコイドーシスの診断は標準化されておらず、(1)矛盾しない臨床像、(2)1つ以上の組織標本での非壊死性肉芽腫性炎症、(3)他の肉芽腫性疾患の除外、という3基準に基づく除外診断であり、各基準を満たしたかを判定する普遍的な指標は無いため決して完全には確実にならない閲覧 2026-08-27
  5. 5.Asteroid bodies and calcium oxalate crystals: two infrequent findings in fine-needle aspirates of parotid sarcoidosis(Diagnostic Cytopathology・1992)抄録で、耳下腺サルコイドーシス3例の穿刺吸引細胞診で、1例の多核巨細胞に星状体、別の1例にシュウ酸カルシウム結晶を認めたこと、両所見はサルコイドーシスに病因特異的ではないが診断の助けになりうること、シュウ酸カルシウム結晶を伴うサルコイド肉芽腫は異物肉芽腫と鑑別しなければならないこと、それでも大半の症例でサルコイドーシスの診断は除外によってなされることを確認した。Schaumann小体については抄録に記載が無い閲覧 2026-08-27